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セブン&アイ、地域限定商品を5割に 効率追求型から転換

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■ ダイエー以来のチェーンストア経営の転換期がきました

経営管理会計トピック
大量仕入・大量販売でスケールメリットを享受しようとする従来のチェーンストア経営の姿が変わろうとしています。

2015/1/6|日本経済新聞|朝刊
セブン&アイ、地域限定商品を5割に 効率追求型から転換

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます
「セブン&アイ・ホールディングスは傘下のコンビニエンスストアやスーパーなどで、店舗のある地域の嗜好を反映した地域限定商品の比率を高める。全国に商品調達や開発の担当者を配置し、2017年度までに地域限定商品の比率を現在の1割から5割にまで引き上げる。画一的な品ぞろえで効率を追求する商品戦略を転換し、味や機能などで消費者ニーズにきめ細かく対応する。」

■ 小売業の歴史をおさらいします

そもそも、地域密着型の個人商店による販売が中心だった時代から、70年代初頭に中内功氏が日本に導入した「チェーンストア理論」による価格破壊がおき、『消費者主権』が声高に叫ばれるようになってから、約35年。ちょっと前までの小売・サービス業の経営戦略の大きなトレンドは下図の通りです。
経営管理会計トピック_流通業の経営手法の移り変わり
1.チェーンストア理論
統一的でオープンな店構えに、均質なサービスと提供商品。大量仕入・大量販売によるスケールメリットを効かせ、個人商店を圧倒的な価格競争力とブランドで淘汰。特に、GMSの業態では、対面販売からセルフ販売へシフトすることで、大幅な人件費の削減を可能にしました。
2.フランチャイズ経営
スケールメリット(規模の経済)の享受をより早く最大化にするため、フランチャイジーによる資本と経営の参加を募る方法を思いつきました。本部は、画一的な商品の提供と、接客サービスや商品管理のノウハウ(とそのデータを管理する情報システムの利用)を提供する代わりに、売上高の何%という個店の損益に無関係でかつ安定的なロイヤルティーを得る手段を得ました。
3.ドミナント出店戦略
さらに、一定の売上高を保証するべきフランチャイズ店と直営店を組み合わせて、集中出店を実施することで、個店の売り上げ拡大の犠牲のもと、競合店を排除し、商品の配送効率を上げることで、高いマージンを得ることに成功しました。配送効率の向上は、セントラルキッチンの稼働率も同時に上がりますので、単位当たり固定費をますます小さくすることができます。
(※ イオンショッピングモールの過疎地への出店も、当該地域顧客を根こそぎ奪おうとすることでは効果は同じ)
この流れが変わりつつあります。

■ 消費者ニーズをとらえるために

新聞記事によりますと、セブンーイレブン・ジャパンは、全国を9地区に分けて、イトーヨーカ堂は、全国を13地区に分けて、地位ごとに商品開発の担当者を置く体制に変更するそうです。
そうしたエリアごとのニーズをくみ取った商品への入れ替えが、
イトーヨーカ堂(大型店)の取扱品目:約8~10万品目中の最大4万品目、
セブンイレブンの取扱品目:約3000品目中の1500品目を地域限定商品へ、
という規模で行われようとしています。
「多店舗展開する小売企業は、これまでは本部が一括で調達した商品を大量に販売することで仕入れ値を下げて収益を確保してきた。しかし増税後の消費低迷で、消費者の選別の目は厳しくなっている。地域によって消費者の購買力にもばらつきがみられ、本部主導の品ぞろえでは消費者ニーズをとらえきれなくなっているとの判断がある。」
また、同様の取り組みは、イオングループも採用していく模様です。

2015/1/6|日本経済新聞|朝刊
イオン、事業会社に権限委譲 スーパーてこ入れ

「約500人いる持ち株会社の人員を半減し、各事業の責任者や商品仕入れ担当者などを事業会社に振り分ける。その上でGMSを運営するイオンリテールにいる6地域の執行役員を取締役に昇格させるなどして責任を明確にする。「改装や販促などほとんどを権限委譲し、自己完結させる」(岡田社長)。プライベートブランド(PB=自主企画)の「トップバリュ」についても各社が新商品を提案する体制に改める。」
さらに、イオンは、GMSのてこ入れとして、販売・接客方法についても大転換しようとしています。

2015/1/9|日本経済新聞|朝刊
イオン、160店に接客専門係 スーパーで家電選びなど助言 顧客満足度高める

「イオンは2016年度までに総合スーパー(GMS)160店に接客専門の「コンシェルジュ」を配置する。1店あたり7人程度のチームを置き、商品相談の多い家電や寝具の売り場で接客にあたる。サービス水準を引き上げることで顧客満足度を高め、売り上げ増につなげる狙いだ。消費者が自由に商品を選ぶセルフ販売で成長してきたスーパー業界の事業モデルを修正する動きといえる。」

■ 現場への権限移譲は最終手段たり得るか?

この動きは一定の成果を上げるとは思いますが、筆者はひねくれているので、すぐにまた変容を迫られることになると考えています。
キーワードは「ビックデータ」と「人工知能」。
一昔前の、もはや都市伝説と化しているウォルマートのPOS分析で、「日曜の夕方には、缶ビールと紙おむつがよく一緒に売れる。缶ビール売り場の隣に紙おむつを置こう」という有名な逸話がありました。
(当時のバズワードは「マーケットバスケット分析」と「データマイニング」。ちなみに、上記の話はどうも事実ではないようですが。)
歴史は繰り返す。不思議な話ですが、今度はもう少しリアリティのある話になりそうです。顧客が「ナナコ」や「ワオン」を使って買い物をすれば、個人の購買履歴を集積・分析可能になり、従来のいつ何がいくつ売れたか、お店側の視点でしか分からなかった購買情報が、今度は消費者側の視点でも分かるようになります。
組織をいじるとか、地域限定商品を積極的に取り入れるとか、有効な手段のひとつとしてはその通りだと思いますが、恐らく決定打にはならないでしょう。「人工知能」の情報処理スピードには人間の脳はもはや太刀打ちできないので。
むしろ、本部によるIT投資戦略如何なのではないか、と考える次第です。
今後、ローソンや楽天の動きも含めて、消費者ニーズの捉え方をどのように流通大手は試行錯誤していくのか、引き続き関心を持って見てきたいと思います。

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