動くか長期マネー 海外投資家に聞く(上)

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■ 「ROE」一辺倒の株価対策は無効

経営管理会計トピック
日本株の今後の展望を海外投資家に聞く記事が掲載されました。企業の財務戦略として高ROEの演出効果がどれくらいのものか、同日の関連記事と合わせてお読みください。

2014/10/10付 |日本経済新聞|朝刊
動くか長期マネー 海外投資家に聞く(上)

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

今回は、米トレードウィンズ ポートフォリオマネージャー ピーター・ボードマン氏のインタビュー内容に着目しました。
「(筆者追記:日本株は)海外株と比べ割安だ。日本企業の自己資本利益率(ROE)の平均は8~9%と、2ケタ大の欧米企業に比べ低いのは確かだ。だが、PBR(株価純資産倍率)の平均は約1.3倍と、米国株の半分にとどまる」
氏は、ROEそのものではなく、PBRを目安に投資意思決定をしているようです。

 

■ ROEとPBRの関係

散々他のブログやサイトで解説を見てきていらっしゃるとは思いますが、念のため、各指標の計算式を確認します。

PBR  = ROE × PER ・・・(式1)

PBR:株価純資産倍率 (Price Book value Ratio)
ROE:自己資本利益率 (Return On Equity)
PER:株価収益率 (Price Earnings Ratio)

(株価 ÷ BPS) = (EPS ÷ BPS) × (株価 ÷ EPS) ・・・(式2)

EPS:一株利益 (Earnings Per Share)
BPS:一株当たり純資産 (Book-value Per Share)

一株当たり概念は、筆者も不得意なので、PBRは次のようにも表せます。

PBR = 時価総額 ÷ 自己資本(純資産)

つまり、PBRは、自己資本の何倍の時価総額が株式市場で値付けられているか、を示すものです。氏は、(式1)により、このPBRで日本株(個別の日本企業株)が割安か割高かを判断し、単純にROEだけでは見ないと言っています。
簿価上の自己資本が何倍の時価で評価されているか、PBRはROEとPERの積なので、ROEだけでなく、PERすなわち、利益の何倍の値付けがされているかも考慮しているということになります。
自社株買いなどで、高ROEを演出しても、(式2)にあるように、EPSおよびBPSと株価の相関でPBRが決まるので、「一株利益」「一株純資産」が株価を決めるということ。
したがって、高ROEの演出のために「自社株買い」をしても、そもそも余剰資金を株主に返還するケースを除いて、「一株利益」も「一株純資産」も増減することはありません。ましてや、「リキャップCB」で純資産(自己資本)を単純に他人資本に置き換えただけでは、本質としての企業価値は決して高まらないでしょう。支払利息のタックスシールド分を考えている暇があるなら、利益を増やすための投資案件の評価をしていた方が効果的だと思います。

 

■ PBRによる日本企業(株)の評価

本ブログは投資指南することが目的ではなく、あくまで管理会計の解説をすることが目的なので、企業側(財務管理、資金調達戦略立案の視点)に立って議論しています。
氏のコメントを仮数字に置き換えて、外部の機関投資家から日本企業はどう見られているか、を明確にしたいと思います。

冒頭の、ピーター・ボードマン氏のコメントから、および欧米企業の平均的ROEを仮に20%と置くと、
日本企業:
ROE × PER = PBR
8% × 16.25倍 = 1.3倍
欧米企業:
ROE × PER = PBR
20% × 13倍 = 2.6倍
となります。

ちなみに、東証のホームページから9月末の東証一部のPERを調べると、16.7倍(加重平均)でした。
ということは、ピーター・ボードマン氏的には、日本企業のROEが低いと言って、全ての日本企業の株式が投資対象として欧米企業より魅力度が低い、と十把ひとからげにするのではなく、PERが16.25倍より低く株価が放置されている日本企業株、すなわち、株価が割安な日本企業の株に投資すればよい、ということになります。
MM理論による「効率的市場仮説」の有効性をどれくらいと見るかですが、割安な株式というのは、結局のところ、将来キャッシュフローまたは利益がどれくらい増えるのか、その目利きが株式市場で追いついてきていない株を買え、ということになります。
裏返すと、企業経営者から見れば、いかに利益成長させるか、ということに尽きるのではないかと思います。
昨今の、安易に高ROEを演出する日本企業の財務戦略の危うさを一人危惧する筆者なのであります。

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