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孫子 第2章 作戦篇 5 兵は拙速を聞くも、未だ巧久(こうきゅう)を睹(み)ざるなり

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ いたずらに戦いを長引かせてはいけない

経営戦略(基礎編)
軍隊(組織)を運用するには、とてつもない大金が必要になります。
・ 軍隊の編成(軽戦車千台、重戦車千台、歩兵十万人)
・ 外征の場合の兵糧の輸送(ロジスティックス)
・ 外国使節の接待費用
・ 装備費用(膠や漆などの工作材料の購入、戦車や甲冑の購入)
したがって、こうした規模と形態の軍が戦闘という行動様式をとって敵に勝利するまでの長期持久戦ともなれば、軍を疲労させ鋭気くじく結果となり、また国家経済も疲弊してしまいます。
・ 敵の城を攻囲すれば、戦力を消耗する
・ 野戦も攻城戦もせずにいたずらに行軍や露営を繰り返して、軍を国外に置いておくとその日数分の経費がかさむ
このように、
① 軍が疲弊して鋭気がくじかれる
② 戦力を消耗させる
③ 財貨を使い果たす
という状態に陥れば、それまで中立であった諸侯も、その疲弊に付け込もうと兵を上げて敵対することとなります。いったん、このような窮地に陥ってしまうと、いかに智謀の人であっても、その善後策を立てることは困難になります。
それゆえ、
① 戦争には、多少まずい点があっても迅速に切り上げるという事例があっても、完璧を期したので長引いてしまったという事例は存在しない。
② そもそも戦争が長期化して国家の利益になったという事例は存在しない。
【教訓】
軍の運用に伴う損害を徹底的に知り尽くしていない者には、軍の運用がもたらす利益を完全に知り尽くすことはできない。


—————–
いきなり、章が変わって長文になってきました。事例がいちいち古代の戦争を題材にしているのはご容赦ください。
孫子が想定する戦いは、遠く国外に軍を進めて、会戦で敵軍を破る、または敵の籠る城を攻め落とす、という形式を前提としているので、勝利にたどり着くまで、大軍の兵站(ロジスティクス)が万全であることを維持することの困難性と、それが大金を要し、国家財政を圧迫させる危機感を強く持っているのです。
よって、短期決戦で勝利を収めること、もっといえば戦わずして勝つ(おっと、このセリフは別の節で登場するのでした、、、)ことを最善としています。
これは現代ビジネスにおいて、
① 新規ビジネスへの先行投資は十分に回収できるかの事前検討の重要性
② いったん新ビジネスを始めた際に、兵站(へいたん)として、たとえば、
・ 営業や生産現場の人員の士気が十分に高いか(人事管理)
・ 新製品が新市場にまできちんと届く販売チャネルが整備されているか(SCM)
・ 増大する在庫投資や売掛金の分、膨らむ運転資金が確保されているか(資金管理)
といったことへの目配りがきちんとできている上で、新規事業を立ち上げようとしているか、を十分に検証することを勧めていると理解できます。
今一度、古代の戦争に例をとるならば、
① 戦争が総力戦・消耗戦である以上、一日長引けばその分国家財政に与えるインパクトをきちんと計算しておく
② 時間を度外視して、何事も完璧にしないと気が済まない、小心な完璧主義者は指揮者には向かない
③ 軍備の充実や戦闘での戦果(結果)にしか興味のない幼稚な指導者ばかりでは、国家財政が破たんしてしまう
→ 事業部の設備投資ばかり声高に主張して、借入金を増やして返済できない愚
ということになるでしょう。
歴史上の教訓例としては、長期化したベトナム戦争の影響で、増大する戦費負担でアメリカ合衆国の財政赤字とインフレが起こり、ドルと金の交換停止(1971年:いわゆるニクソンショック)から、米ドルの信認が揺らぎ、変動相場制に移行したことが思い起こされます。
「経済を知らぬ者は兵を語るべからず」
現代ビジネス風に言えば、「資金計画の裏付けのない事業計画は実行に値せず」
孫子の兵法(入門編)_第2章 作戦篇 5 兵は拙速を聞くも、未だ巧久(こうきゅう)を睹(み)ざるなり

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