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日本取引所、IPO審査の厳格化を要請 証券会社や監査法人に 業績予想、根拠の開示を

経営管理会計トピック 実務で会計ルールをおさらい
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■ 他力本願のIPO審査の強化策

経営管理会計トピック

東証が、最近のIPO銘柄が、上場直後に業績下方修正や不正発覚により、投資家の信頼誠意を損なうとして、IPO希望会社と相対的に長い(数年越し)期間の接触を持っている証券会社(主幹事)と監査法人に、上場審査の申請チェックの厳格化を依頼するという動きがありました。新聞記事は2日にわたって掲載されましたので、下記に、そのダイジェストを純に記載させていただきます。

2015/3/31|日本経済新聞|朝刊 日本取引所、IPO審査の厳格化を要請 証券会社や監査法人に 業績予想、根拠の開示を

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「日本取引所グループは新規株式公開(IPO)企業への審査を厳格にするよう証券会社や監査法人に要請する方針だ。経営者による不正な取引がないかをチェックする狙いで、日本取引所がIPO関連で証券会社などに注意喚起するのは異例。日本取引所は企業にも業績見通しの具体的な根拠を示すように指導する。
最近では上場直後の業績下方修正や不正発覚が相次いでおり、投資家の信認回復を急ぐ。」

2015/4/1|日本経済新聞|朝刊 日本取引所、IPO不信で緊急対策 投資家保護図る 上場時期の集中緩和も

「日本取引所グループは31日、一部の新規株式公開(IPO)企業が市場不信を招いている問題で緊急の対策を公表した。証券会社や監査法人と協力し、上場時の業績見通しを開示する際に具体的な根拠を示すよう企業に求める。証券会社などの業務が過密にならないよう上場時期も分散する。投資家保護につなげ、市場の信頼低下を防ぐ。」

 

■ 誰が業績予想を審査できる能力を有するのか?

今回、東証(日本取引所グループという呼称がどうしてもまだしっくりこなくって、、、)は審査厳格化の動きに至ったのは、IPO企業の不始末から批判の矢面に立ったことによります。

ここでは、特段個別企業の実態調査をするつもりはないのですが、31日の新聞記事に例として掲載があったのは次の3社。

(新聞記事より下表転載)

経営管理会計トピック_2015年3月31日_日本経済新聞(朝刊)_最近のIPOを巡る主な問題例

不正(違法)な会計処理があった場合は、IPOに限らず審査・捜査を厳格に実施しなければならないのは理解できます。しかし、業績見通し悪化による株価低迷まで、四の五の言われ始めると、ちょっと筋が違うような気もしてきます。

新聞記事(4/1)では、日本取引所の齋藤CEOが、「「下方修正が悪いのではない。どういう条件で利益予想を出しているのかを丁寧に説明してもらうのが趣旨だ」と発現され、主幹事証券や監査法人に事前チェックの厳格化、これは利益予想の根拠を評価させるという意味です。

申し訳ないのですが、起業家は、他者に無い情報源と個人のひらめきと信念から起業しているのであって、将来業績の予想も、己の(悪く言えば)願望をベースに作られているはずです。そういうアニマルスピリッツがないと、怖くてふつうは起業などできません。その勇気は称賛に値するものと筆者は考えています。

そういう起業リスクを回避して高給を得ようとして、頭のキレる学力エリートは金融業界や士業に就くんですよね。そういう人たちが、起業家以上に、起業家が直面している事業リスクについての目利き力があるとは思えません。

4/1の記事にはこうあります。

「今回、日本取引所は上場時期の分散も打ち出した。昨年は全体の35%にあたる28社が12月に一斉に上場した。上場ラッシュで主幹事証券の個別の対応がおろそかになっているとの指摘も根強い。今後は上場時期が年末に集中しないよう、証券会社に要請する方針だ。」

『IPOが集中するから、今度は均(なら)して案件を持ってきてね・・・・』
えーとですね、IPOもタイミングが重要なのです。悪く言うと、市場がオーバーシュート気味で、通常時より割高で公開株に値が付く時をねらってIPOを仕掛けます。上場もれっきとした経済行為ですから。より低い調達コストで資金を用立てたいに決まっていますから。

普通の企業なら、お客さんがわんさか来るときに、さばききれないから来月来て、などというと、どこかよそに行ってしまいますよ。取引所もグローバル競争しているって危機感無いのでしょうか? IFRSの浸透により、国境を超えた上場なんて珍しくなくなってしまいました。

 

■ 膾(なます)に懲りて羹(あつもの)を吹く

実は、今回はIPO会社が、公開直後に業績下方修正を発表して、投資家の信頼性を損なった、というのが事の発端となっています。しかし、世の中には、儲け話をもちかけて、お金をもらったらドロン、もしくは経済的損失を与えても、法の目をかいくぐって刑事罰を逃れる人達がたくさんいらっしゃいます。

刑法246条:詐欺罪(さぎざい)とは、人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする(例えば無銭飲食や無銭宿泊を行う、無賃乗車するなど、本来有償で受ける待遇やサービスを不法に受けること)行為、または他人にこれを得させる行為を内容とする犯罪(WiKi

4つある詐欺罪の立件条件のひとつに、
「行為者に行為時においてその故意及び不法領得の意思があったと認められること」

というのがあります。この場合ですと、IPO企業の経営者が、荒唐無稽な事業計画でIPOを果たし、所有株式を株式市場で高値で売り抜ける、その「故意」が立証される必要があります。

刑事による捜査権を有している警察・検察でさえ、手を焼いているのに、主幹事証券会社や監査法人がそういう事前チェック(捜査に相当)ができますでしょうか?

投資家たちも、手堅く手持ち資金を利殖させたいなら、もっとローリスクの金融商品の購入を考えるべきです。IPOを買いたい投資家たちも、ひと山当てたい、IPO会社の事業計画に惚れ込んだ、という人たちと推察します。ある程度、自己責任で「IPO会社の目利き」をしなくてはいけないのではないでしょうか?

さて、表題の「膾」「羹」うんぬんは、数年前の東証の動きと真逆のことをやっているからこそのネーミングでした。

こちらは本文が長いので、大和総研(資本市場調査部 吉井一洋氏)のレポートをご参照ください。

⇒「東証、業績予想開示を柔軟化(概要編)」(←PDF)

東証は、2012年3月23日に、「上場企業の業績予想開示の柔軟化」を発表しました。
その真意は、本文をお読み頂いて、読者の方々に判断してもらいたいのですが、筆者の当時の見解は次のような感じでした。

各社の経営者の本音として、
・リーマンショック後のさらに流動性が高い市場に対する見通しを当てる自信が無い
・四半期決算開示の実務負担がかなり大きくなっており、これ以上、業績予想のディスクロージャーまで強化されるのは御免こうむりたい

つらつらとこれまで書いてきましたが、結論は、「自分の目で、企業の事業計画と財務状況の目利きができるスキルを身に付けること」これにつきます。

どうすればそのスキルが身につくかって? このブログを読んでください。(^_^;)

P.S.
場所を移して最初の投稿記事でした。今後とも、本ブログとオリジナルブログの2つをどうぞご愛顧いただきますよう宜しくお願いします。

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