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■ また減損損失が物議を醸しだしています

経営管理会計トピック
シャープが太陽電池事業の目算が外れたことにより、減損損失を1000億円計上する必要から、主力2行に合計1500億円のデッド・エクイティ・スワップ(DES)を支援要請したという記事がありました。

2015/3/3|日本経済新聞|朝刊
シャープ、1500億円資本支援要請 主力2行に債務株式化で、今期赤字1000億円超

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「シャープは主力取引先のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に資本支援を要請する方針を固めた。計1500億円規模の債務の株式化などが柱となる。シャープは2015年3月期の連結最終赤字が不振事業の損失処理で従来予想の300億円から1千億円超に膨らむ見通し。業績回復のため国内の電子部品4工場の閉鎖や太陽電池事業の撤退を検討する。主力行の支援で今後のリストラに耐えられる財務基盤を整えて経営再建を急ぐ。」
シャープはすぐさま、この報道を否定するプレスリリースを出しております。
こちら
真偽の程は別にして、落ち着いて、会計的に財務数値を確認していきたいと思います。

■ 債務超過とキャッシュフロー(資金繰り)の関係

減損損失を認識して、多額の特別損失を計上するということは、当期の期間損益が赤字になるということになります。期間損益が赤字になるということは、「純資産」≒「株主資本」≒「自己資本」が毀損する、すなわち減少することになります。法律的には、「債務超過」の定義も明確にはありませんし、「債務超過」になったら企業経営を継続してはいけない、というルールもありません。
ここでは、「債務超過」を「『自己資本』が累積損失の影響により、マイナス値になる」と便宜的に定義しておきます。このような「債務超過」は格好が悪いので、解消したいと経営者が感じたとします。
解消方法には、大別して、下記のようになります。
① 増資を受ける (基本として会社にキャッシュインあり)
② 債務を株式に振り替える (基本として会社にキャッシュインなし)←DES
③ 名目的減資を行う (基本として会社にキャッシュインなし。資本金が欠損分だけ減額できますが、必ずしも純資産がプラスなるかは保証されません、、、)
実質的には①か②ですね。
よく、他のWebサイトなどで、「債務超過」を「『資産』を『負債』が上回り、資産をすべて売り払っても、負債を返済できない状態」と定義しているケースをよく目にするのですが、「上回り」という部分と、「返済できない」という部分に、何の必然性も考えられないため、こういう定義は無視していい、と筆者は個人的に考えています。
また、こういう定義を前提にして、「債務超過」解消の手段として、
① 会社分割をして「債務」を優良事業から切り離す
② デッド・デッド・スワップ(DDS)を行って、劣後ローンなどに振り替える
③ 返済プランのリスケジュールを行う(②と本質的に何が違う?)
④ 債務免除を受ける
⑤ 優良資産を売却する
⑥ 保有資産をセール&リースバックする など
という選択肢が列挙されているのですが、完全に誤解があると思います。
というのは、
「債務超過」の解消 = 負債の「デフォルト」回避
との思い込みがあるということです。
「債務超過」は格好が悪いかもしれませんが、債務の返済義務が果たされていれば(免除やリスケ含む)、すなわち、資金繰りが続いていれば、会社経営は継続することができます。
「純資産(株主資本・自己資本)」がマイナスになること(本質からさらに遠くなり、いらぬ勘違いをさせるのであまりお勧めしませんが)、言い換えれば、「資産」を「負債」が上回ることと、負債のデフォルトとは異なる現象です。
経営管理会計トピック_債務超過とデフォルトの違い
「債務超過」になる場合は、「デフォルト」が発生する確率が高い、というだけのことで、2つは全く別の現象であることを、重ねて申し上げます。
「雪」が降るのは通常は「冬」の季節。でも、筆者には、桜が咲いているのに「雪」が降ってきたのを見た実体験があります。「寒波」さえ来れば、桜が咲いている季節でも「雪」は降ります。
(あくまで「ソメイヨシノ」ですよ!)

■ シャープの財務諸表を観察してみましょう

結構何度も言っているのですが、「減損損失」を認識しても、「キャッシュアウト」は無いんですよね。逆に、会計的な利益を計上することに執着し、減損認識を回避して、法人税を支払う。これくらい度し難いことはないですね。減損損失はむかーし支出した現金ですよ。既に手元にはキャッシュは無いですよ。
※ 税法に詳しい方へ
減損損失額がそのまま機械的に全額「損金」扱いになるといっているわけではありません。評価損認識単位の違い、売却可能額ベース、災害や1年以上の遊休など判定基準の違い、減価償却可能額の範囲など、会計と税務に諸々の違いがあることは承知しています。
前置きはこれくらいにして、シャープの連結B/Sを眺めてみましょう。
経営管理会計トピック_シャープの連結BS_201412
くしくも、「現預金残高」と「純資産」がほぼ同額ですね。問題は、「買入債務」と「有利子負債」から生じる「支払利息」がいつまで支払い続けられるかです。これは、フリーキャッシュフローと現預金残高を比べることで、簡単にわかります。
FY14の第3四半期決算におけるフリーキャッシュフロー(ここでは、便宜的に営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合算値としておきます)は、連結キャッシュフロー計算書から「▲317億円」です。
▲317億円 ÷ 9か月 = 35.2億円/月
連結B/Sから、現預金残高は、2,538億円なので、
2,538億円 ÷ 35.2億円/月 = 72.1ヵ月(約6年)
このFY14第3四半期の累計キャッシュフローの状況が不変としたら、現預金を使い果たすまで、猶予期間は6年もある、ということになります。
当然、2,340億円もある「投資その他の資産」にも換金可能な部分がありますし、9,776億円もある「有利子負債」がこのまま借り換えできるとする前提もあります。あくまで、この試算は目安にすぎませんが。
「会計」と「資金繰り(キャッシュフロー)」は、関連しているようで、よく観察すると違います、というお話でした。

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