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■ 「事業継続に重大な疑義」という開示理由が付いた決算短信

経営管理会計トピック
新聞記事によると、「スカイマークは30日、2015年3月期の単独最終損益が136億円の赤字(前期は18億円の赤字)になる見通しだと発表した」とあり、「10月中の決着を目指していたエアバスとの違約金の減額交渉について「引き続き交渉を行っている」とした」という記述の通り、8/9に、一部報道機関から漏れ出た(当社はすぐさま8/11にプレスリリースで否定しましたが、以降の経過は皆さん承知の通り)、当社のエアバスA380型機6機導入見送りに関する、契約の解除や違約金、導入の見送り等の問題が、そもそもの営業赤字に追い打ちをかけて、かなり心配な状態になってきました。

2014/10/31付 |日本経済新聞|朝刊
スカイマークの今期最終赤字136億円 A330の負担重く

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

新聞記事の中でも言及がありましたが、10/30公表の第1四半期の決算短信(非連結、日本基準、金融商品取引法に基づく四半期レビュー手続の対象外)において、「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております」との注記がついているため、今回この記事を取り上げました。

■ 「債務超過」はこの際問題ではない

第1四半期の有価証券報告書と今回の決算短信に続けて、「事業継続に関する疑義という注記」がついたことは大変な事態です。こういうときに、「債務超過」にまだなっていない、とか、このままの損益状態だといつごろ「債務超過」に陥るのか、という財務分析に関する観測が出たりしますが、この際、「債務超過」自体を問うても直接的には無意味です。
なぜなら、そもそも「債務超過」を具体的に規定する法規は存在しない、つまり公的に「債務超過」が定義されていないため、法的に定義をされてもいない「債務超過」にいつなるかを予測することには実質的な意味がありません。「最終赤字がかさんで、剰余金はおろか、資本金額まで食ってしまい、純資産(自己資本)額がマイナスになること」を指して「債務超過」と呼ばれていますが、マイナスになったことで、経営が継続できなくなるわけではありません。要は、資金繰りが上手くいくかどうかだけです。
間接的に、巷(ちまた)で言われている「債務超過」的な状態になった企業には、新規に融資をしようとする金融機関が登場せず、すると新規借り入れができなくなるので、資金ショートを起こしてしまい、支払いができなくなって、口座を凍結され、銀行取引ができなくなるという関係性はあります。
といいつつ、このままいくと、いわゆる「債務超過」にいつごろ突入するのか、仮計算はしてみましょう。
10/30に公表された決算短信で、今期の最終赤字見通しが、13,676百万円。第2四半期までの最終赤字が、5,744百万円。差し引き:7,932百万円。これが下期(6ヵ月)にかけて発生する赤字見込額なので、1か月あたり、1,322百万円の赤字。
第2四半期末の利益剰余金が11,083百万円なので、
11,083百万円 ÷ 1,322百万円/月 = 8.4ヵ月
第2四半期末の株主資本額が38,498百万円なので、
38,498百万円 ÷ 1,322百万円/月 = 29.1ヵ月
となり、このままの事業環境だと、2015年6月に利益剰余金が枯渇し、2017年3月に上述の債務超過状態になります。なにか、思ったより悠長な感じがしませんか?

■ 公表数字だけで資金繰りをやってみる

機械的な債務超過の仮計算より、資金ショートの方が早くやって来ます。
超簡単に、第2四半期決算数字から試算してみます。
P/Lから、経常損失:3,983百万円。
前期末決算のキャッシュフロー計算書から減価償却費が2,482百万円。これを半分にして、経常損失に足し戻すと、半年間のキャッシュアウトが2,742百万円。月当たりにすると、457百万円。
第2四半期末の現預金残高が4,549百万円。
4,549百万円 ÷ 457百万円/月 = 10ヵ月
エアバスとの係争で違約金が一切発生しないとしても、このまま営業活動からのキャッシュアウトが続くと、2015年7月には、現預金残高を使い果たしてしまいます。
エアバスA380型機6機の購入予定総額は、1916億円。既に254億円を支払い済みで、B/Sには建設仮勘定で計上してあります。日経新聞の記事(10/2、10/3)によると、当初前払い金以外に違約金として、770億円(後に200億円)(どちらも当社はプレスリリースでは否定)が発生するとの報道があり、200億円としても、手元流動性だけでは、とても支払うことができない水準になっています。
ボーイング737-800型機、2機の早期返却、高額固定資産のセール・アンド・リースバック、金融機関からの新規借り入れで、この窮地を逃れると、第2四半期決算短信には注記があります。
現存する機体が33機。年間150億円のリース料を支払っているので、総てが機体にかかるものとしても、
150億円 ÷ 33機 = 4.5億円/機
2機を早期返却といっているので、9億円/年はリース料が節約できます。
しかし、セール・アンド・リースバックは、売却後の瞬間は手元にキャッシュが生まれますが、第2四半期末のB/Sを見る限り、建物と機械及び装置の簿価(減価償却累計額を除いた純額)は、合わせて4,454百万円。全額売却しても、到底違約金の200億円には届きません。しかも、その後のリース料の支払いはどうするのでしょうか。
どう考えても、新規の資金調達しか、道は残っていないようです。さあ、ある報道の通り、同業他社が経営支援に入るか、それとも金融機関から新規の融資を受けられるか。2つのうち一つ(または両方の合わせ技)を選択せざるを得ないようです。

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小林 友昭会計で経営を読む■ 「事業継続に重大な疑義」という開示理由が付いた決算短信 新聞記事によると、「スカイマークは30日、2015年3月期の単独最終損益が136億円の赤字(前期は18億円の赤字)になる見通しだと発表した」とあり、「10月中の決着を目指していたエアバスとの違約金の減額交渉について「引き続き交渉を行っている」とした」という記述の通り、8/9に、一部報道機関から漏れ出た(当社はすぐさま8/11にプレスリリースで否定しましたが、以降の経過は皆さん承知の通り)、当社のエアバスA380型機6機導入見送りに関する、契約の解除や違約金、導入の見送り等の問題が、そもそもの営業赤字に追い打ちをかけて、かなり心配な状態になってきました。 2014/10/31付 |日本経済新聞|朝刊 スカイマークの今期最終赤字136億円 A330の負担重く(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 新聞記事の中でも言及がありましたが、10/30公表の第1四半期の決算短信(非連結、日本基準、金融商品取引法に基づく四半期レビュー手続の対象外)において、「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております」との注記がついているため、今回この記事を取り上げました。 ■ 「債務超過」はこの際問題ではない第1四半期の有価証券報告書と今回の決算短信に続けて、「事業継続に関する疑義という注記」がついたことは大変な事態です。こういうときに、「債務超過」にまだなっていない、とか、このままの損益状態だといつごろ「債務超過」に陥るのか、という財務分析に関する観測が出たりしますが、この際、「債務超過」自体を問うても直接的には無意味です。 なぜなら、そもそも「債務超過」を具体的に規定する法規は存在しない、つまり公的に「債務超過」が定義されていないため、法的に定義をされてもいない「債務超過」にいつなるかを予測することには実質的な意味がありません。「最終赤字がかさんで、剰余金はおろか、資本金額まで食ってしまい、純資産(自己資本)額がマイナスになること」を指して「債務超過」と呼ばれていますが、マイナスになったことで、経営が継続できなくなるわけではありません。要は、資金繰りが上手くいくかどうかだけです。 間接的に、巷(ちまた)で言われている「債務超過」的な状態になった企業には、新規に融資をしようとする金融機関が登場せず、すると新規借り入れができなくなるので、資金ショートを起こしてしまい、支払いができなくなって、口座を凍結され、銀行取引ができなくなるという関係性はあります。 といいつつ、このままいくと、いわゆる「債務超過」にいつごろ突入するのか、仮計算はしてみましょう。 10/30に公表された決算短信で、今期の最終赤字見通しが、13,676百万円。第2四半期までの最終赤字が、5,744百万円。差し引き:7,932百万円。これが下期(6ヵ月)にかけて発生する赤字見込額なので、1か月あたり、1,322百万円の赤字。 第2四半期末の利益剰余金が11,083百万円なので、 11,083百万円 ÷ 1,322百万円/月 = 8.4ヵ月 第2四半期末の株主資本額が38,498百万円なので、 38,498百万円 ÷ 1,322百万円/月 = 29.1ヵ月 となり、このままの事業環境だと、2015年6月に利益剰余金が枯渇し、2017年3月に上述の債務超過状態になります。なにか、思ったより悠長な感じがしませんか? ■ 公表数字だけで資金繰りをやってみる機械的な債務超過の仮計算より、資金ショートの方が早くやって来ます。 超簡単に、第2四半期決算数字から試算してみます。 P/Lから、経常損失:3,983百万円。 前期末決算のキャッシュフロー計算書から減価償却費が2,482百万円。これを半分にして、経常損失に足し戻すと、半年間のキャッシュアウトが2,742百万円。月当たりにすると、457百万円。 第2四半期末の現預金残高が4,549百万円。 4,549百万円 ÷ 457百万円/月 = 10ヵ月 エアバスとの係争で違約金が一切発生しないとしても、このまま営業活動からのキャッシュアウトが続くと、2015年7月には、現預金残高を使い果たしてしまいます。 エアバスA380型機6機の購入予定総額は、1916億円。既に254億円を支払い済みで、B/Sには建設仮勘定で計上してあります。日経新聞の記事(10/2、10/3)によると、当初前払い金以外に違約金として、770億円(後に200億円)(どちらも当社はプレスリリースでは否定)が発生するとの報道があり、200億円としても、手元流動性だけでは、とても支払うことができない水準になっています。 ボーイング737-800型機、2機の早期返却、高額固定資産のセール・アンド・リースバック、金融機関からの新規借り入れで、この窮地を逃れると、第2四半期決算短信には注記があります。 現存する機体が33機。年間150億円のリース料を支払っているので、総てが機体にかかるものとしても、 150億円 ÷ 33機 = 4.5億円/機 2機を早期返却といっているので、9億円/年はリース料が節約できます。 しかし、セール・アンド・リースバックは、売却後の瞬間は手元にキャッシュが生まれますが、第2四半期末のB/Sを見る限り、建物と機械及び装置の簿価(減価償却累計額を除いた純額)は、合わせて4,454百万円。全額売却しても、到底違約金の200億円には届きません。しかも、その後のリース料の支払いはどうするのでしょうか。 どう考えても、新規の資金調達しか、道は残っていないようです。さあ、ある報道の通り、同業他社が経営支援に入るか、それとも金融機関から新規の融資を受けられるか。2つのうち一つ(または両方の合わせ技)を選択せざるを得ないようです。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します