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■ 丸紅の食品グループの動きが激しい

経営管理会計トピック
元々、丸紅は食料品業界でのプレゼンスが伝統的に大きいのですが、最近立て続けにビックニュースが飛び込んでいます。

  • 2012年5月 米ガビロン社買収
  • 2014年10月 マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東3社の共同持ち株会社をイオンと設立

そして、食品卸で第3位の独立系、国分との包括提携の締結のニュースが入りました。
「丸紅は食品卸3位の国分と包括提携する。2015年6月をめどに互いの事業子会社に出資し、商品の仕入れや営業、物流などで協業する。独立系の国分が特定の企業と幅広い分野で提携するのは初めて。丸紅・国分連合の食品卸分野は売上高が単純合算で2兆円近くとなり、最大手の三菱食品に次ぐ規模となる。」

2014/12/5付 |日本経済新聞|朝刊
丸紅、国分と包括提携 食品卸2位グループに

2014/12/6付 |日本経済新聞|朝刊
(ビジネスTODAY)国分、孤高300年破る危機感 丸紅との包括提携発表 物流費、PB…食品卸に「4重苦」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

まだ、包括的な業務提携ということですが、資本的には、お互いの思惑が透けて見えるようなスキームになっています。

■ 国分の言い分

新聞記事では、
「輸送費高騰、プライベートブランド(PB=自主企画)商品拡大、市場縮小に加え、再編による競争激化という「4重苦」に直面。2013年度まで4年連続の減益を余儀なくされた。ここ数年の大手商社主導の再編で、長く維持してきたトップの座も奪われた。危機感が創業300年の国分を突き動かした。」
とあります。それにしてもマスコミは「●●重苦」というフレーズが好きですね。
医薬品卸業界でも、08年ごろから再編が起こり、現在は、メディパルHD 、アルフレッサHD、スズケン、東邦HDとプレイヤーが絞られてきています。
食品卸業界も、三菱食品(三菱商事系)、国分+丸紅、日本アクセス+伊藤忠食品(伊藤忠系)とプレイヤーの集約が始まっています。一般的に卸売業にとって激しい市場競争環境になっています。人口減に伴う国内市場の縮小がその一番大きな要因だと筆者は考えています。
ということで、今回のニュースは、一足飛びに「資本提携(合併)」による規模の拡大となっていないところに両社の意図が垣間見られます。国分としては経営の独立性は保持したい。でも競争を勝ち抜くために規模の拡大が必要。そこで、総合商社と提携、ということになりました。
一方で、丸紅はなぜ、業務提携に甘んじたか? 総合商社の資本力で一気にという社内の様子ではないようです。あくまで、社外に開示された財務データから筆者がそのように想像しているだけですが、、、

■ 業務提携の中身を見てみる

業務提携の内容から、主に資本関係の部分を抜き出したものを、両社のニュースリリースから確認してみます。

① 国分グループの販売体制の再編による首都圏のエリアカンパニーである国分首都圏株式会社(仮称)に、丸紅が資本参画する
② 丸紅の子会社である山星屋(菓子卸業)に国分が資本参加する
③ 丸紅の子会社であるナックスナカムラ(冷凍食品卸業)に、国分が資本参画する

丸紅は国分という強力なパートナーを確保しましたが、資本的には、投資額を抑えて、既存事業の強化を図る、既存の経営資源の有効活用でシナジーによる収益力拡大を狙っているように見受けられます。ガーと大資本を投入しての大規模なリターンは望まない、という形になっています。それは、国分にとっても、独立性を担保するうえで好都合だったのでしょう。
両社の利害が完全に一致したスキームになっているようです。

■ リスクアセットから投資拡大の限界値を見る

筆者が繰り返し言及している丸紅の懐事情。それは、

① これ以上リスクアセットを増やすことはできない
② 食品セグメントへの投資額が相対的に大きく膨らんでいる

というものです。
※ リスクアセットについては、丸紅のこちらのホームページ、または筆者のこちらの記事(住商、資源戦略見直し 中村社長「見通し甘かった」 特別組織で原因究明)でご確認ください。
◆ リスクアセットについて
FY13決算では、
連結資本: 15,322億円
リスクアセット: 11,370億円
リスクバッファ: 3,962億円
なので、
安全余裕率: 3,962億円 ÷ 15,322億円 = 25.9%
FY14決算見通しにおける連結資本は、16,500億円(想定)。
上記安全余裕率を維持するためには、
16,500億円 × 25.9% = 4,274億円 だけリスクバッファが必要になります。
FY14で積み増せるリスクアセットの上限は、
16,500億円 - 4,274億円 = 12,226億円
FY13のリスクアセットが、11,370億円なので、FY14に上積みできるリスクアセットの上限は、
12,226億円 - 11,370億円 = 856億円
これだけの余資では、食品セグメントにだけ大型投資はできません。

■ セグメント別ROIから収益バランスを見る

丸紅のFY13の決算報告資料から抜粋したセグメント別ROIを整理したものをご覧ください。ROIの分子は、親会社説による当期純利益です。丸紅はIFRSを採用していますが。
経営管理会計トピック_丸紅_セグメント別ROI_数表
経営管理会計トピック_丸紅_セグメント別ROI_グラフ
金属グループは、海外石炭事業における減損損失の影響で、ROIが0.3%減少していますが、それ以外のグループは軒並み、ROIを向上させています。
その中で、商品グループが大幅に投下資本を増やした(約2倍)ものの、ROIは、2.5%から1.3%へ半減しました。皆さんご存知の通り、資産の大幅増はGavilon社の買収資金によるものですが、足下ではまだ収益化が遅れているようです。
こういう状況で、商品セグメントにさらなる大幅な投資は実行が難しいと思います。
今回、主に、丸紅の財務状況から両社の業務提携のスキームの背景を類推してみました。あくまで、状況証拠ですが、皆さんの企業分析に貢献できていれば幸いです。

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小林 友昭会計で経営を読む■ 丸紅の食品グループの動きが激しい 元々、丸紅は食料品業界でのプレゼンスが伝統的に大きいのですが、最近立て続けにビックニュースが飛び込んでいます。 2012年5月 米ガビロン社買収 2014年10月 マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東3社の共同持ち株会社をイオンと設立 そして、食品卸で第3位の独立系、国分との包括提携の締結のニュースが入りました。 「丸紅は食品卸3位の国分と包括提携する。2015年6月をめどに互いの事業子会社に出資し、商品の仕入れや営業、物流などで協業する。独立系の国分が特定の企業と幅広い分野で提携するのは初めて。丸紅・国分連合の食品卸分野は売上高が単純合算で2兆円近くとなり、最大手の三菱食品に次ぐ規模となる。」 2014/12/5付 |日本経済新聞|朝刊 丸紅、国分と包括提携 食品卸2位グループに 2014/12/6付 |日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)国分、孤高300年破る危機感 丸紅との包括提携発表 物流費、PB…食品卸に「4重苦」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます まだ、包括的な業務提携ということですが、資本的には、お互いの思惑が透けて見えるようなスキームになっています。 ■ 国分の言い分 新聞記事では、 「輸送費高騰、プライベートブランド(PB=自主企画)商品拡大、市場縮小に加え、再編による競争激化という「4重苦」に直面。2013年度まで4年連続の減益を余儀なくされた。ここ数年の大手商社主導の再編で、長く維持してきたトップの座も奪われた。危機感が創業300年の国分を突き動かした。」 とあります。それにしてもマスコミは「●●重苦」というフレーズが好きですね。 医薬品卸業界でも、08年ごろから再編が起こり、現在は、メディパルHD 、アルフレッサHD、スズケン、東邦HDとプレイヤーが絞られてきています。 食品卸業界も、三菱食品(三菱商事系)、国分+丸紅、日本アクセス+伊藤忠食品(伊藤忠系)とプレイヤーの集約が始まっています。一般的に卸売業にとって激しい市場競争環境になっています。人口減に伴う国内市場の縮小がその一番大きな要因だと筆者は考えています。 ということで、今回のニュースは、一足飛びに「資本提携(合併)」による規模の拡大となっていないところに両社の意図が垣間見られます。国分としては経営の独立性は保持したい。でも競争を勝ち抜くために規模の拡大が必要。そこで、総合商社と提携、ということになりました。 一方で、丸紅はなぜ、業務提携に甘んじたか? 総合商社の資本力で一気にという社内の様子ではないようです。あくまで、社外に開示された財務データから筆者がそのように想像しているだけですが、、、 ■ 業務提携の中身を見てみる 業務提携の内容から、主に資本関係の部分を抜き出したものを、両社のニュースリリースから確認してみます。 ① 国分グループの販売体制の再編による首都圏のエリアカンパニーである国分首都圏株式会社(仮称)に、丸紅が資本参画する ② 丸紅の子会社である山星屋(菓子卸業)に国分が資本参加する ③ 丸紅の子会社であるナックスナカムラ(冷凍食品卸業)に、国分が資本参画する 丸紅は国分という強力なパートナーを確保しましたが、資本的には、投資額を抑えて、既存事業の強化を図る、既存の経営資源の有効活用でシナジーによる収益力拡大を狙っているように見受けられます。ガーと大資本を投入しての大規模なリターンは望まない、という形になっています。それは、国分にとっても、独立性を担保するうえで好都合だったのでしょう。 両社の利害が完全に一致したスキームになっているようです。 ■ リスクアセットから投資拡大の限界値を見る 筆者が繰り返し言及している丸紅の懐事情。それは、 ① これ以上リスクアセットを増やすことはできない ② 食品セグメントへの投資額が相対的に大きく膨らんでいる というものです。 ※ リスクアセットについては、丸紅のこちらのホームページ、または筆者のこちらの記事(住商、資源戦略見直し 中村社長「見通し甘かった」 特別組織で原因究明)でご確認ください。 ◆ リスクアセットについて FY13決算では、 連結資本: 15,322億円 リスクアセット: 11,370億円 リスクバッファ: 3,962億円 なので、 安全余裕率: 3,962億円 ÷ 15,322億円 = 25.9% FY14決算見通しにおける連結資本は、16,500億円(想定)。 上記安全余裕率を維持するためには、 16,500億円 × 25.9% = 4,274億円 だけリスクバッファが必要になります。 FY14で積み増せるリスクアセットの上限は、 16,500億円 - 4,274億円 = 12,226億円 FY13のリスクアセットが、11,370億円なので、FY14に上積みできるリスクアセットの上限は、 12,226億円 - 11,370億円 = 856億円 これだけの余資では、食品セグメントにだけ大型投資はできません。 ■ セグメント別ROIから収益バランスを見る 丸紅のFY13の決算報告資料から抜粋したセグメント別ROIを整理したものをご覧ください。ROIの分子は、親会社説による当期純利益です。丸紅はIFRSを採用していますが。 金属グループは、海外石炭事業における減損損失の影響で、ROIが0.3%減少していますが、それ以外のグループは軒並み、ROIを向上させています。 その中で、商品グループが大幅に投下資本を増やした(約2倍)ものの、ROIは、2.5%から1.3%へ半減しました。皆さんご存知の通り、資産の大幅増はGavilon社の買収資金によるものですが、足下ではまだ収益化が遅れているようです。 こういう状況で、商品セグメントにさらなる大幅な投資は実行が難しいと思います。 今回、主に、丸紅の財務状況から両社の業務提携のスキームの背景を類推してみました。あくまで、状況証拠ですが、皆さんの企業分析に貢献できていれば幸いです。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します