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■ 「目標管理」の進め方

経営管理(基礎編)
前回」までに、以下のことを説明しました。

・「PDCA」は元来、弛(たゆ)まぬ改善の継続方法を意味していた
・「PDCA」の精神を取り入れて「目標管理」を実践するためには「予測」する必要がある

本来、デミング博士は、「PDCA」は「年度目標管理」とは別物といっていましたが、昨今の経営管理の分野では、「年度目標管理」を進めるうえでの精神的支柱として「PDCA」が叫ばれています。もう筆者も大勢に抗うことはしません。でも、どうせ「PDCA」の神輿に乗るなら、もっとスマートにしたい、と考えています。そこで「予測」の重要性を説くわけです。

■ (ケーススタディ)「売上目標管理」で理想像を考えてみる

まず、あなたは、会社の営業本部長として、全社の売上目標管理の責任者となったと仮定します。年度は、4月始まりとします。経理部門はそこそこ優秀で、年度予算、四半期ごとの予算を立案することに協力してくれ、月次決算も翌月の第15営業日までには出してくれるようになりました。
下図は、第1四半期末のタイミングで四半期決算が締まったところです。
経営管理(基礎編)_売上目標管理_月次決算ベース
ここで、筆者の実務経験とコンサル経験から、以下の2つの課題があります。

① 第1四半期の予実差異の金額はわかったが、次のアクションはどうしたらよいのか
② 第2四半期単期(7~9月)の期間目標は、(A)と(B)のいずれが適切なのか

まず①の課題からですが、
翌月の第15営業日に四半期決算が締まるということは、7月の最終週に4~6月の予実差異がはっきりとします。そこから、第1四半期の反省(Check)をして、改善策を検討(Action)して、施策が実行に移せるのは、8月上旬ごろ。その効果が確認できるのは、8月度の月次決算が分かる9月下旬ごろ。6月末までに発生した課題(第1四半期予算の未達原因)への対抗策の効果を検証できるようになるのに、3か月弱を要します。
しかも、6月時点の課題が7月以降も継続しているかどうかはどうしたら分かるのでしょうか? そして、第1四半期の反省から案出された施策がなぜ、7月以降も有効だということが分かるのでしょうか?
次に、②の課題ですが、
年度末の予算を必達すべきとした場合、第2四半期の目標を据え置いたとして、第2四半期単期の目標を(B)にせざるを得ないとしましょう。その時、第2四半期の前目標(A)と新目標(B)の差分はどういう施策によって挽回されるのでしょうか? その挽回策は、よもや、課題①で指摘した、第1四半期の反省から案出された施策ではないですよね。特に、季節性商品(ファッション性の高い衣料、エアコン、アイスクリーム、陳腐化の早いパソコンなど)を扱っている場合は、前四半期の反省が今四半期でも有効とは限りません。そして、9月下旬ごろに第1四半期の反省による施策の結果が出ても、もう第2四半期はほぼ終わっているのです。

■ (ケーススタディ)売上予測をきちんと把握する

次に、四半期決算を締める際に、合わせて、年度末に向けた「予測」もきちんと報告される体制を構築したとしましょう。その場合は、目標管理の状況を表すと下図のようになります。
経営管理(基礎編)_売上目標管理_売上予測ベース
7月下旬の時点で、年度末予算との「予測差異」が明確になります。8月以降、3月までの8か月でできることは何か、考える時間を十分に確保することができます。そして検討結果から生み出された施策を実行する猶予期間も。
前章で頭を悩ませた、第2四半期の目標達成のために、(A)か(B)のいずれを目標にするかと頭を悩ませる時間は無駄ということが分かるでしょう。いずれでもなく、(C)のギャップを如何に最小化するか、あれこれ思案すればよくなるのです。
そして、3か月ごとの営みは、第2四半期末も第3四半期末も繰り返します。その都度、年度末着地点の「予測」を行い、その「予測」と年度末目標のギャップを常に意識して営業方針を軌道修正するなり、新施策を導入すればよろしいのです。

■ 施策単位で考える

「目標管理」をする場合は、定量的な目標値のみで語っても現実味がでてきません。この施策をしたら、コストが○○万円かかるが、売上が○○万円伸びる、あの施策をしたら、人員が○○人だけ必要だが、売上が○○万円増える、○%の値引き販売をしたら、○○万個の数量が増えるのは見込めるが、単価が○○円下落する、という風に、施策と金額効果を一体化(プログラム化)して、施策の出し入れができるようにする必要があります。
所期の想定通りの効果が出ればOKですが、効果なしと判定されれば、さっさと引っ込めて新しい施策を試す、という機動性が大事になってきます。
経営管理(基礎編)_仮説検証型目標管理_施策との連携
上の図の「実績」の箇所は、「予測」に置き換えても同じことです。
それでは、施策と何を結び付ければよいか、これはあくまで筆者の経験からなのですが、販売管理に特化したものを下記に簡単にまとめます。

「施策(プログラム)名」
「必要リソース」:要員、設備、技術など
「コスト」:変動費(販売数量あたりの費用)、固定費(施策全体で把握できる費用)
「効果」:販売金額 = 販売単価 × 販売数量
「所要時間」:効果が出るまでに必要な時間

「効果」の算定式は、既存顧客、新規顧客、店舗面積、販売商品のバリエーションなど、業種・業態ごとに様々です。これらは、「売上方程式」ということで、「管理会計(基礎編)」にて簡単に触れる予定になっています。
以上のように、「予測」ベースで、「施策」の出し入れを試行錯誤しながら「目標」値の達成向けて、打ち手を考えながら結果を並行して求め続けるプロセスによる目標管理のスタイルを、筆者なりの「仮説検証型目標管理」と類型化しています。
ここまで、「仮説検証型目標管理の方法」を説明しました。
経営管理(基礎編)_仮説検証型目標管理の方法

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-e1428166901472.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-150x150.jpg小林 友昭経営管理(基礎編)■ 「目標管理」の進め方 「前回」までに、以下のことを説明しました。 ・「PDCA」は元来、弛(たゆ)まぬ改善の継続方法を意味していた ・「PDCA」の精神を取り入れて「目標管理」を実践するためには「予測」する必要がある 本来、デミング博士は、「PDCA」は「年度目標管理」とは別物といっていましたが、昨今の経営管理の分野では、「年度目標管理」を進めるうえでの精神的支柱として「PDCA」が叫ばれています。もう筆者も大勢に抗うことはしません。でも、どうせ「PDCA」の神輿に乗るなら、もっとスマートにしたい、と考えています。そこで「予測」の重要性を説くわけです。 ■ (ケーススタディ)「売上目標管理」で理想像を考えてみる まず、あなたは、会社の営業本部長として、全社の売上目標管理の責任者となったと仮定します。年度は、4月始まりとします。経理部門はそこそこ優秀で、年度予算、四半期ごとの予算を立案することに協力してくれ、月次決算も翌月の第15営業日までには出してくれるようになりました。 下図は、第1四半期末のタイミングで四半期決算が締まったところです。 ここで、筆者の実務経験とコンサル経験から、以下の2つの課題があります。 ① 第1四半期の予実差異の金額はわかったが、次のアクションはどうしたらよいのか ② 第2四半期単期(7~9月)の期間目標は、(A)と(B)のいずれが適切なのか まず①の課題からですが、 翌月の第15営業日に四半期決算が締まるということは、7月の最終週に4~6月の予実差異がはっきりとします。そこから、第1四半期の反省(Check)をして、改善策を検討(Action)して、施策が実行に移せるのは、8月上旬ごろ。その効果が確認できるのは、8月度の月次決算が分かる9月下旬ごろ。6月末までに発生した課題(第1四半期予算の未達原因)への対抗策の効果を検証できるようになるのに、3か月弱を要します。 しかも、6月時点の課題が7月以降も継続しているかどうかはどうしたら分かるのでしょうか? そして、第1四半期の反省から案出された施策がなぜ、7月以降も有効だということが分かるのでしょうか? 次に、②の課題ですが、 年度末の予算を必達すべきとした場合、第2四半期の目標を据え置いたとして、第2四半期単期の目標を(B)にせざるを得ないとしましょう。その時、第2四半期の前目標(A)と新目標(B)の差分はどういう施策によって挽回されるのでしょうか? その挽回策は、よもや、課題①で指摘した、第1四半期の反省から案出された施策ではないですよね。特に、季節性商品(ファッション性の高い衣料、エアコン、アイスクリーム、陳腐化の早いパソコンなど)を扱っている場合は、前四半期の反省が今四半期でも有効とは限りません。そして、9月下旬ごろに第1四半期の反省による施策の結果が出ても、もう第2四半期はほぼ終わっているのです。 ■ (ケーススタディ)売上予測をきちんと把握する 次に、四半期決算を締める際に、合わせて、年度末に向けた「予測」もきちんと報告される体制を構築したとしましょう。その場合は、目標管理の状況を表すと下図のようになります。 7月下旬の時点で、年度末予算との「予測差異」が明確になります。8月以降、3月までの8か月でできることは何か、考える時間を十分に確保することができます。そして検討結果から生み出された施策を実行する猶予期間も。 前章で頭を悩ませた、第2四半期の目標達成のために、(A)か(B)のいずれを目標にするかと頭を悩ませる時間は無駄ということが分かるでしょう。いずれでもなく、(C)のギャップを如何に最小化するか、あれこれ思案すればよくなるのです。 そして、3か月ごとの営みは、第2四半期末も第3四半期末も繰り返します。その都度、年度末着地点の「予測」を行い、その「予測」と年度末目標のギャップを常に意識して営業方針を軌道修正するなり、新施策を導入すればよろしいのです。 ■ 施策単位で考える 「目標管理」をする場合は、定量的な目標値のみで語っても現実味がでてきません。この施策をしたら、コストが○○万円かかるが、売上が○○万円伸びる、あの施策をしたら、人員が○○人だけ必要だが、売上が○○万円増える、○%の値引き販売をしたら、○○万個の数量が増えるのは見込めるが、単価が○○円下落する、という風に、施策と金額効果を一体化(プログラム化)して、施策の出し入れができるようにする必要があります。 所期の想定通りの効果が出ればOKですが、効果なしと判定されれば、さっさと引っ込めて新しい施策を試す、という機動性が大事になってきます。 上の図の「実績」の箇所は、「予測」に置き換えても同じことです。 それでは、施策と何を結び付ければよいか、これはあくまで筆者の経験からなのですが、販売管理に特化したものを下記に簡単にまとめます。 「施策(プログラム)名」 「必要リソース」:要員、設備、技術など 「コスト」:変動費(販売数量あたりの費用)、固定費(施策全体で把握できる費用) 「効果」:販売金額 = 販売単価 × 販売数量 「所要時間」:効果が出るまでに必要な時間 「効果」の算定式は、既存顧客、新規顧客、店舗面積、販売商品のバリエーションなど、業種・業態ごとに様々です。これらは、「売上方程式」ということで、「管理会計(基礎編)」にて簡単に触れる予定になっています。 以上のように、「予測」ベースで、「施策」の出し入れを試行錯誤しながら「目標」値の達成向けて、打ち手を考えながら結果を並行して求め続けるプロセスによる目標管理のスタイルを、筆者なりの「仮説検証型目標管理」と類型化しています。 ここまで、「仮説検証型目標管理の方法」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します