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■ フレームワークを当てはめてみる

経営戦略(基礎編)
前回」は、「経営戦略自体のフレームワーク」について説明しました。よく経営コンサルタントは、「発言そのものが絵に描いた餅」「フレームワーク論を振りかざすが実際には使えない」という論調で批判の対象になることが多くあります。筆者はせめて、自分の発言には責任を持ちたいと思っているので、ちょうど、資生堂が12/17に、中長期戦略「VISION 2020」を発表されたので、前回説明したフレームワークがどれくらい、実際に使用されているか(逆に、説明したフレームワークの適用度はどれくらいか)を検証してみたいと思います。

2014/12/18付 |日本経済新聞|朝刊
資生堂、ブランド数2割減 中長期戦略、選択と集中 若者狙う 広告費、3年で1000億円追加

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「資生堂は17日、2020年度までの経営戦略を発表した。国内を中心に今後3年で全体の2割のブランドを廃止する一方、広告宣伝などのマーケティング費用を千億円増やして主力ブランドの販売促進に充てる。4月に外部企業出身者として初めて就任した魚谷雅彦社長が最優先のテーマに打ち出したのは、国内事業の立て直しのためにブランドの選択と集中で若者層を取り込むことだった。」
⇒ 資生堂の中長期戦略「VISION 2020」のプレスリリースはこちら
⇒ 資生堂の中長期戦略「VISION 2020」の発表資料はこちら

■ 資生堂をプロファイリングしてみる

策定された経営戦略の中身を見る前に、「企業プロファイリング」を行って、戦略策定の前提条件は明確にされているでしょうか?
今一度、「プロファイリング」の内容を確認しておきます。
経営戦略(基礎編)_ミッション・バリュー・ビジョン
下記は、資生堂の中長期戦略「VISION 2020」からの抜粋になります。
『ミッション』
「2020年をターゲットに、当社が生活者目線を徹底し、アクティブコンシューマーを中心とするお客さまの期待に応え続ける会社になることを目指します。」
※ アクティブコンシューマー:様々なネットワークで広くつながり、多様な役割を能動的に楽しみ、自身の選択眼で消費を行う生活者
『バリュー』
・研究開発・技術力 →
・安心安全・高品質な製品(の提供)→
・グローバルな事業展開 →
・人材・ロイヤリティ →
・おもてなしの心 →
・歴史ある会社・文化への貢献 →(最初に戻る)
『ビジョン』
≪定性目標≫
「「成長エネルギーが充満した会社」「世界中で話題になる会社」「若者があこがれてやまない会社」「若々しさがみなぎる会社」であると、お客さまや社会に評価される会社になることを目指します。」
≪定量目標≫
・売上高:1兆円超(CAGRを5~7%へ)
・営業利益:1000億円超
・ROE:12%以上
・配当性向:40%
※「CAGR:Compound Average Growth Rate(年平均成長率)」
「ミッション」「バリュー」「ビジョン」は、一通り揃っている感じです。

■ 資生堂の中長期戦略のストーリーをフレームワークに従って追ってみる

まず、経営戦略のメタ・フレームワークを再掲します。
経営戦略(基礎編)_経営戦略のかたち?
1.基本戦略
① 事業ドメイン
今回の中計は、大きく事業ドメインを変えることを想定していないせいでしょうか。化粧品、食品・医薬品、サロン向け商品、レストランなど、個別事業に対する言及がありませんでした。
② ブランド
「国内外の約120ブランドのうち国内を中心に3年で28を廃止。20年度までに主力5ブランドで国内売上高の50%、15のブランドで同90%を稼ぐ体制に」
事業ドメインというより、消費財メーカーですので、ブランド中心でビジネスを考える感じになっています。
③ 組織
15年度にもNY、パリ、上海、シンガポールに地域本社設立。地域ごとに強いブランドを育成→地域とブランドのマトリクス管理を実施
「本社と国内販売会社の一体化:本社と国内販売会社の壁を取り払い、一丸となってお客さまへの価値伝達力を高めるため、販売チャネルごとの、プレステージ、コスメティックス、パーソナルケア、デジタルの4つに再編」
2.事業ポートフォリオ戦略
・小規模不採算ブランドの統廃合(28ブランド)
・お客様セグメンテーションによるブランド再配置
① プレステージ事業
② コスメティック事業
③ パーソナルケア事業
④ プロフェッショナル事業
・プロダクトライフサイクルマネジメントの強化
・ブランドM&A
3.事業戦略
① プレステージ事業
・4ブランドの集中育成「SHISEIDO」「ベアミネラル」「CPB」「NARS」
・日本・米州・欧州市場における安定成長とシェア拡大
・免税店販売・中国市場の伸長
② コスメティック事業
・中高価格・高付加価値領域(エリクシール)の中国・アジア市場への投入
・低価格・若年層向け領域(Za)のブランド育成とEC(Electronic Commerce)への対応
③ パーソナルケア事業
・国内のヘア、バス、ボディー、メンズなどのカテゴリー毎のブランド配置の見直し
・(商品機能の)ベネフィットの追求や店頭メンテナンスを強化
④ プロフェッショナル事業
・コアブランド「資生堂プロフェッショナル」「JOICO」の集中育成
・施術者のニーズに応える価値づくりやサロン経営への貢献にも積極的に取り組む
4.機能戦略
① エンジニアリングチェーン戦略
・「研究開発:グループの研究員を5割増の1500人に。売上高に占める研究開発費の比率を1.8%から2.5%に。日本でグローバルイノベーションセンターを設立。現地ニーズ取り込みのため、米・欧・中・亜のリサーチセンターを拡大」
・「マーケティング:3年で計1000億円上積み。14年度見込みの2000億円から順次拡大。広告宣伝やイベントに振り向け。販促物調達の効率化。マーケティングコストの投資対効果の精査」
② バリューチェーン戦略
・「生産:取引先の新規発掘と連携強化。原価企画プロセスの改革」
・「物流:需要予測・計画プロセスの見直し。新規サプライヤーの積極活用」
・「人事:評価・処遇制度の改訂。人員数のコントロール」
・「バックオフィス:地域単位でのシェアードサービス化。IT投資の見直し・最適化(ECへ投資)」
・「財務:ブランドへの投資を優先し、配当性向を安定的に40%に。FCFとCCCに注視し、バランスシートとキャッシュフロー管理を強化」
ざっとフレームワークにしたがって、資生堂の中長期戦略「VISION 2020」を見てきましたが、如何でしたでしょうか?
まあ、綺麗にマッピングされていると思います。
今回の目的は、フレームワークの適合度を測るもので、資生堂の中長期戦略の内容の精査は目的としておりません。ここでは論評は差し控えさせて頂きます。外部から経営者を招聘し、かなりお互いにカルチャーショックがあったと推察します。多少、そういった摩擦が無いと企業経営はよくならないと思います。
収益力回復のために、どうブランドを立て直していくのか、引き続き見ていきたいと思います。
ここまで、「経営戦略のメタ・フレームワーク(3)- 資生堂の中長期戦略」の説明をしました。
経営戦略(基礎編)_経営戦略のメタフレームワーク(3)- 資生堂の中長期戦略

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