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■ コストと人員無駄省く 新手法クウェートから実践

経営管理会計トピック
今回は、人気コラムから、プロジェクトマネジメントにおけるコストの基本的な管理手法について説明します。

2015/2/15|日本経済新聞|朝刊
(私の履歴書)重久吉弘(14)プロジェクト管理 コストと人員無駄省く 新手法クウェートから実践

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「専門的にはなるが、プロジェクトには大きくふたつの契約方式がある。「ランプサム」と「コストプラスフィー」である。ランプサムは金額を固定して発注する契約で、発注側はプロジェクト総額をあらかじめ確定できるので便利だ。エンジニアリング会社にしてみれば設計や工法、工程を工夫し、コストを削減できれば利益を上積みできる利点がある一方、資機材費や人件費が変動する可能性があり、リスクを抱え込むことになる。ランプサムはより高度な管理能力が求められるわけだ。」
「コストプラスフィーはその名の通り、実際にかかったコストにエンジニアリング会社の利益を上乗せして請求する方式。受注企業が損失を出すリスクは低いが利益も限られる。米国のエンジニアリング会社は伝統的にコストプラスフィーを好み、日揮は日本で主流だったランプサムで産油国の国営石油会社のプロジェクトを引き受け、世界的に評価されつつあった。」
実際には、様々な付帯事項があって単純に契約金額と利益ははじき出されないのですが、今回は、極めて基本に忠実に説明を進めます。
付帯事項には、「注文主と施工主間の責任(リスク)分担」「途中での契約見直し条件」などがあります。

■ ランプサム契約(Lump Sum Contract)- 固定金額契約

契約金額として約定された固定金額で契約上の義務(この例ではプラント建設→「フルターンキー」といって運転可能状態にまで持っていくことを約束することが多い)を請け負う契約になります。契約当事者間の合意が無い限り、原則として当初取り決められた契約金額に変更はありません。
経営管理会計トピック_ランプサム契約
最初に契約金額が決まり、プロジェクト進行に伴ってコストが積み上がっていき、最後に利益額が確定します。
この場合、いかに設計・品質を守りながらコストを抑制するか、コストダウンに成功した分だけ、儲けが増える仕組みになっています。そのため、プロジェクト採算が良くなるか否かはプロジェクトマネージャーの腕一本にかかっています。
一方で、施工側は、極端な赤字リスクを負いかねませんので、当初の見積もり契約金額を多めに請求して赤字リスクをヘッジしようとします。注文主から見れば、最初に契約金額が決まって不確実性が低くなることはよいのですが、出銭は増えがちになります。
また、プロジェクト規模が大きくなればなるほど、施工側の資金繰り負担が重くなります(自分でお金を出しながら設計・調達・建設を行い、最後にお金を受け取ることになるので)。そこで、注文主は、総契約金額の一定割合を「前渡金」として拠出することで、施工側の資金繰り(金利)負担を緩和する策が採られることもあります。

■ コストプラスフィー契約(Cost -Reimbursable Contracts)- 実費償還契約

注文主が当該プロジェクトに必要な実費(資材購入費など)、請負人(施工主)の役務・知識・機械設備などに対する報酬を加えて支払契約になります。
細分化すると、施工側の報酬を前に決めるか、後に決めるかで2タイプに分かれます。
経営管理会計トピック_コストプラスフィー契約①_報酬前決め方式
事前に報酬を決めているのに、命名が「コスト+フィー」とはいささかトリッキーかもしれませんが、「総概算見積金額の何%を報酬とする。仮に実費がそれ以上に嵩(かさ)んだとしても報酬額は一定とする」という取り決めをしていれば、事前に利益額が約束されたのと同義になります。
なお、実費請求部分に関しては、費用執行(資材の発注など)前に、注文主から金額的妥当性のインスペクションを取り付けることを義務付けている場合もあります。
経営管理会計トピック_コストプラスフィー契約②_報酬後決め方式
報酬部分が後決めの場合、「かかった実費の何%分を報酬額として上乗せ」という取り決めの元、契約額がプロジェクト完了後にならないと最終的にFixしません。上記の例ですと、実費精算分のコストが合計で「550」なので、これに40%を上乗せすると、
最終契約金額は、
550 × (1 + 40%) = 770 となり、
施工側の報酬分は、
770 - 550 = 220 と計算できます。
こうした「コストプラスフィー契約」が優先的に選択されるケースとしては、下記の通りです。
1.総見積額を事前に正確に推し量ることができない
  ① 資材費の高騰や、為替の変動リスクなど、不測の事態が起きる可能性が高い
  ② 現地のマクロ経済環境から、インフレ率の変動幅がどれくらいになるか読めない
  ③ プロジェクト進行中に、設計変更・工法変更が発生する可能性が高い
2.正確な見積りをはじき出してからプロジェクトを開始する時間的余裕がない
3.注文主が資材発注先の選定や、作業進捗に関与したいという動機がある
このコストプラスフィー契約方式は、注文主の管理工数が大きくなる一方で、施工側のリスクが低く抑えられるので、施工側のマージン率が抑制されがちになります。
これが何を意味するかというと、施工側が、発注先からの仕入額と納品金額の「さや」をとってコストと利益をコントロールする手の内が、注文主に可視化されてしまうという問題があります。場合によっては、注文主が発注先と発注単価を指定してくることもありますから。
(注文主が、資材供給業者と優先的供給契約を締結し、割安な値段での仕入先をプロジェクト開始前から決めている賢いやり方です。こうすると、施工側がいろいろ画策して、実費請求分に自身の儲けを潜りこませようとすることを防ぐことができます)
財務分析だけでなく、こういう契約やプロジェクト管理のルール作りも過去にやっていました。懐かしくなり、ついつい説明を付してしまいました。。。
ご参考にして下さい。

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小林 友昭実務で会計ルールをおさらい■ コストと人員無駄省く 新手法クウェートから実践 今回は、人気コラムから、プロジェクトマネジメントにおけるコストの基本的な管理手法について説明します。 2015/2/15|日本経済新聞|朝刊 (私の履歴書)重久吉弘(14)プロジェクト管理 コストと人員無駄省く 新手法クウェートから実践(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「専門的にはなるが、プロジェクトには大きくふたつの契約方式がある。「ランプサム」と「コストプラスフィー」である。ランプサムは金額を固定して発注する契約で、発注側はプロジェクト総額をあらかじめ確定できるので便利だ。エンジニアリング会社にしてみれば設計や工法、工程を工夫し、コストを削減できれば利益を上積みできる利点がある一方、資機材費や人件費が変動する可能性があり、リスクを抱え込むことになる。ランプサムはより高度な管理能力が求められるわけだ。」 「コストプラスフィーはその名の通り、実際にかかったコストにエンジニアリング会社の利益を上乗せして請求する方式。受注企業が損失を出すリスクは低いが利益も限られる。米国のエンジニアリング会社は伝統的にコストプラスフィーを好み、日揮は日本で主流だったランプサムで産油国の国営石油会社のプロジェクトを引き受け、世界的に評価されつつあった。」 実際には、様々な付帯事項があって単純に契約金額と利益ははじき出されないのですが、今回は、極めて基本に忠実に説明を進めます。 付帯事項には、「注文主と施工主間の責任(リスク)分担」「途中での契約見直し条件」などがあります。 ■ ランプサム契約(Lump Sum Contract)- 固定金額契約契約金額として約定された固定金額で契約上の義務(この例ではプラント建設→「フルターンキー」といって運転可能状態にまで持っていくことを約束することが多い)を請け負う契約になります。契約当事者間の合意が無い限り、原則として当初取り決められた契約金額に変更はありません。 最初に契約金額が決まり、プロジェクト進行に伴ってコストが積み上がっていき、最後に利益額が確定します。 この場合、いかに設計・品質を守りながらコストを抑制するか、コストダウンに成功した分だけ、儲けが増える仕組みになっています。そのため、プロジェクト採算が良くなるか否かはプロジェクトマネージャーの腕一本にかかっています。 一方で、施工側は、極端な赤字リスクを負いかねませんので、当初の見積もり契約金額を多めに請求して赤字リスクをヘッジしようとします。注文主から見れば、最初に契約金額が決まって不確実性が低くなることはよいのですが、出銭は増えがちになります。 また、プロジェクト規模が大きくなればなるほど、施工側の資金繰り負担が重くなります(自分でお金を出しながら設計・調達・建設を行い、最後にお金を受け取ることになるので)。そこで、注文主は、総契約金額の一定割合を「前渡金」として拠出することで、施工側の資金繰り(金利)負担を緩和する策が採られることもあります。 ■ コストプラスフィー契約(Cost -Reimbursable Contracts)- 実費償還契約注文主が当該プロジェクトに必要な実費(資材購入費など)、請負人(施工主)の役務・知識・機械設備などに対する報酬を加えて支払契約になります。 細分化すると、施工側の報酬を前に決めるか、後に決めるかで2タイプに分かれます。 事前に報酬を決めているのに、命名が「コスト+フィー」とはいささかトリッキーかもしれませんが、「総概算見積金額の何%を報酬とする。仮に実費がそれ以上に嵩(かさ)んだとしても報酬額は一定とする」という取り決めをしていれば、事前に利益額が約束されたのと同義になります。 なお、実費請求部分に関しては、費用執行(資材の発注など)前に、注文主から金額的妥当性のインスペクションを取り付けることを義務付けている場合もあります。 報酬部分が後決めの場合、「かかった実費の何%分を報酬額として上乗せ」という取り決めの元、契約額がプロジェクト完了後にならないと最終的にFixしません。上記の例ですと、実費精算分のコストが合計で「550」なので、これに40%を上乗せすると、 最終契約金額は、 550 × (1 + 40%) = 770 となり、 施工側の報酬分は、 770 - 550 = 220 と計算できます。 こうした「コストプラスフィー契約」が優先的に選択されるケースとしては、下記の通りです。 1.総見積額を事前に正確に推し量ることができない   ① 資材費の高騰や、為替の変動リスクなど、不測の事態が起きる可能性が高い   ② 現地のマクロ経済環境から、インフレ率の変動幅がどれくらいになるか読めない   ③ プロジェクト進行中に、設計変更・工法変更が発生する可能性が高い 2.正確な見積りをはじき出してからプロジェクトを開始する時間的余裕がない 3.注文主が資材発注先の選定や、作業進捗に関与したいという動機がある このコストプラスフィー契約方式は、注文主の管理工数が大きくなる一方で、施工側のリスクが低く抑えられるので、施工側のマージン率が抑制されがちになります。 これが何を意味するかというと、施工側が、発注先からの仕入額と納品金額の「さや」をとってコストと利益をコントロールする手の内が、注文主に可視化されてしまうという問題があります。場合によっては、注文主が発注先と発注単価を指定してくることもありますから。 (注文主が、資材供給業者と優先的供給契約を締結し、割安な値段での仕入先をプロジェクト開始前から決めている賢いやり方です。こうすると、施工側がいろいろ画策して、実費請求分に自身の儲けを潜りこませようとすることを防ぐことができます) 財務分析だけでなく、こういう契約やプロジェクト管理のルール作りも過去にやっていました。懐かしくなり、ついつい説明を付してしまいました。。。 ご参考にして下さい。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します