仮想通貨に対する会計ルールを整備 取引が活発な仮想通貨だけを時価評価とする方法に疑問あり!?

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■ 仮想通貨が通貨認定され、いよいよ会計ルールの設定も迫られるまでの経緯

経営管理会計トピック

ビットコインに代表される仮想通貨に対する会計処理について当局がようやく重い腰を上げました。

ここまでの仮想通貨の動きについて下記にまとめます。

2017/2/24付 |日本経済新聞|朝刊 仮想通貨を「貨幣」認定 金融庁、法改正で決済手段に

「金融庁が国内で初めて導入する仮想通貨の法規制案が23日わかった。今までは仮想通貨を単なる「モノ」と見なしたが、法改正で「貨幣の機能」を持つと認定することで、決済手段や法定通貨との交換に使えると正式に位置づける。仮想通貨の取引所は登録制とし、金融庁が監督官庁になって、仮想通貨の取引や技術の発展に目を光らせる。」

こうしたフィンテックの進展の動きを経て、2017年4月1日より、ビットコインをはじめ、仮想通貨が通貨認定され、決済手段として法的に認められました。

2017/3/29付 |日本経済新聞|朝刊 お金革命 先駆企業の挑戦(上) 仮想通貨は経費か資産か 遅れる会計基準

「IT(情報技術)と金融を融合した「フィンテック」が身近な投資の世界に広がり始めた。仮想通貨を「支払い手段」と定めた改正資金決済法の施行を4月1日に控え、「お金革命」に挑む企業とその課題を探る。
「仮想通貨に関する会計上の取り扱いを検討するよう提言します」。日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は28日、「必要最小限の項目」と条件付きながらも審議入りを決めた。大枠の取りまとめまで半年はかかる見込み。」

(下記は同記事添付の「仮想通貨の流通は1兆円規模に」を引用)

20170329_仮想通貨の流通は1兆円規模に_日本経済新聞朝刊

この記事では、ビットコイン、リップル、ライトコインなど、仮想通貨の市場規模は2015年度で1850億円(富士キメラ総研調べ)となり、2020年度には1兆円規模に膨らむとの試算も出ている程。成長著しいモバイル決済でも80億円規模なので、その規模の大きさは目を見張るばかり。

しかし、当時の決済通貨認定がなされる前の時点で、既存の会計ルールに沿えば、仮想通貨の保有者は貸借対照表の「棚卸資産」に、発行者は「負債」にそれぞれ計上するのが妥当だったと思うのですが、新しい経済活動によるものにはすぐに対応する会計基準がなく五里霧中の状態が続いています。保有していても、簿外扱いの企業も多く存在するのが実情でした。

(参考)
⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(前編)
⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(後編)

■ 企業会計基準委員会(ASBJ)の公開草案取りまとめの動向が明らかに

2017/6/22付 |日本経済新聞|朝刊 仮想通貨に会計ルール 9月メド草案 時価評価など議論

「日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は21日、実務対応専門委員会を開き、仮想通貨の会計ルールに関する議論を本格的に始めた。事務局からは仮想通貨を時価で評価する考えなどが提示された。ASBJは議論を重ね、9月をメドに会計ルールの公開草案を発表する考えだ。」

本記事を簡単にまとめると、ASBJ事務局から下記のような方向性が示されたということです。

・取引が活発な仮想通貨については時価評価する
・取引の少ない通貨は取得原価基準に基づいて減損の要否を検討する
・ただし、出席した委員からは「取引量でどう区分けするのか明確にすべきだ」との意見あり
・仮想通貨取引所が顧客から預かっている分については、現金と同様に貸借対照表(B/S)の資産に計上するとともに同額の負債を計上するのが適当との考えが示された

今後、ASBJは、仮想通貨の時価の算定方法や減損の方法、B/Sの勘定項目などについての議論を深め、8~9月に公開草案を発表する段取りで構えています。

■ 企業会計基準委員会(ASBJ)による活発な取引が行われている仮想通貨の認定基準について

取引が活発なものとそうでないものという線引きが曖昧かどうか、まずは実態を見てみたいと思います。

2017/6/25付 |日本経済新聞|朝刊 仮想通貨戦国時代 ビットコイン1強に異変

「仮想通貨の勢力図に異変が起きている。代名詞であるビットコインが仮想通貨全体に占める時価総額は、3月上旬の9割から大きく下がり一時、4割を下回った。代わって存在感を高めているのが「イーサリアム」や「リップル」などの仮想通貨だ。実はビットコインでは分裂騒動が起きている。先行きへの不透明感から乗り換えが活発になっているようだ。」

(下記は同記事添付の「仮想通貨の時価総額の比率」を引用)

20170625_仮想通貨の時価総額の比率_日本経済新聞朝刊

世の中での流通構成比率的には、ビットコイン、イーサリアム、リップル、そしてかろうじてライトコインまでが主要な仮想通貨と呼べそうです。そしてその価格変動性については、

(下記は同記事添付の「仮想通貨の価格」を引用)

20170625_仮想通貨の価格_日本経済新聞朝刊

上位2通貨のビットコインとイーサリアムですが、かなりの価格変動があり、これらがB/Sへの計上にお墨付きが出されれば、逆に時価評価されていないと、投資家への財政状態に関する適時開示性に欠けるのではと思う次第です。(^^)

しかし、流通構成比率で判断することは難しいようです。なぜなら、外貨でも日本企業に馴染の無いアフリカや東欧、中南米の外貨をもし保有していたとしたら、そして東京外為市場で活発な取引が無かったとしたら、、、それでも外貨は外貨。法定通貨として有無をも言わせず時価評価しなければなりません。

■ 基本に戻って、資産の評価方法をおさらいしておこう!

こういうお話をしていて、はっと我に返ると、あまりに基礎的な会計処理や会計基準を明確に記憶していないという焦りを感じる時があります。

● 外貨預金
・入金時:円建ての入金額(=外貨預金額×入金時のレート(HR))を『外貨預金』勘定などを使って記帳
・出金時:円貨での出金額は出金時のレートで換算し、外貨預金勘定の帳簿残高との差額は『為替差損益』として処理
・決算時:決算時のレート(CR)で換算替えを行い、換算差額は『為替差損益』として処理

● トレーディング目的で保有する棚卸資産
「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき、活発な市場が存在することを前提に、市場価格の変動により利益を得ることを目的に保有する棚卸資産をこう呼びます。

トレーディング目的で保有する棚卸資産は、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、市場価格と帳簿価額との差額については、当期の損益(純額で売上高に含めて表示)として処理することになっています。

なおこのような処理や評価の前提として「活発な市場の存在」が認められている必要があり、例えば金取引市場のように、活発な取引が行われるよう整備された、購買市場と販売市場とが区別されていない単一の市場の存在がしていることという条文が明記されています。

仮想通貨において、「取引が活発な仮想通貨」かどうかの判定基準に、この既存の「棚卸資産の評価に関する会計基準」の条文趣旨を援用されるのではないかと推察しています。さすれば、間違いなく、数多くの私的取引所が設定されている上記の各仮想通貨は、間違いなく、時価評価対象となるでしょう。

● 売買目的有価証券の評価
では、同じ金融資産つながりということで、金融商品会計基準に準じるとどういう見方ができるでしょうか?

売買目的有価証券とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券のことを意味します。

・決算時には、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益とする
・決算時に売買目的有価証券を時価評価した時の評価差額は『有価証券評価損益』勘定を用いる
・売買目的有価証券の評価差額は、各株式ごとに計上された評価益と評価損とをすべて相殺し、その純額をもって『有価証券評価損(益)』として営業外費用または営業外収益として計上する

トレーディング目的で保有する棚卸資産との違いは、市場価格と帳簿価額との差額を計上する勘定科目が異なる点です。

うーん、フィンテックに代表されるIT系の物事と会計処理を絡めると、筆者の大好物の投稿素材に仕上がりました。

ご参考にしてください。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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