(インタビュー)株主、家族と似ている 上場で何を伝えますか 糸井重里氏に聞く - ほぼ日刊イトイ新聞を運営する株式会社ほぼ日のジャスダック上場について

Pocket

■ ほぼ日刊イトイ新聞って何?

経営管理会計トピック

コピーライターの糸井重里氏が社長を務める「ほぼ日」が3月16日にジャスダック市場に上場します。ほぼ日は、「ほぼ日刊イトイ新聞」というウェブサイトを運営している会社で、一般的にはECサイトの範疇に入りますが、その運営スタイルは独自で、ほぼ日というジャンルであるとしかいえません。そんな会社・ウェブサイトを運営する糸井氏に上場や会社というものに対する思いを聞いたインタビュー記事がありました。当然、通常の経営者には無い発想の言葉が並んでいましたので、早速本ブログで取り上げた次第です。

2017/3/4付 |日本経済新聞|朝刊 (インタビュー)株主、家族と似ている 上場で何を伝えますか 糸井重里氏に聞く

2017/3/4付 |日本経済新聞|電子版 もうすぐ上場します|ほぼ日・糸井重里社長「やさしく、つよく、おもしろく」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「著名コピーライターの糸井重里氏が社長を務める「ほぼ日」が16日に東京証券取引所のジャスダック市場に上場する。同社はウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営し、「ほぼ日手帳」などのヒット商品を生み出してきた。前身となる個人事務所の設立から38年。糸井氏に、上場にかける思いや上場後の会社が目指す姿を聞いた。」

(下記は同記事添付の糸井重里氏の写真を引用)

20170304_糸井重里_日本経済新聞朝刊

ほぼ日刊イトイ新聞(ECサイト)
株式会社 ほぼ日(コーポレートサイト)

「ほぼ日刊イトイ新聞」は、「ほぼ」といっていますが、発足した1998年6月6日午前0時(バリ島時間)のサイト開設以来、何らかのコンテンツが更新されています。そういう意味では、逆の意味で名は体を表していませんが、、、(^^;) 現在、1日に約150万ページビューに達しており、個人のウェブサイトとしては日本最大規模を誇り、一切の有料広告スペースが無い中で、売上高30億円に達しており、2012年にはポーター賞を受賞しています。

ポーター賞

(参考)
⇒「(経済教室)企業経営 再興の条件(下)「事業機会の裏」に勝機あり 競合の忌避テコに差別化 楠木建・一橋大学教授

 

■ 糸井氏の会社観、ほぼ日の経営方針を聞く

問)ほぼ日はどういう会社ですか?

「ジャンルは小売業。皆さんは僕をコピーライターと思っているが、もう一方の手でやってきたのは人が集う『場』づくりだ。その延長線上にほぼ日がある。場をつくり、育てたら小売業になっていた。人が喜んでくれるのが好きでやっている。小さい会社のわりに喜ばせる人数や影響力が順調に育ってくれた」

ほぼ日のトップページには、「今日のダーリン」という毎日更新される糸井氏のコラムがあって、本当にほぼ毎日更新されています。さて、本ブログもほぼ日次更新を目指しており、2014年9月3日に開設した後、現在のところたった1日だけ更新を逃しています。ただし、記事数は、平均すると3日で4本挙げてきています。当然、このブログ開設の一番大きな理由は、ほぼ日に触発されたことです。筆者も世の中に経営管理・管理会計の輪が広がればいいなと思い、本ブログを立ち上げました。

問)上場してもこれは曲げられないということは?

「うちの行動指針は『やさしく、つよく、おもしろく』。これは変えてはいけない。『やさしく』とは自分にも他人にも優しくすること。何かをする時、優しくないという前提でスタートしてはいけないと思うんですよね。それはまさしく個人だけでなく企業に求められていること。『つよく』は実行力の部分。強くあるなかで自分たちにも筋力がつくし、みんなにも喜んでもらえる。最後の『おもしろく』が結局ミソだと思う。面白くというのは新しい価値を生み出すこと。それをどれだけ生み出せるかが、自分たちの特徴になると思う。そこが枯れたら終わり、ただの会社になると思いますね」

『やさしく』の部分は、糸井氏のビジネスモデルが、顧客と製作者の間の取り持つ場の提供というものからくるもので、人と人のつながりがほぼ日のビジネスを支えている根幹のところです。消費者と生産者が個人としてつながっているのがほぼ日の物販です。『おもしろく』の部分は、本来、糸井氏がクリエーターであるところから。そこはある程度この会社の限界というか前提というか、糸井氏の才能・スキルが会社の成長の限界を最初から示しているのではないかと思います。まあ、どんな新興企業も創業者の強力なリーダーシップや才能で起業され、徐々に規模を大きくして、上場を果たします。そういう意味では、いわゆるメンバの力量に基づく普通の会社に成長できるか今後に期待です。ちなみに、日本電産は、有価証券報告書の事業リスクに永守重信氏のリーダーシップの有無が明確に記載されている大企業ですが。

 

■ 糸井氏に会社上場にかける思いを聞く

問)上場に伴って調達する資金はどう使いますか?

「人を採るのに使いたい。人ひとり雇うのは工場をひとつ建てるのと同じだ。そのくらい一人の人間が果たす役割は大きい。大きな工場をひとつ建てたのと同じぐらいの能力の高い人がこの会社に入ってくれるようなセッティングをするにはすごくコストがかかる」

ズバリ、調達資金で雇用者を増やしたいとのこと。資金調達したお金はストック。従業員へ支払う給与(人件費)はフロー。フローで社外流出するキャッシュは、どこかで回収されてこないと、ストックされたお金は減る一方です。まあ、それは、篠田真貴子CFOがなんとかコントロールするのでしょう!(^^;)

「例えばうちは小売業の印象が強いですが、実はIT(情報技術)の人材がものすごく必要なんです。でも人材を募集すると、ライターやデザインはいくらでも来ますけど、ITのジャンルだと難しいんです。ITの会社としてはあまり期待されてなくて、本気だと思われていないんですよ」

「上場会社という言葉は、人にとっては大きな意味を持ちます。詳しい人はほぼ日に採用されてよかったねと言ってくれるけど、それは世の中の一部。そうじゃないところで、大丈夫なのそんな会社と言う人もいる。個人事務所から上場会社になることで、そうした印象が変わればと思っています」

上場会社になることは、それだけでパブリシティ効果が見込めます。よって、調達資金(ストック)で新規に有為な人材を採用する原資を得るというよりは、知名度向上により、募集人材の底上げ(質・量ともに)を図る効果の方が大きいとにらんでいるものと思います。

問)株式を公開すると経営に対して批判的な意見を持つ投資家と対話する必要もでてきます。そうした点は気にならないですか?

「10割の人が賛成してくれることなんてあるわけがない。ざっくり2割の人がいいねと言ってくれて、反対側にある2割の人は最悪だよと言う。真ん中にある6割の人は、そういえばいいねに近い、くらいで見守ってくれている。そういうふうにものごとは動いていくと思う。あまり満点を取ろうとして、批判する人に対する答えだけ用意していると自分たちらしくなくなってしまうだろうとは思います」

「そっちの方が本当の話し合いができると思うんですよ。1年間は勉強が必要だと思いますが、できたら2年目から株主総会を面白くしたい。例えば株主総会という形をとった文化会のような。もっと話したいという人はこの大学の先生とシンポジウムやりませんかとか、そういうこともできると思うんですよね」

本当にいい意味で肩の力が抜けていますね。いやあ、糸井氏が真面目に「コーポレート・ガバナンス・コード」や「スチュワードシップ・コード」を読み込んだ上での回答では100%違いますよね。だから悪いと言っているのではなくて、社長業を担う人は、こうやって自社が社会全般にどのように受け入れられるか、社会一般の中のでどういう立ち位置なのか、それをしっかり考えていることが重要で、小手先で「コーポレート・ガバナンス・コード」を熟読して、そこにある文言を用いて、市場関係者におもねる発言をするよりはよっぽど好感が持てるというものです。

それで、次の問いに続きます。

 

■ 糸井氏に株主との関係性をさらに突っ込んで聞く

問)上場を通じて世の中にどのようなメッセージを伝えたいですか?

「利益をたくさん出せればうれしいが、それが第一の目標になるとずれていくと思う。最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない。法人も人間なので人格を持っている。人格としてその会社がいいなと思い、そこの商品を使ったり株を買ったりして応援する方向に世の中は変わっていくと思う。お金でできることを否定するつもりはないが、その分量が相対的に下がってきているのは確かだ」

この回答には2つの含意を感じます。ひとつが、ドラッカーと同じ発想で、企業の目的は利益獲得ではなくて、利益は結果としてついてくるもの。顧客の創造こそが企業の使命。糸井氏はドラッカーを当然知っていると思いますが、知らないように、自分の言葉で同様の内容を語っています。

そして記者はたたみかけるのです。それを糸井氏は柔らかく受け止めます。

問)お金だけでなく何で株主に報いるのですか?

「株主は家族と似ている。一緒にこの会社をやっているのと同じような気持ちになってもらいたい。配当や株主優待は当然やるが、何年も株を持っていた人によかったと思ってもらうためにも、株主を意識するのではなく事業を意識する。自分たちのやっていることを社会に問いかけて事業として育てていくことが、最終的には株主に報いることになると思う」

「利益というものを大きく捉えてほしい。お金にもお金そのものであるハードマネーとソフトマネーがある。ソフトマネーとは、例えば同じ野菜でも自分はこの店で買うというときに得られるお金に換算できない満足感。同じように株主でよかったと思ってもらえることができたらいいと思う。逆にそれが要らないという人はしょうがない」

これに対して、日経記者は次のようにまとめています。

○ お固くコーポレート・ガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを持ち出して
「リーマン危機を境に欧米を中心に広がっていた株主の短期的利益の最大化をめざす企業経営のあり方への反省機運が強まった。株主が企業に利益を上げることを求めるのは当然としても、持続的な企業価値の向上という共通の目標をめざして互いに協力しあう姿が企業と株主が構築すべき新たな関係として世界のコンセンサスになりつつある。日本でも導入された企業統治指針や機関投資家の行動指針もその延長線上にある。」

○ 家族という名の共同体・関係性構築
「「株主は家族と似ている」。こう語る糸井重里氏が上場後にめざす企業と株主の関係も、同じ問題意識に沿ったものだ。お金では表せないソフトな企業価値を共有できる株主に株を長く持ってもらい、短期的に利益を上げることにあくせくせず、協力し合いながら長期的に事業を育てていきたい――。家族という言葉に糸井氏はそんなイメージを重ねる。」

糸井氏の知っているだろうくせに、知ら無いふりして自分の言葉で語るステークホルダーとの中長期の共生の中で、共に育てていく企業価値。それは、サプライヤー、従業員そして顧客との良好な関係性が無いと、ゴーイングコンサーンとして企業は永続していきません。その経営学の教科書のど真ん中を素人のふりをして、大いに語って頂いたインタビュー記事でした。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

(Visited 44 times, 1 visits today)
Pocket

地方から奇跡のビジネス革命を起こした女性社長SP 糀屋本店 社長・浅利妙峰 気仙沼ニッティング 社長・御手洗瑞子 2017年3月2日 TX カンブリア宮殿

Pocket

■ “飲む点滴”甘酒ブーム 老化を防ぐ?麹の力とは

コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ

今回の放送は、地方から女性の力で全く新しいビジネスを立ち上げた、そんなお話を2つ。

「塩麹に、甘酒…いま盛り上がる”麹”ブーム、火付け役は、大分の小都市の一人の女性だった!そして、被災地・気仙沼で支援ではない復興プロジェクト。奇跡のニット会社を立ち上げたのは若き女性!地方から革命的なビジネスを起こした二人の女性社長にスポットを当てる。」

20170302_浅利妙峰_御手洗瑞子_カンブリア宮殿

番組公式ホームページより)

2011年に始まった塩麹ブーム。塩麹とは塩と麹で作る発酵調味料。塩代わりに使うと、食材を柔らかくしてくれたり、旨味を引き出してくれたりする。塩麹は2011年に市場に登場(市場規模2億円)して、翌年620億円規模の市場に急拡大した。塩麹ブームは、大分県・佐伯市の糀屋本店(1689年創業、従業員12名、社長・浅利妙峰)から始まった。この地で江戸元禄時代から麹の製造販売を家業としてきた。

そもそも麹とは、米・麦・大豆などを蒸して麹菌と呼ばれるカビを繁殖させたもの。酢・味噌・日本酒・みりん・醤油は、麹の力で発酵された調味料。糀屋本店では、300年続く麹蔵の中で、手作業で種麹から蒸した米で麹を作る。

「麹は手仕事の文化。手を掛け、目を掛け、心を掛け いい麹を作る。子育てと麹育ては一緒。」

昔はどの家でも家庭で味噌や甘酒を作っていて、麹も需要があってどの町にも麹屋があった。しかし、味噌や醤油がスーパーなどで買うものになると、糀屋本店も経営が一気に傾いた。浅利さんは、傾いた家業を何とかしようと、手当たり次第に文献を漁り、人見必大著『本朝食鑑』に出会う。そこに書かれていたのがイワシの調理法。「粕漬けや塩麹漬けもある。」

「麹というものの限界は十分すぎるほど感じていた。味噌・甘酒ではないものを探していた。「麹」という字が入っている。塩は料理に必ず使う。これこそ私が求めていたもの」

浅利さんは塩と麹の配合を何度も試し、半年間試行錯誤を繰り返した。そして見つけたのが、麹3:塩1:水4の黄金比率。2007年にこれを商品化して「塩麹」として発売。そして発売と同時に浅利さんは店先で塩麹の無料講習会を何度も開いた。いろいろなレシピを公開し、4年後の2012年には様々なメディアがこれを取り上げるようになる。塩麹は魔法の調味料と言われ、見事、麹は復活を遂げた。

 

■ 空前の“麹”ブーム 現代に蘇らせた伝説の女将

糀屋本店もかつての賑わいを取り戻し、「商標登録して独占販売した方がいい」とアドバイスを受けたりした。しかし、浅利さんは独占するどころか、あの黄金比率や塩麹を使った料理レシピまで惜しげもなく公開していった。浅利さんの真意とは?

「私は、たまたま見つけただけ。塩麹は、私のものではない。私のものではないのに、“私のもの”と独占するのは、みみっちい。」

その後、大手メーカーを含む様々な会社が塩麹商品をどんどん売り出し、市場が一気に拡大。日本の食卓を変えた。

村上龍の疑問
「麹の需要が減り、社会から必要とされなくなった時代に、見切りをつけず「発見」への思いはいつから?」

浅利社長
「次男が「糀屋を継ぐ」と言い出した。(店が)傾いて底なし沼に落ちかかっていて、その状態で渡すわけにはいかなかった。その頃、大分県の産業科学技術センター(中小企業支援事業)でアドバイザーのさかもとさんから「宝は足元に眠っているかもしれません」と言われた。地域に、5軒は麹屋があった時代もある。昔を振り返れば「本当に宝があるかもしれない」と思い、「本朝食鑑」などで“麹で作る何か”を探し出し、塩麹に行きついた。」

村上龍の疑問
「でも商標登録しなかったんですよね」

浅利社長
「商標登録にはお金がかかる。商標登録するお金もなかった。どうしようかと思っていたら、産業科学技術センターで「商標登録して囲って守る方法と周知の事実にして皆さんに広める方法がある」と言われ、ピンときて、「みんなに知らせよう」と決め、ブログでも発信した。誰かから何かを言われても、「私は2006年11月から塩麹を使い始めた」という足跡を残していった。」

2006年、まだ日本にfacebookも無かった頃に、既にブログを始めていた所に村上氏が着目。「進取の気性がおありなんですね」「そう、新しいものが好き!」

独占しない代わりに、塩麹マーケットは爆発的に広がった。

筆者の感想)
こういう手法は「オープンイノベーション戦略」のひとつといえます。トヨタも水素燃料電池車の普及のためにあれこれ策をめぐらしているのを思い出しました。

(参考)
⇒「オープンイノベーション、脱自前主義ビジネスモデルのメリットとは? -(前編) 知財権のオープン&クローズ戦略の復習。トヨタと日立の事例から

浅利社長
「皆さんが協力してくれたから塩麹は羽をつけて飛んでいった。ひとつの流行で終わらず、ひとつの調味料のポジションを獲得できた。」
「手を開けていると拾うことができるが握っていると、次のものは握れない。一番欲張りなのは私です。」

今日はこの一言を紹介したくてブログで取り上げたようなものです!

糀屋本店 糀・麹 塩糀 甘酒・甘糀 糀の調味料販売・通販専門店

 

■ 心温まる感動ニット 200人待ち!気仙沼の奇跡

2011年に東日本大震災でおおきな被害を受けた気仙沼。6年経った今では日常を取り戻しつつある。そんな気仙沼に、丘の上に立つ新名所が誕生している。手編みニットの会社。全国から若者が集まり、手編みニットを試着しては購入していく。ニット商品には手編みしてくれた製作者の名前と似顔絵イラストが入ったタグがひとつずつ取り付けられている。手編みしているのは地元のお母さんたち。

セーターが一着7万円以上する価格帯のもの。そういう手編みニットを求める若者たちの心境は、
「1年後のことも考えて購入する」
「大量生産のものしか持っていなくて、一着ぐらい、誰が作ったか分かるものがあってもいいかな」

お客様一人一人の体形に合わせて編む完全オーダーメイドのカーディガンたち。常に200人待ち状態。こうした手編みニットを提供している会社の名は、気仙沼ニッティング(2012年6月創業、従業員2人、編み手60人)。この会社の創業者:御手洗瑞子さんの経歴は異色だ。2008年、東京大学経済学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。2010年、ブータンで首相フェロー就任、産業育成に携わる。しかし、2011年に東日本大震災が起き、

「今は、日本人として日本に帰って、東北の復興のための仕事をするべき時ではないかと。一時的な支援ではなく、中長期的に自らの力で生活していけるようサポートする。そのための種をまいて丁寧に育てる。そういう仕事が必要ではないか。」

きっかけは、ブータン滞在中に知り合った、コピーライターの糸井重里さん。地元復興支援のための手編みニット会社の経営をしないかと声をかけらえた。

糸井氏
「実際に(気仙沼に)住まないとできない。気仙沼に住むことを前提にして、経営や、無理難題が山積みされる時に何とかしていく人が必要だった。あのブータンでやってこられたのだから大丈夫だろうと。逃げ出さないことが一番重要だった。」

5年間に気仙沼に乗り込み、初年度から黒字。市へも納税を果たしている。

 

■ 奇跡のニット会社を立ち上げたのは若き女性!

御手洗さんが気仙沼に移住を決めた時は、賃貸アパートなどなく、今に至るまで大家族のご家庭に下宿している。最初に直面した課題は、編み手探し。無料の手袋手編み教室を何度か開催し、編み物好きで信頼のおける地元のお母さんたちを探した。

とある編み手のお母さんの言葉。
「針ひとつで復興に貢献できるのならと参加した。一日中ぼうーっとしているわけにもいかないし。何か集中できることがあればいいかなと。」

手編みニットのデザインは、人気編み物作家:三國万里子さん作。アイルランドの港町アランで生まれたしっかりとしたデザインのアランセーターをお手本に。同じ漁港の町¥高級手編みニットの産地モデルをちなんで、世界的な高級ニットブランドを目指す。さらに、立体的な編み目をつくるオリジナルの糸も、企業と協力して開発した。

価格は先に15万円と決めた。編み手への十分な報酬の確保と、それに見合う価値となる商品にするための品質の追求を両立するために。

編み手もそれに報いようと、頑張って手編みを進める。時には、2年間待たせているお客と手紙のやり取りをしながら。

村上龍の疑問
「“200人待ち”の客は何を得たいのか?」

御手洗さん
「物質だけではなくトータルの経験やうれしさがあってこそ注文してもらえる。もうすぐ編み上がりますというお手紙を受け取ったお客様が、「受け取れるのがうれしいけれど、待つ楽しみが終わってしまうのが寂しい」とおっしゃるお客様が多いんです。待っている時間そのものが楽しいのだと思う。」

筆者の感想)
注文を待っている間に製作者と顧客の間に関係性が生まれている。そういうビジネスなら多少面倒なことがあっても頑張りがいがあるじゃないですか。
(当然、筆者の今の仕事(お客様との関係)も、この通りですよ!(^^;))

小池さんの問いかけ
「検品している姿がかっこよかった。スパッと手直しを指示していて。」

御手洗さん
「あれも最初はいろいろ考えて。「ほどいてください」と言うのは大変。ちょっと違うんですよね、というのを遠回しに言えば言うほど、相手が傷つくことに気付いた。なるべく、スパンと明るく、「残念」「ですよね」と終えられた方が。」

村上龍の視点
「被災地以外にも有効なビジネスモデルの要素が詰まっているような気がする。」

御手洗さん
「やはり、2012年の東北は、復興支援の文脈で売られているものが多かった。そういうものは、震災後、一時的には必要なものだが、持続する営みではない。気仙沼ニッティングは、一時的な支援ではなく、この地で続く会社を目指している。最初、編み手さんを誘った時、「是非やりたいんだけど、介護しなくてはならず、毎日は出かけられない」と聞いた。働き方をつくれば、この人も働けるんだと、人の話を聞きながら、一から会社の形をつくっていった。だからこそ、土地にあった形になっているし、他の地域に生きることは多いと思う。」

気仙沼ニッティング
Kesennuma Knitting (気仙沼ニッティング) – Facebook
ほぼ日刊イトイ新聞 – 気仙沼ニッティング独立のご案内

 

■ 二人の経営者が考えるビジョンとは?

浅利さん
「麹の力で世界中の人のおなかを元気にして幸せにしたい。戦争など争いで世界が平和になっていくことはないけれど、食べ物がおいしくてみんなが笑顔になればきっと争いも消えていく。ノーベル平和賞をいただけそう(笑)」

御手洗さん
「お客と働く人を同時に幸せにしている会社をつくりたい。お客の幸せを考え、働く人にしわ寄せがいく、働く人を考えて、お客にしわ寄せがいくと、トータルでその会社は人の幸せを増やしていない。会社が人の幸せの総量を上げていくことができる。」

 

■ 編集後記

「糀」も「編み物」も、昔からあった。古来から必要とされ、親しまれてきたものだ。浅利さんも、御手洗さんも、それらを活かし、地方で成功し、地域再生にも貢献している。だが、資源の再発見と活用は簡単ではない。知識と体験を総動員する必要があり、創り出そうとしている商品には需要があるはずだという予測がなければならない。だが、予測は、確信とは違う。最終的には自らの直感を信じるしかない。お二人は、危機感を失わず、考え抜き、協力者との信頼を築くことで、自身の直感の正しさを証明した。挑戦する女性は、美しい。

予測から確信へ
村上龍

—————————————
カンブリア宮殿 番組ホームページ2017年3月2日放送分はこちら

(Visited 87 times, 1 visits today)
Pocket

そうか、君は課長になったのか。(15)部下の自己実現を応援しなさい - 人はパンのみで生きるにあらず

Pocket

■ マズローの段階欲求説に従って考えると?

コンサルタントのつぶやき

このシリーズは、現在、東レ経営研究所特別顧問:佐々木常夫さんの16万部を超える「課長本」の決定版の1冊から、私が感銘を受けた言葉をご紹介(時には、私のつまらないコメント付きで)するものです。

佐々木さんのご紹介:オフィシャルサイト

マズローの欲求5段階説とは、「人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が充たされると、より高次の階層の欲求を欲する」というものです。

① 生理的欲求
生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、飲みたい、寝たいなど)

② 安全欲求
危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)

③ 社会的欲求(帰属欲求)
特定の集団に属したい、仲間が欲しい

④ 尊厳欲求(承認欲求)
他者から認められたい、尊敬されたい

⑤ 自己実現欲求
自分の能力を引き出して創造的活動がしたい

マズローの欲求5段階説 |モチベーション向上の法則 より
(FitLife Lab 代表者:河野裕之)

佐々木さんにとって、第5段階の「自己実現欲求」を満たすものが仕事でした。佐々木さんは、ご家族の障害と病気という問題を抱えながら、ビジネスパーソンとして人並み以上の業績を残されてきましたが、かえって、ご家庭の問題で苦しんでいる時に、佐々木さんを支えていたのが仕事から来る達成感だったそうです。会社でハッピーな時間を過ごせたから、帰宅後はご家族の世話も苦にせずできたというのです。

本書より。

私は、家族の障害と病気という問題を抱えていましたので、仕事と家庭の両立に腐心してきました。私にとって家族はもちろん大事ですが、同時に仕事も重要な位置づけにありました。なぜなら、仕事はその結果が形になって表れるからです。「これは俺がつくった工場」「あれは俺が構築したシステム」などと自分が投入した努力が形として残るのです。
私のように自己実現欲求の強い人間には、これが面白くて仕方がないのです。もちろん、仕事を成就させる過程では、多くの困難やつらいことがありますが、それが完成した時の喜びはなにものにも代えがたいものがあります。

佐々木さんご自身が仕事にやりがいを感じることで、厳しい人生を生き抜く力を得られたと言います。それだからこそ、佐々木さんは部下にも仕事を通じて自己実現を達成してほしいと願い、本気で部下を育成することに心を砕いできました。

佐々木さんの言葉は次のように続きます。

部下一人ひとりが会社のなかで、「これを成し遂げたい」という志をもつことを奨励し、その実現のために叱咤激励してきたのです。

部下一人ひとりが熱い情熱をもって仕事に取り組むようになって、その総力として強いチームができるのです。

間違いなく、佐々木さんの人間観は、「マクレガーのX理論Y理論」に基づくと、「Y理論」になります。魅力ある目標と責任を与え続けることによって、従業員を動かしていく、「機会を与える」マネジメント手法を採るものです。

軍隊のように訓令宜しく、リーダーの命令に従って黙々と与えられたミッションをこなしなさい、という仕事のさせ方をしていては、そのリーダーの器以上の業績を残すことはできません。所詮、リーダー本人の考え方、知識、やり方を、複数人でやるだけで、量的拡大にすぎません。仕事とは、ある程度までは量的拡大で業績も比例的に拡大させることができますが、それではいつか逓減していき、閾値を超えたところで、逆に生産性が下がっていきます。

「セレンディピティ(serendipity)」
素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ること(WiKiより)

部下には、リーダーがリカバリできる範囲内で最大の自由裁量を持たせ、それぞれの才覚で仕事をやってもらう。リーダーが思いつかないこと、リーダーの持前の経験と部下の新しいチャレンジが、アウフヘーベンされて、よりよい改善策、あるいは思いがけない発明がもたらされるものと私自身が信じています。

それゆえ、私がマネジメントを任されているプロジェクトにおいて、できる限り、メンバ(部下)の自由裁量で仕事ができるように工夫しています。その期待に若手コンサルタント達よ、ちゃんと答えてね!(^^;)

(Visited 31 times, 1 visits today)
Pocket

そうか、君は課長になったのか。(14)部下は与えられたもの - 全員の戦力を最大に高めよ

Pocket

■ 2:6:2の法則の中で課長ができることとは?

コンサルタントのつぶやき

このシリーズは、現在、東レ経営研究所特別顧問:佐々木常夫さんの16万部を超える「課長本」の決定版の1冊から、私が感銘を受けた言葉をご紹介(時には、私のつまらないコメント付きで)するものです。

佐々木さんのご紹介:オフィシャルサイト

部下は会社から課長に与えられたものです。天の采配です。その与えられた戦力を最大限生かして、いかに多くの仕事を上げるかが課長に課せられた使命といえます。その中で、よく言われるのが、「2:6:2の原則」です。

(参考)
⇒「怠けアリにも働きあり? 働き者休むと代わりに労働 北大チーム発表  -2:6:2の法則をご存知ですか?

組織の中には優秀な2割、凡庸な6割、怠惰な2割の構成員がいて、怠惰な2割を排除しても、残りの構成員が再び、2:6:2の割合に分かれるというやつです。課長の使命は、この集団全体の業務処理能力を高め、結果を極大化するところにあります。ところが、これを勘違いして、優秀な2割に仕事を集中させて、2割をフル稼働状態にすることで成果を出そうとします。しかしこの方法では、

1)チーム全体が底上げされないので、期待したほど成果が上がらない
2)優秀な2割が疲弊して、かえって生産性が落ちる

というデメリットの発生を避けることができません。むしろ、優秀な2割に仕事を集中させないような配慮の方を課長は意識的にやらないといけないのです。

 

■ 2:6:2の法則における佐々木さんの処方箋とは?

佐々木さんの対処法は簡潔明瞭です。

1)粘り強く指導することによって、仕事の遅い人、要領の悪い人の効率を上げることでチーム全体の業務処理能力を向上させる
2)課長が直接指導できないなら、優秀な2割を教育係にして、手が回らない部下の面倒を見てもらうようにする

佐々木さんのこの方針の根っこには、次のような信念が存在します。

1)そもそも、人間の能力にはそれほど大きな差があるわけではない
2)一般の会社での現場業務というものは、凡人にできないほど難しいものではない
3)ちょっと頭を使えばできる業務について、できる・できないと評価の差をつける程の必要性はない

一般の会社の大方の作業は、ちょっとした工夫次第で誰でもこなすことができます。確かに業務の出来栄えで若干の差が出ることもあるでしょうが、それが会社の方向を間違え指す程の大きな差に果たしてなるものでしょうか? にもかからず、小さな差を見つけては、針小棒大にあれこれと批判や非難をすることが、組織とその部下の成長のためになるとは決して思えません。

佐々木さんによると、むしろ重要なのは個々人のモチベーションを上げることだそうです。つまり、

仕事の結果に差をもたらすのは、能力というよりは熱意だからです。

 

■ 本当の育成はスキル向上かモチベーションの向上か?

この文章に激しく同意します。確かに、一見、経営コンサルタントという小難しく見える仕事を生業としていますが、主な領域は、経営管理の仕組み構築です。データサイエンティストのように統計解析のツールを駆使するのでもなく、高等数学を使うわけでもありません。たかが、四則演算だけで、営業や生産現場のKPIを計算し、トップマネジメントの経営判断の材料を提供します。そこでは、粘り強く担当者に真の経営課題を聞きだし、どういう風に課題解決施策を編み出していくのが早道か、そして解決施策を実行してどれだけの効果が見込めるか、地道にヒアリングして、仮説を提示し、実際にデータを検証して差異を分析し、再び仮説を練り直す、ひたすら泥臭く、粘り強い作業がもたらす効能だけを信じて仕事をしています。

そこには、ちょっと聞きかじったり、教科書を読んで分かった風なアイデアを振りまわしても、どうにもならない現場ならではの現実が実在します。泥臭く、ひとつずつ仮説を検証して、間違いを潰していく以外に成功への早道はない、と断言します。そこでは、もはや高いスキルとか、専門性の高い経験値とかは、あくまで、あったらいいな、程度のもので、最後はやる気と根性と、指導者の正しい方向付けの3つだけが、成功を保証するものだと信じています。

どうにも説教臭くて、申し訳ありません。m(_ _)m

(Visited 33 times, 1 visits today)
Pocket

そうか、君は課長になったのか。(13)君は、部下の人生にコミットする - 手塩にかけて育てなさい

Pocket

■ 課長だけが、部下の成長にコミットできる職位である

コンサルタントのつぶやき

このシリーズは、現在、東レ経営研究所特別顧問:佐々木常夫さんの16万部を超える「課長本」の決定版の1冊から、私が感銘を受けた言葉をご紹介(時には、私のつまらないコメント付きで)するものです。

佐々木さんのご紹介:オフィシャルサイト

課長には部下を育成する責務が課せられています。本書では、部下の育成について次のようにまとめています。

1)部下本人にも無自覚かもしれない潜在的な能力を見出してあげる
2)部下の能力を伸ばして、組織業績に貢献させる
3)部下本人に自信と実力を付けさせる
4)部下に対する周囲の信頼を勝ち取らせる

この4点セットが全て成立して初めて、部下を育成したと言えます。伸び盛りの部下が一番の成長期に、課長として朝から晩まで、仕事時間の間、一緒に働き、彼らはあなたというお手本(反面教師かもしれませんが)を見てビジネスパーソンとして成長します。つまり、課長は部下の成長にコミットする力を持っている、部下一人一人のその後の人生を左右するかもしれない力を持っているのです。

 

■ 部下の育成は大変だけど、課長には何も見返りはないのか?

部下一人一人の仕事にコミットし、指導し、フォローするのは大変手がかかる大仕事です。課長自身がこなさなくてはならないタスクを持ちながら、一方で部下の面倒も見なくてはなりません。それぞれのメンバの力量、やる気、性格、得意分野もバラバラなのに、課長一人で個々人にきめ細かく対応していくのは大変骨の折れる作業です。課長が自分でやった方が早く手仕舞える仕事も多々ありますし、実際に自分でやりたくなる誘惑にかられることもままあるでしょう。また、中でもできる部下に重要な仕事を重点的に振ってしまうことも考えられます。

しかし、課長自ら手を動かして仕事を手仕舞ったり、できる部下にだけ仕事を任せたりしていては、課長となって最高の喜び、あれこれ面倒を見た部下が成長する姿を目にすることを、自らの意思で放棄してしまうことになります。会社から給料をもらいながら、部下の成長を見守ることができるなんて、大層素晴らしい経験ではありませんか。

さらに、手塩にかけた部下は、課長のことを好きになる可能性がより大きくなります。ひょっとしたら、尊敬してくれるようになったり、一生もののお付き合い、家族ぐるみのお付き合いに発展するかもしれません。仕事を離れても、より良い人間関係を築けることは、人生の幸福感もより大きくなるというものです。

 

■ 部下の育成において気をつけることとは?

部下の育成に心を砕いて指導して手をかければかけるほど、思うように部下が育たないジレンマに陥るかもしれません。一般論として理由ははっきりしています。それは、一般の会社の仕事は大抵は平凡なものだからです。その部下でないときっちりこなせない仕事というものはそうざらにあるものではないからです。それゆえ、ありきたりの仕事を与えただけで、部下が意欲を示して与えられた仕事に邁進し、仕事を通して自分を成長させようとする意欲を引き出すことは大層骨が折れます。

佐々木さんによると、その辺の課長が留意すべき点は次の通りです。

1)たとえ平凡な仕事でも、その仕事が何のために存在するものなのか、存在理由を明確に示してあげる
2)人は誰でも誰かに貢献したい気持ちを持っているので、その仕事が誰のためのものかを明確に伝えてあげる
3)何のための仕事で、どの作業水準までやるべき仕事なのか、ゴール設定をしてあげる

この3つを明確にしてあげないと、部下は達成感を感じることもできませんし、仕事が不首尾に終わった時に反省もできなくなります。

部下を育成することは課長の仕事。
そのために、部下にやりがいを与えるのも課長の仕事。
そして、部下が成長するのを見届ける(見守る)のも課長の仕事。

ちょっとだけ、部下が間違ったら気づかせてあげて、間違った方向に傾いたら的確な方向に軌道修正のきっかけを与えてあげて、自らの成長を陰ながら助けてあげるのが課長の指導方法の本道です(本当は課長ならその部下の全ての仕事の状況を俯瞰的に眺めることができ、全体観を見通せていることが前提で)。(^^;)

(Visited 37 times, 1 visits today)
Pocket

そうか、君は課長になったのか。(12)部下の仕事に手をつっこむ - 君は仕事の発注者だ

Pocket

■ 課長だけが、部下の仕事に直接口を出せる職位である

コンサルタントのつぶやき

このシリーズは、現在、東レ経営研究所特別顧問:佐々木常夫さんの16万部を超える「課長本」の決定版の1冊から、私が感銘を受けた言葉をご紹介(時には、私のつまらないコメント付きで)するものです。

佐々木さんのご紹介:オフィシャルサイト

この節は、課長という職位とは何かを考えさせる大事なものです。部長や担当役員、社長にはできずに、課長でないとできないこととは一体なんだと思われますか?

それは部下(課員)の仕事に直接手を突っ込むことができる職位であるということです。
「今週中にお得意様のA社とB社をキチンと訪問してくるように。」
「この報告書のこの箇所はもっと簡潔かつ具体的に記述するように。」
「商品企画会議にかける案件を来週までに3つに絞っておくように」

それ以上の職位の方は、「経営方針」「基本的な考え方」を伝達できるにすぎません。課長だけが、部下の仕事に対して直接口を出すことが許されています。その時、大事なのが、
① その業務の完成度(要求される作業品質水準)を明確に伝えること
② その業務の納期を明確に設定すること

もし、上司であるあなたがこの2つを具体的に指示しないと、部下の方が自分で勝手に決めてしまいます。そのようなやり方で、課内の仕事が効率的にこなせるわけがないのです。そのことは肝に銘じておく必要があります。

 

■ 佐々木さん、とっておきの方法とは?

本書より、佐々木さんが実践したやり方を以下にまとめます。

1)昨年の「業務報告書」を元に部下全員の仕事の棚卸しを行う
2)業務ごとに重要度のランキング(5段階)をつける(いわゆる業務仕分け)
3)ランキングに応じて、仕事の優先順位を課内に公表する
4)課員ひとりひとりに業務着手前に必ず「作業計画書」を提出させる
5)「作業計画書」を目の前に、部下ひとりひとりと個別面談し、デッドラインと作業品質についてすり合わせを行う

こうして、佐々木さんの経験から、3割は業務を効率化できるそうです。佐々木さんによると、一般の会社で真に重要な仕事は20%程度だそうで、重要度ランキングで「5」が付く仕事はほとんど無いそうです。

つまり、
「課長は部下に仕事を発注し、部下は課長から仕事を受注する」
というスタイルというわけです。

さらに、佐々木さんが大事にしているポイントを2つ、本書より引用させて頂きます。

(1)本当に大切な仕事を見極めるために

上司と部下が、その業務の重要度、納期を議論することによって、部下はその業務が会社や課にとってどれほどのものなのかを認識できるようになります。

これは、課長だけが直接部下の仕事に手を突っ込むことが許されている特別な職位にあるからこそ見込める効果です。

(2)部下の真剣さを引き出すために

「礼儀」をもって、手をつっこまなければならないということです。だれだって、自分がやっている仕事について「これは、重要な仕事ではないから、もっと適当にやってくれてかまわない」などと言われたら、やる気を失います。だから、「君には、もっと大事な仕事に力を注いでほしいから、この仕事はもう少し簡単に済ませても構わない」などと言い方に工夫をする必要があります。

仕事をやる生身の人間はAIではないので、2つの「かんじょう」を持ち合わせています。
「感情」(こいつのために仕事をやりたくないなあ)
「勘定」(こいつのために仕事をやっても得なことはないなあ)

部下を持つ課長は、この2つの「かんじょう」に常に留意しておくべきです。
(小職がそれを実践できているかはまた別の問題ですが。。。)(^^;)

 

■ コンサルタントである小職のとっておきの方法とは?

小職はコンサルタントとして、プロジェクトベースで仕事をするのが常態なので、必ずWBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー)を作成してからプロジェクトを始めます。ですから、自分と部下がやる仕事には全て、
・納期
・成果物
・責任者(担当者)
が必ず定義されています。

プロジェクトの性質から、前もってWBSを作成するのが難しい、またはWBSを作成しても、状況が不確実性の固まりで、修正に次ぐ修正でWBSを見直すのが億劫・無駄だ、と部下から言われることもあります。それでも、部下からの批判をよそに、必ず程度の差こそあれ、WBSやタスク管理表を100%作成することに決めています。

プロジェクトが迷走して、オリジナルのWBSがめちゃくちゃに修正されて、原型をとどめ無くなってもいいじゃありませんか。むしろ、そのことを歓迎すらします。なぜなら、リスケジュール、方針変更、仕事量の見直し、担当者の配役の見直しなどが、可視化されるからです。

人間ってね、具体的に目の前に提示された具象的なものがないと、本当の判断はできないのですよ。むしろ、目標と実績の差分管理がマネージャーの仕事の本分と思うのですが、皆さんはいかがでしょうか?

(Visited 38 times, 1 visits today)
Pocket

原価計算の歴史 - 経営課題の変遷と原価計算技法・目的の対応について

Pocket

■ 「ものづくり」の歴史と共に誕生・発達してきた原価計算

原価計算は、それを利用する企業の様々な原価観に基づいて、誕生・進化を遂げてきました。その道の大家、アドルフ・マッツは、「原価計算は、目的達成のための手段であり、それ自体、何らの目的も有しない」という言葉を残しています。われわれ、原価計算を学び、企業会計において実践する身としては、その原価計算をなぜやるのか、『目的』の理解にこそ意味があると心得るべきです。

それでは、原価計算の変遷を下記チャートに簡単にまとめてみました。

原価計算(入門編)_原価計算の歴史

チャートを概覧いただき、お分かりになったと思いますが、原価計算には各種技法が存在しますが、そのいずれも、その時々の経済環境に対応するため、企業経営目的を達成するために編み出されたものです。それゆえ、「●●原価計算をやれば、原価情報を欲する全ての利用者の欲求を満たすことができる」というのは幻想にすぎないことが理解して頂けると思います。では、次章からその300年足らずの短い?歴史の糸を手繰っていきましょう。

 

■ 「産業革命」が原価計算を生み出した

家内制手工業から産業革命を経てしばらくは、各企業が製造・販売する製品の売価について、取引形態は個別受注生産方式が主流であったことから、その企業独自の価格決定の裁量がまだ大きいままでした。同時に、ミクロ経済学的に、当時の市場経済の状況から、

供給 ≦ 需要 (万年的な物不足)

な供給者優位の市場だったため、経営者は、原価に一定のマージン(利益)を加算することで価格を決定する「コストプラス法」で値決めすることができました。それゆえ、当時の原価計算に課せられた使命は、売価決定のための正確なコスト積上げ計算だったのです。

当時の原価概念・利益概念は、

製造原価 + 適正利益 = 顧客提供売価

 

■ 見込生産方式による規格品の大量生産が原価管理を養成した

工場制工業による大量生産が普及し、生産形態が受注生産から見込生産に徐々にシフトしていくと、各企業は、プライスメイカーからプライステイカーに位置づけが変わり、独自の価格決定が困難になりました。そこで、市場競争で決まった売価を所与の前提として、その市場価格の中からより大きい利益を獲得するため、または市場から退出せずに済むように、コストダウンすることが求められました。

ここにきて、原価・利益概念は、

獲得利益 = 市場価格(売価) - 作り込み原価 

では、原価管理を実践するために必要な原価計算技法とはなんでしょうか?

工程別原価計算
原価情報を原価管理に役立てるためには、原価の発生点において、原価を原価責任者別に把握されている必要があります。どこで発生した誰が管理している原価がどれくらいかを知るために、部門別・工程別の原価能率を図る必要があったのです。それは、徐々に複雑になっていった製造工程の多層化に伴うものでもありました。

② 標準原価計算
従来は、価格、能率、操業度など、原価に影響を及ぼす偶然的な変化に左右されて発生した歴史的原価(実際原価)を積み上げて、結果としての原価情報を積み上げていました。それでは、目標利益を獲得するための目標原価を達成するには神に幸運を祈るしかありません。そこで、当時一世を風靡したテーラーの科学的管理法に基づいた目標原価を、科学的・統計的に算出して「標準原価」と名付け、「実際原価」との差分を如何に詰めるかを、製造現場で追求する原価計算管理手法が一般的になりました。

③ 営業費計算
当初、原価管理はあくまで製造現場における製造原価の範疇のものでした。しかし、どんどん価格競争が激化し、製造原価を詰めていっても、販管費が水膨れのまま放置されていては、企業が当初目論んでいた利益を獲得することはできません。そこで、原価管理対象が製造原価から販管費を含む総原価に守備範囲を広げていくことになりました。ここで、営業費については、「注文獲得費」「注文履行費」などの機能費の分析が行われるようになりました。それゆえ、『原価計算基準』が対象とする原価概念は、販管費を含む「総原価」となっているのです。

 

■ 制度としての原価計算の誕生

生産形態が個別受注生産から大量見込生産へシフトし、原価計算目的も価格決定から原価管理にシフトしていきましたが、あくまでそれらの原価情報は生産現場で用いられるものでした。企業会計のディスクロージャー制度の根幹である複式簿記機構の埒外で管理されている数字だったのです。19世紀後半から20世紀前半にかけて、公認会計士による会計監査の重要性が認識され、一般会計の元帳によって統制され、その発生額の信憑性、売上原価と期末棚卸資産の区分について、信憑性のある会計数値として、財務諸表の一部に組み込まれることになりました。これがいわゆる「原価計算制度」の誕生というわけです。

ここでひとつ、大きな論点が生じます。元帳に基づいて統制される原価情報は、勘定連絡図に沿って、転がし計算による原価計算手続を厳守することを課せられます。費目別計算→部門別計算→製品別計算と、歴史的原価を順番に転がして計算していては、原価計算にかかる時間が膨大になり、決算発表に間に合わない恐れがあります。そこで、「原価標準」を用いて、サクッと原価計算をしてしまうという考え方も登場してきました。

しかし、「取得原価主義」「全部原価計算」の厳格なルールに基づいた発生主義会計の考え方に依拠すると、不可避的に発生する原価差額も何らかの処置で売上原価と期末棚卸価額に振り分ける必要があります。それゆえ、『原価計算基準』には、原価差額の取り扱いが含まれているのです。

 

■ 利益管理と予算管理のための原価計算

1929年、ニューヨーク州ウォール街で起きた株価大暴落を契機に世界大恐慌が起こり、各企業の経営者は、自社内における遊休設備の稼働率管理に頭を悩ませます。世界中で一瞬のうちに需要が蒸発し、そこかしこに遊休資産が溢れていました。世界中の企業が増強した生産力を持て余していたのです。ちみちみと目の前のコスト計算だけをやっていたのが、利益そのものの計算までが従来の原価計算の領域に持ち込まれたのです。それは、生産現場の効率化を増進していれば企業業績が何とかなっていた時代から、市場需要に合わせた生産能力の管理までをコスト計算でつなぎ合わせて利益創出をすることが経営者の使命になった瞬間でもありました。

① CVP分析
膨大な設備投資による過大な固定費負担(そのほとんどが減価償却費)をどうやって早期に回収して企業に利益をもたらすことができるか、商品ポートフォリオから人員配置まで、固定費と変動費のコストビヘイビアの分析結果から得られる示唆で意思決定し、損益分岐点を可視化することで営業量と生産能力のバランスを量るようになりました。

② 直接原価計算
外部公表用の財務諸表は全部原価ベースでの開示ですが、開示情報作成ルール(制度会計ルール)に従っていると、過去の経営判断によって不可避的に背負わされることになった固定費(キャパシティコスト)が、期末棚卸資産として次期の損益計算に繰り延べられてしまいます。そうした遊休資産にかかる減価償却費は、自己金融効果で資金の内部留保増加に役立ちますが、期間損益を過大に計上してしまい、一方で遊休資産処理の判断を遅らせる結果ともなり得ます。そこで、固定費発生額の全額を当期費用として見立てて、原価計算=期間損益計算をする手法が、経営判断(遊休設備の処分と採算管理)を行う際に有用なコスト情報を提供することがもてはやされたのです。

③ セグメント損益計算
直接原価計算における固定費は、複数事業・製品を製造・販売する際に、どれにいくらかかっているか個別にはわからない共通のコスト(共通費)としての性格も兼ね備えることが多いことが知られています。そこで、単体のセグメント(事業・製商品・組織・顧客カテゴリ等)は、直接費だけでいったん利益計算をして個別採算を求め、共通費は個別採算データ全体から控除して企業全体の採算を管理する手法が採用され始めます。世界恐慌の前後には、金融資本による巨大コンツェルンが複数事業を営んでいることもそう珍しくなくなり、そうした大企業の経営者は、自社内の複数事業・製商品の撤退や集中、時には事業や商権買収のための損益情報を従来の原価計算担当に求めたのです。

こうした利益管理のための各種計算技法が、「短期利益計画」という形で、企業の単年度予算制度に組み込まれていくことになります。その残滓が、現代にまで生き延びている年度予算制度であり、今でもその中心に据え置かれているのが「損益予算(P/L予算)」です。キャッシュフローや貸借対照表の単年度予算はおまけで、事業別・製商品別の損益予算がまだまだ企業予算制度の主役であることが多いのは、この時代の影響をまだ引きずっていると言っても過言ではありません。

 

■ 意思決定会計のための原価計算

つまるところ、会計監査の厳格化により、原価計算が制度会計報告に組み込まれて、「原価計算制度」と社内で公式化されたことにより、制度会計ルールに強く影響を受けたものに変容していきました。当初は、価格決定や原価管理のためのツールが、制度会計をベースにした短期利益計画(年度利益計画)や単年度予算制度に組み込まれていきます。標準原価は利益目標を達成するための前提条件としての目標原価として、予実管理を中心とする予算制度にしっくり合いました。

一方で、遊休資産の稼働不足による予定チャージレートが過大評価になること、つまり操業度不利差異が期末に多額に発生するかもしれないリスクを内包するため、制度としての原価計算(=予算制度)は、同時に、直接原価に基づく社内用の利益計画書の作成という二重の責務を課せられることも多くなりました。現在の製造業を中心に、制度原価計算(=全部原価計算)と、直接原価計算の二重管理を実践している企業が数多く存在しています。

さらに、企業を取り巻く外部環境の不確実性が高まり、単年度の利益目標だけを追っていては企業経営が成り立たなくなり、中長期の採算見通し情報の提供が求められるようになりました。その中で、設備投資の経済計算、事業買収における買収価値の算出、業務活動における執行のための判断(自製か購入か、製品ポートフォリオ、事業の撤退可否、新規事業参入の採算分析など)といった、期間損益計算構造の埒外で損益情報、中でもコスト情報を求める経営者が増えました。そうした判断材料の基となる原価データは、「特殊原価調査」と呼ばれ、「原価計算制度」では算出できない計算機構により、アドホックに求められるようになったのです。そうした企業内での意思決定は、各種「基本計画」として社内で策定された方針に基づき実行されるのでした。

こうしてものづくり企業の売価設定のための実際製造原価の積上げ計算技法が、企業経営のかじ取りのための判断情報を提供する採算情報作成のツールにまで発展した300年弱にわたる原価計算の歴史は現代まで続いているのです。お粗末様!

原価計算(入門編)_原価計算の歴史 - 経営課題の変遷と原価計算技法・目的の対応について

(Visited 97 times, 1 visits today)
Pocket

ミスド500店 揚げる設備撤去 と セブン、全店舗に食洗機 が好対照なケースな件

Pocket

■ 好対照な店舗戦略 まずはミスドから

経営管理会計トピック

同日の企業・消費面に2つの好対照の記事が並んで掲載されており、一人ほくそ笑みながら読んだ次第です。まずは、ダスキンの店舗戦略から見ていきたいと思います。同じフランチャイズチェーンの店舗戦略がこうまで非対称でかつ、並んで掲載されたことに、編集者の意図が皆無だったのか、非常に興味があります。(^^;)

2017/2/25付 |日本経済新聞|朝刊 ミスド500店 揚げる設備撤去 ダスキン、客席広く コンビニと競争テコ入れ

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「ダスキンは2020年度までに、「ミスタードーナツ」の約4割に相当する500店でドーナツの店内調理をやめる。専用設備を撤去し、商品は近隣店が配送する。調理担当者の人手不足に対応するとともに、機器の保守など経費を削減する。現行より2~3割売上高が減っても採算が合う仕組みを整備。コンビニエンスストアなどにおされる各店をテコ入れする。」

(下記は同記事添付の「池袋の店舗では設備を撤去。客席を増やし長居できるようにした(東京都豊島区)」を引用)

20170225_池袋の店舗では設備を撤去。客席を増やし長居できるようにした(東京都豊島区)_日本経済新聞朝刊

同記事によりますと、ダスキンの店舗戦略方針転換の概要は次の通り。
① 約1200店のうち、立地が悪い店500店を対象に店舗戦略を変更
② 300店はドーナツを揚げる設備を取り払い、簡単に作ることができるパスタなどを提供する喫茶店形式に変更
③ 200店は持ち帰り専門店「ミスタードーナツ トゥゴー」に切り替え、店内調理はやめて、ドーナツは車で30分以内の店内でつくっている店舗から届ける

そもそも、ミスドは店内で揚げた商品を提供していることを売り物にしていたのですが、この売りを取り下げて真逆の180度転換する戦略発表となりました。ダスキンをここまで追い込んだのは、コンビニとの競争激化です。

「地方などで持ち帰り販売が減ったこともあり、フランチャイズ店を含めた16年3月期の1店当たり売上高は7200万円と前の期を6%下回った。ミスドが主力のダスキンの外食事業の16年3月期の営業損益は14億円の営業赤字だ。」

(下記は同記事添付の「ミスドは店舗数、売上高の減少が続く」を引用)

20170225_ミスドは店舗数、売上高の減少が続く_日本経済新聞朝刊

企業の様々な変革を目にしてきた筆者として、劇的な変革を企業が選択できるのは、
① オーナー経営者(またはそれに準じるカリスマ経営者)が決断した時
② 全社が経営危機感を共有し、このままではダメだと痛感した時
③ 絶え間ざる組織進化が自然にビルドインされている企業体質が構築されている時
のいずれかの場合が多いと考えています。

そして、全社一丸となってその方針転換を推進・実行していくスピード感と本気度は①から③へ、順に弱くなっていく感じがします。結果として、その変革が企業にとって吉と出るか凶と出るかは、ケースバイケースですが。ですが、変革は大きなリスクを孕み、できれば、ゴーイングコンサーンを前提としている出来上がった(成熟)企業ならば、変革のリスクの方が大きく、社員にも抵抗感が強いことは否めないと思います。

 

■ 好調なセブンイレブンも全店舗を対象に

業界リーダーとして君臨するセブンイレブンも自らを変える力学が社内に働いています。弛まざる進化を遂げているセブンは今回どういう手を打ってくるのでしょうか。

2017/2/25付 |日本経済新聞|朝刊 セブン、全店舗に食洗機 作業減らし接客効率化

「セブン―イレブン・ジャパンは全店に食洗機を導入する。現在1000店舗強に設置済みで、2018年2月末までに全約2万店に設置を終える計画。店内では調理に必要な機器を洗うため、毎日約3時間半かかっている。食洗機の導入で作業時間を半分程度に減らし、浮いた時間で来店客への声かけを増やすなど接客を強化する。」

同記事によりますと、セブンの店舗戦略方針転換の概要は次の通り。
・16年秋に試験的に約20店舗で食洗機を設置したところ、洗い作業の時間を1~2時間短縮でき加盟店に好評だった
・全店を対象に、3月から月1500店程度のペースで導入していく
・食洗機はメーカーと組んでセブン専用機を開発し、コンビニのレジカウンターの内側に設置
・機器の代金は原則本部が負担し、設置費用は店舗側が負担する場合もあり

こちらは、トライアル(試行)で実店での結果検証を踏まえてから全面展開ということで、各店のオーナーや従業員の理解と協力を得やすい導入方法を採用している点に着目しました。そして、コスト負担もフランチャイジーがより多くを持つことで、さらに各店のオーナーの理解を得やすくしています。現場改善のお手本のようなやり方のように見受けられます。

 

■ 何がミスドを駆り立て、ミスドは何を狙いとしているのか?

ミスドのドーナツ販売が振るわないのは、コンビニとの競争激化が理由と新聞記事では解説しています。仮想敵であるコンビニと比較して、どこが店舗戦略変革のポイントなのでしょうか?

(1)商品力
ミスドはいわずもがな、ドーナッツの製造・販売店。一方で、セブンはコンビニですが、ドーナッツは数ある商品の中のひとつ。セブンでも店内調理でドーナッツを提供しています。ドーナッツという提供商品では、バラエティではミスドの方が上。それでもミスドが苦戦しているのは、商品(ドーナッツ)自体の品質や品揃え以外にあると考えている節があります。専門店としてのブランド力が、コンビニの集客力に力負けしただけで、商品力で負けたわけではないとしているようです。それは、店内調理を諦め、品質(作り立て感、鮮度感)を捨て、その他の利得を採ったと思われるからです。

(2)品揃え
繰り返しますが、ミスドはドーナッツ店。これまでも、ドーナッツ以外の商品(中華素材のもの等)の品揃えを入れ替えたり、品揃えに迷いがあるように見受けられます。今回も、パスタ提供など、ドーナッツ以外の品揃え強化策を併用しています。

「低カロリータイプをはじめ、健康を意識したメニューを充実させて、若い女性の来店も促す。一部店舗ではレジ横にアイスクリームのケースを置いたり、パスタなど食事メニューも増やして客単価を引き上げる。」(冒頭の記事より)

(3)商品提供方法
店内イートインと持ち帰りがあり、持ち帰りは一部を除いてコンビニと競合します。持ち帰りで勝てないなら、イートイン勝負ということで、喫茶店形式を採用したり、空いた調理器具スペースを客席に置き換えたり、ドリンクバーを導入して顧客滞在期間を長くして客単価を上げようという作戦を採用しています。ミニストップなど、一部のイートイン併設コンビニを除き、イートイン店の差別化ポイントをさらに強みにしてコンビニに対抗するという策は共感が持てます。

(4)接客
筆者は外食の機会が多く、食材と同程度にホスピタリティも重視しています。個人的には「食」にあまり興味がなく、栄養補給の面が強いのですが、それでも気持ちよく食べたいので、接客力の高い店舗を好みます。ミスドは、店内調理をやめることで接客力を強めることを画策し、セブンは逆に食洗機を導入することで接客効率化を図ろうとするものです。同じ目的でも、方法はそのチェーンそれぞれに適したものを、ということは理解できるのですが、あまりに正反対の施策でその勝負の帰結に非常に興味があります。

(5)コスト
ミスドは、①人件費、②メンテナンス費用、③店舗面積の3点で、調理器具の撤去にコストメリットがあると判断しました。

「ドーナツの調理をやめることで、1年程度の経験が求められる調理担当者を配置する必要がなくなる。人件費も抑えられるほか、設備のメンテナンスもいらなくなる。小型店ならば全体の約4割を占める厨房の面積を減らすことができる。」(冒頭の記事より)

日本のサービス業の生産性が低いとする報道が最近やたらと目につきます。生産性とは、投入財(コストに置き換えても良し)単位当たりのアウトプットの大きさですが、サービス財というものは、即時消費財です。製造業の生産性指標と同列で考えることはできないと考えています。

それは、製造業とおなじコストダウン、費用効率的な思考ではダメということです。③店舗面積の視点のみ、小規模店舗の採るべき店舗戦略として理解できますが、①と②については、同時に提供素材の品質の低下を伴います。また、調理器具のある店舗から内店舗への商品の運搬は人手でやりきるつもりでしょうか? それこそ人件費はどこまで下げられるでしょうか。調理実技を有するスタッフの教育コストを削減して、単純にドーナッツを運搬するスタッフは単純作業だから教育コストはかからないと考えているのでしょうか。

ドーナッツを作るも運ぶも商品知識が豊富にあった方が、運搬時間や動線確保、運搬スケジュール立案にスタッフ全員が知恵を出して、最もお客様が望む形で店先でドーナッツを購入して頂ける。そういう風に考えると、人件費削減というのは、サービス業では最初の採算改善手段としてはあまり相応しくないように思います。ドーナッツのことをよくしている人に製造・運搬・接客してほしいですね。あくまで筆者の個人的な意見ですが。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

(Visited 165 times, 1 visits today)
Pocket

(大機小機)シェアリングエコノミーと税制 - 税制のキャッチアップまでのギャップを逆手に取った先行者利益のビジネスモデルもありです

Pocket

■ タックスプランニングは、国際税務の専売特許ではない!

経営管理会計トピック

一般的に、タックスプランニングの語は、①税効果会計における繰延税金資産の回収可能性を裏づける試算をすること、②税金コスト(主に法人税)を最小化するスキームを立案すること、この2つの意味合いのどちらかで用いられることが多い言葉です。今回は、②の意味をもっと延伸して、③各種税制を駆使して、課税コストの最小化を狙ったビジネスモデルを構築すること、の意で、次のコラムを味わっていきたいと思います。

2017/2/23付 |日本経済新聞|朝刊 (大機小機)シェアリングエコノミーと税制

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「2月5日付本紙によると、規制改革推進会議は「ライドシェア」の解禁を検討しているとのことだ。記事によると、ライドシェアは一般のドライバーが料金を取って自家用車で利用客を送迎するサービスで、急増する訪日客の交通事情への対応が背景にあるとみられる。」

新しいビジネスモデルを模索し、競合企業のどこよりも先行して新たな市場を創出し、追随者が出てきたときには、①圧倒的な競争優位で跳ね返す、または②そこまでに先行者利益を刈り尽し、次のビジネス開発への原資とする、という事業戦略が採用されることは多々あります。当然、パイオニアにはリスクもつきもので、その代表的なものに、税務リスクがあります。得てして、税務は新しいビジネスモデルを見越して整備されることは少なく、大勢は、新たなビジネスモデルを追随して税制を整えるしかありません。そのタイムラグを格好のビジネスチャンスとできるかどうか、それは企業経営者と財務・税務担当者の腕の見せ所となります。

 

■ シェアリングエコノミーが内包する税務リスク=税制タイムギャップ戦略とは?

税制が整備されるまで、従来の税制の枠組みの中で合法的に企業者利得を最大化することは、短期的な株主利益に忠実な企業行動なので、特にアングロサクソン流の経営術では当たり前のことです。これを「税制タイムギャップ戦略」とでも呼称しておきましょう。最近の例では、越境ECについて、2016年4月8日から中国政府による、課税や商品検閲を免れる直送モデルの代表例として、個人が行う「代理購入(代購)」の排除が目的の課税強化策が打たれ、代購ビジネスボリュームが激減し、日本のインバウンド消費に少なからず影響を及ぼしたことは、まだ記憶に新しいことと思います。

本コラムでは、「シェアリングエコノミー」に対する税務対応に関する問題点をかなりの網羅性で言及しているので、本記事を再整理する形で簡潔にまとめていきたいと思います。

配車サービスで有名なウーバーテクノロジーズは、日本でのビジネス展開を何度も当局の規制により掣肘を受けています。

● 2015年4月
2月から福岡市で始めた配車サービス実験が「白タク」にあたるとして、国土交通省が中止を指導

2015/4/3付 |日本経済新聞|朝刊 ルール破りか革新か ウーバー騒動、日本上陸(真相深層)

(同記事添付の「米ウーバーが福岡で実施した実験の仕組み」を引用)

20150403_米ウーバーが福岡で実施した実験の仕組み_日本経済新聞朝刊

● 2016年2月
富山県南砺市で、訪日客の受け入れ体制を充実させようと田中幹夫市長主導で予算計上のプランを発表。これにタクシー業界がかみつき、市議会議員へ根回しして、市が3月に実験予算を撤回

2015/4/3付 |日本経済新聞|朝刊 ルール破りか革新か ウーバー騒動、日本上陸(真相深層)

個人が持つ遊休資産(スキルなどの無形資産も含む)を使うサービスは、遊休資産の活用による収入を貸主にもたらし、かつ同時に借り主の利便性も高まります。提供者と利用者の双方に新たな価値を生み出す「シェアリングエコノミー」は国際的にも注目されている新たなビジネスモデルです。

(参考)
⇒「シェアエコノミーとギグ産業における規制と税制の対応とは - エアビー、ウーバー、ビール系酒税、TV録画代行を例にとって

しかし、シェアリングエコノミーを実践した場合、従来の税制では、「個人事業者」と「被雇用者」の識別が曖昧になり、所得税および法人税の双方でどういう課税体制を採ったらよいか、制度設計に苦慮しているところです。税制が整うまでの隙間を逆手にとって企業者利得を最大化しようというのが、税制タイムギャップ戦略なのですが、ウーバーテクノロジーズについては、吉と出るか凶と出るか?

 

■ ウーバーの税務リスク=税制タイムギャップ戦略を簡単に整理すると?

ウーバーのビジネスモデルについて、税制に関する課題の前に、配車サービスに参加するドライバーに対して、労働法規や社会保険料の問題も指摘されていますが、税務ではどうでしょうか?

(1)所得税
① 徴税コストをかけずに公平に課税する方法
自家用車でウーバーの運転手をして所得を得る人の情報をどうやって税務当局は集めるのか?
ウーバーに源泉徴収義務を課すことが可能なのか?

② 給与所得と事業所得の区分
・被雇用者(サラリーマン)と個人事業主の線引きが曖昧になる
・確定申告で計上する経費に違いが生じる
 - 事業なら必要な経費を差し引いた額が所得 
 - 給与なら給与所得控除額を差し引いた額が所得
・消費税の課税区分が異なる
 - 事業所得は課税対象取引
 - 給与所得は課税対象外
・源泉所得税額の違い
 - 事業所得は一定の「報酬」について源泉が必要(税率は10%が一般的)
 - 給与所得は「給与所得の源泉徴収税額表」に従う

(2)消費税
・ドライバーが個人事業主ならば、事業規模により免税事業者になり得る
・ドライバーが被雇用者ならば、ウーバーが消費税の納税義務を負うことになる

(3)法人税(国際税務)
・PE課税
「PE」(Permanent Establishment)とは、恒久的施設のことで、事業を行う一定の場所等を指します。恒久的施設は、非居住者および外国法人の課税関係を決める上での大きな指標となります。つまり、非居住者および外国法人が日本国内で事業を行っていても、日本国内に恒久的施設を有していない場合には、その非居住者および外国法人の事業所得は日本で課税されることがないのです。これを「恒久的施設なければ課税なし」といって、事業所得課税の国際的な基本ルールです。

日本の場合は、
①「支店PE」支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫および鉱山・採石場等天然資源を採取する場所
②「建設PE」建設、据付け、組立て等の作業、またはその指揮監督の役務の提供を1年を超えて行う場合のその場所
③「代理人PE」国内に自己のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、これを常習的に行使する者や、商品等の資産を保管し顧客への引き渡しを行う者、あるいは注文の取得等の重要な部分をする者
(法人税法141条、法人税法施行令185条、186条、所得税法164条、所得税法施行令289条、290条)

という建付けになっています。

しかし、ウーバーは、インターネットで配車するというプラットフォームを提供する会社であるため、ネットが発達した時代に日本国内に法人をつくる必要はなく、ましてや課税の根拠となる子会社や支店なども置かずにビジネスを展開(集客と代金回収)でき、現行制度では法人課税を逃れられると考えられます。

「現に米アマゾン・ドット・コムは日本の消費者を相手に大きな利益を得ているが、日本で1銭も法人税を払っていない。米国に本社を置くウーバーは、タックスヘイブン(租税回避地)のオランダに中間持ち株会社をつくり、そこに無形資産を移して欧州でビジネスを展開しているようだ。」(同記事より)

 

■ シェアリングエコノミーとPE課税

パナマ文書、タックスヘイブンと、最近では国際課税についても注目が集まっています。

2016/10/3付 |日本経済新聞|朝刊 税逃れ防ぐ国際ルール始動 日本企業対応大詰め

「多国籍企業が各国の税制のずれを利用して課税逃れをするのを防ぐため、国際課税ルールを見直す「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」が実施段階を迎えている。各国は国内法への反映を進めており、日本の2017年度税制改正でも焦点の一つだ。日本企業は対応を迫られる中で、欧米より低かった税務戦略への意識を高めつつある。」

(同記事添付の「15の行動計画と各国に対する拘束力の強弱」を引用)

20161003_15の行動計画と各国に対する拘束力の強弱_日本経済新聞朝刊

上表にある「行動7:課税対象となる恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止」「行動1:電子商取引の課税上の課題への対応」が、本件への当局からの課税強化の目玉になっています。

「現行の税制度はシェアリングエコノミーに追いついていない。ニュービジネスの芽を摘むことなく、適正公平な課税の検討を国際社会と連携しつつ進める必要がある。」(冒頭記事より)

シェアリングエコノミー等が経済・企業活動に占める比率がこのまま大きくなっていくとしたら、従来の法人単位の課税が連結グループを対象とする「連結納税」「グループ法人税制」制度へ移行しつつある国内課税の進化がさらに進み、課税当局が国民国家の枠を超えて、国際組織そのものへ昇華する日もそう遠くないと推測します。

足元では、国民国家(ネイションステート)から、EUなどの広域政治経済単位へ統合する方向から、一時的に時計の針が逆回転し、EUからの英国の離脱、トランプ大統領の誕生、フランス大統領選におけるEU離脱支持候補の優勢などが観察されています。

しかし、さらに巨大化する多国籍企業、国境をいとも簡単に超えるネット技術に基礎を置く企業活動(EC等)の隆興、ネットワーキングする経済活動(シェアリングエコノミー、クラウドソーシング、クラウドファンディング等)に即応して、消費者としてではなく、福祉サービスを享受したい一般市民の生活を守るための原資獲得目的の課税や各種公共サービス提供の実体として、国民国家というフレームワークは時代遅れとなりつつあると思います。
(おっと、経営・管理会計の枠組みを超えて、趣味である国際政治学の領域に言が進んでしまいました)(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

(Visited 30 times, 1 visits today)
Pocket

アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉(100)相手があなたを評価するかどうかは相手の課題です

Pocket

■ 課題の分離ができる人は幸せだ!

コンサルタントのつぶやき

陰口を言われても、嫌われても、
あなたが気にすることはない。
「相手があなたをどう感じるか」は
相手の課題なのだから。

—————————————————–
私たちは、決して他人の感情や行動をコントロールすることはできません。それゆえ、できもしないことをできないと苦しむくらいだったら、最初からそれをあなたの悩み事リストから削除してしまいましょう。相手の課題にこちらから進んで踏み込まず、自分の課題に相手が踏み込ませないように心がけるのです。

相手が、あなたの言動をどう評価するかは相手の課題(相手の気持ち次第)です。たとえ、どんな非難を受けても、自分が正しいと思うことを続ければいいのです。自分は自分。まさに、「嫌われる勇気」を持つべきなのです。

本書で紹介された偉人の言葉を2つ、そのまま引用させて下さい。

「私は私のために生きる。あなたはあなたのために生きる。私は何もあなたの期待に応えるために、この世に生きているわけじゃない。そして、あなたも私の期待に応えるために、この世にいるわけじゃない。私は私。あなたはあなた。でも、偶然が私たちを出会わせるなら、それは素敵なこと。たとえ出会わなくても、それは仕方のないこと。私は私。あなたはあなた。あなたはあなた。私は私」
フレデリック・S・パールズ

「神よ、願わくは我に 変えられることを変える勇気と 変えられないことを受け入れる忍耐力と 両者の違いを理解する知恵を与えたまえ」
ラインホールド・ニーバー

自分の人生を生きることは、「課題の分離」ができること。これが無意識に実践できるようになったとき、あなたの心のつかえは無くなり、対人関係の悩みも無くなることでしょう。

人生に革命が起きる瞬間です!(^^)

(Visited 32 times, 1 visits today)
Pocket

TOPへ