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世界の食を支える… なんでも“包む”魔法の機械! レオン自動機社長・田代康憲 2016年3月17日 TX カンブリア宮殿

TV番組レビュー
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■ 何でも“包む”機械 「火星人」驚異の実力!

コンサルタントのつぶやき

番組開始早々に、名月堂の「博多通りもん」が登場。とろけるような餡子の饅頭はいったいどうやって作られているのだろうか。とろとろの白あんに軟らかい生地。手作業では到底包むことはできない。それを可能にしたのが何でも包む機械、1日30万個包むことができる。

つぎは埼玉のロッテ浦和工場。あったかい餅と冷たいアイスが登場。そう、雪見だいふく。食品業界がこぞって頼りにする何でも包む機械を作っているのは、レオン自動機(RHEON)。

創業53年、様々な食品製造機械をつくっている会社。何でも包む機械は、その名を「火星人」シリーズという。何とも変わったネーミング。

(技術サービス部 島田さん)
「火星人は誰も見たことはありませんが、目・鼻・口があって、人間が「包めないもの」でも「包める」というイメージ」

機械上部に食品(包む方と包まれる方)の投入口が2つあり、下からにょろにょろと出てきて、シャッターという部分で切って落とす仕掛け。生地とあんの部分がまじりあわないのは、穴の部分のノズルが二重構造になっているから。別々にひねり出され、包まれる形になって棒状になって出てくる。そこで、シャッターが口を絞りこみ、饅頭の下も上も口が閉じられるという仕組みだ。パネルを操作するだけで、あんと生地の割合も自由に変えられる。このスゴ腕「火星人」CN580の一体のお値段は、約700万円。いろいろなオプション器具を取り付けると、「火星人」の機能はさらにUPする。

熟練の職人が和菓子作りの世界でも不足しており、この「火星人」導入に踏み切る和菓子屋が後を絶たない。包む機械、「包あん機」でRHEONの国内シェアは9割。取引先は国内外1万4000社にのぼる。そんな知られざるトップメーカーを率いるのは、現場から叩き上げのこの男、レオン自動機社長・田代康憲。

20160317_田代康憲_カンブリア宮殿

番組公式ホームページより

「常に新しいものを提案して、機械でお客に認めてもらう会社になる。」

井村屋の高級肉まんの製造にも「火星人」は使われている。高級感を出すためのあの「ひだひだ」は火星人のオプションで付けられている。このひだひだをもっとくっきりと出すために、装置の試作を行っている。試作器のテストは、自分たちで粉から生地を作り、ひき肉からあんを作る徹底ぶり。パソコンの前だけで試作してみても、実際に、生地にどんな作用を起こすか分からないため、レオンの開発者は、実際に自分が開発している機械で食品を作り、思い通りの味や形になるように開発を進めるのだ。最後は作った食品の味見までする徹底ぶり。

レオンの包む機械は世界のあらゆる食文化に対応している。例えば中国なら月餅、ロシアならピロシキ、イギリスならスコッチ・エッグ。今や世界120の国・地域で使われており、その年商は230億円。

「食文化に貢献していく会社。今まで手作りしかなくて、衰退していくものを機械化して守っていく。」

どんな食品でも包みます! 世界の食卓を支えるスゴい企業が登場!

スタジオに社長を迎えてインタビュー開始。社長にズバリ素朴な疑問をぶつける。技術的に一番難しかったものは何か? 「ロッテの雪見だいふく」。粘り気があり、包む側と包まれる側の温度差が一番大きいから。そして、どうしてノズルの部分に餅がくっつかないのか。「それは、シャッターが絞る切断面が最後は点になるから」。だからくっつかない。

国内シェア90%ということは事実上、国内には強力なライバルはいない。海外比率は40%近くに上がっている。アジアなどには“包む”食品があるので、そういった国々にも拡販をしていきたいとのこと。

<レオン自動機の経営理念>
・世の中にない機械を独自の技術で開発し販売する
・マーケットは全世界である
・どの系列にも属さない独立企業であり続ける

これは、林虎彦さんという創業者(現名誉会長)のお言葉だそうだ。

 

■ 世になかった機械を生んだ… 創業者・虎彦の壮絶人生

本社の一角に会社の歴史を展示してある「レオロジー記念館」がある。その一番目立つ部分に最初の包あん機の試作機が置いてある。林は1926年(大正15年)台湾生まれ。幼き日から不幸が続く。母と姉を結核で亡くすと、虎彦自身も中学3年の時に肺と腸の結核を患い、その後は何度も死の淵をさまよった。戦争で兄を失い、父と生別れ。1946年(昭和21年)、日本へ引き揚げてくるときには一人になっていた。混乱の中、全国を転々。流れ着いた金沢で、1951年(昭和26年)、和菓子職人として25歳で独立。和菓子作りに精を出すのだが、包む作業は時間がかかり、しかも同じ作業の繰り返し。虎彦は思った。

『包む“機械”をつくってしまえばいい』

虎彦は店を妻に任せ、まんじゅう製造機の開発に没頭。売上も開発につぎ込んだ。その結果、和菓子屋は倒産。その後、夜逃げ同然で日航鬼怒川に移り住む。そこでは今でも虎彦が作った和菓子が売られている。しかも大人気。銘菓「きぬの清流」。

和菓子職人としての腕がある虎彦はまず大人気となるお菓子を作り、開発資金を集めたのだ。そして再び、1956年(当時30歳)、まんじゅう製造機の開発を再開する。鬼怒川から国会図書館まで一人通い研究したのが「流動学」。元々はゴムや粘土など、どろどろした物体を機械で処理するための工業用の学問だったが、これをまんじゅうづくりに応用しようとしたのだ。流動学は英語で「レオロジー(rheology)」。レオンという社名はここから取った。実際に機械を作るパートナーも探した。地元の鍛冶職人兄弟。そして、金沢を追われて鬼怒川に移って10年たった1963年、世界初の“包あん機”が完成した。この機械は昭和38年に販売が始まると、大反響を呼び、菓子業界の“革命”とまで言われた。

小池さんから田代さんに、虎彦さんの人となりを尋ねる質問があった。
「開発という点には、非常に厳しい。見るところが違うので、厳しく突っ込まれる。」

村上さんからは、不遇をバネにしたからこそできた機械ではとの問いがあり、
「開発者にとって一番大事な姿勢というものは?」と続ける。

「常に考えていないと、いいヒントがあっても、うまく使えない。ただの石ころかもしれないが、それがうまくヒントを得ることで、ダイヤモンドに輝くことがある。そういうことは、虎彦名誉会長から教えられた。」

現社長の田代は虎彦の“愛弟子”。開発者として一から叩きこまれたという。しかしある日、田代は虎の尾を踏んでしまった。そのあるものとは、、、

 

■ 天才創業者と愛弟子 「火星人」開発秘話

現社長の田代は地元宇都宮出身で、46年前に入社した。すぐに創業者虎彦の目に留まり、会社の要である開発担当に抜擢された。そしてその後は虎彦の愛弟子に。天才虎彦から開発者魂を直々に叩き込まれたのだ。

「夜遅くに、電話がかかってきて「すぐに打ち合わせしよう」とか、「これをつくれ」と言うと、正月休みも無し。」

やがて田代は既存の包あん機をもっと効率の良いものにできないかと考えるように。そしてあるものを今から30年前に作り出す。そう、あのシャッター方式。ある程度形になるまではと、虎彦に黙って開発を進める。ところがある日、このことが虎彦の耳に入る。レオンでは虎彦の了解を得ない開発は御法度中の御法度。何をやっているんだ! と怒鳴りつけられる田代。しかし、田代が開発したシャッターを手に取ると、態度が一変。「2ヶ月で使えるようにしろ!」

田代は言われた通り2ヶ月で完成。1987年、「火星人」1号機が誕生だ。以後、シャッター方式がレオンの主流となっていく。シャッター方式によって、これまで包めなかったものまで扱えるようになった。例えばミンチ肉など。それで生まれたヒット商品が、ガストの「チーズインハンバーグ」だ。

「初めはできるかどうか分からなかったので、内緒でやっていた。ある程度できたら、開発申請を出そうと思っていた。しかし、「何をやっているんだ」ということになった。「社長に許しなしで開発は許さん」と。承認なしで開発をやってはダメだった。虎彦名誉会長も、和菓子屋を潰しているので、開発には金がかかるという意識があったので、「俺の許しなしではダメだ」と。しかし、切り替えが早いので、良いものは良いと、すぐに認識してくれた。「すぐに今の包あん機に搭載しろ」「2ヶ月ですぐに作れ」と。(2ヶ月で作れと言われて、)できないとは言えない。」

村上さんが問う。「虎彦の信念に、やる気になれば何でもできる、というのがあったのでは?」

「「絶対にできないものはない」という信念を持っていた。シャッター型の包あん機が売れて、会社が上場できるようになって、私も役員にさせてもらった。その時に「永久社員でいいぞ」と。でも、その後もいろいろ厳しくガンガンやられた。」

 

■ 師弟愛が生んだ機械が世界の食文化も変える!

レオンには田代と虎彦の師弟コンビが生み出した名機がもうひとつある。それが「クロワッサン製造機」。生地と生地の間にバターを挟み込んでいく。それを何層にも積み重ね、ローラーで薄く伸ばしていく。それを無駄なくカットし、90度方向を変えて、くるっと丸めればクロワッサン生地の出来上がり。これが世界初の技術だ。手間のかかるクロワッサンが大量生産できると、パンメーカーの間で大ヒットとなった。

そんな中、レオンはアメリカで意外なビジネスを展開している。アメリカにある現地生産子会社では、1日に150万個のクロワッサンを全米に供給している。日本円にして1個200円(筆者注:為替レートは分かりませんが)。かつて、アメリカではクロワッサンは高価で馴染がなかったというが、レオンによって手軽に食べられるように。

今や世界的企業となったレオンの工場でよく見られる光景がある。海外からの来客だ。この日は中国から世界一の中華まんメーカーの代表がやってきていた。まだ買うとは決めていないが、「火星人」を見に来たのだという。彼らが気にしているのは、今手作りしている味が再現・維持できるかどうか。2日に渡って何度も試食を繰り返した。レオンの担当者はまだ買うと決めていない会社でもとことんまで付き合う。

今度のお客はオーストラリアからパン職人が。今回、パン生地の小分け装置を注文。それが完成したという知らせを受けてチェックしに来たのだ。ここでレオンが提案したのが、ラインの一部を2レーンにチェンジ。それで機械を動かすと、さらに2つに小分けされてパン生地が出てきた。

買うと決めていない客にも、既に買うと決めている客にも、レオンは徹底的に寄り添う。

(技術サービス部 阿部さん)
「お客様に合う世界にひとつしかない部品を作る。それを実際に機械に取り付けて確認してもらう。」

 

■ 菓子職人と二人三脚! 究極のアフターサービス

徹底的に客に寄り添うレオン。この日は日本中からレオンの機械を使っている食品メーカーや菓子職人がレオンの工場に集まった。始まったのは、「抹茶のチョコトリュフ」の実演。毎月恒例の和洋菓子講習会だ。レオンの機械を使って、今流行のお菓子をどうやって作るか、レシピを公開し、実演しているのだ。こうしたお菓子を新製品としてお店に出しませんか、という提案だ。講習会では新しいオプション器具も紹介。レシピだけではなく、機械の活用法まで指南して、客とつながり続ける。究極のアフターサービスだ。

そうした客が店に戻り、レオンから示されたレシピを見て試作品をつくる。そのレシピには、レオンの装置のオプション器具の取付法から、既存機能のセットアップまで、事細かに指示が書いてある。試作品ができた後のさらなる味の改善については、職人の腕の見せ所だ。そうした新製品がお店の棚に陳列されていく。こうしてレオンはお客と二人三脚で売上を作っていく。

 

■ 世界の食文化を豊かにする… 知られざるグローバル企業

小池さんの質問。「海外からどれくらいの外国人が来るんですか?」

「年間で200社ぐらい。我々は提案型の会社で、「こういう機械はどうでしょうか?」と売っている。「何か機械をつくらせてください」ではなく、我々から機械を提案する。そういうやり方をずっとやってきた。」

小池さんが講習会について質問する。

「機械をフル稼働できるよう提案しながら、味などは店ごとに考えてもらい商品にしていってもらう。レオンとのつながりを持ってもらい、長い付き合いをしていく。」

村上氏が、世界の食文化を変える企業はなかなか少ないのではと話を振る。

「“食”を豊かにすることは、“文化”も“経済”も豊かになること。」

独創的な機械を次々と生み出す真の“源泉”とは…

「創業者の虎彦を知っている社員は10名くらいしかいなくなってきている。創業者の精神というものを、しっかり伝えていかないと永続していかない。それでも時代が変わるので、時代に合わせたものにしながら、創業者の精神はずっと伝えていきたい。」

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