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万物を動かすチェーンを極めて100年!世界NO.1の強さを生む挑戦&突破力! 椿本チエイン会長・長勇 2016年3月31日 TX カンブリア宮殿

TV番組レビュー
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■ 革命的商品を続々生む! “世界を動かす”トップ企業

コンサルタントのつぶやき

回転寿司のレーン、宅配事業における貨物の高速自動仕分けシステム、コンサートで引っ張りだこの昇降リフト(ジップチェーンリフター)。これらは産業用チェーンを開発・製造している椿本チエインが全て作っている。椿本が手掛けるチェーンは実に多種多様。例えば、エスカレーターやジェットコースターを動かすチェーンなど。モノに動力源から移動する力を伝えるチェーンなら何でも作る。その形状は実にさまざま。昇降リフトに用いるのは「ジップチェーン」。2つのチェーンが組み合わされて、カチカチの棒状に形状を変形させる。その力を上下の移動力に変換して昇降リフトを持ち上げるのだ。さらには、新日鐵住金の八幡製鉄所で重さ25トンの鉄板を運ぶのも椿本チエインのチェーンだ。重さと熱への耐久性が無いと、すぐに寿命がきてしまう。チェーンとチェーンの軸の間がわずか3.7mmのマイクロチェーンは、キャッシュディスペンサーの中で動力を伝えるものとして使用されている。

 

■ “モノを動かす”トップ企業 日本が誇る魔法のチェーン!

大小様々なチェーンを手掛ける椿本チエインは産業用チェーンでは世界トップシェアに君臨。売上高:1967億円。世界最高水準のチェーンで世界最高の業績を叩きだす椿本チエインを率いるのは、長勇会長。

20160331_長勇_カンブリア宮殿

番組公式ホームページより

「技術を生かしてお客に喜んでもらえるような、ハイエンドと言われる高機能のチェーン作りに特化していきたい。」

実は椿本チエインのチェーンが無いと、日本のものづくりが立ち行かないという。ロッテのお菓子工場では、実に50種類以上の椿本チエインのチェーンを使っている。日本の様々な現場で使われる椿本のチェーン。その取扱い種類数は、2万種を超えている。チェーンだけでなく、様々なものを運ぶ搬送システムも手掛けている。たとえば洋服搬送機は、ICタグから情報を読み取り、高速でハンガーに架かった服を仕分けていく。これら仕分機の動力伝送に高度なチェーン技術が組み込まれている。いまや、搬送システム事業は、売上高:451億円を稼ぎ出す屋台骨になっている。椿本チエインはチェーンで創業したが、物を運ぶコンベアに進出した。とある大型物流センターでは、椿本が搬送システムから高速IC読み取り機能まで、センターの設備一式を全て受注して、効率的なシステムを構築し、出荷能力が以前に比べて30~50%も向上したという。

モノを動かすプロ集団! 日本が誇るものづくりの秘密とは?

ジップチェーン誕生の経緯とは?
「もともと、お客が物を持ち上げるのに「位置の制御をしたい」と要望があった。椿本の技術担当が「かたくすると持ち上がる」と発想した。“持ち上げる”だけではなくて、例えば“押し込む”とか、ひっくり返すと“つり下げる”など、いろいろな使い方ができる。」

また、棒付きチェーンは、年間10億本を製造する製缶工場で使用されており、フタをする前の缶を超高速で搬送するために、椿本の缶搬送用チェーンが欠かせない。こうした製品は、お客様からの特注品で、個々のニーズに応じて開発される。

 

■ 「野菜工場」から「がん治療」まで 新分野に挑み続ける100年企業

椿本は今、意外なビジネスに力を入れている。京都にあるベンチャー企業、スプレッド。この会社が手掛けるのは巨大な野菜工場。最新のクリーンな設備で無農薬野菜を全国に出荷している。椿本は現在、この会社が計画する世界でも珍しい無人の野菜工場プロジェクトの実現に向けて、自動化技術の開発を進めている。実は椿本は8年前から、新規事業として野菜工場の無人化に取り組んできた。苗を運ぶ複雑な動きをチェーンで実現する様々な新技術を開発してきた。

それにしてもなぜ野菜なのか?
「同じビジネスをやるだけでは発展性がない。来年で創業100年になるが、その先の100年はない。いつも新しい領域に目を向けていくことが必要。」

椿本は常に新たな領域へ果敢に挑戦し、成長してきた。

椿本チエインの創業は、1917年(大正6年)の大阪。27歳の椿本説三が起こした自転車用チェーン製造会社だった。しかし、ある時、説三は偶然尋ねた町工場で機械を動かすためにチェーンが使われている様子を目の当たりにする。説三はそのチェーンの多くが海外製であることを知ると、カタログをわざわざ取り寄せ、産業用チェーンの研究を始める。自転車用のチェーンは誰でも作れる。もっと精度の高い産業用チェーンに挑戦し始めた。商売の目処が立つと、創業からわずか10年で自転車用チェーンから撤退してしまった。

「創業社長の先を見る目はすごかった。自転車用チェーンを増産していたが、10年で産業用に切り替えた。全く新しいものにシフトして「ここからは、これでいく」と決めた。その英断があったから、100年続いている。」

更に説三は、産業用チェーンを売り込むだけでなく、1937年、搬送設備そのものの製造に進出。着々と会社の技術力を磨き、会社の柱に育てた。しかし、新たな分野には常に難関が立ちはだかる。例えば1950年代に挑戦した、自動車用タイミングチェーンもそんな新規事業のひとつ。順調に売り上げが伸びていたある時、危機が訪れる。40年位前は2列のローラーチェーンが主流だった。ただ、これは重いし、エンジンの中で高速に回すとうるさい。これに取って代わられたのがゴム製ベルト。チェーンに比べて静音なゴム製ベルトに一気に市場を奪われてシェアが急落。そして、自動車部門総出で、音の静かなチェーンの開発に着手。苦難の末、ついに完成させる。現在は、サイレントチェーンの名で販売されている。静かでゴムより耐久性に優れている。執念の開発で危機を乗り越え、今や椿本の自動車用タイミングチェーンは、国内で販売される自動車の7割が使用するトップシェアの地位に。椿本は培ってきたチェーンの技術を信じ、新分野を切り拓いてきた。チェーンへの執着は世界一。

次の新たな挑戦は医療分野。東大に設立されたバイオバンクジャパン。室内に並ぶ巨大な箱は、椿本のこだわりの搬送技術で作った製品。医療を一変させる世界初のハイテク冷凍庫だという。ここに保管されているのは膨大な数のがん細胞の組織片。マイナス150℃で保存することができる。しかも、マイナス150℃という厳しい環境で膨大な数のサンプルを正確に管理し、1本単位で出し入れすることができる。これががん治療の研究の現場で大きな武器になるという。マイナス150℃で品質を保ったままがんの組織を研究できる。多くのがんの研究者がやりたくてもできなかったことを実現した。

椿本はチェーントップの技術力を駆使し、敢えて未知の分野に挑み、全く新しい製品を生み出してきた。

(開発部:吉田さん)
「マイナス150℃の世界は、全く経験の無い世界で、何がモチベーションかというと、「世界初のものを作るぞ」と。みんなでチームワークを組んでやってきた“世界初”がモチベーションだった。」

 

■ 新市場に挑め!椿本説三に始まるチャレンジャースピリット

この敗北にめげずに、より大きな目標に向かって挑む社員のマインドは創業者の説三を超えているようなところがあるように見える。

「常に、「上に、上に」と、ここで満足してもらったら、次はどうしようと考えることを、社員がやってくれている。」

バイオバンクなどは医療の最先端分野。どうやってそういうビジネスとの出会いの機会を得るのか?

「お客から、「こんな物をやりたい」と話をもらう。初めはマイナス20℃くらいの保管庫からスタートした。もっと前には、「回転式の棚」のような製品を作っていて、それを修正していって、どんどん特化した製品になっていく。今は最初のマイナス20℃の製品とは全く違った形になっている。」

大正末期の創業の頃は、チェーンを使っているというのは自転車ぐらいだったのでは?

「日本で作っていたチェーンは自転車用がメーンだったと思う。欧米の影響で、日本の産業が発達してくる黎明期に、そこで使われていた機械はアメリカやヨーロッパからの輸入品だった。」

自転車用から産業用へ舵を思い切って切ることはそんなに簡単なことではなかったのではないか?

「自転車用のチェーンは、正直に言うとどこでも作れる製品。チェーンからスタートして、順々に“物に力を伝える”に関することは全てやろうと。」

説三さんのチャレンジ精神は今の会社に受け継がれているのか?

「私どもの“家訓”ではないですけれど、「変革」と「チャレンジ」という言葉をずっと大切にしている。創業者が“業態を変えた”という歴史から始まっている。先行きが分からないけれど「とりあえずチャレンジしてみる」と、「やってみる」というところは、今も一緒だと思う。」

チャレンジしてみるのか、今回は諦めようと思うのか、どうやって決断するのか?

「やはり技術者の“技術者魂”でしょう。世界で他になければ、椿本がやらなければ、他社もやらないので、「とにかくやってみよう」という気持ちが重要だと思う。」

 

■ 日本が誇る世界トップ企業 チェーン極める執念の集団

椿本チエインの技術部。ここには思いもつかなかったようなところから注文が舞い込む。例えば、水の中で使うチェーンとか。下水処理場で汚泥をかき上げるチェーンだ。金属加工工場からの依頼は、パイプや鋼管などの材料を引き抜き加工する工程で、引き抜きの棒材を引っ張るためのチェーンだ。このように、様々な業界から引っ張りだこの椿本のチェーン。その理由のひとつが、チェーン最大の弱点に椿本が挑み続けているからだ。チェーン最大の弱点とは、高速回転を続けると、伸びてたるみができてしまうこと。それは、軸がすり減ることで生じてしまう。最も摩耗しやすいのが軸の部分。椿本はチェーンを構成する5つの基本部品を改良し続け、摩耗しにくいチェーン作りを続けてきた。例えば、回転する軸を包み込む「ブシュ」と呼ばれる部品。椿本ではその内側の一部分に溝を掘っている。軸が摩耗しにくくなる秘策。この溝に油が入り留まることで、ブシュの中の油量が増えて摩耗しにくくなるのだ。当社比で2倍に寿命が伸びた。ただし、ブシュの一部分にだけ溝を切る技術は企業秘密で絶対外に漏らせないそうだ。椿本ではそうした他社ではまねできない技術開発を10年ごとに行い、性能を高め続けてきた。

「我々は「ここまで」という限界を自分たちでつくらない。「まだ何かできるはずだ」と。材料も新しく変わっていくし、工作方法も変わっていくから、やっぱり考えていったら、やれることはどんどん広がっていくと思う。」

そして現在取り組んでいるテーマは油。他から油を買うのではなく、最も摩耗しにくい油を自社開発中だ。トップシェアで、あぐらをかいていると、いつ抜かされるか分からないという危機感から。常に市場に対してインパクトのある商品を出さないといけないというプライドを持っている。

「ほぼ10年単位で、全く新しい性能にするモデルチェンジをしている。今までの技術で満足せずに、“もうちょっと上”を狙っていく。これは創業当時からのいい伝統だと思っている。」

10年ごとに製品改良しなくてもいいのではというずるい考え方は無いのか?そこまで改良をする必要性は本当にあるのか?

「実は我々の競合他社からも、「いい加減に開発をやめてくれ」と言われたことがあった。ただ、我々としては、“技術”は止まってしまうと、どんどん退化する、相対的には遅れることになるので、「ここが最後だ」と思わずに、「もっと何かできるのでは?」と改良を続けていくのに、一応、10年という区切りをつくっている。これから先も10年ごとにこういうことを続けていこうと思っている。」

「まさに社長になった時から、チェーン分野ではトップメーカー。だから黙っていても買ってもらえることがたくさんある。ただ、何もしなければ、他社に追いつかれ、売れなくなってしまう。そういう危機感を持った。ですから新しいものを開発していく。このままでいくと、今の産業界の状況から考えると、どんどん海外に顧客もマーケットも移ってしまう。そういう中で、日本で雇用を守るためには、新しいものを作り出さないといけないと思う。マーケットをチェンジしたり、そういう取り組みをしたい。」

 

■ 世界が感動するものづくり “現地の悩み”を解消せよ

椿本チエインの海外拠点は、24の国・地域に展開している。インドネシアで椿本のチェーンが売れまくっているという。パームヤシから食品や化粧品に使われるパームオイルを作っている工場で、椿本のチェーンが大量に使われている。ここで大活躍しているのが、重いヤシの実を運ぶ専用コンベア。動かしているのは椿本のチェーンだ。この辺でよく使われている中国製より価格が2割ほど高い。値段が高くても売れる秘密とは? パームヤシの細くて硬い繊維がチェーンに絡まって機械をすぐにダメにする。しかし、椿本のチェーンがその悩みを解消した。チェーンに隙間を作り、繊維を通り抜けられるようにして絡まないようにしたのだ。ローラーの側面に溝が作ってあり、入ってきた繊維が下に流れ落ちる構造になっている。繊維がチェーンに絡んで故障しないため、従来品の4倍の製品寿命となる。だから、2割増しの価格でもお買い得というわけ。

どんなに小さなニーズにも応えてチェーンを作る。そんな椿本流で、今や海外売上高比率は54%となっている。

社長就任以来、海外売上比率を上げているが、どういう営業スタンスで海外売上高を伸ばしているのか?

「我々は、チェーン分野のトップメーカーで、今、日本で作っているチェーンを海外に持っていって売ればいい。多分、そういう気持ちで今まで商売をしてきたが、国によって考え方も違う。チェーン1つとってみても、例えば中国なら中国で使われる中国の考え方に合ったチェーン、ヨーロッパはヨーロッパの考え方で製品を作っていこうと。」

つまり、日本発のものづくり、日本発のグローバル化というものが成立していかなくなっているということか?

「そう思います。“グローバル”という言葉は、間違ってしまいがちで、外国で自分たちの物を売っていたらそれはグローバルか? そうではない。「本当のグローバル化」というのは、現地の人や文化、ものづくりの思想、そういうものを理解した上で、我々の技術を提供していくこと。あくまで根底にあるのは、日本で培った我々の技術。ただ、「作った商品をそのまま持っていく」という考え方ではダメ。」

『“日本発”ではなく、現地で共につくる』

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