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日本のスゴイ工場を発掘!急成長の『工場直販』ブランド ファクトリエ代表・山田敏夫 2016年4月7日 TX カンブリア宮殿

TV番組レビュー
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■ 熱狂ファン続出で急成長 異色ブランドの秘密公開

コンサルタントのつぶやき

岡山・倉敷市のとある織物工場、タケヤリ(創業1888年)。工場見学ツアー客が集まっている。年代ものの織機で作っているのは、帆布。厚さ1.45mmと国内では最も厚い帆布が織れる。見学ツアーは現地集合・現地解散。東京から片道3万円以上の交通費をかけてでも人が集まる。

(参加者の声)
「日本の技術がたくさん詰まった商品を身に着けたいと思って、いろいろ調べる中で工場見学ツアーを知って、見てみたいと思い参加した。」

メード・イン・ジャパンの現場が見たい。こうした声に応えた工場側の意見は、
「お客の声を直に聞くことができる機会は、我々のような作る側には、なかなかない機会なので。職人は、商品を使って頂いているところを見るのが楽しいと言っている。」

岡山県|帆布|株式会社タケヤリ

この見学ツアーを企画したのは、ファクトリエという聞きなれないアパレルブランド。実はここ、業界が今、注目しているブランド。創業は4年前。1年目は1500万円だった売上が、今や年商10億円と急拡大している。ファクトリエの贔屓客の声。

「同じものを買うならファクトリエを買った方が生地も品質もいい。お買い得感がある」
「国産というところが魅力的」
「Tシャツは、すぐに首回りがへたれるが、これは何回着てもへたれない。ジーパンはポケットの縫いわせ部分がめちゃくちゃ丁寧に塗ってある。」

ファクトリエはネット通販専門のブランド。銀座のお店は試着だけで、顧客は手触り感や着心地を確認にやってくる。

(筆者注:こういう販売形態を「クリック&モルタル」といいます)

ECサイトで注文した一番下に、社長からの手書きのメッセージが現れる仕掛けになっている。「世界に誇る日本の一流工場が丁寧に作らせて頂きます」

ファクトリエは、提携工場(34社)が作った商品を中間業者を通さず直接消費者に販売する。いわば、工場直販ブランド。現在、34の工場と提携しているが、そのほとんどが同時に海外の有名ブランドへも商品を卸す高い技術を持っている。商品タグを見てみると、「factolier by IMAEDA」と記されている。タグに生産工場の名前まで入れて、その高い技術力を売りにしているのだ。

顧客の声。
「今までは、出来上がったものをただ着るだけだった。ファクトリエの商品はストーリーを買う感じ。この人が作っていて、こういう機械を使っている。そういうことを知ると、このジーンズしか履けない。」

ファクトリエのホームページを見てみると、生産者の顔や現場の様子など、文章と写真で表現されており、工場のストーリーを目の当たりにすることができる。

ファクトリエの創業は2012年。社員5人。まだ小さなベンチャーだ。ECサイトに掲載する商品のモデルは、社長自ら経費削減のために務める。長身でイケメンだからこそできる技。その人こそ、ファクトリエ社長:山田敏夫(33)。

20160407_山田敏夫_カンブリア宮殿

番組公式ホームページより

なぜ山田は日本の工場を前面に出すブランドを作ったのか?

「日本の服は、着心地が良く、腕がまわしやすいパターンや、肌に当たる部分が優しく縫われていたり、目に見えない所にたくさんの細かい配慮がある。メード・イン・ジャパンが減少しているなら、すぐにでも手をつけようと始めた。」

衣類の国内生産比率は25年前には約50%あったが、海外に拠点は移り、今やわずか3%。この危機的状況を何とかしたいと山田はファクトリエを創ったのだ。提携する34の工場は山田が自分の足で探してきた。最初に提携したのが、熊本・人吉市、HITOYOSHI。

国産高品質シャツのHITOYOSHI株式会社 – 公式サイト

ここで職人の一人にインタビューしてみる。
「当社のブランド名が入るということは、それだけ責任感が出てくるし、もっと頑張ろうと思う。」

高いモチベーション。山田は、やる気を出す仕組みを契約の中にも埋め込んでいる。商品の販売価格の決定権を工場に渡したのだ。しかも、中間業者を廃し、工場側の取り分も増やした。一般的なブランドは2割程度だが、ファクトリエの提携工場は5割だ。工場は売れる価格でいいものをつくれば儲かる仕組みだ。すると提携先の工場に変化が。

「今まで決められた金額で作って納品すれば終わりだったのが、世の中の人が買うことを意識し始めるので、どういう縫い方やデザインやシルエットがいいか、いろいろなことを話し始める。それを考え出すのは大きい。」

販売価格を決められるので、工場は技術や手間を惜しまなくなり、顧客は質の高いものをリーズナブルな価格で手に入れることができる。

フレックスジャパン

工場が販売価格を真剣に考えるようになる。この工場の社長インタビューより。
「利益を取ろうと上乗せすると、結局高くなる。その時は儲かっても、売れ続けないと、次のオーダーが来ない。いくらで店頭に出るか、意識しないといけない。」

ファクトリエでは、工場とお客、作り手と使い手をつなぐ活動も行っている。銀座のお店スペースで始まったのは、お客を招いた新作スニーカーのお披露目会。作ったのは昔からのシューズメーカーのムーンスター。

ムーンスター

ムーンスターの商品紹介から。
「スニーカーは革靴と同じように、熟練の職人の力がないとできない。それが国産のヴァルカナイズ製法の良さにつながっている。」

ヴァルカナイズ製造とは、スニーカー本体と靴底をつなぎ合わせる際の製法のこと。ゴム底を貼ったスニーカーを巨大な窯の中に入れ、130℃もの温度で加熱し、本体と靴底を接着する。こうすると、ゴム底がしっかりと接着され、はがれにくくなる。ただし、大型の設備が必要になるため、国内でもこの製法をやっているのは数社のみ。こうした技術を映像で紹介し、顔を突き合わせて説明する。だから、作り手の技術や思いがより深く伝わる。

(参加者の声)
「高級ブランドに比べたら、値段は高くないのに、品質は高い。職人のこだわりも、価値あるものとして、ファクトリエはいいと思う。」

創業4年のアパレルベンチャーが目指しているものは?
「メード・イン・ジャパンで日本から世界ブランドをつくりたい。衣食住における日本製の価値は、日本の文化そのもの。」

『メード・イン・ジャパンの底力 工場ブランドで世界に挑む!』

「世界の一流ブランドを作っている工場を厳選している。品質は世界の一流ブランドに負けない。しかし価格は工場が決めて、直販なのでリーズナブルというのが特徴」

アパレルの国内生産は危機的状況なのか?
「30年前の10分の1以下なので、ずっと右肩下がりの業界。」

日本の繊維産業は絶滅危機に瀕しているが、歯止めがかけられるか?
「歯止めはかけられる。日本の技術というのは、世界の有名なブランドがこぞって日本で作っていたりする。仕組みを変えれば、技術が生かされるのを実感している。」

(村上氏がいう)
「さっきのVTRに出てきたような名人芸みたいな職人さんが失職するというのはもったいないですよね。資源みたいなもんですからね。」

工場側が販売価格を決める理由は?
「2つ理由があって、1つが、工場側が「このお金ではめて」という言葉がよくアパレル業界で使われるが、5000円の商品の原価が20%だとしたら「1000円ではめて」と言われる。その1000円の中で生地を買って縫製すると、単価が合わないので赤字になる。私がやったのは、工場側が今まで培った技術を入れて、しかも工場の名前が商品に入るので、全力を注いで「いい物を作ろう」と。2つ目は、それをやっていくうえで、彼らが名前を入れて、工場がブランドを作る一番のメリットは、社内外のモチベーションだと思う。ある意味、アイデアを出さなかったところが、出せば出すほどいい物が作れる。技術力も注ぎ込めるし、社員のモチベーションも上がる。」

 

■ 「シャツの行商もやりました」 イケメンの創業奮闘記

山田は熊本市の出身。1982年、100年続く老舗婦人服店の二男として生まれた。転機は大学時代、フランスに留学してグッチでアルバイトした時のこと。その店で働いてたグッチの女性従業員から、忘れられない一言を言われた。

「日本には本物のブランドが無い、と言われた。ヴィトン、グッチ、エルメスも全部、ものづくりからブランドは生まれるという考え方」

エルメスが元々、馬具の工房だったように、世界の一流ブランドは職人の手作りから始まり、長い年月をかけて今のブランドになった。そうしたアパレルブランドは日本にはない、と言われたのだ。それなら俺が作ると、山田は立ちあがり、ファクトリエというブランドを立ちあげた。最初に作ったのは白のYシャツ400枚、段ボール15箱分。実はここから山田の七転八倒が始まる。

「初回生産の最低量が400枚と言われ、400枚作ったが、販売価格1万円のシャツが400枚、原価200万円で全く売れなかった。私は、勝手に工場を口説くのが一番難しいことで、ここが何とかなれば、いい物なので。いい物が世の中の半額ぐらいで買えるので、売れるはずだと思った。400枚のシャツは私の6畳のアパートに納品してもらった。ダンボールが15箱ぐらいあって、横には寝られないので縦に寝る。窓も遮るので、売れれば、日が少しずつ差してくる。」

どうやって売り切ったんですか?
「10個くらい、いろいろなことをやったが、どれもうまくいかず、一番効果的だったのが“着こなしセミナー”。企業200社に電話をかけたら13件アポが取れた。比較的、人事部・総務部の人は社内にいて、余裕がある人も多いので電話に出てくれる。「無料なら“着こなしセミナー”をやっていい」と。社員に声をかけるねと。その代わりに言ったのは、「無償だが、最後にシャツを売らせて欲しい」と。完売して、支払いができた。」

行商みたいなこともやったと聞いたが?
「“着こなしセミナー”の行き帰りの途中に、喫煙所で10人ぐらいタバコを吸っている。その人たちに「シャツを買いませんか」と。100人ぐらい声をかけたが、1人しか買ってくれなかった。」

(村上氏)
「工場直販のECサイトと言うと、先端的なイメージがあるけど、泥臭いというか、人と人の結びつきを大事にするというか、結局ね」

 

■ “飛び込み訪問”で工場探し 急成長ブランドの舞台裏

新たな提携先の工場発掘は今でも続く。岩手県は二戸駅。山田が工場探しにやってきた。到着早々、タウンページを探し始めた。地方の工場はホームページ製作をしていない所も多く、一番頼りになるのがタウンページだという。アポが取れるまで片っ端から電話を架ける。アポが取れたら住所を写メで撮り、早速訪問へ。

急成長の異色ブランド。工場探しは“飛び込み訪問”で。

「現地に行って、工場の中に入ってみないと、いい工場か、どういう工場か分からない。」

月の半分ぐらいは工場を見て回っている。工場訪問は山田の役割。創業から4年、訪問した工場の数は550社にのぼる。岩手県北部、二戸辺りはもともと縫製工場が多くあった。今でも残っている工場はきっと高い技術を持っているはず。この日訪れたのは三和ドレスという創業50年の老舗メーカーだ。

三和ドレス

突然アポを取って、その日工場を訪れるのは、工場のありのままの姿を見たいからだという。早速、縫製の現場へ。手渡された商品には有名な海外ブランドのタグが。高い技術を持っている目安になる。冠婚葬祭用のスーツやドレスを中心に、海外ブランドなど10数社の縫製を手掛けていた。現場を案内してもらっていると、ある機械に山田の目が留まった。スポンジングという工程を行う機械。輸送の間に伸びた生地に高熱の蒸気をあて、本来の状態に戻す工程だ。3%ぐらい、どんな素材でも短くなるものなのだそうだ。この機械自体が大きいので、なかなか広い工場でも置けない代物だ。スポンジングした生地は縫製後も型崩れしない特徴を持つ。また、配送スペースには、製品に負荷をかけないように、2階の最終工程場から、トラックを横付けする配送口まで、トロリーで直結しており、ハンガーにかけたままで衣類を運ぶ工夫がしてあった。なるほど、こういう現場状況は、実際に訪問してみないと分からない。最後に山田が見に行ったのはトイレ。技術だけでなく、整理整頓や衛生面なども確認。提携を検討するチェックポイントは30項目に及ぶという。

「10分の1になった業界で、残っているだけで素晴らしい。」

こうした飛び込み訪問を繰り返し、この1年で提携工場を20社増やした。そして今回、新たに提携しようという工場が。

日貿産業

国内外のコートを作ってきた一流の工場でトレンチコートをつくろうとしている。更に山田が惚れ込んだポイントが。工場内に標語が20か所以上に貼ってあること。

『真剣だと知恵が出る
 中途半端だと愚痴が出る
 いい加減だと言い訳ばかり』

「いろいろな所で目についてそれが頭に入っていく。それがすごく徹底されている。」

『身の回りの整理は品質向上の第一歩』

『買う人の身になってよい背品をつくりましょう』

標語ってそんなにポイント高いんですか?
「やるのとやらないのとでは全然違う。どれだけ伝え続けるかが大事。日貿産業としての道がちゃんと記されている。」

一方、日貿産業の村田社長が提携を決めた理由は?
「山田さんとやってみようと思ったのはネット販売。海外展開までやろうとしているので、希望が持てる。」

厳しい地方の工場にとって、ファクトリエは一つの希望になっている。

(村上氏の質問)
「最小ロットが1000というときには、ファクトリエはどのくらい買い取るんですか?」

「ファクトリエは工場から、初回生産量の50パーセントを買い取る。最初は100パーセント買い取っていたが、ファクトリエの立ち位置が、“いい商社”になってしまった。全部買い取るし、言い値を通すし、いい人だと。そこで、50パーセントしか買い取らないと決めた時に、工場が初めて市場に対して、この値段で本当にいいのかと主体的に考えるようになった。」

「やるリスクとやらないリスクと両方ありまして、リスクはやる事だけをよく言うが、やらないリスクは、工場が今と変わらない毎日。従業員が辞めたり、新入社員が入らないとか、いろいろなリスクをはらんでいる。やるリスクというのは実は計算できる。基本的に、工場の原価を計算すると、やるリスクは10万円、20万円くらい。むしろ、最近は「半分買い取ってくれてありがとう」と言われる。」

『“やらないリスク”より“やるリスク”を取れ』

(村上氏)
「ファクトリエというのは、“ものづくり”と、“メード・イン・ジャパン”と、“地方創生”という今の日本を象徴しているようなキーワードが揃った企業。地方創生をしようとしていなくて、逆ですもんね。各地の優秀な技術を持つ縫製工場が再生していく。雇用が増えて、地域の活性化にも役立つわけですよね。」

「地方創生ではなく、私たちが世界ブランドになれば、結果として、34工場とかこれから増えていく工場が、全て元気な状態になっていく。そこを目指すと日本のものづくりがもう一回、きちんと安定していくと思う。」

 

■ 日本のものづくりを守れ 工場の就活イベント開催

地方の工場には共通したある悩みがある。職人の高齢化が進む中、なかなか若者が入ってこない。入ってきてもやめていく者が多いというのだ。後継者不足ということ。ファクトリエはこの問題の解決に動き出した。銀座のショールームで開かれたのは、ファクトリエの提携工場と東京の学生たちを集めた就活イベント。イベントがこれが2回目で、アパレルに興味を持つ若者80人に提携工場をアピールする。今回参加した提携工場は9社。

クスカ

ファクトリエとの提携で仕事が増え、20年ぶりに20代の若者を採用することができた。

(村上氏)
「若者がものづくりに魅力を感じていないのでは?」

「向き不向きだと思っていて、人と話すのが苦手な子は結構多い。そういう子はものづくりに向いている。コミュニケーション力が高い子は向いていない。じっとしていられなくなる。何か話したくなる。だから、コミュニケーションが下手で、地味な作業もいとわない子は長く続く。後は、単純にいい物を真面目にやっていく人もいる。そういう子はたくさんいると思う。今まで工場の就職活動のイベントは、誰もやってこなかった。だけど、私たちであれば、学校の先生といろいろなつながりがある。学生を70~80人すぐに呼べて、そういう機会をつくり出すことはできる。それを淡々とやりながら、「一緒に日本から世界ブランドをつくる船に乗ってください」と。そうしたら、工場に若い人たちが入ってきて長く続く。若返りが必要なので、その循環は率先してでもやっていかなければならない。」

編集後記
山田さんに意地悪な質問をした。「日本発の本物のブランドって必要なんでしょうか?」彼は困った顔になり、しばらくして「そんなこと考えたこともありませんでした」と答えた。正解だと思った。正統的な挑戦者は、「果たして自分の挑戦に意味があるのか」という迷いなどなく逡巡もしない。まず行動に移す。

『逡巡しない挑戦者』

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