「監査等委員会」運用改善に知恵 企業統治の向上模索 ホンダ全取締役で審議 みずほFG3社相互に機能強化

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■ 新聞記事の振り返りの前に会社機関のおさらいから

経営管理会計トピック

毎年この株主総会ラッシュ後の総括時期には、様々な論点のまとめ記事が出て、興味深く読むことができます。今回取り上げる論点は、会社機関の選択問題で、最も若い(2015年導入)「監査等委員会設置会社」のお話になります。

「監査等委員会設置会社」は、株式会社の代表的な3つの機関設計の内のひとつです。その他に、従来型の「監査役会設置会社」、欧米流のガバナンス形態に最も近い「指名委員会等設置会社」があります。

「監査」「委員会」の語の重複、「等」の位置など、3つそれぞれの名前からその特徴を直感的に把握することは難しく、会社法務の専門家に対して、ブランドマネージャー並みのネーミングセンスを期待するのは無理としても、もう少し初学者にも分かりやすい名前にならなかったのかと、自身の記憶力を棚に上げて思うところであります。(^^;)

(出典)アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 Japan Corporate / M&A Newsletter 2015年5月

● 代表的な株式会社の企業統治モデルのイメージ図

20160505_3つの会社統治モデルの比較_イメージ図

● 指名委員会等設置会社
・取締役会の中に社外取締役が過半数を占める委員会(指名委員会、監査委員会及び報酬委員会)を置く
・取締役会が経営を監督する一方、業務執行については執行役にゆだね、経営の合理化と適正化をはかる

● 監査等委員会設置会社
・過半数の社外取締役を含む取締役3名以上で構成される監査等委員会が、取締役の職務執行の組織的監査を担う

● 監査役会設置会社
・監査役(会)は、監査報告の作成、第三者的立場から、取締役の業務執行を監査(監視・監督)する
・3人以上の監査役が必要で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない

 

■ 監査等委員会設置会社が増える理由とは?

決まって、この時期に会社機関選択が議論されるのは、株主総会にて、会社機関設置の選択が議決されるからです。この時期の恒例行事と思ってください。

2017/7/24付 |日本経済新聞|朝刊 「監査等委員会」運用改善に知恵 企業統治の向上模索 ホンダ、全取締役で審議 みずほFG3社、相互に機能強化

「企業の統治形態の一つである「監査等委員会設置会社」に移行する企業が増え、上場企業の2割を超えた。社外取締役を中心とする委員会が経営を監視する仕組みだが、海外投資家や専門家からは「社外役員の数が増えず、中途半端な制度」などと厳しい声も上がる。運用の改善に向け、各社は知恵を絞っている。」

(下記は、同記事添付の「監査等委員会設置会社は東証上場企業の2割超に」を引用)

20170724_監査等委員会設置会社は東証上場企業の2割超に_日本経済新聞朝刊

その導入から10年以上を経ても、なかなか浸透しない「指名委員会等設置会社」。その理由は、社外の人間(社外取締役)に重要な人事や報酬を決めさせることへの拒絶反応や、社外取締役を招聘すること自体のハードルが高いことが挙げられます。

そこに輪をかけて、東京証券取引所などが制定したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)で、社外取締役を2人以上選任するよう求めるようになりました。そうなると、監査役を置く監査役会設置会社の場合、複数の社外監査役に加えて社外取締役を招くとなると社外役員選任の負担が重くなり、成り手を探すのが一苦労。そこで、監査等委員会設置会社に移行し、既存の社外監査役2人をそのまま社外取締役に横滑りさせて監査等委員にすれば、指針の規定を満たせるという安直さ(おっと、口が滑りました、簡便さ)から、ここ最近、選択する企業が急増しました。

詳細は、下記の過去投稿をご参照ください。

⇒「「監査等委」割れる評価 導入1年、400社超が設置 「改革が中途半端」/「迅速に意思決定」
⇒「「監査等委」設置広がる 上場600社、企業統治強化 - 監査等委員会設置会社への移行メリットとは?

誤解を恐れずに、至極簡単に言い放つと、経営と執行の分離を明確にした欧米流のガバナンスを前面に打ち出して、外国人投資家を惹きつけたい企業は、指名委員会等設置会社を選びます。社外役員の招聘が難しいが旧来の監査役による企業統治を好む企業は、従来通りの監査役会設置会社のまま留まるか、双方のいいとこ取りの監査等委員会設置会社を選ぶという訳です。

 

■ 監査等委員会設置会社における企業統治の実態レポートを読む

では恒例行事となった、会社機関選択を変えた会社のレポートを本記事内容を追って整理した形で見ていきたいと思います。

● ホンダ
・監査等委員会設置会社への移行を機に、業務についての決定を業務執行取締役や執行役員に大幅に委任
・一方で、14人で構成する取締役会が経営戦略などに関する意思決定という重要案件に取り組みやすくした

移行目的:
一部の取締役で構成する委員会に経営トップの指名や役員報酬の決定権を与えるより、取締役全員でしっかり議論した方が納得感を得やすいと判断

効果:
取締役会では発言が増え、意見も求めやすくなる
取締役会が個別案件に時間を割かれずに、経営全体についての議論に集中できるようになる

工夫措置:
5人の監査等委員は社長直轄の内部監査部門に指示したり報告を受けたりする
→監査役を置いていた時よりも連携しやすくする体制にし、監督の実効性や効率性も高める

「執行と監督の分離を進めるには、指名・報酬・監査の3委員会を置き、役割が明確な「指名委員会等設置会社」になる手もある。だがホンダはあえて監査等委員会設置会社を選び、指名や報酬などを取締役全員で審議できる利点を取った。」

(下記は、同記事添付の「監査等委員会設置会社の仕組み」を引用)

20170724_監査等委員会設置会社の仕組み_日本経済新聞朝刊

● みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券(みずほフィナンシャルグループ傘下)
狙い:
グループ全体で監督機能を高める
・3社の親会社であるみずほFGの取締役がみずほ銀の監査等委員を兼務
・独立性を維持したまま、意思疎通を密にして情報の把握や共有をしやすくする
・その一方で、グループ全体の監督機能を上げるように工夫する

効果:
・各社の監査等委員会間で連携しやすくなり、一体的な監査・監督体制を敷くことができる
・独任の監査役同士では難しい部分を補うことができる

真の理由と思えるのは、

「親会社のみずほFGは2014年に指名委員会等設置会社になっており、グループ会社の経営トップらもみずほFGの指名委が人選に関わる。事業3社も同じ指名委員会等設置会社にすると機能が重複し、かえって非効率になる恐れがあったという事情もある。」

持株会社がすでに指名委員会等設置会社になっており、その子会社がまた重複して指名委員会等設置会社になっていては、経営と執行の分離を厳格にするその機関設計が、持ち株会社という複層的組織ヒエラルキーにより、その持前のメリットを十分に生かすことができないことへの日本人ならでは創意工夫の結果と言えます。

みずほファインナンシャルグループの組織改革は次の過去投稿も参考にしてください。

(参考)
⇒「みずほ、顧客別に組織 銀行・信託・証券、一体でサービス/「ワンみずほ」総仕上げ カンパニー制導入(前編)
⇒「みずほ、顧客別に組織 銀行・信託・証券、一体でサービス/「ワンみずほ」総仕上げ カンパニー制導入(後編)

 

■ それで、あなたは監査等委員会設置会社という選択肢に賛成なのか?

筆者の個人的な意見としては、みずほFGのような積極的な理由で、持ち株会社における有効なコーポレートガバナンスの形態を探っていくうちに辿り着いた、というのは積極的に評価したいと思います。しかし、業務執行の機動性を上げる等、積極的なことを表明しつつも、指名委等設置会社のように、会社法により3委員会とも過半数を社外取締役としなければならないこと、指名委員会が役員人事の決定権を握ることについて、抵抗感が大きい会社の消極的選択の結果ならば、それまでの評価ということになります。

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文前会長兼CEO退任劇はまだ記憶に新しいと思います。

(参考)
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(6)迫真 迷走セブン&アイ まとめ記事を1本にまとめる! - 日本経済新聞まとめ

サード・ポイントによる株式の保有が明らかになったこともあり、セブン&アイは指名報酬委員会を設置しました。指名委員会等設置会社ではないセブン&アイにとって指名報酬委はあくまで社外の意見を聞く任意の諮問機関であり、本来は決定権がありませんでした。任意機関がまるで法定の意思決定機関のように後継指名をしたことの是非は大いに議論されました。

上記の記事のように、ホンダがその轍を踏まないように、監査等委員会設置会社への移行目的のひとつに、キチンとこの矛盾と向き合ったことも前向きに評価できると思います。

で、結局何が言いたいのか?

会社機関は器に過ぎず、その器にどのような飲み物を注ぐことができるかがその会社の真の価値を決める!

会社機関の選択それ自体が会社の価値を決めることはありません。株式会社自体が、社会的に意義のある事業を行うことで、社会貢献する公器であると心の底から信じています。そういう事業をより効率的かつ生産的に行うことができるように会社組織という器が用意されるもので、その上で、会社法という強制法により、会社機関を選択するだけの事。組織は人なり。結局は、その会社にいる人が意義のある事業を行う。それに尽きます。(^^;)

(参考)
⇒「日本流のコーポレートガバナンス 執行役員制度と任意の指名委員会制度について
⇒「「指名委」設置4倍 475社 企業統治意識高まり14年比で 人事透明に、運用カギ

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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