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■ 「揺れる企業統治」次の論点は「株主との対話」

経営管理会計トピック

前回に引き続き、企業統治に関する連載へのコメント投稿になります。「株主との対話」が話題になりますと、必然的に、「ROE」水準とトップの信任投票率の相関に注目が集まらざるを得ません。

2016/7/9付 |日本経済新聞|朝刊 揺れる企業統治(中)2年目の株主対話 揺れる企業統治  緊張と連携 同時進行

「5月4日、米ビバリーヒルズで開かれた経済・金融界の世界会議。米2位の公的年金、カリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)のクリストファー・エイルマン最高投資責任者(58)の提案に、会場は拍手で沸いた。「日本の企業統治問題で一緒に取り組もう」。相手は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の幹部だ。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、同記事添付のカルスターズとGPIF連携のイメージ写真を転載)

20160709_日米の公的年金が連携を模索する_日本経済新聞朝刊

公的年金の運用で投資規模の大きい、「物言う年金」であるカルスターズと、約30兆円の日本株を保有する世界最大の公的年金、GPIFの日米連合。この強力なタッグが市場の耳目を集めるのは当然として、コーポレートガバナンス・コードにも言及がある「株主の対話」。日本市場での「株主対話」の進め方について、関係者はどこまで暗中模索なのでしょうか?

GPIFからの通達により、緊張感が高まっている場面も見受けられます。

「GPIFはすでに動く。1月下旬、日本株投資の委託先の運用会社に「対話活動の評価割合を高める」と通告。運用機関の対話内容を精査して、対話力がないと見なせば、委託する資金を減らす可能性を示唆した。」

「効果も表れている。GPIFから5兆円の日本株運用を受託している三菱UFJ信託銀行は今年度から対話先を増やした。従来は成長企業が中心だったが「今年度は資本効率などに問題を抱えた企業とも、課題解決に向けた議論を始めた」。資産運用部の三橋和之次長(46)はこう話す。」
その一方で、

「「大株主の取ったアンケートで顧客満足度が高いとの結果が出ました」。サカイ引越センターの営業マンは同社の約7%株主、みさき投資(東京・港)が手弁当で実施した市場調査を手に顧客を回る。安さに加え、「質」を前面に出せばブランド価値は上がる。真鍋彰郭取締役(63)は「みさきは新たな気づきを与えてくれた」と一目置く。
 株主還元の充実や社外取締役の導入など、投資家から企業への要望は「上から目線」になりがちだ。みさきの中神康議社長(52)は「『下から目線』でいく」と話す。みさきの新田孝之氏(45)は昨年、ベビー用品大手ピジョンの要請で社外取締役に就いた。」

大株主のファンドと柔和路線を取り、共に企業価値を高めるべく、協調を進めている企業もあるということです。

再び、企業へ対立姿勢を崩さないファンドの例も。

「円滑な対話ばかりではない。6月29日に開かれた地図大手、昭文社の株主総会。質問に立った米運用会社RMBキャピタルの細水政和日本株式投資部長(40)は切り出した。「企業統治を向上させるうえで指名・報酬委員会は重要だ。設置を検討しないなら会社議案に反対する」。公の場で発言するのは今年からだ。
 米RMBは富裕層マネーを約4500億円運用する長期投資家だ。「対話だけのファンドはくみしやすい」。ある企業トップの言葉が細水氏の脳裏をよぎる。企業の変化を促すには投資家が変わらなければ、との危機感が背中を押す。」

硬軟取り合わせた「株主との対話」。その対立構造、緊張関係が一番強く現れたのが、経営TOPに対する信任でした。

 

■ 「揺れる企業統治」経営TOPの選任事案は「株主との対話」の中でROEに注目!

株主総会にて、経営TOPの信任票が著しく減少した原因の一つに、ISS等の議決権行使助言会社の意見表明がありました。

2016/6/22付 |日本経済新聞|朝刊 米助言ISS、400社に反対推奨 株主総会の取締役選任議案で

「世界の機関投資家に影響力を持つ米議決権行使助言大手、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が日本の3月期決算企業の定時株主総会を前に、約400社の取締役選任議案に反対を推奨したことが分かった。独自に定める資本効率基準に満たないためだ。不祥事を起こした企業の人事案にも反対。助言を参考にしている海外投資家の議決権行使に影響が出る可能性がある。」

(下記は、同記事添付の東証1部上場企業のROE推移グラフを転載)

20160622_東証1部上場企業のROE_日本経済新聞朝刊

(下記は、同記事添付のISSが取締役選任に反対する基準と対象企業の一覧を転載)

20160622_ISSが取締役選任に反対を推奨する主な基準と対象企業_日本経済新聞朝刊

これを受けて、9日の記事には、

「6月24日に株主総会を開いた三菱ケミカルホールディングス。小林喜光会長(69)と越智仁社長(63)の再任議案への反対票はいずれも12%強と昨年より8ポイント高まった。」

「「過去5年平均の自己資本利益率(ROE)が5%未満で改善傾向がない」。米議決権助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が、低収益を理由にトップ選任案に反対を表明したのが大きい。三菱ケミカルの越智社長は「グローバル化で収益性を高める」と、ROEを重視する投資家に目配りする。」

と、ここでもROEが注目を浴びています。

 

2016/7/9付 |日本経済新聞|朝刊 揺れる企業統治 低ROE増える不信任票 株主への対応促す

「6月24日の定時株主総会で津賀一宏社長(59)の取締役再任への賛成率が約66.7%と前年から約20ポイント下がったパナソニック。買収防衛策を総会に諮らず、米議決権行使助言会社が選任に反対したのが主因とみられるが、社内は対応に追われる。」

(下記は、同記事添付のROE水準と経営トップの信任率の相関グラフを転載)

20160709_ROEが低いとトップ選任議案への賛成率は下がる_日本経済新聞朝刊

「トップ選任議案への賛成率が大幅に下落した企業が企業統治指針のある記載を改めて注目している。「総会で相当数の反対票が投じられた場合、原因を分析して株主との対話などを検討すべきである」との項目だ。

 

■ 「揺れる企業統治」企業統治指針の中で、「相当数の反対票」の相当の定義は無いのですが、、、

同記事の続きで、コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)について、次のような指摘がありました。

「指針は「相当数」がどの程度なのか明確に定めておらず、企業の対応は割れる。企業統治の専門家は「9割超の賛成を集めるのが通常。10~20%の反対があった企業はやり過ごせないはずだ」と指摘する。
 米国などと異なり、日本では複数の機関投資家が総会議案を巡って事前に協議する慣行は定着していない。それでも独立社外取締役の複数選任や自己資本利益率(ROE)などで「最低限のハードル」が投資家に共有されてきた。その結果、企業が手をこまぬいていれば想定以上に反対票が集まる。そんな事実を突きつけたのが今年の総会だ。」

こうなると、ROEだけが、経営TOPの成績表のように一人歩きしそうで(もう一人歩きしているとも言えますが)、少々怖い気もします。従前から、筆者が指摘しているように、

①そもそも分母にも利益剰余金(いわゆるこれまでの企業活動の成果)が含まれているROEの比率指標としての数学的正しさへの疑念

②財務レバレッジを高めたり、株主還元を積極的に行うだけで、ROEの数値の操作は容易に行え、それが企業の中長期的成長を阻害する要因になり得る

という点から、ROE一辺倒で経営者を評価することには声を大にして反対です。

「ROEが低迷し、村上英三社長(63)の取締役再任への賛成率が約57%と昨年から約29ポイント下がった川崎汽船。反対票を投じた大株主、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントの保有比率は3月末で3割弱だから、それ以外の多くの株主が同調した計算だ。
 議案への賛否は株主が企業に伝える最大のメッセージだ。企業は株主の思いをどう受けとめるのか。来年の総会に向けた対話は始まっている。」

短期主義(ショートターミズム)ありきの短期的株式保有者から、低ROEだけを指摘され、内部留保を取り崩せ! と要求されて、唯々諾々とこれまでの経営成果を簡単に、現株式保有者にばらまくのが、本当にあるべき「株主との対話」なのでしょうか?

 

■ 「揺れる企業統治」先手を打った日立製作所。アグレッシブにCEO選任ルールを選定

これが吉と出るか凶と出るか、まだ経過を観察しないと真相は分かりませんが、日立がまた先進的な取り組みを進めています。

2016/7/9付 |日本経済新聞|朝刊 日立、取締役会任務に「CEOの解任」 独自統治方針に明記

「日立製作所は企業統治を定めた独自方針の中に、取締役会が担う仕事として最高経営責任者(CEO)の「解任」や「後継者選び」を明記した。解任を明示することで緊張感のある経営につなげ、質の高い経営者選びにつなげる狙いだ。」

「金融庁や東京証券取引所が主導して昨年、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が適用された。日立はこれと別に取締役の要件などに関する独自の「コーポレートガバナンスガイドライン」を定めている。このほどガイドラインを改定し、取締役会の仕事としてそれまでCEOの「選任」としていたのを「選解任」に改めた。」

日立はCEOの条件として、
 ①優れた人格や指導力
 ②経験
 ③実績を有し企業価値向上を実現できること
などを掲げました。

取締役会によるCEOの選解任については「指名委員会の提案を踏まえる」との文言も加え、透明性の高い人選を強調し、さらに「取締役会はCEOの後継計画を継続的に監督する」ことも記しました。

日立は、「指名委員会等設置会社」という会社機関設置を選択しており、経営(モニタリング)と執行の分離を明確にした、英米流の企業統治を選択しています。

「日立は2012年5月に同ガイドラインを制定した。同年の株主総会で取締役の過半が外国人を含む社外出身となるのに伴い、取締役会の役割や取締役・社外取締役の適正な基準などを記した。株主による経営監視の視線が強まるなか、トップの「解任」にもふれることで、企業統治の質の向上につなげる。」

ここのところ、創業者を交えたトップ交代劇で、複数の会社が話題になっていますが、そもそも後継者の指名の仕方は、その企業体の企業体質・企業風土をそのまま体現するものです。どういう形態が好ましいか、それは会社それぞれなのですが、それについては、このコメント連載投稿の中で、筆者の意見を明らかにしていきたいと思います。

次回は、IR周辺の話題となります。まだまだ、このテーマの連載が続きます。

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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揺れる企業統治(2)2年目の株主対話 低ROE、増える不信任票http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むGPIF,ISS,ROE,みさき投資,エフィッシモ,カルスターズ,コーポレートガバナンス・コード,サカイ引越センター,パナソニック,三菱ケミカルホールディングス,川崎汽船,指名委員会等設置会社,揺れる企業統治,日立,昭文社,株主との対話,RMBキャピタル■ 「揺れる企業統治」次の論点は「株主との対話」 前回に引き続き、企業統治に関する連載へのコメント投稿になります。「株主との対話」が話題になりますと、必然的に、「ROE」水準とトップの信任投票率の相関に注目が集まらざるを得ません。 2016/7/9付 |日本経済新聞|朝刊 揺れる企業統治(中)2年目の株主対話 揺れる企業統治  緊張と連携 同時進行 「5月4日、米ビバリーヒルズで開かれた経済・金融界の世界会議。米2位の公的年金、カリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)のクリストファー・エイルマン最高投資責任者(58)の提案に、会場は拍手で沸いた。「日本の企業統治問題で一緒に取り組もう」。相手は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の幹部だ。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます (下記は、同記事添付のカルスターズとGPIF連携のイメージ写真を転載) 公的年金の運用で投資規模の大きい、「物言う年金」であるカルスターズと、約30兆円の日本株を保有する世界最大の公的年金、GPIFの日米連合。この強力なタッグが市場の耳目を集めるのは当然として、コーポレートガバナンス・コードにも言及がある「株主の対話」。日本市場での「株主対話」の進め方について、関係者はどこまで暗中模索なのでしょうか? GPIFからの通達により、緊張感が高まっている場面も見受けられます。 「GPIFはすでに動く。1月下旬、日本株投資の委託先の運用会社に「対話活動の評価割合を高める」と通告。運用機関の対話内容を精査して、対話力がないと見なせば、委託する資金を減らす可能性を示唆した。」 「効果も表れている。GPIFから5兆円の日本株運用を受託している三菱UFJ信託銀行は今年度から対話先を増やした。従来は成長企業が中心だったが「今年度は資本効率などに問題を抱えた企業とも、課題解決に向けた議論を始めた」。資産運用部の三橋和之次長(46)はこう話す。」 その一方で、 「「大株主の取ったアンケートで顧客満足度が高いとの結果が出ました」。サカイ引越センターの営業マンは同社の約7%株主、みさき投資(東京・港)が手弁当で実施した市場調査を手に顧客を回る。安さに加え、「質」を前面に出せばブランド価値は上がる。真鍋彰郭取締役(63)は「みさきは新たな気づきを与えてくれた」と一目置く。  株主還元の充実や社外取締役の導入など、投資家から企業への要望は「上から目線」になりがちだ。みさきの中神康議社長(52)は「『下から目線』でいく」と話す。みさきの新田孝之氏(45)は昨年、ベビー用品大手ピジョンの要請で社外取締役に就いた。」 大株主のファンドと柔和路線を取り、共に企業価値を高めるべく、協調を進めている企業もあるということです。 再び、企業へ対立姿勢を崩さないファンドの例も。 「円滑な対話ばかりではない。6月29日に開かれた地図大手、昭文社の株主総会。質問に立った米運用会社RMBキャピタルの細水政和日本株式投資部長(40)は切り出した。「企業統治を向上させるうえで指名・報酬委員会は重要だ。設置を検討しないなら会社議案に反対する」。公の場で発言するのは今年からだ。  米RMBは富裕層マネーを約4500億円運用する長期投資家だ。「対話だけのファンドはくみしやすい」。ある企業トップの言葉が細水氏の脳裏をよぎる。企業の変化を促すには投資家が変わらなければ、との危機感が背中を押す。」 硬軟取り合わせた「株主との対話」。その対立構造、緊張関係が一番強く現れたのが、経営TOPに対する信任でした。   ■ 「揺れる企業統治」経営TOPの選任事案は「株主との対話」の中でROEに注目! 株主総会にて、経営TOPの信任票が著しく減少した原因の一つに、ISS等の議決権行使助言会社の意見表明がありました。 2016/6/22付 |日本経済新聞|朝刊 米助言ISS、400社に反対推奨 株主総会の取締役選任議案で 「世界の機関投資家に影響力を持つ米議決権行使助言大手、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が日本の3月期決算企業の定時株主総会を前に、約400社の取締役選任議案に反対を推奨したことが分かった。独自に定める資本効率基準に満たないためだ。不祥事を起こした企業の人事案にも反対。助言を参考にしている海外投資家の議決権行使に影響が出る可能性がある。」 (下記は、同記事添付の東証1部上場企業のROE推移グラフを転載) (下記は、同記事添付のISSが取締役選任に反対する基準と対象企業の一覧を転載) これを受けて、9日の記事には、 「6月24日に株主総会を開いた三菱ケミカルホールディングス。小林喜光会長(69)と越智仁社長(63)の再任議案への反対票はいずれも12%強と昨年より8ポイント高まった。」 「「過去5年平均の自己資本利益率(ROE)が5%未満で改善傾向がない」。米議決権助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が、低収益を理由にトップ選任案に反対を表明したのが大きい。三菱ケミカルの越智社長は「グローバル化で収益性を高める」と、ROEを重視する投資家に目配りする。」 と、ここでもROEが注目を浴びています。   2016/7/9付 |日本経済新聞|朝刊 揺れる企業統治 低ROE増える不信任票 株主への対応促す 「6月24日の定時株主総会で津賀一宏社長(59)の取締役再任への賛成率が約66.7%と前年から約20ポイント下がったパナソニック。買収防衛策を総会に諮らず、米議決権行使助言会社が選任に反対したのが主因とみられるが、社内は対応に追われる。」 (下記は、同記事添付のROE水準と経営トップの信任率の相関グラフを転載) 「トップ選任議案への賛成率が大幅に下落した企業が企業統治指針のある記載を改めて注目している。「総会で相当数の反対票が投じられた場合、原因を分析して株主との対話などを検討すべきである」との項目だ。   ■ 「揺れる企業統治」企業統治指針の中で、「相当数の反対票」の相当の定義は無いのですが、、、 同記事の続きで、コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)について、次のような指摘がありました。 「指針は「相当数」がどの程度なのか明確に定めておらず、企業の対応は割れる。企業統治の専門家は「9割超の賛成を集めるのが通常。10~20%の反対があった企業はやり過ごせないはずだ」と指摘する。  米国などと異なり、日本では複数の機関投資家が総会議案を巡って事前に協議する慣行は定着していない。それでも独立社外取締役の複数選任や自己資本利益率(ROE)などで「最低限のハードル」が投資家に共有されてきた。その結果、企業が手をこまぬいていれば想定以上に反対票が集まる。そんな事実を突きつけたのが今年の総会だ。」 こうなると、ROEだけが、経営TOPの成績表のように一人歩きしそうで(もう一人歩きしているとも言えますが)、少々怖い気もします。従前から、筆者が指摘しているように、 ①そもそも分母にも利益剰余金(いわゆるこれまでの企業活動の成果)が含まれているROEの比率指標としての数学的正しさへの疑念 ②財務レバレッジを高めたり、株主還元を積極的に行うだけで、ROEの数値の操作は容易に行え、それが企業の中長期的成長を阻害する要因になり得る という点から、ROE一辺倒で経営者を評価することには声を大にして反対です。 「ROEが低迷し、村上英三社長(63)の取締役再任への賛成率が約57%と昨年から約29ポイント下がった川崎汽船。反対票を投じた大株主、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントの保有比率は3月末で3割弱だから、それ以外の多くの株主が同調した計算だ。  議案への賛否は株主が企業に伝える最大のメッセージだ。企業は株主の思いをどう受けとめるのか。来年の総会に向けた対話は始まっている。」 短期主義(ショートターミズム)ありきの短期的株式保有者から、低ROEだけを指摘され、内部留保を取り崩せ! と要求されて、唯々諾々とこれまでの経営成果を簡単に、現株式保有者にばらまくのが、本当にあるべき「株主との対話」なのでしょうか?   ■ 「揺れる企業統治」先手を打った日立製作所。アグレッシブにCEO選任ルールを選定 これが吉と出るか凶と出るか、まだ経過を観察しないと真相は分かりませんが、日立がまた先進的な取り組みを進めています。 2016/7/9付 |日本経済新聞|朝刊 日立、取締役会任務に「CEOの解任」 独自統治方針に明記 「日立製作所は企業統治を定めた独自方針の中に、取締役会が担う仕事として最高経営責任者(CEO)の「解任」や「後継者選び」を明記した。解任を明示することで緊張感のある経営につなげ、質の高い経営者選びにつなげる狙いだ。」 「金融庁や東京証券取引所が主導して昨年、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が適用された。日立はこれと別に取締役の要件などに関する独自の「コーポレートガバナンスガイドライン」を定めている。このほどガイドラインを改定し、取締役会の仕事としてそれまでCEOの「選任」としていたのを「選解任」に改めた。」 日立はCEOの条件として、  ①優れた人格や指導力  ②経験  ③実績を有し企業価値向上を実現できること などを掲げました。 取締役会によるCEOの選解任については「指名委員会の提案を踏まえる」との文言も加え、透明性の高い人選を強調し、さらに「取締役会はCEOの後継計画を継続的に監督する」ことも記しました。 日立は、「指名委員会等設置会社」という会社機関設置を選択しており、経営(モニタリング)と執行の分離を明確にした、英米流の企業統治を選択しています。 「日立は2012年5月に同ガイドラインを制定した。同年の株主総会で取締役の過半が外国人を含む社外出身となるのに伴い、取締役会の役割や取締役・社外取締役の適正な基準などを記した。株主による経営監視の視線が強まるなか、トップの「解任」にもふれることで、企業統治の質の向上につなげる。」 ここのところ、創業者を交えたトップ交代劇で、複数の会社が話題になっていますが、そもそも後継者の指名の仕方は、その企業体の企業体質・企業風土をそのまま体現するものです。どういう形態が好ましいか、それは会社それぞれなのですが、それについては、このコメント連載投稿の中で、筆者の意見を明らかにしていきたいと思います。 次回は、IR周辺の話題となります。まだまだ、このテーマの連載が続きます。 (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します