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人工知能で戦略組織 3省連携、企業と研究加速 -日本ならではの人工知能(AI)の開発戦略を考えてみる

経営管理会計トピック テクノロジー
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■ 日本の人工知能開発をブーストする!

経営管理会計トピック

日本政府も本腰を入れて、人工知能(AI)の開発に乗り出すようです。ここまでで、欧米、場合によっては中韓にも後塵を拝している、という危機感を持っているのかもしれません。

2016/2/27付 |日本経済新聞|朝刊 人工知能で戦略組織 3省連携、企業と研究加速

「文部科学省と経済産業省、総務省は、2016年度から共同で、人工知能(AI)の研究開発に乗り出す。10年間で約1000億円を投じ、理化学研究所など5機関で研究する。参加機関の研究計画を束ねる研究者主導の戦略センターを設置して予算配分を委ね、企業との共同研究を推進。基礎から応用まで一貫した研究を進め、世界に立ち遅れている人工知能開発で巻き返し、新産業の創出につなげる狙いだ。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、記事添付の主な国・地域の人工知能の研究の取り組み整理表を転載)

20160227_主な国・企業の人工知能研究_日本経済新聞朝刊

ここで、日本政府主導の人工知能開発の取り組みのあらましを記事から整理します。

どの機関で担当するの?
・文科省所管の理研と科学技術振興機構(JST)
・経産省の産業技術総合研究所と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
・総務省の情報通信研究機構
の5機関。

「理研は研究者100人を擁する中核拠点、AIPセンターを今夏までに設置する。産総研は昨年5月に発足した人工知能研究センターを拡充して産業界との共同研究を進め、情通機構は脳情報通信融合研究センターで脳科学と人工知能をつなげる研究に取り組む。JSTとNEDOは大学や企業などの研究者が広く参加する人工知能プロジェクトを立ち上げる。」

「戦略センターは16年度の早い時期に設置する。5機関のAI研究のトップで構成し、どの機関にも属さない研究者をセンター長に招く。複数の機関が似たような研究をすることがないよう、全体を見通して研究テーマを選定し、予算配分を決める。企業からの共同研究の相談窓口にもなる。」

記事ではひととおり、日本の立ち遅れ感と、キャッチアップの要諦を簡単に次のようにまとめています。

・日本の現状分析
「AIは米国が年間300億円以上、欧州が200億円程度の予算を投じて研究を進めており、米グーグルなど民間企業も積極的に投資している。日本は人材と資金の不足から、立ち遅れが否めない。」

・日本の課題
「AIは研究の進展が速く、世界の動向に機動的に対応する必要がある。研究の実際を把握している研究者にマネジメントを委ねて意思決定を速め、研究を加速する。」

・日本の施策
「政府は16年度から始まる第5期科学技術基本計画でAI研究を強化し、ロボット技術や材料開発と組み合わせて新製品やサービスを生み出す技術基盤を構築することを目標に掲げている。」
「理研と産総研は、政府が今国会に提出する法案で、特定国立研究開発法人に指定される見通し。優れた研究者を高額で雇用できるようになるほか、所属する研究者が企業や大学の役職を兼任しやすくする制度を設け、産学との連携を推進する。」

誰が何のために人工知能(AI)を開発するのか?
「ニーズ」から追えば、具体的な用途、解決したい課題に最適化されたAIを開発すべきですし、「シーズ」から追えば、日本の研究者が先んじている(またはこれから先んじられそうな)領域のAIを開発すべきでしょう。人と金を集めたから自動的に研究が進む、と考えるのは安直過ぎです。

 

■ じゃあ、日本ならではの人工知能の使い方、開発の方向性はどこにあるんだろう!?

その前に(あまりに焦らすな!)、統計データをご紹介。ことに当たるためには、落ち着いて、客観的な分析がまず必要です。

2016/3/10付 |日本経済新聞|朝刊 (でーたクリップ)AI特許出願、日本は3位

「人工知能の研究開発が世界的にブームだが、日本の実力をみると企業は一定の存在感があるものの、大学などは影が薄い。特許庁が昨年まとめた2014年度の特許出願技術動向調査報告書によると、人工知能技術の特許出願件数では日本国籍の出願数が全体の約15%を占める一方、論文発表数をみると日本国籍の比率は約2%にとどまった。」

(下記は、記事添付の人工知能に関する特許出願の国籍別件数の円グラフを転載)

20160310_人工知能に関する特許出願の国籍別件数_日本経済新聞朝刊

「特許は08~12年の日米欧と中国、韓国の5カ国・地域への出願件数を調べた。出願人を国籍別にみると、米国籍が3476件(47.5%)と最も多く、中国籍の1410件(19.3%)、日本国籍の1109件(15.2%)と続いた。
 企業別では米IBMが562件で1位。2位は米マイクロソフトの278件。3~5位にはソニー、NEC、NTTの日本勢が入った。
 応用先ごとの出願状況をみると、IBMは経営・管理、マイクロソフトは商取引、ソニーとNTTは娯楽・ゲーム、NECは健康・医療への出願が目立った。」

ここで企業別に、人工知能をどの領域で活用しようとしているのか、傾向が出ているはず。米国企業はBtoB、日本企業はBtoC、と無理やり括れるかもしれません。

この段階で結論めいたことを申し上げるのですが、日本社会はこれから少子高齢化が進み、生産労働人口が大きく減少します。拡大するシニア市場をターゲットにするか、減少する労働人口をサポートする新サービスを展開するか、各社各様、目的志向(ゴール思考)でAI研究を進めてもらいたいと思います。

ちなみに、記事では別段触れられていませんが、米国の人工知能研究が進んでいる一因は、軍事利用と言っても過言ではありません。人が戦場で死なない戦争。あるいは、敵が戦争を始めたくなくなる抑止力としてのAI。こういうのは大手のマスコミではあまりおおっぴらに報道できないんですよね。

 

■ 日本が世界に誇る産業は自動車・電機・機械だけじゃないよね。これからは、、、

もう、ここまで来ると、牽強付会、我田引水かもしれませんが、、、

2016/3/5付 |日本経済新聞|朝刊 (トレンドサーチ)アートの心 AIに芽生え 小説や音楽…高まる完成度

「自動運転などで活躍する人工知能(AI)が芸術作品の創作にも乗り出した。曲作り、小説の執筆、さらには美少女イラストの作画とジャンルは幅広く、完成度も徐々に人間に近づきつつある。近い将来、AIが芸術家として認められる日が訪れるかもしれない。
「うおお、なんかすごいのができた」。自動作曲システム「オルフェウス」を使った作曲家、永井厚さん(29)は驚く。「まだ気になる部分は多いが、作曲の最初のアイデアとなるフレーズを生み出す道具としては魅力的かも」と話す。」

日本がこれから世界に誇れる産業になるのは「日本文化産業」、だと筆者は思うのであります。

「オルフェウスの作曲数は累積で20万曲を超える。実際に曲を作る際には、歌詞を入力して、曲の雰囲気やリズムを選ぶだけでよい。短い曲なら約30秒でできる。歌詞の抑揚に基づき「理論上ベストなメロディーを提案できる」と開発者の嵯峨山茂樹・明治大学教授。今は登録すれば誰でも無料で作曲できる。
AIを使った自動作詞も進んでいる。亜細亜大学の堀玄教授が開発した自動作詞システムは10万曲を超える歌謡曲やポップスの歌詞を解析。ある単語の後に出てくる確率が高い言葉を示せるようにした。」

特にサブカルの中でも、「ジャパニメーション」の力は相当大きいものがあります。

「AIベンチャー、プリファード・ネットワークス(東京・文京)の松元叡一リサーチャーが開発した「DCGANフェースジェネレーター」は、約30万枚のイラストを学習したAIがアニメ風の美少女イラストを量産できる。
「長髪」「眼鏡」など100を超える「特徴ベクトル」を動かし、自分好みに調整する。人気キャラクターに似せることもできる。絵1枚にかかる時間は約1秒。顔が崩れて不気味な印象になることもあるが「たくさん作っていい出来のものを選ぶ」(松元さん)のがコツだ。ゲーム開発会社勤務のデザイナー(30)は「精度がもっと上がればキャラクターデザインをする上での参考になるかも」と話す。

(下記は同記事添付のイメージ写真を転載)

20160305_AIが生成した美少女イラスト(東京都文京区のプリファード・ネットワークス)_日本経済新聞朝刊

「公立はこだて未来大学のAI「作家ですのよ」はショートショートを創作する。一文の短さ、最後にひっくり返るオチ……。松原仁教授が「SF作家、星新一のような作品を作りたい」と2012年に開発に着手。AIに同氏が書いた作品全てを学習させた。
AIによる創作は精度や著作権などまだ課題は多いものの、水準は上がっている。AIの力を借りて一般の人がデビューする。そんな姿も見られそうだ。」

その補足記事がこちら。

 

2016/3/13付 |日本経済新聞|朝刊 第3回星新一賞 表彰式を開催 AI執筆小説も応募

「日本経済新聞社は12日、第3回日経「星新一賞」の表彰式を東京都内で開き、一般部門グランプリの佐藤実氏「ローンチ・フリー」など14編を表彰した。同賞は理系的発想力を問う短編小説の文学賞。応募総数は2561編で、今回は人工知能(AI)が書いた小説も初めて11編の応募があった。
審査員を務めたSF作家の東野司氏は「AIが物語作りの手法を分析して作品を書けば、今後最終選考に残ってくるかもしれない」と述べた。」

音楽(J-POP)、アニメ、文学、、、

「文化産業」こそ次の日本の世界に誇れる産業ではないでしょうかね。それは当然「観光業」にも波及しますし、日本を訪れる外国人旅行者による日本市場での各種消費(インバウンド消費)は、日本の第3次産業の大きな望みの一つでもあります。

 

■ 日本はアトム以来の人型「ロボティクス」に拒否感が無いことは大いなる武器です!

もう少し正攻法のお話もします。

2016/3/9付 |日本経済新聞|朝刊 ソフトバンクと米マイクロソフト、ロボ「ペッパー」で提携 小売り接客支援を共同開発

「ソフトバンクグループは8日、ヒト型ロボット「ペッパー」事業で米マイクロソフト(MS)と提携を発表した。MSのクラウドとつないで小売業の接客支援サービスを共同開発し、今秋に提供する。2月に米IBMの学習するコンピューター「ワトソン」との連携を発表したのに続く協業となる。人工知能(AI)や言語処理など海外の最新技術を取り込んでペッパーの魅力を引き上げる。」

(下記は、同記事添付のペッパー君の写真を転載)

20160309_握手するソフトバンクロボティクスの冨沢文秀社長(左)と日本マイクロソフトの平野拓也社長(8日、東京都中央区)_日本経済新聞朝刊

<握手するソフトバンクロボティクスの冨沢文秀社長(左)と日本マイクロソフトの平野拓也社長(8日、東京都中央区)>

欧米社会は、キリスト教の影響で、人型ロボットに抵抗感を示す人が多く、ファナックなど、生産ラインで使用される多関節ロボットですら、日本企業の独壇場と言っても過言ではないほど。ましてや人型となると、もう日本の製造業の知恵をフル回転させてでも取りに行く市場ではないかと思います。

「小売業向け接客支援サービス「未来の商品棚(仮称)」を今秋に日本国内で提供する。ペッパーとMSのクラウド「アジュール」をつなぎ、店頭でペッパーが来店客と会話しながらお薦め商品を紹介する。
顔認識や音声認識の技術を活用して性別などに応じた商品をきめ細かく提案できる。」

さらに、こうした人の労働をサポートする接客ロボなどは、生産労働人口の減少への対策として有効でしょう。だって、お客の感情を読み取り、商品検索はバックにある膨大なデータベースに直結し、顧客情報も取り込んでいた日には、最適化された商品提案までしてくれるのですよ。ネットでつながっているということは、その場で、決済も終わり、好きな日時での配送まで手配することができます。

これは決して、先日、大手家電量販店に買い物に行って、各フロアの担当者にたらいまわしにあった挙句、お目当ての製品を買えなかった悔しさの裏返しではないですよ。販売員さんたちが把握できないほど、商品が世に溢れ、店舗も大型化してどこに陳列しているのかわからない、、、

これでは、「AR:Augmented Reality(拡張現実)」の技術が今よりもっと進めば、リアル店舗のショールーミング化どころか、誰もわざわざ外出して買い物を使用とは思わなくなりますね。そうすると、銀座とか梅田の賑わいって無くなるのかな?

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