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■ まずは、一体何に企業版マイナンバーが使えるのかをご説明します。

経営管理会計トピック

世の中のテクノロジーや仕組みは、それ単発より有機的に組み合わせて、ビジネスモデルとして組み込んだ方が、効果的に決まっています。

2016/3/23付 |日本経済新聞|朝刊 電子商取引 便利に 企業版マイナンバーが国際対応 費用圧縮、中小に追い風

「2016年1月に全ての企業に割り振られた企業版のマイナンバー(法人番号)が国際的に利用できるようになる。国税庁は国連などの国際機関から海外で使う際の認証を得た。企業間の電子商取引では受発注管理に企業番号が必要だが、外国企業との取引でも法人番号を無料で使えるようになり、事務負担を減らせる。中小企業でも海外との電子商取引を手がけやすくなりそうだ。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、同記事添付の企業版マイナンバーの活用で電子商取引の手間が減るイメージ図を転載)

20160323_企業版マイナンバ―の活用で電子商取引の手間が減る_日本経済新聞朝刊

電子商取引(EC:electronic commerce、eコマース)とは、

「▼電子商取引 コンピューターを使った商取引の総称。エレクトロニック・コマース(Eコマース)とも呼ばれる。企業間で大量に発生する部品などの受発注が対面での取引よりも迅速に進められるため、特に国際間の取引で利用が急増している。電子商取引の際には、受発注管理のために発注者の企業番号を伝える必要がある。」

要は、簡単に言うと、ネット販売のことですね。従来は、完成品メーカーが、部材メーカーからの部品調達・購買をWebを介して手間いらずで自動受発注処理を行う場合に用いられる用語ですが、広義では、BtoCも含む場合があります。

「企業が電子商取引を手がける際には、民間業者から取得した番号と相手企業が持つ自社の番号を照会して取引する。民間から得た番号には3年などの有効期限があり、企業のIT(情報技術)担当者は番号が変わるたびに受発注システムの修正が必要だった。番号の変更などにかかる費用は大企業で数千万円程度かかる場合もある。」

当然、情報システムを使っての商取引となるので、相手方の企業を取引先マスタに登録しなくてはならない。そして、取引先マスタへ登録するために、取引相手を一意(ユニーク)に識別できるように、「取引先コード」「会社コード」「顧客コード」「サプライヤーコード」など、名称も様々ですが、情報システムの中で相手を認識するための背番号みたいなものを発番するわけです。

 

■ どうして、企業版マイナンバーの使用が大歓迎されるのか?

「国内企業間の電子商取引には法人番号を使えるが、国際認証を得たことで外国企業との取引でも法人番号を使える。番号の照会や変更の手間が要らなくなるうえ、ずっと無料で使えるため、番号を取得・更新する費用負担もなくなる。
 これまで番号の照会や取得、変更などの事務負担の重さが、中小企業に海外との電子商取引が普及しない一因とされてきた。海外でも法人番号を使えることで「中小企業にも電子商取引が広がる可能性がある」(部品メーカーでつくる日本自動車部品工業会)。
 法人番号の国際活用は経済界が要望していた。経済産業省の試算では法人番号の活用による企業間の電子商取引の拡大などで、国内だけで1兆円以上の経済効果を見込める。国際的に利用されれば、経済界への恩恵はさらに広がる。「日本の電子商取引のあり方を一気に変える可能性がある」(経団連)という。」

製品や商品をやり取りする情報システムを使用する際、いちいち取引先、納入先、請求先など、ビジネス上の取引をする相手を指定してから取引データを流します。その際に、同じ会社内でも、受発注システムや、会計システム、生産管理システムなど、システムの数だけ、やり取りする相手の背番号を発番して、そのシステム内だけでユニークになるようなコード発番をしがちです。いちいち、よそのシステムで、自担当のシステム内での取引相手が、どういうコードで識別されているか、調べないことの方が多いんですよね。それが、企業をまたいだり、ましてや国境までまたぐとなると、さらに話がややこしくなります。

そういう複数種類の情報システムで、全く異なった背番号を背負っているけど、実態は同じ主体の場合、背番号(コード)を統一しよう、という活動は、社内で一時は盛んになっては消えていく運命にあります。

そういうのを、「名寄せ」と言ったり、「共通マスタ」の作成と言ったり、「MDM(Master Data Management)」と言ったりします。日本政府もこれに類する大きな問題を抱えていましたよね。そう、あの年金番号の名寄せ。消えた年金問題です。このブログでも、同じ厚労省管轄のメタボ健診システムの名寄せを取り上げたことがありました。

⇒「メタボ健診 システム不備効果検証、2割しかできず 会計検査院、改修求める

みんなが、企業版マイナンバーを一斉に共通して使ってくれるとしたら、こんな便利なことはありません。

 

■ これこそ、IoTの隠されたもうひとつの狙い。企業間取引のシームレス化に役立つ!

ここで、「名寄せの問題解決」とだけ、この話題を捉えていては大変もったいない。企業間の取引がシームレスにつながるということは、あのIoTの裏の側面、「スマート工場」が企業の垣根を越えて、さらにつながることになるのです。ここで、企業というのは、連結グループ内にある子会社、一社一社にもあてはまるわけです。そう、つまり、筆者が専門領域の一つとしている「連結経営管理」の分野でも、グループ内の取引情報を捉えやすくなるわけです。そして、当然、違う資本主の企業ともシームレスに繋がります。筆者の主意とは異なりますが、それは、経済産業省が、日本の中小の製造業を連携させて、グローバル競争に生き残らせようとする産業政策にも十分に活かせるものとなるのです。

(参考)
⇒「IoT三国志 インダストリー4.0とインダストリアル・インターネットの同盟締結で、日本のインダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブは栄光ある孤立!?」
⇒「ものづくり技術標準化 工場や設備、相互に接続しやすく 30社がコンソーシアム(1)

中小企業間の取引をシームレスに連携させて、それぞれの得意領域に特化させて、全体としてコスト削減と品質向上を目指して競争に勝つ! アダムスミス以来の「専門家利益」を究めようという作戦ですが、どうつなぐかにばかり意識がいって、つないだときの相手の識別方法を忘れてはいけません。そういう情報システム構築の失敗をいくつもこの目にし、また、そういうシステムのお守りや改修をこれまでやってきた立場から、今回の取り組み、なんとISOまで取得! は極めて画期的な出来事なのです。

そして商取引の先には、代金決済、金融のお話が避けて通れません。

2016/4/3付 |日本経済新聞|朝刊 フィンテック促進策を 自民、法制度改革など提言

「自民党は金融とIT(情報技術)を融合して様々なサービスを提供する「フィンテック」の促進を政府に求める提言案をまとめた。金融インフラや法制度の改革などを通じて「日本発のフィンテックが世界で拡大、成長していくことを目指すべきだ」と指摘した。
 5日に開く金融調査会で決める。フィンテックが人工知能による融資審査、小口融資、医療情報との連携による保険分野などに活用の幅が広がるとして「金融関係の法制度や監督面で必要に応じた対応が求められる」と促した。銀行決済に使う情報の書き方を国際標準に全面的に移すことで、企業の決済情報と受発注データを連携できるようにして、企業の効率を高めることなども提案した。」

まだ、与党から政府への政策提言の段階ですが、銀行決済に使うデータ形式を国際標準に合わせることで、資金決済情報と受発注データを連携させる。ここまで首尾一貫してやらないと、「つながる」このからの最大限の利益は享受できませんよね。今後の当局のドライブに期待するところ大です。

さて、最後は、本筋に戻ります。

「これまで企業が海外企業と電子商取引を手がけるには東京商工リサーチなどから有料で番号を得て国際機関の認証を得る必要があった。国税庁は法人番号を国連や国際標準化機構(ISO)から国際的に使える番号として認証を受けた。
 法人番号は設立を登記した法人や国の機関、地方公共団体など約440万団体に無償で割り振られた。
 個人版のマイナンバーと異なり、原則として官民が自由に利用できる。法人番号は国税庁のインターネットサイトで検索できる。」

これで、国際税務で盛り上がっているBEPSや移転価格税制の問題も、テクノロジーの分野から企業負担を顕現させることができます。いいことずくめのようですが、ひとつだけ留意点があります。上記の新聞記事にもありましたが、従来は、東京商工リサーチなどから、コードを有償で提供してもらっていました。そういうコード提供ビジネスはプライベートではできなくなるということです。そして、そのコード整備費用は、税金の形で納税者が負担することになります。経済学的には、公共財として、大変喜ばしい状態かもしれませんが、民業圧迫は仕方ないとしても、必ず受益者負担の問題や、フリーライダーの問題が生じてきます。

そうです。タダほど怖いものはありませんから。(^^;)

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電子商取引 便利に 企業版マイナンバーが国際対応 費用圧縮、中小に追い風 -IoTやフィンテックまで含めたビジネスモデルで考えます!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジーEC,electronic commerce,eコマース,IOT,ISO,MDM,フィンテック,企業版マイナンバー,名寄せ,法人番号,電子商取引■ まずは、一体何に企業版マイナンバーが使えるのかをご説明します。 世の中のテクノロジーや仕組みは、それ単発より有機的に組み合わせて、ビジネスモデルとして組み込んだ方が、効果的に決まっています。 2016/3/23付 |日本経済新聞|朝刊 電子商取引 便利に 企業版マイナンバーが国際対応 費用圧縮、中小に追い風 「2016年1月に全ての企業に割り振られた企業版のマイナンバー(法人番号)が国際的に利用できるようになる。国税庁は国連などの国際機関から海外で使う際の認証を得た。企業間の電子商取引では受発注管理に企業番号が必要だが、外国企業との取引でも法人番号を無料で使えるようになり、事務負担を減らせる。中小企業でも海外との電子商取引を手がけやすくなりそうだ。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます (下記は、同記事添付の企業版マイナンバーの活用で電子商取引の手間が減るイメージ図を転載) 電子商取引(EC:electronic commerce、eコマース)とは、 「▼電子商取引 コンピューターを使った商取引の総称。エレクトロニック・コマース(Eコマース)とも呼ばれる。企業間で大量に発生する部品などの受発注が対面での取引よりも迅速に進められるため、特に国際間の取引で利用が急増している。電子商取引の際には、受発注管理のために発注者の企業番号を伝える必要がある。」 要は、簡単に言うと、ネット販売のことですね。従来は、完成品メーカーが、部材メーカーからの部品調達・購買をWebを介して手間いらずで自動受発注処理を行う場合に用いられる用語ですが、広義では、BtoCも含む場合があります。 「企業が電子商取引を手がける際には、民間業者から取得した番号と相手企業が持つ自社の番号を照会して取引する。民間から得た番号には3年などの有効期限があり、企業のIT(情報技術)担当者は番号が変わるたびに受発注システムの修正が必要だった。番号の変更などにかかる費用は大企業で数千万円程度かかる場合もある。」 当然、情報システムを使っての商取引となるので、相手方の企業を取引先マスタに登録しなくてはならない。そして、取引先マスタへ登録するために、取引相手を一意(ユニーク)に識別できるように、「取引先コード」「会社コード」「顧客コード」「サプライヤーコード」など、名称も様々ですが、情報システムの中で相手を認識するための背番号みたいなものを発番するわけです。   ■ どうして、企業版マイナンバーの使用が大歓迎されるのか? 「国内企業間の電子商取引には法人番号を使えるが、国際認証を得たことで外国企業との取引でも法人番号を使える。番号の照会や変更の手間が要らなくなるうえ、ずっと無料で使えるため、番号を取得・更新する費用負担もなくなる。  これまで番号の照会や取得、変更などの事務負担の重さが、中小企業に海外との電子商取引が普及しない一因とされてきた。海外でも法人番号を使えることで「中小企業にも電子商取引が広がる可能性がある」(部品メーカーでつくる日本自動車部品工業会)。  法人番号の国際活用は経済界が要望していた。経済産業省の試算では法人番号の活用による企業間の電子商取引の拡大などで、国内だけで1兆円以上の経済効果を見込める。国際的に利用されれば、経済界への恩恵はさらに広がる。「日本の電子商取引のあり方を一気に変える可能性がある」(経団連)という。」 製品や商品をやり取りする情報システムを使用する際、いちいち取引先、納入先、請求先など、ビジネス上の取引をする相手を指定してから取引データを流します。その際に、同じ会社内でも、受発注システムや、会計システム、生産管理システムなど、システムの数だけ、やり取りする相手の背番号を発番して、そのシステム内だけでユニークになるようなコード発番をしがちです。いちいち、よそのシステムで、自担当のシステム内での取引相手が、どういうコードで識別されているか、調べないことの方が多いんですよね。それが、企業をまたいだり、ましてや国境までまたぐとなると、さらに話がややこしくなります。 そういう複数種類の情報システムで、全く異なった背番号を背負っているけど、実態は同じ主体の場合、背番号(コード)を統一しよう、という活動は、社内で一時は盛んになっては消えていく運命にあります。 そういうのを、「名寄せ」と言ったり、「共通マスタ」の作成と言ったり、「MDM(Master Data Management)」と言ったりします。日本政府もこれに類する大きな問題を抱えていましたよね。そう、あの年金番号の名寄せ。消えた年金問題です。このブログでも、同じ厚労省管轄のメタボ健診システムの名寄せを取り上げたことがありました。 ⇒「メタボ健診 システム不備効果検証、2割しかできず 会計検査院、改修求める」 みんなが、企業版マイナンバーを一斉に共通して使ってくれるとしたら、こんな便利なことはありません。   ■ これこそ、IoTの隠されたもうひとつの狙い。企業間取引のシームレス化に役立つ! ここで、「名寄せの問題解決」とだけ、この話題を捉えていては大変もったいない。企業間の取引がシームレスにつながるということは、あのIoTの裏の側面、「スマート工場」が企業の垣根を越えて、さらにつながることになるのです。ここで、企業というのは、連結グループ内にある子会社、一社一社にもあてはまるわけです。そう、つまり、筆者が専門領域の一つとしている「連結経営管理」の分野でも、グループ内の取引情報を捉えやすくなるわけです。そして、当然、違う資本主の企業ともシームレスに繋がります。筆者の主意とは異なりますが、それは、経済産業省が、日本の中小の製造業を連携させて、グローバル競争に生き残らせようとする産業政策にも十分に活かせるものとなるのです。 (参考) ⇒「IoT三国志 インダストリー4.0とインダストリアル・インターネットの同盟締結で、日本のインダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブは栄光ある孤立!?」 ⇒「ものづくり技術標準化 工場や設備、相互に接続しやすく 30社がコンソーシアム(1)」 中小企業間の取引をシームレスに連携させて、それぞれの得意領域に特化させて、全体としてコスト削減と品質向上を目指して競争に勝つ! アダムスミス以来の「専門家利益」を究めようという作戦ですが、どうつなぐかにばかり意識がいって、つないだときの相手の識別方法を忘れてはいけません。そういう情報システム構築の失敗をいくつもこの目にし、また、そういうシステムのお守りや改修をこれまでやってきた立場から、今回の取り組み、なんとISOまで取得! は極めて画期的な出来事なのです。 そして商取引の先には、代金決済、金融のお話が避けて通れません。 2016/4/3付 |日本経済新聞|朝刊 フィンテック促進策を 自民、法制度改革など提言 「自民党は金融とIT(情報技術)を融合して様々なサービスを提供する「フィンテック」の促進を政府に求める提言案をまとめた。金融インフラや法制度の改革などを通じて「日本発のフィンテックが世界で拡大、成長していくことを目指すべきだ」と指摘した。  5日に開く金融調査会で決める。フィンテックが人工知能による融資審査、小口融資、医療情報との連携による保険分野などに活用の幅が広がるとして「金融関係の法制度や監督面で必要に応じた対応が求められる」と促した。銀行決済に使う情報の書き方を国際標準に全面的に移すことで、企業の決済情報と受発注データを連携できるようにして、企業の効率を高めることなども提案した。」 まだ、与党から政府への政策提言の段階ですが、銀行決済に使うデータ形式を国際標準に合わせることで、資金決済情報と受発注データを連携させる。ここまで首尾一貫してやらないと、「つながる」このからの最大限の利益は享受できませんよね。今後の当局のドライブに期待するところ大です。 さて、最後は、本筋に戻ります。 「これまで企業が海外企業と電子商取引を手がけるには東京商工リサーチなどから有料で番号を得て国際機関の認証を得る必要があった。国税庁は法人番号を国連や国際標準化機構(ISO)から国際的に使える番号として認証を受けた。  法人番号は設立を登記した法人や国の機関、地方公共団体など約440万団体に無償で割り振られた。  個人版のマイナンバーと異なり、原則として官民が自由に利用できる。法人番号は国税庁のインターネットサイトで検索できる。」 これで、国際税務で盛り上がっているBEPSや移転価格税制の問題も、テクノロジーの分野から企業負担を顕現させることができます。いいことずくめのようですが、ひとつだけ留意点があります。上記の新聞記事にもありましたが、従来は、東京商工リサーチなどから、コードを有償で提供してもらっていました。そういうコード提供ビジネスはプライベートではできなくなるということです。そして、そのコード整備費用は、税金の形で納税者が負担することになります。経済学的には、公共財として、大変喜ばしい状態かもしれませんが、民業圧迫は仕方ないとしても、必ず受益者負担の問題や、フリーライダーの問題が生じてきます。 そうです。タダほど怖いものはありませんから。(^^;)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します