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■ 爆弾(bomb)ではありません。部品表(Bill of Material)です!

経営管理(基礎編)

前回は、「エンジニアリングチェーン管理(ECM)」の目的とその効果、そして必要性についてお話しました。ECMを最も簡単に言うと、「製品情報を共有すること」です。したがって、今回は、「製品情報」を共有するためのツール(道具)としての、「BOM:Bill of Material」のお話をします。

「BOM」は、製造業の中でも、組立産業(ディスクリート産業)ならば「部品表」という語感がピタッと来るのですが、製薬・化学などのプロセス産業ならば、「レシピ」という名で通っているかもしれません。ここでは、広義の意で、「BOM」と表記しておきます。

ここで、一応、それなりの学術書的な定義をご紹介しておきます。
「マテリアル・マスタを中心とした製品構成と製造工程に関する基準情報、ならびに、そこから派生する履歴情報」
「マテリアルとは、部品、素材、原料、材料、資材、中間品、アセンブリ、製品、梱包材、副資材(潤滑油など)のすべてを指す」
「BOMとは、マテリアルの数量的な関係を示した一覧表である」

(これらの定義は、下記の参考図書から)

BOM/部品表入門 (図解でわかる生産の実務)

製造業ならば、その会社で使っている「BOM」を見せて頂くだけで、どんな製品を作っているのかはもちろん、どんな工程で作っているのか、誰がそのBOMを使っているのか、等が手に取るように分かります。そして、そのBOMの構成の複雑性と運用手順を見るだけで、その会社のものづくりのレベルが垣間見られる恐ろしい情報でもあります。

 

■ 朝定食をボムッてみる!

若手コンサルタントに、製造業のお客様へのコンサルテーションで重要なのは「BOM」だよ!と口を酸っぱくして言っていたら、「小林さんはボマー(Bommer)ですね」「じゃあ、次は、●●をボムってみますか?」とよく揶揄されたものです。まあ、今から思えば良い思い出ですが、当時は相当ムカッと来ていました。だって、製造業の方にとってBOMは神聖なものじゃないですか? (でも神聖不可侵じゃ、ダメなんです。ここに手を入れるんです。企業体質を変革したいのならば、、、)

そこで、一番シンプルな構成で、「朝定食」のBOMを下記にチャート化してみます。おかずは筆者の好みでピッキングしました。

朝定食のBOM

このBOMから分かる情報は?
① 原材料の必要な数量
② メニュー構成

の2つです。

きちんと、水やだし汁に至るまで、180mlとか、200ccとか、必要量が記載されています。単位には留意してくださいね。液体を測るのに、「ml」とか「cc」とか。ご飯も、「1杯」とか「1合」とか。計量単位はとても大事です。

「ご飯」の下には、「だし汁」や「わかめ」は決してきません。「朝定食」というメニュー全体を表わすかたまりから、それを構成する各部に細分化していきます。この「構成」は次に説明する「つくりかた」のためにも重要なのです。

中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!

■ 朝定食のBOMに「工順」情報を付加してみる

前章の朝定食のBOMは、まさに「材料」だけが記載されていました。朝定食を作るのに、必要な材料はこのBOM(こういう場合はレシピという言葉がピッタリきますね!)を見れば一目瞭然なのですが、筆者みたいなど素人は、どうやって料理(という生産行為)すればいいか、手順も知りたくなるものです。そこで、その料理手順(これを「工順」「「工程」「ルーティング」と呼ぶ」もBOMに書き込んでみましょう。

その前に、BOMに書き込む「工順」を下記にまとめておきます。

① 炊飯(ご飯を炊く)
② 出し汁をわかして、具材を混ぜる
③ シャケの切身を焼く
④ 全体を盛り付ける

おっと、②をもっと細分化しておかないと、実際はお料理できないかもしれませんね。
(こういうのは、実際にBOMを作成しながら、料理の手順を考えて、試行錯誤で完成させていくものです)

① 炊飯(ご飯を炊く)
② 出し汁をわかす
③ みそ汁の具材を混ぜる
④ シャケの切身を焼く
⑤ 全体を盛り付ける

実際に、「工順」ありの朝定食の「BOM」をチャート化してみました。

朝定食の工順ありのBOM

また、新たな気付きがありましたね。ある「工程」の前後には、必ず「インプット」と「アウトプット」がなければいけません。そこで、「②出し汁をわかす」の後には「沸騰した出し汁」、「④シャケの切身を焼く」の後には、「焼シャケ」が必要になる、と気付き、それを追記していきます。

BOM全体を眺めて、より下位にあるものが、「工程」によって、上位のものに変換・加工され、最上位の「最終製品」にまで仕上がっていく様子が分かると思います。しかし、ここでひとつ気がつかれませんか?「工程」の順番(それが「工順」「ルーティング」と呼ぶのですが)で、「① 炊飯(ご飯を炊く)」と「② 出し汁をわかす」とは、どっちを先にやればいいんだろう?

BOM(部品表)によるモジュール化設計・生産入門

■ 朝定食の「BOM」を「ルーティング」に対応させてみる

今度は、BOMではなくて、時間割を作ってみました。

朝定食の工順・生産計画

生産現場では、「生産計画」「生産日程計画」「作業表」「工順表」とか呼ばれているものです。青い実線でつながれているのが、本当の作業の前後関係。前工程が終わらないと、後工程を始められない。ただし、今回、朝定食を作るために、厨房にいる人はたった一人という想定。つまり、各工程が占有できる生産リソース(ここでは料理人)は、1つ(1人)なので、同時に一つの作業しかできないのです。その依存関係、同じ時間帯に人手がかかる作業が重ならないことを確認するために、人手がかかる作業同士を点線で結んでいます。

結論から言うと、7:00に「はいどうぞ!」と朝定食をお客に出すためには、その50分前に、炊飯器のボタンを押さなければ、「⑤ 全体を盛り付ける」という作業を、6:50に開始できないのです。このため、「② 出し汁をわかす」の前に、「① 炊飯(ご飯を炊く)」という所作をやっておく必要があるのです。

こうした「クリティカルパス」(解説は⇒「クリティカルパスを意識したプロジェクト計画」)を意識して、「工順」を設定します。実際の工場で、生産準備に取り掛かるまでには、このように「BOM」と「工順マスタ」を照合させておき、現場での実地調整を経たのちに、「BOM」や「工順マスタ」を最新版に更新しておきます。

 

■ 部門ごとに異なる「BOM」が誕生する理由とは?

前章と前々章とで、2種類の「BOM」をご紹介しました。この2種類は、大概の製造業での「BOM」の種類分けにも適用できる非常に代表的な分類になります。それは、

① 「設計BOM」:E-BOM(Engineering – BOM)
② 「製造BOM」:M-BOM(Manufacturing – BOM)

前々章の「白米が1合」、といった、定食のメニューを考える管理栄養士の方(生産現場では開発部門の設計者)は、「E-BOM」を作るのが使命で、もっといえば、「E-BOM」に不要な情報には興味を持たないことが往々にしてあります。一方で、前章の「工順」が付いている「M-BOM」は、シェフ・料理人の方(生産現場では、まさしく生産管理者)は、「M-BOM」を守り、必要に応じて変更するのが使命となります。往々にして、E-BOMを生産現場に合うように変更をかけるのが常です。

そうしますと、「焼きシャケ朝定食」が長年販売されていくうちに、「E-BOM」と「M-BOM」が乖離していき、メニュー変更の検討が営業部門から催促されたり、調達部門から仕入先の変更の確認がきた時に、全社で統一した判断ができなくなります。それゆえ、「●●-BOM」という社内での部門別のBOMの方言はなるべく作らずに、できるだけ「標準語」を話すように、様々な工夫が必要になります。

一般的な製造業(組立産業)で作成されているBOMの種類の代表例は、次の通りです。

① 設計BOM(設計者がどんな製品を作るかの部品構成を表わす)
② 製造BOM(生産管理者がどうやって製品を作るかの製造工程を表わす)
③ 調達BOM(調達部門がどこから何を仕入れてくるべきか、購買情報を設定)
④ 物流BOM(在庫管理単位のSKU、ピッキング、包装や物流加工情報などを付加)
⑤ 販売BOM(営業部門が、カタログの一部として、個客と商談するのに使用)
⑥ サービスBOM(トレーサビリティ情報、スペアパーツ情報などを付加)
⑦ 原価管理BOM(原価企画や標準原価設定のためのコスト情報を付加)

これだけ、各部署がそれぞれの部門のミッションを果たすために、「BOM」情報を利用しています。さらに、日本のマザー工場から、海外工場に生産移管を行う場合、海外工場で改めて、製造BOMは必ず更新することになるのですが、当然、仕入先、コスト、時には、ノックダウンパーツ(K/Dパーツ)を日本から送るからということで、設計BOMや調達BOM、物流BOMも更新の必要性が漏れなく付いてきます。

10年~数15年位前まで、こうした複数BOMが社内で乱立していることが問題だと気付いている人は少数でした。そして、数年前までは、こうした課題のソリューションとして、「View」形式で、こうした複数部署でのBOM情報の管理をすればよい、という見解が主流でした。

「View」構造というのは、メインの骨格だけ共有・固定しておいて、そこにぶら下がる付属情報や、部分的な骨格の変更情報は、その利害関係がある部署だけが見えるようにしておくIT側からの解決策になります。

グローバル生産のための統合化部品表のすべて BOM/部品表の一元管理法

■ 部門ごとに異なる「BOM」があると不都合な真実とは?

製品ライフサイクルが比較的長く、BOM情報の変更頻度も少なく、バッチ生産で済んでいた時代はそれでも、部門間の情報の齟齬が多少あっても、企業活動にそれ程支障はありませんでした。しかし、市場ニーズが多様化したうえ、そのニーズが短期間で変容する現在、リアルタイムにBOM情報を各部署で共有しておかないと、

① 既存製品に対するBOMの変更情報の全社への通達が遅れてしまう
② 新製品に関するBOMの新規情報の登録ができない

という不具合による影響が大きい社会経済環境になっています。

①については、常に変動する顧客ニーズにより、生産する品種選択、生産数量と納期変更、設計変更に迅速に対応できなくなります。今後、製造業は、ハードウェアの売り切り型ビジネスではなく、販売した(貸与した)ハードを通じたサービスで商売する割合がますます大きくなることが予想されます。つまり、提供した(する)製品の属性情報が常に変容することを常態化していることを前提としたビジネスモデルへの対応能力を強化しなければならなくなっています。

②については、製品ライフサイクルが短くなっている現在、新製品ラインの垂直立ち上げ、が新規ビジネス成功の大きな要因となっています。また、日本から海外(またはその逆)への生産移管も瞬時に行われなければ、「垂直立ち上げ」とは言いません。「垂直立ち上げ」とは、その時が来た時に即時対応する、ではもう遅いのです。生産準備の段階から、未来日付の「BOM」を全社で共有して、全部門が一致団結して、新規ビジネスの成功に向けて協力していかなればなりません。つまり、これからの「BOM情報」は、「時間」と「空間」情報も備えておかなければならないのです。もはや、「View」で何とかなる事態ではないのです。

図解でわかるPLMシステムの構築と導入

今回は、「ECM」のためのツールとしての、「BOM」とは何か? についてお話しました。

経営管理(基礎編)_エンジニアリングチェーン管理(2)- 製品情報共有のツールはBOMなり




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エンジニアリングチェーン管理(2)- 製品情報共有のツールはBOMなりhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-e1428166901472.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-150x150.jpg小林 友昭経営管理(基礎編)エンジニアリングチェーン,ECM,BOM,クリティカルパス,工順,ルーテイング■ 爆弾(bomb)ではありません。部品表(Bill of Material)です! 前回は、「エンジニアリングチェーン管理(ECM)」の目的とその効果、そして必要性についてお話しました。ECMを最も簡単に言うと、「製品情報を共有すること」です。したがって、今回は、「製品情報」を共有するためのツール(道具)としての、「BOM:Bill of Material」のお話をします。 「BOM」は、製造業の中でも、組立産業(ディスクリート産業)ならば「部品表」という語感がピタッと来るのですが、製薬・化学などのプロセス産業ならば、「レシピ」という名で通っているかもしれません。ここでは、広義の意で、「BOM」と表記しておきます。 ここで、一応、それなりの学術書的な定義をご紹介しておきます。 「マテリアル・マスタを中心とした製品構成と製造工程に関する基準情報、ならびに、そこから派生する履歴情報」 「マテリアルとは、部品、素材、原料、材料、資材、中間品、アセンブリ、製品、梱包材、副資材(潤滑油など)のすべてを指す」 「BOMとは、マテリアルの数量的な関係を示した一覧表である」 (これらの定義は、下記の参考図書から) BOM/部品表入門 (図解でわかる生産の実務) 製造業ならば、その会社で使っている「BOM」を見せて頂くだけで、どんな製品を作っているのかはもちろん、どんな工程で作っているのか、誰がそのBOMを使っているのか、等が手に取るように分かります。そして、そのBOMの構成の複雑性と運用手順を見るだけで、その会社のものづくりのレベルが垣間見られる恐ろしい情報でもあります。   ■ 朝定食をボムッてみる! 若手コンサルタントに、製造業のお客様へのコンサルテーションで重要なのは「BOM」だよ!と口を酸っぱくして言っていたら、「小林さんはボマー(Bommer)ですね」「じゃあ、次は、●●をボムってみますか?」とよく揶揄されたものです。まあ、今から思えば良い思い出ですが、当時は相当ムカッと来ていました。だって、製造業の方にとってBOMは神聖なものじゃないですか? (でも神聖不可侵じゃ、ダメなんです。ここに手を入れるんです。企業体質を変革したいのならば、、、) そこで、一番シンプルな構成で、「朝定食」のBOMを下記にチャート化してみます。おかずは筆者の好みでピッキングしました。 このBOMから分かる情報は? ① 原材料の必要な数量 ② メニュー構成 の2つです。 きちんと、水やだし汁に至るまで、180mlとか、200ccとか、必要量が記載されています。単位には留意してくださいね。液体を測るのに、「ml」とか「cc」とか。ご飯も、「1杯」とか「1合」とか。計量単位はとても大事です。 「ご飯」の下には、「だし汁」や「わかめ」は決してきません。「朝定食」というメニュー全体を表わすかたまりから、それを構成する各部に細分化していきます。この「構成」は次に説明する「つくりかた」のためにも重要なのです。 中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう! ■ 朝定食のBOMに「工順」情報を付加してみる 前章の朝定食のBOMは、まさに「材料」だけが記載されていました。朝定食を作るのに、必要な材料はこのBOM(こういう場合はレシピという言葉がピッタリきますね!)を見れば一目瞭然なのですが、筆者みたいなど素人は、どうやって料理(という生産行為)すればいいか、手順も知りたくなるものです。そこで、その料理手順(これを「工順」「「工程」「ルーティング」と呼ぶ」もBOMに書き込んでみましょう。 その前に、BOMに書き込む「工順」を下記にまとめておきます。 ① 炊飯(ご飯を炊く) ② 出し汁をわかして、具材を混ぜる ③ シャケの切身を焼く ④ 全体を盛り付ける おっと、②をもっと細分化しておかないと、実際はお料理できないかもしれませんね。 (こういうのは、実際にBOMを作成しながら、料理の手順を考えて、試行錯誤で完成させていくものです) ① 炊飯(ご飯を炊く) ② 出し汁をわかす ③ みそ汁の具材を混ぜる ④ シャケの切身を焼く ⑤ 全体を盛り付ける 実際に、「工順」ありの朝定食の「BOM」をチャート化してみました。 また、新たな気付きがありましたね。ある「工程」の前後には、必ず「インプット」と「アウトプット」がなければいけません。そこで、「②出し汁をわかす」の後には「沸騰した出し汁」、「④シャケの切身を焼く」の後には、「焼シャケ」が必要になる、と気付き、それを追記していきます。 BOM全体を眺めて、より下位にあるものが、「工程」によって、上位のものに変換・加工され、最上位の「最終製品」にまで仕上がっていく様子が分かると思います。しかし、ここでひとつ気がつかれませんか?「工程」の順番(それが「工順」「ルーティング」と呼ぶのですが)で、「① 炊飯(ご飯を炊く)」と「② 出し汁をわかす」とは、どっちを先にやればいいんだろう? BOM(部品表)によるモジュール化設計・生産入門 ■ 朝定食の「BOM」を「ルーティング」に対応させてみる 今度は、BOMではなくて、時間割を作ってみました。 生産現場では、「生産計画」「生産日程計画」「作業表」「工順表」とか呼ばれているものです。青い実線でつながれているのが、本当の作業の前後関係。前工程が終わらないと、後工程を始められない。ただし、今回、朝定食を作るために、厨房にいる人はたった一人という想定。つまり、各工程が占有できる生産リソース(ここでは料理人)は、1つ(1人)なので、同時に一つの作業しかできないのです。その依存関係、同じ時間帯に人手がかかる作業が重ならないことを確認するために、人手がかかる作業同士を点線で結んでいます。 結論から言うと、7:00に「はいどうぞ!」と朝定食をお客に出すためには、その50分前に、炊飯器のボタンを押さなければ、「⑤ 全体を盛り付ける」という作業を、6:50に開始できないのです。このため、「② 出し汁をわかす」の前に、「① 炊飯(ご飯を炊く)」という所作をやっておく必要があるのです。 こうした「クリティカルパス」(解説は⇒「クリティカルパスを意識したプロジェクト計画」)を意識して、「工順」を設定します。実際の工場で、生産準備に取り掛かるまでには、このように「BOM」と「工順マスタ」を照合させておき、現場での実地調整を経たのちに、「BOM」や「工順マスタ」を最新版に更新しておきます。   ■ 部門ごとに異なる「BOM」が誕生する理由とは? 前章と前々章とで、2種類の「BOM」をご紹介しました。この2種類は、大概の製造業での「BOM」の種類分けにも適用できる非常に代表的な分類になります。それは、 ① 「設計BOM」:E-BOM(Engineering - BOM) ② 「製造BOM」:M-BOM(Manufacturing - BOM) 前々章の「白米が1合」、といった、定食のメニューを考える管理栄養士の方(生産現場では開発部門の設計者)は、「E-BOM」を作るのが使命で、もっといえば、「E-BOM」に不要な情報には興味を持たないことが往々にしてあります。一方で、前章の「工順」が付いている「M-BOM」は、シェフ・料理人の方(生産現場では、まさしく生産管理者)は、「M-BOM」を守り、必要に応じて変更するのが使命となります。往々にして、E-BOMを生産現場に合うように変更をかけるのが常です。 そうしますと、「焼きシャケ朝定食」が長年販売されていくうちに、「E-BOM」と「M-BOM」が乖離していき、メニュー変更の検討が営業部門から催促されたり、調達部門から仕入先の変更の確認がきた時に、全社で統一した判断ができなくなります。それゆえ、「●●-BOM」という社内での部門別のBOMの方言はなるべく作らずに、できるだけ「標準語」を話すように、様々な工夫が必要になります。 一般的な製造業(組立産業)で作成されているBOMの種類の代表例は、次の通りです。 ① 設計BOM(設計者がどんな製品を作るかの部品構成を表わす) ② 製造BOM(生産管理者がどうやって製品を作るかの製造工程を表わす) ③ 調達BOM(調達部門がどこから何を仕入れてくるべきか、購買情報を設定) ④ 物流BOM(在庫管理単位のSKU、ピッキング、包装や物流加工情報などを付加) ⑤ 販売BOM(営業部門が、カタログの一部として、個客と商談するのに使用) ⑥ サービスBOM(トレーサビリティ情報、スペアパーツ情報などを付加) ⑦ 原価管理BOM(原価企画や標準原価設定のためのコスト情報を付加) これだけ、各部署がそれぞれの部門のミッションを果たすために、「BOM」情報を利用しています。さらに、日本のマザー工場から、海外工場に生産移管を行う場合、海外工場で改めて、製造BOMは必ず更新することになるのですが、当然、仕入先、コスト、時には、ノックダウンパーツ(K/Dパーツ)を日本から送るからということで、設計BOMや調達BOM、物流BOMも更新の必要性が漏れなく付いてきます。 10年~数15年位前まで、こうした複数BOMが社内で乱立していることが問題だと気付いている人は少数でした。そして、数年前までは、こうした課題のソリューションとして、「View」形式で、こうした複数部署でのBOM情報の管理をすればよい、という見解が主流でした。 「View」構造というのは、メインの骨格だけ共有・固定しておいて、そこにぶら下がる付属情報や、部分的な骨格の変更情報は、その利害関係がある部署だけが見えるようにしておくIT側からの解決策になります。 グローバル生産のための統合化部品表のすべて BOM/部品表の一元管理法 ■ 部門ごとに異なる「BOM」があると不都合な真実とは? 製品ライフサイクルが比較的長く、BOM情報の変更頻度も少なく、バッチ生産で済んでいた時代はそれでも、部門間の情報の齟齬が多少あっても、企業活動にそれ程支障はありませんでした。しかし、市場ニーズが多様化したうえ、そのニーズが短期間で変容する現在、リアルタイムにBOM情報を各部署で共有しておかないと、 ① 既存製品に対するBOMの変更情報の全社への通達が遅れてしまう ② 新製品に関するBOMの新規情報の登録ができない という不具合による影響が大きい社会経済環境になっています。 ①については、常に変動する顧客ニーズにより、生産する品種選択、生産数量と納期変更、設計変更に迅速に対応できなくなります。今後、製造業は、ハードウェアの売り切り型ビジネスではなく、販売した(貸与した)ハードを通じたサービスで商売する割合がますます大きくなることが予想されます。つまり、提供した(する)製品の属性情報が常に変容することを常態化していることを前提としたビジネスモデルへの対応能力を強化しなければならなくなっています。 ②については、製品ライフサイクルが短くなっている現在、新製品ラインの垂直立ち上げ、が新規ビジネス成功の大きな要因となっています。また、日本から海外(またはその逆)への生産移管も瞬時に行われなければ、「垂直立ち上げ」とは言いません。「垂直立ち上げ」とは、その時が来た時に即時対応する、ではもう遅いのです。生産準備の段階から、未来日付の「BOM」を全社で共有して、全部門が一致団結して、新規ビジネスの成功に向けて協力していかなればなりません。つまり、これからの「BOM情報」は、「時間」と「空間」情報も備えておかなければならないのです。もはや、「View」で何とかなる事態ではないのです。 図解でわかるPLMシステムの構築と導入 今回は、「ECM」のためのツールとしての、「BOM」とは何か? についてお話しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します