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■ 就活生に注目してほしい「財務指標」とは?

経営管理会計トピック

就活生には、「財務指標」だけで会社選びすることはできません、といいたいところですが、ここはぐっとこらえて、会計にはや四半世紀携わってきた筆者の感覚から、新聞記事で取り上げられている「財務指標」を整理させて頂こうと思います。

筆者は、特に「経営管理」「管理会計」を中心とした生業で仕事させて頂いておりますが、90年代初頭に、キャプラン、ノートンの「戦略マップ」「バランストスコアカード(BSC)」の概念を学んでからというもの、所詮、「財務指標」は「結果指標」と気付きました。あなたは、「バックミラーを見ながら車を運転できますか? フロントガラスを通じて目に入るもので安全運転を心がけるんですよね。ダッシュボードに計器(速度計や加速計など)が並んでいますが、計器だけをじっと見ていても、安全運転できませんよ」といいたいです。まあ、「ダッシュボードに並ぶ計器類だけを眺めていてもダメ」、と言ってしまうと、筆者の主戦場のひとつのBI(Business Intelligence)構築の仕事を自ら否定しまいかねない、ちょっとトリッキーはレトリックであることは間違いないのですが、、、(^^;)

前置きが長くなってしまいました。それでは、新聞記事の解説に入ります。

2015/7/6|日本経済新聞|朝刊 就職先選び「財務」を見よう ROAで安定性を評価 キャッシュフローも重要

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「今年の大学生の就職活動は売り手市場といわれ、会社も優秀な学生の囲い込みに必死だ。複数の会社から内々定をもらっている学生もいるだろう。多くの就職希望先から最終的に1社を選ぶうえで有効なのが、財務分析と自らの五感を駆使した会社の「取材」だ。自分の目と耳、足で集めた情報で最終判断し、納得のいく就職先を選ぼう。」

 

■ まずは一気呵成に注目指標をざっと整理します!

まず、就職を検討する企業の「財務指標」データを無料で手に入れるためには、

① ターゲット企業のホームページに掲載されている「投資家向け情報」「IR情報室」など
② Yahoo! ファイナンス     → 四季報情報
③ 日本取引所グループ(東証)  → 決算短信
④ EDINET           → 有価証券報告書

などにアクセスすれば、上場企業ならば簡単にかつタダで財務情報が手に入ります。

もし、あなたが株式投資を既にしているのなら、取引先の証券会社のホームページにさらに、分析ツールやアナリストレポートが提供されているはずです。

では、財務情報・財務指標データが手に入ったところで、新聞記事に沿って、どんな指標に注目すべきとアドバイスしてくれているか、順に見ていきましょう。

1.企業の安定性
就職してすぐに潰れる会社ではダメなので、倒産しにくい会社を選びましょう。そのために、

① 自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本 × 100

を見ます。

記事では、
「総資本のうち借入金などは他人資本と呼ばれ、いずれ返さなければいけない。資本金や過去の利益の蓄積が自己資本だ。上場企業の自己資本比率は平均40%程度なので、この水準を上回っていれば合格圏だ。50%以上なら経営の安定度は高く、60~70%あればかなりの優良企業といっていい。」

とあり、倒産するとは銀行借り入れが返済できないこと→返済必要額そのものが小さいと倒産リスクが小さいはず→とすれば自己資本の割合の大きい方が安全性は高い、というロジックです。

次に、

② ROA = 純利益 ÷ 総資産 × 100

をみます。

記事では、
「ROAは企業のビジネスそのものが、うまくいっているかどうか判断できる指標だ。」
「3年から5年遡って、ROA10%を維持できていれば、経営の安定度は高い」

とあり、企業が調達した資金または事業に投下した資産(資本)がどれだけの利益(儲け)を生んでいるか、そのリターン率(見返り率)が定常的に10%を超えている企業が安定的、とみなしています。

このパートの最後は、

③ 営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローとは、「企業が通常の営業活動を通して、1年間にどれだけの現金、現金同等物を獲得できたかを示す。いわば企業の稼ぐ力を知ることができる。」とのこと。

記事では、
「5年間プラスが続き、かつ右肩上がりなら、その企業の経営は安定しているとみてよさそうだ。」

という判断基準です。

これら3つの指標から、
「自己資本比率、ROA、営業キャッシュフローを5年分遡って比較してみると、安定度の高い会社を見つけることができそうだ。」
との総括になっています。

2.企業の将来性
今度は、企業の成長性に着目する指標の紹介になります。

④ 海外売上高比率
⑤ 外国人社員比率

から、「これからは、海外でビジネスを伸ばせる会社でないと、将来の成長は期待できない」「グローバル展開の可能性を判断する」のだそうです。

それから、

⑥ 役員陣のプロフィル
⑦ 社員の年齢構成

から、その企業の将来を把握するのだそうです。直接的な解説は見当たりませんでしたが、⑥については、「これからはライバル企業は国内とは限らない。将来を展望した成長を考えるなら、海外の同業他社との比較も必要だ。」とあるので、経営陣の外国籍の人がいるか? とか、見て欲しいらしいです。 ⑦については、平均年齢が低くて、社内に活気があるか、とか積極的に人材確保しているか、を見ようということらしいです(ここは推測)。

 

■ かんたんなまとめ

企業を見る視点は、

1.安定性(倒産リスク、事業の収益性)
2.将来性(成長性、グローバル対応度、人材活性度)

というまとめができそうです。

「着目しなさい!」という指標については、「財務指標」から記事は始まりましたが、結局は「人財指標」で締めくくられています。

ここは全面的に賛成でして、戦略マップのコンセプトにもあるように、「財務的成功」は「顧客満足」から。「顧客満足」は製品・サービスを提供する「従業員満足度」から生まれる、と信じていますので。

(関連投稿)
⇒「(スクランブル)「社員に優しい」は買い コスト増にも経営者自信(1)

経営管理会計トピック_戦略マップ

次に、注意点ですが、上記の財務指標は、①業種・業態、②企業のステージ(起業間もないのか、成熟しているのか)によってばらつきが大きいので、一概に何%以上がいいとか、実際に財務数値を観察している人は口にできないはずなんですがね~。就活生の皆さんは、できるだけ、同業他社同士の数値を比較してみてください。金融業と製造業と流通業とサービス業の財務指標を横並びにしたって、それぞれに特徴と傾向があって、一律の閾値(しきいち)で、いい、わるい、とは言えないはずです。

それから、この新聞記事でちょっと、くすっ、と笑ってしまったのが、

「最近は外国人株主を中心に自己資本利益率(ROE)への注目度が高いが、ROAは企業のビジネスそのものが、うまくいっているかどうか判断できる指標だ。ROEは自社株買いなどで改善できるので、就活生はROAに着目すべきだという」

という一節。2014年は「ROE教」が一世を風靡したのですが、15年に入ってその勢力に陰りが出てきたみたいです。ねえ、伊藤教授!!!

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0305_就職先選び「財務」を見よう ROAで安定性を評価 キャッシュフローも重要.docxhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むROE,財務分析,ROA,戦略マップ,バランストスコアカード,自己資本比率■ 就活生に注目してほしい「財務指標」とは? 就活生には、「財務指標」だけで会社選びすることはできません、といいたいところですが、ここはぐっとこらえて、会計にはや四半世紀携わってきた筆者の感覚から、新聞記事で取り上げられている「財務指標」を整理させて頂こうと思います。 筆者は、特に「経営管理」「管理会計」を中心とした生業で仕事させて頂いておりますが、90年代初頭に、キャプラン、ノートンの「戦略マップ」「バランストスコアカード(BSC)」の概念を学んでからというもの、所詮、「財務指標」は「結果指標」と気付きました。あなたは、「バックミラーを見ながら車を運転できますか? フロントガラスを通じて目に入るもので安全運転を心がけるんですよね。ダッシュボードに計器(速度計や加速計など)が並んでいますが、計器だけをじっと見ていても、安全運転できませんよ」といいたいです。まあ、「ダッシュボードに並ぶ計器類だけを眺めていてもダメ」、と言ってしまうと、筆者の主戦場のひとつのBI(Business Intelligence)構築の仕事を自ら否定しまいかねない、ちょっとトリッキーはレトリックであることは間違いないのですが、、、(^^;) 前置きが長くなってしまいました。それでは、新聞記事の解説に入ります。 2015/7/6|日本経済新聞|朝刊 就職先選び「財務」を見よう ROAで安定性を評価 キャッシュフローも重要 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「今年の大学生の就職活動は売り手市場といわれ、会社も優秀な学生の囲い込みに必死だ。複数の会社から内々定をもらっている学生もいるだろう。多くの就職希望先から最終的に1社を選ぶうえで有効なのが、財務分析と自らの五感を駆使した会社の「取材」だ。自分の目と耳、足で集めた情報で最終判断し、納得のいく就職先を選ぼう。」   ■ まずは一気呵成に注目指標をざっと整理します! まず、就職を検討する企業の「財務指標」データを無料で手に入れるためには、 ① ターゲット企業のホームページに掲載されている「投資家向け情報」「IR情報室」など ② Yahoo! ファイナンス     → 四季報情報 ③ 日本取引所グループ(東証)  → 決算短信 ④ EDINET           → 有価証券報告書 などにアクセスすれば、上場企業ならば簡単にかつタダで財務情報が手に入ります。 もし、あなたが株式投資を既にしているのなら、取引先の証券会社のホームページにさらに、分析ツールやアナリストレポートが提供されているはずです。 では、財務情報・財務指標データが手に入ったところで、新聞記事に沿って、どんな指標に注目すべきとアドバイスしてくれているか、順に見ていきましょう。 1.企業の安定性 就職してすぐに潰れる会社ではダメなので、倒産しにくい会社を選びましょう。そのために、 ① 自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本 × 100 を見ます。 記事では、 「総資本のうち借入金などは他人資本と呼ばれ、いずれ返さなければいけない。資本金や過去の利益の蓄積が自己資本だ。上場企業の自己資本比率は平均40%程度なので、この水準を上回っていれば合格圏だ。50%以上なら経営の安定度は高く、60~70%あればかなりの優良企業といっていい。」 とあり、倒産するとは銀行借り入れが返済できないこと→返済必要額そのものが小さいと倒産リスクが小さいはず→とすれば自己資本の割合の大きい方が安全性は高い、というロジックです。 次に、 ② ROA = 純利益 ÷ 総資産 × 100 をみます。 記事では、 「ROAは企業のビジネスそのものが、うまくいっているかどうか判断できる指標だ。」 「3年から5年遡って、ROA10%を維持できていれば、経営の安定度は高い」 とあり、企業が調達した資金または事業に投下した資産(資本)がどれだけの利益(儲け)を生んでいるか、そのリターン率(見返り率)が定常的に10%を超えている企業が安定的、とみなしています。 このパートの最後は、 ③ 営業キャッシュフロー 営業キャッシュフローとは、「企業が通常の営業活動を通して、1年間にどれだけの現金、現金同等物を獲得できたかを示す。いわば企業の稼ぐ力を知ることができる。」とのこと。 記事では、 「5年間プラスが続き、かつ右肩上がりなら、その企業の経営は安定しているとみてよさそうだ。」 という判断基準です。 これら3つの指標から、 「自己資本比率、ROA、営業キャッシュフローを5年分遡って比較してみると、安定度の高い会社を見つけることができそうだ。」 との総括になっています。 2.企業の将来性 今度は、企業の成長性に着目する指標の紹介になります。 ④ 海外売上高比率 ⑤ 外国人社員比率 から、「これからは、海外でビジネスを伸ばせる会社でないと、将来の成長は期待できない」「グローバル展開の可能性を判断する」のだそうです。 それから、 ⑥ 役員陣のプロフィル ⑦ 社員の年齢構成 から、その企業の将来を把握するのだそうです。直接的な解説は見当たりませんでしたが、⑥については、「これからはライバル企業は国内とは限らない。将来を展望した成長を考えるなら、海外の同業他社との比較も必要だ。」とあるので、経営陣の外国籍の人がいるか? とか、見て欲しいらしいです。 ⑦については、平均年齢が低くて、社内に活気があるか、とか積極的に人材確保しているか、を見ようということらしいです(ここは推測)。   ■ かんたんなまとめ 企業を見る視点は、 1.安定性(倒産リスク、事業の収益性) 2.将来性(成長性、グローバル対応度、人材活性度) というまとめができそうです。 「着目しなさい!」という指標については、「財務指標」から記事は始まりましたが、結局は「人財指標」で締めくくられています。 ここは全面的に賛成でして、戦略マップのコンセプトにもあるように、「財務的成功」は「顧客満足」から。「顧客満足」は製品・サービスを提供する「従業員満足度」から生まれる、と信じていますので。 (関連投稿) ⇒「(スクランブル)「社員に優しい」は買い コスト増にも経営者自信(1)」 次に、注意点ですが、上記の財務指標は、①業種・業態、②企業のステージ(起業間もないのか、成熟しているのか)によってばらつきが大きいので、一概に何%以上がいいとか、実際に財務数値を観察している人は口にできないはずなんですがね~。就活生の皆さんは、できるだけ、同業他社同士の数値を比較してみてください。金融業と製造業と流通業とサービス業の財務指標を横並びにしたって、それぞれに特徴と傾向があって、一律の閾値(しきいち)で、いい、わるい、とは言えないはずです。 それから、この新聞記事でちょっと、くすっ、と笑ってしまったのが、 「最近は外国人株主を中心に自己資本利益率(ROE)への注目度が高いが、ROAは企業のビジネスそのものが、うまくいっているかどうか判断できる指標だ。ROEは自社株買いなどで改善できるので、就活生はROAに着目すべきだという」 という一節。2014年は「ROE教」が一世を風靡したのですが、15年に入ってその勢力に陰りが出てきたみたいです。ねえ、伊藤教授!!!現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します