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「カント オロワ ヤク ノ アランケプ シネプ カ イサム」 ゴールデンカムイより

本レビュー
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■ ブックカバー見返しに記されている言葉の意味とは?

コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ

遅ればせながら、2015年度コミックナタリー大賞・第2位、「このマンガがすごい! 2016」(宝島社)オトコ編・第2位、「マンガ大賞2016」大賞受賞作の「ゴールデンカムイ」単行本既刊を一気読みしました。手塚治虫先生の大作である「ブラックジャック」のようなアウトロー・ヒーロー要素と、「火の鳥」のような生命賛歌を同時に味わうことができる作品です。

この投稿のお題にあるカタカナはアイヌ語で、

「天から役目なしに降ろされた物はひとつもない」

という意味です。

舞台は日露戦争後の北海道で、陸軍(第七師団/屯田兵)、アイヌ、新撰組の生き残りなど、様々な立場の、様々な『業(ごう)』を背負った人々が登場するお話です。
(野田サトル氏著)

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特に、アイヌの習俗を詳細に取材・調査したその描写は大変興味深いものがあります。その中でも、自然の恵み、すなわち狩猟で得た獲物を食として頂戴する時のアイヌの人々の自然観に、都会暮らしで日々仕事に追われるこの身としては、自分の田舎で育った頃の、大地や自然との距離感がもっと近かった幼いころの記憶が蘇り、さらに、そこに圧倒的な北海道の自然の厳しさが加わり、アイヌの人々の生き抜くことに対する姿勢に、感動を覚えずには居られません。

ヒグマや他の獲物を捕食する際にも、一部の動物を除き、ほぼ全てが神の扱いで、人間以外の生命への尊重の念を忘れることなく、敬いながらも、感謝しつつ自分の命の糧とする、その生態系・食物連鎖の一部を構成する人間を、圧倒的な自然の力の前にひ弱だが、力強い生命力を持った存在に描き切っています。

ここでは、あえて登場人物もあらすじも紹介しません。大自然の中で人間がどう生きていくのか、それぞれの登場人物が背負っている人生に対する『業』が仕向ける人間行動に、いちいち我が身と比較して深く考えざるを得ない作品であることだけお伝えします。

この世界にある全ての生命(それは植物も含む)の存在理由と、人間が苦しみながらも生き抜くことの意味が、戦ったり、食べたり、食べられたりというストーリーの中で語られていきます。まさに、「天から役目なしに降ろされた物はひとつもない」です。

最後に、アイヌの人々が、食事中に食べ物に感謝するための言葉である「ヒンナ ヒンナ」という言葉もご紹介します。作中では、獲物(食材)となった命に対する尊重・感謝と、単純に「おいしい」という感情の発露としての「ヒンナ」。おそらく、これから死ぬまでに食べ物を口にする度にこの言葉を思い出すに違いありません。

宜しければ、みなさんにも手にとって読んで頂きたい漫画です。

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