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■ 収入と幸福度が比例するのは所得水準がどこ辺りまでなのか?

コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ

面白い研究結果が日本経済新聞に掲載されていました。現代日本では、収入の増加と自分が受ける幸福感の正比例関係は、一体どこまで収入が増えたら崩れるのか、つまり収入が増えるにつれて幸せだなあと感じるのは一体いくらまでなのか、興味ありませんか? 筆者は多分、どこまで行っても正比例のままだと思うのですが。(^^;)

2016/6/18付 |日本経済新聞|朝刊 (日経マネーセレクション)お金でどれだけ幸せになるのか

「収入と幸福度は比例するが、年収7万5000ドル(約800万円)で幸福度はほぼ頭打ちになる――。これは、ノーベル経済学賞受賞者である米プリンストン大学の心理学者ダニエル・カーネマンらによる研究結果だ。2008~09年に米国で45万人を対象に収入や生活満足度、ストレスについての電話調査を実施し、年収と幸福度の関係を分析した。日本でも同様の研究結果がある。大阪大学21世紀COEによる調査では年収700万円あたりが幸福度の飽和点になっている。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、同記事添付の「幸福度」と「所得」の相関グラフを転載)

20160618_1人当たり所得と幸福度_日本経済新聞朝刊

どうして年収が増えても幸福度は頭打ちになるのでしょうか。研究者たちの見解によりますと、
① ある程度まで収入が増えると、収入よりも社会的な関係や働く喜びが重要になる
② 生活がある水準まで向上すると、消費における選択肢が増し、生活の質を高めることに関心が向かう

のだとか。筆者は、そんなに贅沢がしたいわけではないのですが、読書が好きで、自分が読みたい本をもっと買いたいし、働かないと生活費が賄えないので、勤労時間の代わりに本を読む時間が欲しい。結局、働かないで読みたい本が買って読める時間を確保するためには、もっと収入が必要。ということで、現在、筆者の頭の中では、所得(収入)と幸福度は絶賛正比例中なのです!(^^;)

 

■ 行動経済学か、経験経済か? お金ではない何かが人を幸せにする

これをもっと経済学的に分析したお話がこちら。
「経済の成長と人間の幸福には明確な関係は見られない――。1974年に米経済学者リチャード・イースタリンが発表した「幸福のパラドックス(イースタリンの逆説)」だ。ひとつの国の一時点では所得と幸福は関係しているが、国と国との比較でははっきりとした相関はない。」

つまり、経済的に豊かな国の国民が貧しい国の国民より幸せだとは限らないし、一国の時系列で考えても、国内総生産(GDP)が増えるほど幸福度が上がるわけでもないということらしいです。個人の所得水準と幸福度の関係にも同様に当てはまります。マクロ経済的にも、個人的(心理的)にも「幸福度」と「所得(収入)」が正の相関関係にないのなら、人って、何を基準に幸せかどうかを感じているのでしょうか。

恐らく現在有力な仮説がこれ。
「人は他人と比較して自分の幸福度を判断し、また、経済環境が良くなってもすぐに慣れてしまう」
というもの。

具体的に言うと、
「人間はビルの中に入ると、何階にいるのか感覚では分からなくなる。しかし窓の外を見て他のビルと比べると、どのくらいの高さかが分かる。同じように、人は幸福度を他人と比べることで簡単に判断する」
(行動経済学の視点から幸福を研究する大阪大学社会経済研究所の大竹文雄教授)

行動経済学によりますと、人は自分が幸せかどうかを測るうえでの基準となる「参照点」を無意識に設定することが多いのだとか。大竹氏は「もちろん、あえて参照点を作ることで自分のモチベーションを上げるやり方もある。ただ、心の平穏を保つために、あえて周りを見ないようにすることも大切だ」と話されています。

これは、BtoCのビジネスをやっている企業ならば、自社のマーケティングに応用できるのではないでしょうか。言い古された言葉でいうなら、「モノ消費」から「コト消費」へ。ある程度、所得水準が上がり、製商品も多種多様なものが供給されている日本市場では、経験経済(エクスペリエンス エコノミー)、顧客の体験こそが商品価値となるものが売れていくのでは???

 

■ 心的要因を指標化し、幸せを感じる製品の設計に生かす

人が幸せを感じられる商品をつくる。そうした取り組みを続けている研究者、前野隆司慶応義塾大学教授のお話し。

2016/6/19付 |日本経済新聞|朝刊 (かがくアゴラ)「幸せ」4因子、満たす製品を

「人々が幸福になる仕組みとは何だろうか。カメラ用超音波モーターやロボットアームなどを開発してきた前野隆司慶応義塾大学教授は、最近の研究テーマを「幸せのメカニズム」に移している。工学的な視点で幸せを分析し、製品開発や街づくりなどに生かす方法を探っている。」

20160619_前野隆司慶応義塾大学教授_日本経済新聞朝刊

前野隆司慶応義塾大学教授

以下、同記事を再整理してみました。

—————————————————–
Q1:工学の視点から幸せを研究するのは、これまでにもあったのでは?

「心理学や経済学などで色々な研究があります。例えば心理学では、所得や社会的地位、物的財などの「地位財」による幸せは長続きしないと指摘しています。長続きするのは「非地位財」による幸せ、つまり健康や良質な環境、社会への帰属意識や愛情など心的要因だといいます。」

先の、「幸福のパラドックス」理論からさらに踏み込み、高くなった所得で得られる財の質的違いを「地位財」と「非地位財」とに分けて、後者からもたらされる幸福度(経済学的に言うと効用?)が継続的ということは、簡単に言うと効果が大きい、ということ。

教授によれば、心的要因の中身は体系的に整理されておらず、よく分からないため、インターネットを使って1500人にアンケートした結果を「因子分析」という手法を使って調べたそうです。その結果、

「幸せにかかわる4つの因子が見つかりました。「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立とマイペース」です。幸せのあり方は人それぞれですが、今の日本では、4因子を満たしている人は幸せな傾向にあるといえます。」

① 自己実現と成長 (うーん、マズローの段階欲求説の最上階!)
② つながりと感謝 (2011年以降の日本社会で強く感じられる“絆”っていうやつ)
③ 前向きと楽観   (これは性格の問題かなあ、自分にはこの要素ないですね)
④ 独立とマイペース (ゆとりですがなにか?)

Q2:製品設計にどう取り入れるのですか?

「つかみどころのなかった心的要因を測定し指標化できれば、どのように設計に組み込めばよいのか、参考になると考えています。
 カメラを例に挙げれば、現在の設計思想は重量や画像センサーの画素数などハード面にとどまっています。撮影した写真をすぐに交流サイトに掲載して腕を磨いたり、親しい人たちと共有したりする仕組みを備えれば、より幸せを感じる製品にできるでしょう。」

まさしく、スマート製品でどこでもつながるを実現するIoT、コミュニティ尊重社会、と言ったところがキーワードとして思い浮かびます。

Q3:なぜ幸せを研究対象にしたのですか。

「キヤノンに入社して超音波モーターを開発し、慶大理工学部に移りロボットを研究するなどいつも新しいものを作ってきました。笑うロボットを作って人はなぜ笑うのかを理解しようともした。工学だけでなく心理学や哲学など周辺分野にも興味は広がり、科学技術の目標は人々を幸せにすることにあるのではないかと感じていました。」

——————————————————-

筆者はハードウェアではなく、どちらかというとソフトウェアに近いところで、ものづくりに従事していますが、ものづくりの過程において、「笑い」を重要視しています。コンサルタントというクライアントとのコミュニケーションが命な仕事をしているからか、お客様との打ち合わせでは、常に笑い(ユーモア)に満ち溢れていることに留意しています。自分が笑って、お客様や同僚が笑って、楽しい、うれしい、満ち溢れている、満足している、そんな状態の方が、絶対、いいものづくりができる! と信じているのです。

眉間にしわを寄せているより、口角を上げて、楽しく議論した方が、創発的にいいアイデアが出るに決まっています。そして何よりチームワークが良くなり、一人でできなかったタスクも、助け合って、さらに大きなタスクでもこなせるようになります。

人を幸せにするビジネス、それは笑いが絶えない環境を作ること。お客様と一緒にそういう環境(コミュニティ、エコシステム)を築き上げた企業や組織が勝ち組なのです。他人と比較して勝ち負けと言っているんじゃなくて、自分が置かれたビジネス環境でよりお客様と成功体験を増やしていくことが勝利だという意味。そのためには何をおいても「笑いですよ!」(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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人を幸せにするビジネス、幸せ4因子を満たす製品作りとは? 前野隆司慶応義塾大学教授http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-e1428166267398.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-150x150.jpg小林 友昭新聞記事・コラムダニエル・カーネマン,幸福度,行動経済学,経験経済,幸福のパラドックス,イースタリンの逆説,リチャード・イースタリン,参照点,エクスペリエンス エコノミー,前野隆司,地位財,非地位財■ 収入と幸福度が比例するのは所得水準がどこ辺りまでなのか? 面白い研究結果が日本経済新聞に掲載されていました。現代日本では、収入の増加と自分が受ける幸福感の正比例関係は、一体どこまで収入が増えたら崩れるのか、つまり収入が増えるにつれて幸せだなあと感じるのは一体いくらまでなのか、興味ありませんか? 筆者は多分、どこまで行っても正比例のままだと思うのですが。(^^;) 2016/6/18付 |日本経済新聞|朝刊 (日経マネーセレクション)お金でどれだけ幸せになるのか 「収入と幸福度は比例するが、年収7万5000ドル(約800万円)で幸福度はほぼ頭打ちになる――。これは、ノーベル経済学賞受賞者である米プリンストン大学の心理学者ダニエル・カーネマンらによる研究結果だ。2008~09年に米国で45万人を対象に収入や生活満足度、ストレスについての電話調査を実施し、年収と幸福度の関係を分析した。日本でも同様の研究結果がある。大阪大学21世紀COEによる調査では年収700万円あたりが幸福度の飽和点になっている。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます (下記は、同記事添付の「幸福度」と「所得」の相関グラフを転載) どうして年収が増えても幸福度は頭打ちになるのでしょうか。研究者たちの見解によりますと、 ① ある程度まで収入が増えると、収入よりも社会的な関係や働く喜びが重要になる ② 生活がある水準まで向上すると、消費における選択肢が増し、生活の質を高めることに関心が向かう のだとか。筆者は、そんなに贅沢がしたいわけではないのですが、読書が好きで、自分が読みたい本をもっと買いたいし、働かないと生活費が賄えないので、勤労時間の代わりに本を読む時間が欲しい。結局、働かないで読みたい本が買って読める時間を確保するためには、もっと収入が必要。ということで、現在、筆者の頭の中では、所得(収入)と幸福度は絶賛正比例中なのです!(^^;)   ■ 行動経済学か、経験経済か? お金ではない何かが人を幸せにする これをもっと経済学的に分析したお話がこちら。 「経済の成長と人間の幸福には明確な関係は見られない――。1974年に米経済学者リチャード・イースタリンが発表した「幸福のパラドックス(イースタリンの逆説)」だ。ひとつの国の一時点では所得と幸福は関係しているが、国と国との比較でははっきりとした相関はない。」 つまり、経済的に豊かな国の国民が貧しい国の国民より幸せだとは限らないし、一国の時系列で考えても、国内総生産(GDP)が増えるほど幸福度が上がるわけでもないということらしいです。個人の所得水準と幸福度の関係にも同様に当てはまります。マクロ経済的にも、個人的(心理的)にも「幸福度」と「所得(収入)」が正の相関関係にないのなら、人って、何を基準に幸せかどうかを感じているのでしょうか。 恐らく現在有力な仮説がこれ。 「人は他人と比較して自分の幸福度を判断し、また、経済環境が良くなってもすぐに慣れてしまう」 というもの。 具体的に言うと、 「人間はビルの中に入ると、何階にいるのか感覚では分からなくなる。しかし窓の外を見て他のビルと比べると、どのくらいの高さかが分かる。同じように、人は幸福度を他人と比べることで簡単に判断する」 (行動経済学の視点から幸福を研究する大阪大学社会経済研究所の大竹文雄教授) 行動経済学によりますと、人は自分が幸せかどうかを測るうえでの基準となる「参照点」を無意識に設定することが多いのだとか。大竹氏は「もちろん、あえて参照点を作ることで自分のモチベーションを上げるやり方もある。ただ、心の平穏を保つために、あえて周りを見ないようにすることも大切だ」と話されています。 これは、BtoCのビジネスをやっている企業ならば、自社のマーケティングに応用できるのではないでしょうか。言い古された言葉でいうなら、「モノ消費」から「コト消費」へ。ある程度、所得水準が上がり、製商品も多種多様なものが供給されている日本市場では、経験経済(エクスペリエンス エコノミー)、顧客の体験こそが商品価値となるものが売れていくのでは???   ■ 心的要因を指標化し、幸せを感じる製品の設計に生かす 人が幸せを感じられる商品をつくる。そうした取り組みを続けている研究者、前野隆司慶応義塾大学教授のお話し。 2016/6/19付 |日本経済新聞|朝刊 (かがくアゴラ)「幸せ」4因子、満たす製品を 「人々が幸福になる仕組みとは何だろうか。カメラ用超音波モーターやロボットアームなどを開発してきた前野隆司慶応義塾大学教授は、最近の研究テーマを「幸せのメカニズム」に移している。工学的な視点で幸せを分析し、製品開発や街づくりなどに生かす方法を探っている。」 前野隆司慶応義塾大学教授 以下、同記事を再整理してみました。 ----------------------------------------------------- Q1:工学の視点から幸せを研究するのは、これまでにもあったのでは? 「心理学や経済学などで色々な研究があります。例えば心理学では、所得や社会的地位、物的財などの「地位財」による幸せは長続きしないと指摘しています。長続きするのは「非地位財」による幸せ、つまり健康や良質な環境、社会への帰属意識や愛情など心的要因だといいます。」 先の、「幸福のパラドックス」理論からさらに踏み込み、高くなった所得で得られる財の質的違いを「地位財」と「非地位財」とに分けて、後者からもたらされる幸福度(経済学的に言うと効用?)が継続的ということは、簡単に言うと効果が大きい、ということ。 教授によれば、心的要因の中身は体系的に整理されておらず、よく分からないため、インターネットを使って1500人にアンケートした結果を「因子分析」という手法を使って調べたそうです。その結果、 「幸せにかかわる4つの因子が見つかりました。「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立とマイペース」です。幸せのあり方は人それぞれですが、今の日本では、4因子を満たしている人は幸せな傾向にあるといえます。」 ① 自己実現と成長 (うーん、マズローの段階欲求説の最上階!) ② つながりと感謝 (2011年以降の日本社会で強く感じられる“絆”っていうやつ) ③ 前向きと楽観   (これは性格の問題かなあ、自分にはこの要素ないですね) ④ 独立とマイペース (ゆとりですがなにか?) Q2:製品設計にどう取り入れるのですか? 「つかみどころのなかった心的要因を測定し指標化できれば、どのように設計に組み込めばよいのか、参考になると考えています。  カメラを例に挙げれば、現在の設計思想は重量や画像センサーの画素数などハード面にとどまっています。撮影した写真をすぐに交流サイトに掲載して腕を磨いたり、親しい人たちと共有したりする仕組みを備えれば、より幸せを感じる製品にできるでしょう。」 まさしく、スマート製品でどこでもつながるを実現するIoT、コミュニティ尊重社会、と言ったところがキーワードとして思い浮かびます。 Q3:なぜ幸せを研究対象にしたのですか。 「キヤノンに入社して超音波モーターを開発し、慶大理工学部に移りロボットを研究するなどいつも新しいものを作ってきました。笑うロボットを作って人はなぜ笑うのかを理解しようともした。工学だけでなく心理学や哲学など周辺分野にも興味は広がり、科学技術の目標は人々を幸せにすることにあるのではないかと感じていました。」 ------------------------------------------------------- 筆者はハードウェアではなく、どちらかというとソフトウェアに近いところで、ものづくりに従事していますが、ものづくりの過程において、「笑い」を重要視しています。コンサルタントというクライアントとのコミュニケーションが命な仕事をしているからか、お客様との打ち合わせでは、常に笑い(ユーモア)に満ち溢れていることに留意しています。自分が笑って、お客様や同僚が笑って、楽しい、うれしい、満ち溢れている、満足している、そんな状態の方が、絶対、いいものづくりができる! と信じているのです。 眉間にしわを寄せているより、口角を上げて、楽しく議論した方が、創発的にいいアイデアが出るに決まっています。そして何よりチームワークが良くなり、一人でできなかったタスクも、助け合って、さらに大きなタスクでもこなせるようになります。 人を幸せにするビジネス、それは笑いが絶えない環境を作ること。お客様と一緒にそういう環境(コミュニティ、エコシステム)を築き上げた企業や組織が勝ち組なのです。他人と比較して勝ち負けと言っているんじゃなくて、自分が置かれたビジネス環境でよりお客様と成功体験を増やしていくことが勝利だという意味。そのためには何をおいても「笑いですよ!」(^^;) (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します