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■ まず、どうして時間軸で経営戦略を語るのかを説明します!

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

今回から、「経営戦略」の歴史を、三谷宏治著「経営戦略全史」をベースに説明していきます。なぜ、「経営戦略」の基礎を歴史形式で説明するかの理由ですが、物事の整理方法で、「時間軸」でものを見るというのは、時間の流れは誰にでも平等でかつ暴力的で、ある一定の視座が得られるメリットがあるからです。「何年にだれがこの説を唱えた」という事実は、他人と容易く共有できるものです。

このシリーズの後、筆者が心酔する経営学者の一人であるミンツバーグ著「戦略サファリ(第2版)」で引き続き、経営戦略の基礎を解説していく予定です。こちらは、ミンツバーグ教授の主観(研究成果ともいえますが)による学派分類で説明がなされます。そもそも教授の分類方法が納得できないと、どんなに魅力的な解説がなされていても、内容が頭には入ってきません。しかし、歴史形式ならば、時間軸という強力な補強材によって、暴力的に頭の中に染み込んで理解が進みます。

次に、なぜ、三谷教授の著書をベースにするのかの理由ですが、これには2つあります。ひとつは、この著作が、「ビジネス書大賞2014」で大賞を、「ダイヤモンドHBR読者が選ぶベスト経営書2013」で第1位を受賞したという世の中から受け入れやすいベストセラーということ。ふたつには、著者も言及しているように、経営学者、経営コンサルタント、実業家たちをバランスよく取り上げていることです。

まえがきでも三谷教授が言及しているように、この名著を書くにあたって、参考にした7冊の著作をご紹介しておきます。

(1)「戦略サファリ」ヘンリーミンツバーク(著)

戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック

・代表的な経営戦略を10のスクールに分類し、その批評を通じて戦略の本質を解明した戦略ハンドブック。

 

(2)「MITスローンスクール 戦略論」マイケル・A. クスマノ(編集), コンスタンチノス・C. マルキデス(編集)

MITスローン・スクール 戦略論

・スローンスクールのビジネス誌「スローン・マネジメント・レビュー」(略称SMR)に、1998年から2001年の間に掲載された、戦略論関係の優秀論文を選んで1巻としたもの

 

(3)「戦略論 1957-1993」DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(著, 編集, 翻訳)

戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)

・ポーターの「ファイブ・フォース」など、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された戦略の名著論文9編を収録

 

(4)「戦略論 1994-1999」DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(著, 編集, 翻訳)

戦略論 1994-1999 (HARVARD BUSINESS PRESS)

・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」などハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された戦略の名著論文7編を収録。

 

(5)「世界を変えたビジネス思想家」ダイヤモンド社(編集)

世界を変えたビジネス思想家 (世界標準の知識ザ・ビジネス)

・卓越した思想により、世界のビジネス観に革命を起こしてきた偉大なビジネス・シンカーたちの生い立ちと、思想体系をコンパクトに凝縮。ビジネス史上に残る50人の思想家を厳選。

 

(6)「テキスト経営学 第3版」井原久光(著)

テキスト経営学―基礎から最新の理論まで (MINERVA TEXT LIBRARY)

・基礎用語や概念を整理しながら、ケーススタディなどを通じて学生やビジネスマン自身が独学できる機会を提供する経営学の入門書

 

(7)「経営戦略の巨人たち」ウォルター・キーチェル三世(著), 藤井 清美(翻訳)

経営戦略の巨人たち―企業経営を革新した知の攻防

・現代ビジネス界に「戦略」を持ち込み、企業経営に革命をもたらした新しい知識人たちの苦闘の現代史。マッキンゼーやボストン・コンサルティング、ハーバード・ビジネス・スクールなどの攻防を描く

このブログシリーズを最後までお読みいただければ、上記7冊+三谷氏の著作の概要が手に取るように理解できるハズ。。。(^^;)

 

■ 時間軸で学説を語るなら年表が無いとね!

ということで、筆者になりに、三谷氏著の「経営戦略全史」(以後、本著とよびます)を理解したうえで、簡単な年表に経営戦略史をまとめました。

経営戦略(基礎編)_経営戦略概史_年表

この数十年の経営戦略学史を観察すると、「ポジショニング学派」と「ケイパビリティ学派」の対立構造が際立っています。「ポジショニング学派」は、「テイラーの科学的管理」に源流があり、「定量的分析や定型的計画プロセスで経営戦略は理解でき解決できる」という立場とります。一方、「ケイパビリティ学派」は、「メイヨーの人間関係論」に源流があり、「企業活動は人間的側面が重く定性的議論しか馴染まない」という立場をとります。

ポジショニング学派は、「外部環境が大事!儲かる市場で儲かる立場になれば自ずと儲かる」、ケイパビリティ学派は、「内部環境が大事!自社の強みがあるところで勝負すれば儲かる」と、それぞれ唱え、相手を否定します。後の章でも登場するのですが、同じ時代の同じ企業の同じ活動でも、解釈次第で、ポジショニング学派の強力な例証になったり、その反対になったりします。まあ、悪知恵の働く経営コンサルタントは、クライアントがどっちの学派を信奉するかで、経営分析結果の見せ方を使い分けたりするのですが、、、(^^;)

というわけで、悪知恵の働く経営コンサルタントが両者を使い分けられるということは、そもそも経営者自身が状況に応じて使い分ければ、好ましい結果が得られそうです。というわけで、「すべては状況次第。外部環境が大事な時はポジショニング学派的に振る舞い、内部環境が大事になった時には、ケイパビリティ学派的に振る舞えは、経営の成功率は高まる」というのが、第3の立場、「試行錯誤アプローチ」「コンフィギュレーション学派」。これを唱えたのがヘンリー・ミンツバーグ氏なのですが、彼の言いたいことを一言でいうと、「経営とは職人芸」。こう言い切ってしまうと、ついてこれない人も出てくるわけで。。。

さらに、21世紀に入って、ITの革新スピードが依然と比べ物にならないくらい早くなってしまったことも影響し、経済・経営環境の変化、技術進化のスピードは劇的に上がり、従来の「ポジショニング」も「ケイパビリティ」も、自社のものはこれだ!と気づいたときには、後の祭り。あっという間に陳腐化して、自社の戦略行為の分析が、環境の変化に追い付かない時代となってしまいました。

そこで、登場してきたのが「アダプティブ戦略」です。「ポジショニングもケイパビリティもやってみなけりゃ分からない!まずは行動してみて試行錯誤してから、自社にとって良いか悪いか決めればいいじゃん!」ここまで来ると、経営戦略学というより、行動様式とか、変更プロセスの定義が大事で、高邁なコンセプトなぞはくそくらえ!(失礼しました)m(_ _)m

ざっと、ここまでが、およそ100年の経営戦略の歴史になります。

次回からは、「誰が何を唱えたか? それを実践した企業の成功物語は?」 時計の針を100年巻き戻して、テイラーの時代から紐解いていきたいともいます。

経営戦略(基礎編)_経営戦略概史(1)経営戦略100年の振り返り方 三谷宏治著「経営戦略全史」より



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経営戦略概史(1)経営戦略100年の振り返り方 三谷宏治著「経営戦略全史」よりhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭経営戦略(基礎編)ポジショニング,ケイパビリティ,三谷宏治,経営戦略全史,経営戦略,ミンツバーグ,コンフィギュレーション,アダプティブ■ まず、どうして時間軸で経営戦略を語るのかを説明します! 今回から、「経営戦略」の歴史を、三谷宏治著「経営戦略全史」をベースに説明していきます。なぜ、「経営戦略」の基礎を歴史形式で説明するかの理由ですが、物事の整理方法で、「時間軸」でものを見るというのは、時間の流れは誰にでも平等でかつ暴力的で、ある一定の視座が得られるメリットがあるからです。「何年にだれがこの説を唱えた」という事実は、他人と容易く共有できるものです。 このシリーズの後、筆者が心酔する経営学者の一人であるミンツバーグ著「戦略サファリ(第2版)」で引き続き、経営戦略の基礎を解説していく予定です。こちらは、ミンツバーグ教授の主観(研究成果ともいえますが)による学派分類で説明がなされます。そもそも教授の分類方法が納得できないと、どんなに魅力的な解説がなされていても、内容が頭には入ってきません。しかし、歴史形式ならば、時間軸という強力な補強材によって、暴力的に頭の中に染み込んで理解が進みます。 次に、なぜ、三谷教授の著書をベースにするのかの理由ですが、これには2つあります。ひとつは、この著作が、「ビジネス書大賞2014」で大賞を、「ダイヤモンドHBR読者が選ぶベスト経営書2013」で第1位を受賞したという世の中から受け入れやすいベストセラーということ。ふたつには、著者も言及しているように、経営学者、経営コンサルタント、実業家たちをバランスよく取り上げていることです。 まえがきでも三谷教授が言及しているように、この名著を書くにあたって、参考にした7冊の著作をご紹介しておきます。 (1)「戦略サファリ」ヘンリーミンツバーク(著) 戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック ・代表的な経営戦略を10のスクールに分類し、その批評を通じて戦略の本質を解明した戦略ハンドブック。   (2)「MITスローンスクール 戦略論」マイケル・A. クスマノ(編集), コンスタンチノス・C. マルキデス(編集) MITスローン・スクール 戦略論 ・スローンスクールのビジネス誌「スローン・マネジメント・レビュー」(略称SMR)に、1998年から2001年の間に掲載された、戦略論関係の優秀論文を選んで1巻としたもの   (3)「戦略論 1957-1993」DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(著, 編集, 翻訳) 戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS) ・ポーターの「ファイブ・フォース」など、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された戦略の名著論文9編を収録   (4)「戦略論 1994-1999」DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(著, 編集, 翻訳) 戦略論 1994-1999 (HARVARD BUSINESS PRESS) ・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」などハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された戦略の名著論文7編を収録。   (5)「世界を変えたビジネス思想家」ダイヤモンド社(編集) 世界を変えたビジネス思想家 (世界標準の知識ザ・ビジネス) ・卓越した思想により、世界のビジネス観に革命を起こしてきた偉大なビジネス・シンカーたちの生い立ちと、思想体系をコンパクトに凝縮。ビジネス史上に残る50人の思想家を厳選。   (6)「テキスト経営学 第3版」井原久光(著) テキスト経営学―基礎から最新の理論まで (MINERVA TEXT LIBRARY) ・基礎用語や概念を整理しながら、ケーススタディなどを通じて学生やビジネスマン自身が独学できる機会を提供する経営学の入門書   (7)「経営戦略の巨人たち」ウォルター・キーチェル三世(著), 藤井 清美(翻訳) 経営戦略の巨人たち―企業経営を革新した知の攻防 ・現代ビジネス界に「戦略」を持ち込み、企業経営に革命をもたらした新しい知識人たちの苦闘の現代史。マッキンゼーやボストン・コンサルティング、ハーバード・ビジネス・スクールなどの攻防を描く このブログシリーズを最後までお読みいただければ、上記7冊+三谷氏の著作の概要が手に取るように理解できるハズ。。。(^^;)   ■ 時間軸で学説を語るなら年表が無いとね! ということで、筆者になりに、三谷氏著の「経営戦略全史」(以後、本著とよびます)を理解したうえで、簡単な年表に経営戦略史をまとめました。 この数十年の経営戦略学史を観察すると、「ポジショニング学派」と「ケイパビリティ学派」の対立構造が際立っています。「ポジショニング学派」は、「テイラーの科学的管理」に源流があり、「定量的分析や定型的計画プロセスで経営戦略は理解でき解決できる」という立場とります。一方、「ケイパビリティ学派」は、「メイヨーの人間関係論」に源流があり、「企業活動は人間的側面が重く定性的議論しか馴染まない」という立場をとります。 ポジショニング学派は、「外部環境が大事!儲かる市場で儲かる立場になれば自ずと儲かる」、ケイパビリティ学派は、「内部環境が大事!自社の強みがあるところで勝負すれば儲かる」と、それぞれ唱え、相手を否定します。後の章でも登場するのですが、同じ時代の同じ企業の同じ活動でも、解釈次第で、ポジショニング学派の強力な例証になったり、その反対になったりします。まあ、悪知恵の働く経営コンサルタントは、クライアントがどっちの学派を信奉するかで、経営分析結果の見せ方を使い分けたりするのですが、、、(^^;) というわけで、悪知恵の働く経営コンサルタントが両者を使い分けられるということは、そもそも経営者自身が状況に応じて使い分ければ、好ましい結果が得られそうです。というわけで、「すべては状況次第。外部環境が大事な時はポジショニング学派的に振る舞い、内部環境が大事になった時には、ケイパビリティ学派的に振る舞えは、経営の成功率は高まる」というのが、第3の立場、「試行錯誤アプローチ」「コンフィギュレーション学派」。これを唱えたのがヘンリー・ミンツバーグ氏なのですが、彼の言いたいことを一言でいうと、「経営とは職人芸」。こう言い切ってしまうと、ついてこれない人も出てくるわけで。。。 さらに、21世紀に入って、ITの革新スピードが依然と比べ物にならないくらい早くなってしまったことも影響し、経済・経営環境の変化、技術進化のスピードは劇的に上がり、従来の「ポジショニング」も「ケイパビリティ」も、自社のものはこれだ!と気づいたときには、後の祭り。あっという間に陳腐化して、自社の戦略行為の分析が、環境の変化に追い付かない時代となってしまいました。 そこで、登場してきたのが「アダプティブ戦略」です。「ポジショニングもケイパビリティもやってみなけりゃ分からない!まずは行動してみて試行錯誤してから、自社にとって良いか悪いか決めればいいじゃん!」ここまで来ると、経営戦略学というより、行動様式とか、変更プロセスの定義が大事で、高邁なコンセプトなぞはくそくらえ!(失礼しました)m(_ _)m ざっと、ここまでが、およそ100年の経営戦略の歴史になります。 次回からは、「誰が何を唱えたか? それを実践した企業の成功物語は?」 時計の針を100年巻き戻して、テイラーの時代から紐解いていきたいともいます。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します