(インタビュー)株主、家族と似ている 上場で何を伝えますか 糸井重里氏に聞く - ほぼ日刊イトイ新聞を運営する株式会社ほぼ日のジャスダック上場について

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■ ほぼ日刊イトイ新聞って何?

経営管理会計トピック

コピーライターの糸井重里氏が社長を務める「ほぼ日」が3月16日にジャスダック市場に上場します。ほぼ日は、「ほぼ日刊イトイ新聞」というウェブサイトを運営している会社で、一般的にはECサイトの範疇に入りますが、その運営スタイルは独自で、ほぼ日というジャンルであるとしかいえません。そんな会社・ウェブサイトを運営する糸井氏に上場や会社というものに対する思いを聞いたインタビュー記事がありました。当然、通常の経営者には無い発想の言葉が並んでいましたので、早速本ブログで取り上げた次第です。

2017/3/4付 |日本経済新聞|朝刊 (インタビュー)株主、家族と似ている 上場で何を伝えますか 糸井重里氏に聞く

2017/3/4付 |日本経済新聞|電子版 もうすぐ上場します|ほぼ日・糸井重里社長「やさしく、つよく、おもしろく」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「著名コピーライターの糸井重里氏が社長を務める「ほぼ日」が16日に東京証券取引所のジャスダック市場に上場する。同社はウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営し、「ほぼ日手帳」などのヒット商品を生み出してきた。前身となる個人事務所の設立から38年。糸井氏に、上場にかける思いや上場後の会社が目指す姿を聞いた。」

(下記は同記事添付の糸井重里氏の写真を引用)

20170304_糸井重里_日本経済新聞朝刊

ほぼ日刊イトイ新聞(ECサイト)
株式会社 ほぼ日(コーポレートサイト)

「ほぼ日刊イトイ新聞」は、「ほぼ」といっていますが、発足した1998年6月6日午前0時(バリ島時間)のサイト開設以来、何らかのコンテンツが更新されています。そういう意味では、逆の意味で名は体を表していませんが、、、(^^;) 現在、1日に約150万ページビューに達しており、個人のウェブサイトとしては日本最大規模を誇り、一切の有料広告スペースが無い中で、売上高30億円に達しており、2012年にはポーター賞を受賞しています。

ポーター賞

(参考)
⇒「(経済教室)企業経営 再興の条件(下)「事業機会の裏」に勝機あり 競合の忌避テコに差別化 楠木建・一橋大学教授

 

■ 糸井氏の会社観、ほぼ日の経営方針を聞く

問)ほぼ日はどういう会社ですか?

「ジャンルは小売業。皆さんは僕をコピーライターと思っているが、もう一方の手でやってきたのは人が集う『場』づくりだ。その延長線上にほぼ日がある。場をつくり、育てたら小売業になっていた。人が喜んでくれるのが好きでやっている。小さい会社のわりに喜ばせる人数や影響力が順調に育ってくれた」

ほぼ日のトップページには、「今日のダーリン」という毎日更新される糸井氏のコラムがあって、本当にほぼ毎日更新されています。さて、本ブログもほぼ日次更新を目指しており、2014年9月3日に開設した後、現在のところたった1日だけ更新を逃しています。ただし、記事数は、平均すると3日で4本挙げてきています。当然、このブログ開設の一番大きな理由は、ほぼ日に触発されたことです。筆者も世の中に経営管理・管理会計の輪が広がればいいなと思い、本ブログを立ち上げました。

問)上場してもこれは曲げられないということは?

「うちの行動指針は『やさしく、つよく、おもしろく』。これは変えてはいけない。『やさしく』とは自分にも他人にも優しくすること。何かをする時、優しくないという前提でスタートしてはいけないと思うんですよね。それはまさしく個人だけでなく企業に求められていること。『つよく』は実行力の部分。強くあるなかで自分たちにも筋力がつくし、みんなにも喜んでもらえる。最後の『おもしろく』が結局ミソだと思う。面白くというのは新しい価値を生み出すこと。それをどれだけ生み出せるかが、自分たちの特徴になると思う。そこが枯れたら終わり、ただの会社になると思いますね」

『やさしく』の部分は、糸井氏のビジネスモデルが、顧客と製作者の間の取り持つ場の提供というものからくるもので、人と人のつながりがほぼ日のビジネスを支えている根幹のところです。消費者と生産者が個人としてつながっているのがほぼ日の物販です。『おもしろく』の部分は、本来、糸井氏がクリエーターであるところから。そこはある程度この会社の限界というか前提というか、糸井氏の才能・スキルが会社の成長の限界を最初から示しているのではないかと思います。まあ、どんな新興企業も創業者の強力なリーダーシップや才能で起業され、徐々に規模を大きくして、上場を果たします。そういう意味では、いわゆるメンバの力量に基づく普通の会社に成長できるか今後に期待です。ちなみに、日本電産は、有価証券報告書の事業リスクに永守重信氏のリーダーシップの有無が明確に記載されている大企業ですが。

 

■ 糸井氏に会社上場にかける思いを聞く

問)上場に伴って調達する資金はどう使いますか?

「人を採るのに使いたい。人ひとり雇うのは工場をひとつ建てるのと同じだ。そのくらい一人の人間が果たす役割は大きい。大きな工場をひとつ建てたのと同じぐらいの能力の高い人がこの会社に入ってくれるようなセッティングをするにはすごくコストがかかる」

ズバリ、調達資金で雇用者を増やしたいとのこと。資金調達したお金はストック。従業員へ支払う給与(人件費)はフロー。フローで社外流出するキャッシュは、どこかで回収されてこないと、ストックされたお金は減る一方です。まあ、それは、篠田真貴子CFOがなんとかコントロールするのでしょう!(^^;)

「例えばうちは小売業の印象が強いですが、実はIT(情報技術)の人材がものすごく必要なんです。でも人材を募集すると、ライターやデザインはいくらでも来ますけど、ITのジャンルだと難しいんです。ITの会社としてはあまり期待されてなくて、本気だと思われていないんですよ」

「上場会社という言葉は、人にとっては大きな意味を持ちます。詳しい人はほぼ日に採用されてよかったねと言ってくれるけど、それは世の中の一部。そうじゃないところで、大丈夫なのそんな会社と言う人もいる。個人事務所から上場会社になることで、そうした印象が変わればと思っています」

上場会社になることは、それだけでパブリシティ効果が見込めます。よって、調達資金(ストック)で新規に有為な人材を採用する原資を得るというよりは、知名度向上により、募集人材の底上げ(質・量ともに)を図る効果の方が大きいとにらんでいるものと思います。

問)株式を公開すると経営に対して批判的な意見を持つ投資家と対話する必要もでてきます。そうした点は気にならないですか?

「10割の人が賛成してくれることなんてあるわけがない。ざっくり2割の人がいいねと言ってくれて、反対側にある2割の人は最悪だよと言う。真ん中にある6割の人は、そういえばいいねに近い、くらいで見守ってくれている。そういうふうにものごとは動いていくと思う。あまり満点を取ろうとして、批判する人に対する答えだけ用意していると自分たちらしくなくなってしまうだろうとは思います」

「そっちの方が本当の話し合いができると思うんですよ。1年間は勉強が必要だと思いますが、できたら2年目から株主総会を面白くしたい。例えば株主総会という形をとった文化会のような。もっと話したいという人はこの大学の先生とシンポジウムやりませんかとか、そういうこともできると思うんですよね」

本当にいい意味で肩の力が抜けていますね。いやあ、糸井氏が真面目に「コーポレート・ガバナンス・コード」や「スチュワードシップ・コード」を読み込んだ上での回答では100%違いますよね。だから悪いと言っているのではなくて、社長業を担う人は、こうやって自社が社会全般にどのように受け入れられるか、社会一般の中のでどういう立ち位置なのか、それをしっかり考えていることが重要で、小手先で「コーポレート・ガバナンス・コード」を熟読して、そこにある文言を用いて、市場関係者におもねる発言をするよりはよっぽど好感が持てるというものです。

それで、次の問いに続きます。

 

■ 糸井氏に株主との関係性をさらに突っ込んで聞く

問)上場を通じて世の中にどのようなメッセージを伝えたいですか?

「利益をたくさん出せればうれしいが、それが第一の目標になるとずれていくと思う。最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない。法人も人間なので人格を持っている。人格としてその会社がいいなと思い、そこの商品を使ったり株を買ったりして応援する方向に世の中は変わっていくと思う。お金でできることを否定するつもりはないが、その分量が相対的に下がってきているのは確かだ」

この回答には2つの含意を感じます。ひとつが、ドラッカーと同じ発想で、企業の目的は利益獲得ではなくて、利益は結果としてついてくるもの。顧客の創造こそが企業の使命。糸井氏はドラッカーを当然知っていると思いますが、知らないように、自分の言葉で同様の内容を語っています。

そして記者はたたみかけるのです。それを糸井氏は柔らかく受け止めます。

問)お金だけでなく何で株主に報いるのですか?

「株主は家族と似ている。一緒にこの会社をやっているのと同じような気持ちになってもらいたい。配当や株主優待は当然やるが、何年も株を持っていた人によかったと思ってもらうためにも、株主を意識するのではなく事業を意識する。自分たちのやっていることを社会に問いかけて事業として育てていくことが、最終的には株主に報いることになると思う」

「利益というものを大きく捉えてほしい。お金にもお金そのものであるハードマネーとソフトマネーがある。ソフトマネーとは、例えば同じ野菜でも自分はこの店で買うというときに得られるお金に換算できない満足感。同じように株主でよかったと思ってもらえることができたらいいと思う。逆にそれが要らないという人はしょうがない」

これに対して、日経記者は次のようにまとめています。

○ お固くコーポレート・ガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを持ち出して
「リーマン危機を境に欧米を中心に広がっていた株主の短期的利益の最大化をめざす企業経営のあり方への反省機運が強まった。株主が企業に利益を上げることを求めるのは当然としても、持続的な企業価値の向上という共通の目標をめざして互いに協力しあう姿が企業と株主が構築すべき新たな関係として世界のコンセンサスになりつつある。日本でも導入された企業統治指針や機関投資家の行動指針もその延長線上にある。」

○ 家族という名の共同体・関係性構築
「「株主は家族と似ている」。こう語る糸井重里氏が上場後にめざす企業と株主の関係も、同じ問題意識に沿ったものだ。お金では表せないソフトな企業価値を共有できる株主に株を長く持ってもらい、短期的に利益を上げることにあくせくせず、協力し合いながら長期的に事業を育てていきたい――。家族という言葉に糸井氏はそんなイメージを重ねる。」

糸井氏の知っているだろうくせに、知ら無いふりして自分の言葉で語るステークホルダーとの中長期の共生の中で、共に育てていく企業価値。それは、サプライヤー、従業員そして顧客との良好な関係性が無いと、ゴーイングコンサーンとして企業は永続していきません。その経営学の教科書のど真ん中を素人のふりをして、大いに語って頂いたインタビュー記事でした。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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