イノベーション百態(2)(アジアNEXT)アマギ・メディア・ラブズ(インド) TV向け配信システム提供地域ごとに異なるCM

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■ イノベーションとは何か?「プロダクトイノベーション」と「プロセスイノベーション」

経営管理会計トピック

本シリーズは、イノベーションに絡む実例を取り上げ、教科書的なイノベーションの類型が様々な形態をとってリアルビジネスに組み込まれている実態を明らかにするものです。様々な企業が新規的な取り組みをして、なぜそれが新規的なのか、そして、どうしてそれが成功をもたらしたのか、個々の市場環境・経営環境だけを見ていてはよく分からないことがあります。それを「イノベーション」というたった一つの視点で炙り出そうという試みです。

実例に入る前に、教科書的な整理から。

経営管理会計トピック_イノベーションとは

一般に「イノベーション」は何か新規性のある新発明がもたらす、テクノロジーの進化によるものというイメージがあります。その要素の影響が非常に大きいことは認めますが、誰も思いつかない新アイデアで全く新たなサービスの提供方法や、誰も発見できなかった新市場(新需要)を掘り起こすことも含まれています。

特に、「プロセスイノベーション」は、別名「オペレーショナルエクセレンス」とも呼ばれることがあります。業務改善プロセスが現場に定着し、業務オペレーションが磨きあげられ、競争上の優位性にまでなっている状態を指します。

その特徴は、
① 常により良い業務オペレーションを追求しようという考え方が現場の末端まで浸透し、継続的なオペレーションの進化を可能にする仕組みができている
② 生産、企画、研究、開発、サプライチェーン、等企業を構成するあらゆる機能・業務において達成し得るものである
③ 競合企業に対してスピードやコストで打ち勝っていくことを目指し、品質、価格、購買の簡便性、サービスなどを含む総合力によって優位性を維持する

 

■ 「シーズ」と「ニーズ」。新技術のタネは「イノベーション」の魅力的な構成要素だが、、、

2017/1/17付 |日本経済新聞|朝刊 (アジアNEXT)アマギ・メディア・ラブズ(インド)TV向け配信システム提供地域ごとに異なるCM

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「インドのTV放送業界で、10年足らずで有名企業となったのが、新興IT(情報技術)企業のアマギ・メディア・ラブズだ。クラウド技術を利用し、同時間のCM枠で視聴地域ごとに異なる内容を配信できるシステムを開発した。」

(下記は同記事添付の「共同創業者のバスカル・スブラマニアン氏」を引用)

20170117_共同創業者のバスカル・スブラマニアン氏_日本経済新聞朝刊

インドでは州ごとに言語が異なります。

1.ヒンディー語: 2億5,800万人
2.ベンガル語: 8,250万人
3.テルグ語: 7,380万人 (ドラヴィダ語族)
4.マラーティー語: 7,170万人
5.タミル語: 6,070万人 (ドラヴィダ語族)
6.ウルドゥー語: 5,150万人
7.グジャラート語: 4,570万人
8.パンジャーブ語: 3,780万人
9.ボージュプリー語: 3,780万人
10.カンナダ語: 3,770万人 (ドラヴィダ語族)
11.マラヤーラム語: 3,300万人 (ドラヴィダ語族)
12.オリヤー語: 3,210万人
13.マイティリー語: 3,000万人
14.マガヒー語: 1,400万人
15.チャッティースガリー語: 1,330万人
16.アッサム語: 1,280万人
17.ダッキニー語: 1,280万人
18.カナウジ語: 950万人
19.ハリヤーンウィー語: 800万人
20.ヴァルハディ=ナーグプリ語: 697万人
21.サンタル語: 594万人 (オーストロアジア語族)
22.マールワーリー語: 560万人
23.マールヴィー語: 556万人
24.カシミール語: 536万人
25.メワール語: 510万人
26.ランプリ語: 500万人

(緑=インド・アーリア語派、暗緑=イラン語派、黄=ヌーリスターン語派、青=ドラヴィダ語族、橙=チベット・ビルマ語族、紫=オーストロアジア語族

WiKiより)

これだけの多言語国家である場合、通信インフラの整備で放送可能地域が順次広がったとしても、同一言語による放送だけでは視聴者の心を捉えるのは難しいようです。昔見聞した情報によると、インドのTV放送は字幕だらけなのだとか。無料放送がベースの商業放送ならば、次々と新たな言語によるテレビコマーシャルを低コストで打てるようにする必要が生じます。これが、社会ニーズによるイノベーションの誘発材料となります。

さらに、社会的構造(いわゆるカースト制)から、地域別所得格差も日本人が想像する以上に広がっており、都市部と農村部で消費動向も全く異なります。アマギのシステムを使えば、同じ放送をしていても、即座に特定地域向けのCMに差し替えることが可能になります。

例:消費財メーカーが広告主の場合、都市で美容用品、農村でせっけんといったように、地域ごとに異なる製品の広告を同じ広告枠で打つことができる

これは、中国を抜いて世界最大の人口大国となった(と言われている)インドの消費財市場にて、マスセールスする際の大きな武器となります。明らかにアマギのプロダクトイノベーションは、顧客ニーズドリブンであることは間違いありません。

 

■ アマギの「プロダクトイノベーション」は「リバースイノベーション」へ

世界最大の消費財市場となったインド国内だけではなく、この新技術を用いて新規市場の開拓も行おうとしています。

「「地域ごとに異なるCMのニーズに応える」というアイデアは、広いインドにあって大きな伸びしろがありそう。海外進出にも積極的だ。在外インド人が多い南アジアや東南アジアに加え、日欧米など約25カ国で事業展開し、自社システムの普及を進める。」

印僑は全世界110カ国以上に約2000万人以上いると言われ、まずはアマギの新技術は南アジア・東南アジアを手始めに導入が進むと思われますが、放送と通信の境がなくなり、多言語かつ「個」や「生活シーン」に対するターゲット・マーケテイングを推進しようとした場合、アマギの技術の適用範囲はもはやグローバル市場全体であると考えられます。これは、「リバース・イノベーション」:新興国で生まれた技術革新(イノベーション)や、新興国市場向けに開発した製品、経営のアイデアなどを先進国に導入して世界に普及させるというマーケティング手法にそのまま該当します。

ここでは、提唱者のビジャイ・ゴビンダラジャン教授の著書を紹介しておきます。

 

■ アマギのもうひとつの「イノベーション」:新しい組織創造へのチャレンジ

ここまでなら、新興国市場向けの新テクノロジーがグローバル市場でも受け入れられるリバース・イノベーションの嚆矢として話は終わりです。同新聞記事は次のような文言で締められています。

「スブラマニアン氏ら3人の創業者は投資、技術など得意分野をそれぞれ担当。「社長」「最高経営責任者」などの肩書を設けないフラットな組織作りを目指している。」

(下記は同記事添付の「会社概要」を引用)

20170117_アマギ・メディア・ラブズ_会社概要_日本経済新聞朝刊

“新しい葡萄酒は新しい革袋から”

従来のピラミッド式のヒエラルキー組織で新しい発想のテクノロジーとビジネスは生まれてくるのか、クリエーターたちのモチベーションは高められるか?

そうした従来組織のイノベーションを阻害する悪弊から取り除こうとする。その先進的でかつ当たり前の話がしたかったのです!(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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