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■ まずは、原価計算のハコの中で、完成品の製造原価を求めてみましょう!

管理会計(基礎編)

原価計算の超入門その6は、前回ご紹介した「基本的な原価計算の流れ」にて、材料費と加工費の製造原価まで求めた続きをしましょう。製造原価は、今期(今月)作ったモノの単価が分かったところまで。それが実際に売れて初めて、その製造原価は売上原価へと変身するのです。前回、原価計算のハコの中で、材料費と加工費の製造原価を計算しました。後はそれを合計すれば、完成品と同時に仕掛品の製造原価(単価)が求まります。

下図は、それぞれ別々に求めた材料費と加工費を原価計算のハコの中に収めて、合計した金額を算出したものになります。

原価計算(入門編)_製造原価計算のまとめ 材料費と加工費の合計

見方は次の通り。

まずはモノの流れから。先月に着手した加工作業が終わらなくて今月まで作業を引っ張った材料が20個。今月新たに製造ラインに投入した材料が60個。合計すると80個。このうち、10個がやはり今月末でも仕上がらなかったから、仕掛品(しかかりひん:今月の未完成分のことをこう呼ぶ)として、原価計算のハコの中に留まります。ちなみに、この10個は、来月になると、新しい「先月からの繰り越し分」となって、来月の製造ラインに再投入されるわけ。まるで賽の河原で小石を積み上げるように永遠に続く様相を見せますな。この輪廻から脱したものが完成品の70個となります。

次はお金(原価)の流れです。先月から繰り越された仕掛品が背負っていた材料費は200円で、加工費は1482円。今月新たに投入された材料費は1200円で、今月の加工作業のために支出されたお金は、6018円。材料費の合計額は1400円。これを、完成品:70個と仕掛品:10個で按分して、製造原価:1225円、仕掛品:175円を求めます。加工費の合計額は、7500円。これを、「完成品換算(数)量」で評価し直した完成品:70コと、仕掛品:5コとで按分して、製造原価:7000円、仕掛品:500円を求めます。それぞれ、完成品と仕掛品とで材料費と加工費を合算したら、8225円と675円となります。

ここで、仕掛品の加工費単価が、@50円だなんで、前回投稿のチャートには一切かかれていないことに気付いた人は、今回の趣旨、制度会計と管理会計の目的の違いに潜む原価の真理に一歩近づいています。その説明は後程(引っ張るな!)。(^^;)

それより、ここまで単価がすべて割り切れて、きれいな数字(小数点以下が発生してるけど、、、)で事例が作られていることを褒めてやってください。こういう例を作るのは地味に大変なんです!

絵でみる原価計算のしくみ (絵でみるシリーズ)

■ それでは一気呵成に売上原価と会計仕訳の解説まで行きましょう!

原価計算のハコの輪廻を脱出できた完成品は、今度は売上原価計算のハコに移動してきます。それが、下図左側の「今月の投入分」の70個、8225円となります。

この工場で作られた完成品:70個のうち、営業さんが頑張って売ってくれた分が50個で、売れ残ったのが20個。こうしてみると、たいして数に違いが無いので、どっちを数えても変わらないかもしれません。しかし、実務の世界では圧倒的に販売数量の方が多いので、売れ残り=製品在庫の数を数えて、それに製造単価の@117.5円を掛け合わせて、在庫金額を求める方が圧倒的に早くて簡単です。そこで、完成品が収められている倉庫に行って、売れ残りの在庫数をカウントします。これが20個。台帳を見れば、この製品が倉庫にやって来た時(入庫した時という)に、記録されているはずの製造単価(入庫単価)が@117.5円であることが分かるので、これと20個をかけて、2350円を計算し、台帳上の今月入庫した完成品のトータル金額:8225円から差っ引くと、売上原価:5875円が間接的にわかる仕掛けになっています。
この5875円さんには、損益計算書(P/L)に移動してもらって、売上金額と引き算してもらって、売上総利益を計算するのに役立ってもらうことにしましょう。

ここまで、複式簿記の仕訳の説明を避けてきました。実務の世界では、原価計算をやっている人が必ずしも会計仕訳を理解しているとは限りません。当然ですよね、これまで会計仕訳なしでも原価計算できていましたから。では、ちょっとだけ会計仕訳が気になる人のために、これまでの原価計算の流れがどういう仕訳を形作るのか、ごく簡単に紹介しておきます。

「1.費用の投入」
まず、原価計算のハコの中に生産要素(材料費とか労務費とか)を投入する仕訳を起こします。この時の原価計算のハコに、複式簿記の世界では、「製造」勘定、という名前を付けて、その中に放り込みます。これが、上図の「1.費用の投入」で切る仕訳。そもそも、費用は、借方(左側)で既発生なので、これを貸方(右側)にもっていって、新たに借方に「製造」勘定を設けて、そこに入れるのが、この複合仕訳の正しい見方。貸方にある「仕掛品」勘定は、言わずもがな、先月までに「製造」勘定に放り込まれたもので、完成品としてアウトプットされたかったものを、一時的に「仕掛品」勘定に避難させておいて、再び今月になって「製造」勘定に再投入した、というわけです。

「2.製品の完成」
原価計算のハコ(複式簿記的には「製造勘定」ね!)から、完成品は次の「製品」勘定に移ってもらいます。晴れて完成品になり損ねた人たちは、再び待機場所の「仕掛品」勘定へ戻ってもらいます。

「3.製品の販売」
「製品」勘定に溜まった完成品たちの中で、ハッピーにもお客さんに買っていただき、この「製品」勘定から外へ出る(当然お客様の手元へ届く)人たちを、損益計算書(P/L)の「売上原価」勘定まで旅立つのを見送ってあげましょう! そして、売れなかった人たちは、そのまま「製品」勘定の中で待機です。

ここでおさらい。
①「製造」勘定は、原価計算する瞬間だけ現れるかりそめのハコ。卒業した完成品は「製品」勘定へ、留年した未完成品は「仕掛品」勘定へ。会計期末では、この「製造」勘定は空っぽにしておくこと!

②「仕掛品」勘定、「製品」勘定は、どちらも「資産」として、貸借対照表(B/S)の借方(左側)に残ったまま、会計期末を迎えます。そして、使われなかった「材料」勘定とひっくるめて、「在庫」とか「棚卸資産」という名前で、流動資産として扱われます。

③「製品」勘定から旅立った売上品は、貸借対照表(B/S)の「資産」から、損益計算書(P/L)の「売上原価」勘定という「費用」に転身します。

スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 第4版 [テキスト&問題集] (スッキリわかるシリーズ)

■ 製造原価計算における制度会計と管理会計の違いとは?

お待たせしました。前々章でお預け状態にしていた、期末仕掛品の加工費単価についてお話します。

今回と前回の説明に登場してきたチャート2枚をここで再登場させて違いを見てみましょう。

原価計算(入門編)_加工費の製造原価計算 ②換算量比例で加工費を分ける

このチャートでは、制度会計の目的、「仕掛品の金額を求めることで、間接的に製造原価を導き出す」ことに忠実に余計なことをせず、完成品と仕掛品を「完成品換算(数)量」で再評価し、仕掛品の加工費負担金額を求めることだけを目指しています。その結果、世の中には実在しない「5コ」という数量で、「5コ × @100円 = 500円」という仕掛品の加工費の「数量×単価=原価」という式を求めました。制度会計は、仕掛品の評価額だけが知りたいので、500円という情報が得られればそれでOK。「5コ」とか、「@100円」にはもう興味はありません。

原価計算(入門編)_製造原価計算のまとめ 材料費と加工費の合計

このチャートは、実在する製品や仕掛品の個数で、制度会計の要請で求めた材料費と加工費について、「数量×単価」という原価式に再構成したものです。ここで、仕掛品の加工費計算の式については、「10個 × @50円 = 500円」と表現されており、先に説明したチャートの「5コ × @100円 = 500円」の式と、「数量」と「単価」が異なっています。どっちが正しいのでしょうか? 仕掛品は、「原価計算のハコ」で計算された結果なので、その計算方法の違いで2つの計算経路があるのか? じゃあ、今月投入分の「数量」「単価」はどうでしょう?

ひとつ上の制度会計用の今月投入分:
 59コ × @102円 = 6018円

最後の計算結果をまとめたものの今月投入分:
 60個 × @100.3円 = 6018円

今月、生産活動に投入した材料個数は、60個が正解か、原価計算上の59コが正解か?
投入加工費の一単位当たりの原価(すなわち単価)は@102円なのか@100.3円なのか?
ちみちみと、爪の先に火を灯して1銭2銭とコストダウンしている製造現場の担当者にしてみれば、この@1.7円の差は非常に大きいものといえます。

日本製造業 起死回生の原価・収益管理術

■ 製造原価計算に制管不一致の発生原因を見る

前章にて、問題を投げかけさせてもらったように、制度会計の原価計算目的と管理会計の原価計算目的の違いから、どっちの数字を使うのか、何を無視する(何を重視する)のか、ここで道が分かれるのです。

● 制度会計
期間損益を計算したい → 「原価」と「棚卸資産(在庫)」の金額を峻別したい
実在する目の前の、相対的に少量である在庫金額を求める → 差し引きで原価を求める
原価と在庫を峻別するために、会計的な擬制的ルールを適用してもかまわない
 ・擬制的なルール
  ① 在庫評価方法(先入先出法、総平均法など)
  ② 加工費計算における「完成品換算(数)量」という係数計算

その結果、在庫(期末仕掛品など)の「金額」だけが欲しい答え

● 管理会計
損得計算の判断をしたい → 原価を「単価 × 数量」に分解して分析したい
作ったり、売ったりしている時に原価情報を手に入れて、損得の判断をしたい
でも制度会計の結果が出るのは全ての活動が終わってから。
(しかも、金額情報だけで、単価も数量も、管理する立場からすればデタラメだ!)

その結果、制度決算が出る前に、あらかじめ「単価」「数量」の目標値と、すぐに手に入る実績値の計算方法を決めておきたくなる

ここで、制管一致をめざすために、制度会計が出す金額情報からさかのぼって、今月投入加工費単価:@100.3円や、期末仕掛品加工費単価:@50円を求めていては、原価管理のタイミングを逸してしまう。しかも、制度会計の担当者は、金額だけ算出して後は知らんぷり。自分たちで計算しないと加工費単価も出ない(というケースが多いというだけですよ)。これが、企業経営者が渇して追い求める「制管一致」が夢のまた夢であることの現実なのです。

今回は、製造原価を求める際に、制度会計と管理会計では、欲しい会計情報も、タイミングも違うので、「制管一致」を原価計算に求めるのは難しい、というお話でした。えっ、あなたはコンサルタントなんだから何か解決策は持っていないのかって? いろいろと方法は思いついているんですが、現場や会社によってバリエーションがありすぎて、何でも解決してしまう特効薬というものは無いんですよ。一度診察させてもらえないと処方箋は出せませんね。(^^;)

原価計算 超入門(6)基本的な原価計算の流れ -制度会計と管理会計の違いを知る!

技術屋が書いた会計の本

「管理会計の基本」がすべてわかる本

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原価計算 超入門(6)基本的な原価計算の流れ -制度会計と管理会計の違いを知る!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-e1428166718340.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-150x150.jpg小林 友昭原価計算(入門編)売上原価,原価計算,制管一致,管理会計,製造原価,加工費,仕掛品,完成品換算数量.制度会計,製造勘定■ まずは、原価計算のハコの中で、完成品の製造原価を求めてみましょう! 原価計算の超入門その6は、前回ご紹介した「基本的な原価計算の流れ」にて、材料費と加工費の製造原価まで求めた続きをしましょう。製造原価は、今期(今月)作ったモノの単価が分かったところまで。それが実際に売れて初めて、その製造原価は売上原価へと変身するのです。前回、原価計算のハコの中で、材料費と加工費の製造原価を計算しました。後はそれを合計すれば、完成品と同時に仕掛品の製造原価(単価)が求まります。 下図は、それぞれ別々に求めた材料費と加工費を原価計算のハコの中に収めて、合計した金額を算出したものになります。 見方は次の通り。 まずはモノの流れから。先月に着手した加工作業が終わらなくて今月まで作業を引っ張った材料が20個。今月新たに製造ラインに投入した材料が60個。合計すると80個。このうち、10個がやはり今月末でも仕上がらなかったから、仕掛品(しかかりひん:今月の未完成分のことをこう呼ぶ)として、原価計算のハコの中に留まります。ちなみに、この10個は、来月になると、新しい「先月からの繰り越し分」となって、来月の製造ラインに再投入されるわけ。まるで賽の河原で小石を積み上げるように永遠に続く様相を見せますな。この輪廻から脱したものが完成品の70個となります。 次はお金(原価)の流れです。先月から繰り越された仕掛品が背負っていた材料費は200円で、加工費は1482円。今月新たに投入された材料費は1200円で、今月の加工作業のために支出されたお金は、6018円。材料費の合計額は1400円。これを、完成品:70個と仕掛品:10個で按分して、製造原価:1225円、仕掛品:175円を求めます。加工費の合計額は、7500円。これを、「完成品換算(数)量」で評価し直した完成品:70コと、仕掛品:5コとで按分して、製造原価:7000円、仕掛品:500円を求めます。それぞれ、完成品と仕掛品とで材料費と加工費を合算したら、8225円と675円となります。 ここで、仕掛品の加工費単価が、@50円だなんで、前回投稿のチャートには一切かかれていないことに気付いた人は、今回の趣旨、制度会計と管理会計の目的の違いに潜む原価の真理に一歩近づいています。その説明は後程(引っ張るな!)。(^^;) それより、ここまで単価がすべて割り切れて、きれいな数字(小数点以下が発生してるけど、、、)で事例が作られていることを褒めてやってください。こういう例を作るのは地味に大変なんです! 絵でみる原価計算のしくみ (絵でみるシリーズ) ■ それでは一気呵成に売上原価と会計仕訳の解説まで行きましょう! 原価計算のハコの輪廻を脱出できた完成品は、今度は売上原価計算のハコに移動してきます。それが、下図左側の「今月の投入分」の70個、8225円となります。 この工場で作られた完成品:70個のうち、営業さんが頑張って売ってくれた分が50個で、売れ残ったのが20個。こうしてみると、たいして数に違いが無いので、どっちを数えても変わらないかもしれません。しかし、実務の世界では圧倒的に販売数量の方が多いので、売れ残り=製品在庫の数を数えて、それに製造単価の@117.5円を掛け合わせて、在庫金額を求める方が圧倒的に早くて簡単です。そこで、完成品が収められている倉庫に行って、売れ残りの在庫数をカウントします。これが20個。台帳を見れば、この製品が倉庫にやって来た時(入庫した時という)に、記録されているはずの製造単価(入庫単価)が@117.5円であることが分かるので、これと20個をかけて、2350円を計算し、台帳上の今月入庫した完成品のトータル金額:8225円から差っ引くと、売上原価:5875円が間接的にわかる仕掛けになっています。 この5875円さんには、損益計算書(P/L)に移動してもらって、売上金額と引き算してもらって、売上総利益を計算するのに役立ってもらうことにしましょう。 ここまで、複式簿記の仕訳の説明を避けてきました。実務の世界では、原価計算をやっている人が必ずしも会計仕訳を理解しているとは限りません。当然ですよね、これまで会計仕訳なしでも原価計算できていましたから。では、ちょっとだけ会計仕訳が気になる人のために、これまでの原価計算の流れがどういう仕訳を形作るのか、ごく簡単に紹介しておきます。 「1.費用の投入」 まず、原価計算のハコの中に生産要素(材料費とか労務費とか)を投入する仕訳を起こします。この時の原価計算のハコに、複式簿記の世界では、「製造」勘定、という名前を付けて、その中に放り込みます。これが、上図の「1.費用の投入」で切る仕訳。そもそも、費用は、借方(左側)で既発生なので、これを貸方(右側)にもっていって、新たに借方に「製造」勘定を設けて、そこに入れるのが、この複合仕訳の正しい見方。貸方にある「仕掛品」勘定は、言わずもがな、先月までに「製造」勘定に放り込まれたもので、完成品としてアウトプットされたかったものを、一時的に「仕掛品」勘定に避難させておいて、再び今月になって「製造」勘定に再投入した、というわけです。 「2.製品の完成」 原価計算のハコ(複式簿記的には「製造勘定」ね!)から、完成品は次の「製品」勘定に移ってもらいます。晴れて完成品になり損ねた人たちは、再び待機場所の「仕掛品」勘定へ戻ってもらいます。 「3.製品の販売」 「製品」勘定に溜まった完成品たちの中で、ハッピーにもお客さんに買っていただき、この「製品」勘定から外へ出る(当然お客様の手元へ届く)人たちを、損益計算書(P/L)の「売上原価」勘定まで旅立つのを見送ってあげましょう! そして、売れなかった人たちは、そのまま「製品」勘定の中で待機です。 ここでおさらい。 ①「製造」勘定は、原価計算する瞬間だけ現れるかりそめのハコ。卒業した完成品は「製品」勘定へ、留年した未完成品は「仕掛品」勘定へ。会計期末では、この「製造」勘定は空っぽにしておくこと! ②「仕掛品」勘定、「製品」勘定は、どちらも「資産」として、貸借対照表(B/S)の借方(左側)に残ったまま、会計期末を迎えます。そして、使われなかった「材料」勘定とひっくるめて、「在庫」とか「棚卸資産」という名前で、流動資産として扱われます。 ③「製品」勘定から旅立った売上品は、貸借対照表(B/S)の「資産」から、損益計算書(P/L)の「売上原価」勘定という「費用」に転身します。 スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 第4版 (スッキリわかるシリーズ) ■ 製造原価計算における制度会計と管理会計の違いとは? お待たせしました。前々章でお預け状態にしていた、期末仕掛品の加工費単価についてお話します。 今回と前回の説明に登場してきたチャート2枚をここで再登場させて違いを見てみましょう。 このチャートでは、制度会計の目的、「仕掛品の金額を求めることで、間接的に製造原価を導き出す」ことに忠実に余計なことをせず、完成品と仕掛品を「完成品換算(数)量」で再評価し、仕掛品の加工費負担金額を求めることだけを目指しています。その結果、世の中には実在しない「5コ」という数量で、「5コ × @100円 = 500円」という仕掛品の加工費の「数量×単価=原価」という式を求めました。制度会計は、仕掛品の評価額だけが知りたいので、500円という情報が得られればそれでOK。「5コ」とか、「@100円」にはもう興味はありません。 このチャートは、実在する製品や仕掛品の個数で、制度会計の要請で求めた材料費と加工費について、「数量×単価」という原価式に再構成したものです。ここで、仕掛品の加工費計算の式については、「10個 × @50円 = 500円」と表現されており、先に説明したチャートの「5コ × @100円 = 500円」の式と、「数量」と「単価」が異なっています。どっちが正しいのでしょうか? 仕掛品は、「原価計算のハコ」で計算された結果なので、その計算方法の違いで2つの計算経路があるのか? じゃあ、今月投入分の「数量」「単価」はどうでしょう? ひとつ上の制度会計用の今月投入分:  59コ × @102円 = 6018円 最後の計算結果をまとめたものの今月投入分:  60個 × @100.3円 = 6018円 今月、生産活動に投入した材料個数は、60個が正解か、原価計算上の59コが正解か? 投入加工費の一単位当たりの原価(すなわち単価)は@102円なのか@100.3円なのか? ちみちみと、爪の先に火を灯して1銭2銭とコストダウンしている製造現場の担当者にしてみれば、この@1.7円の差は非常に大きいものといえます。 日本製造業 起死回生の原価・収益管理術 ■ 製造原価計算に制管不一致の発生原因を見る 前章にて、問題を投げかけさせてもらったように、制度会計の原価計算目的と管理会計の原価計算目的の違いから、どっちの数字を使うのか、何を無視する(何を重視する)のか、ここで道が分かれるのです。 ● 制度会計 期間損益を計算したい → 「原価」と「棚卸資産(在庫)」の金額を峻別したい 実在する目の前の、相対的に少量である在庫金額を求める → 差し引きで原価を求める 原価と在庫を峻別するために、会計的な擬制的ルールを適用してもかまわない  ・擬制的なルール   ① 在庫評価方法(先入先出法、総平均法など)   ② 加工費計算における「完成品換算(数)量」という係数計算 その結果、在庫(期末仕掛品など)の「金額」だけが欲しい答え ● 管理会計 損得計算の判断をしたい → 原価を「単価 × 数量」に分解して分析したい 作ったり、売ったりしている時に原価情報を手に入れて、損得の判断をしたい でも制度会計の結果が出るのは全ての活動が終わってから。 (しかも、金額情報だけで、単価も数量も、管理する立場からすればデタラメだ!) その結果、制度決算が出る前に、あらかじめ「単価」「数量」の目標値と、すぐに手に入る実績値の計算方法を決めておきたくなる ここで、制管一致をめざすために、制度会計が出す金額情報からさかのぼって、今月投入加工費単価:@100.3円や、期末仕掛品加工費単価:@50円を求めていては、原価管理のタイミングを逸してしまう。しかも、制度会計の担当者は、金額だけ算出して後は知らんぷり。自分たちで計算しないと加工費単価も出ない(というケースが多いというだけですよ)。これが、企業経営者が渇して追い求める「制管一致」が夢のまた夢であることの現実なのです。 今回は、製造原価を求める際に、制度会計と管理会計では、欲しい会計情報も、タイミングも違うので、「制管一致」を原価計算に求めるのは難しい、というお話でした。えっ、あなたはコンサルタントなんだから何か解決策は持っていないのかって? いろいろと方法は思いついているんですが、現場や会社によってバリエーションがありすぎて、何でも解決してしまう特効薬というものは無いんですよ。一度診察させてもらえないと処方箋は出せませんね。(^^;) 技術屋が書いた会計の本 「管理会計の基本」がすべてわかる本現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します