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私の履歴書より カルロス・ゴーン氏と大橋光男氏のリーダーシップ論 - PM理論、マネジリアル・グリッド理論、SL理論を添えて

経営管理(基礎)
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■ 相次いで偉大な経営者のリーダーシップ論が飛び出した「私の履歴書」

2017年1月と2月、日産・ルノーCEO:ゴーン氏、昭和電工最高顧問:大橋氏のリーダーシップ論を目にし、やっぱりと気づいた点があったので、皆さんと共有したく本稿をまとめました。それは、偉大な経営者たちのリーダーシップ論が、あるフレームワークで整理されると、各人の指摘事項も理解が深められるだろうということです。逆に、上から目線で、偉大な経営者の言説をこちらからひとつのフレームワークに押し込めようとする意図からでは決してありません。この微妙な違いを理解してから次にお進みください。(^^;)

2017/1/31付 |日本経済新聞|朝刊 (私の履歴書)カルロス・ゴーン(29)リーダーの条件 結果出し共感呼び込む 「生まれながら」存在しない

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「私が考えるリーダーの条件とは何か。1つは、結果を出せる人だ。トップはどんなに厳しい状況でも常に結果を出さなくてはならない。また、経営、組織の問題点をはっきりさせ、時には周囲が「右」と思っているところを「左」と言う必要がある。」
「第2に、リーダーは人々とつながる能力を身につけないといけない。堅苦しい、冷たいなどの印象を持たれては話を聞いてもらえないし、部下たちの働く意欲も損なわれる。リーダーは「共感(empathy)」される能力を磨くべきだ。」
「最後に、新しいことを常に学ぶ姿勢だ。ゼロエミッション(無公害)や自動運転、インターネットとつながる技術は進歩が著しい。自動車産業は今、転換期を迎えており、新しい技術や動きに精通し、行動していなければ、たとえどんなに結果を出すリーダーでも行き詰まる。」

(下記は同記事添付の「社内外の若手を集めたリーダー養成講座(昨年10月、横浜市の日産本社)」を引用)

20170130_社内外の若手を集めたリーダー養成講座(昨年10月、横浜市の日産本社)_日本経済新聞朝刊

簡潔にまとめると、
① 結果を出せる人
② 共感される能力を持つ人
③ 新しいことを常に学ぶ姿勢を持つ人

 

2017/2/1付 |日本経済新聞|朝刊 (私の履歴書)大橋光夫(1)不動心 信念と気概、復活の糧に 若い頃は劣等感のかたまり

「塩野七生の「ローマ人の物語」に「優れたリーダーとはその才能によって人々を率いていくだけの人間ではない。率いられていく人々に自分たちがいなくては、と思わせることに成功した人でもある」とある。もしかすると私の頼りなさが社員の団結を強める一助になったのではないか。」

(下記は同記事添付の「大橋光夫氏の写真」を引用)

20170201_大橋光夫_日本経済新聞朝刊

日本古来の言い方でまとめることをお許しいただければ、
④ 神輿に担がれる人

「次の世代のための礎になる覚悟があります。それが神輿に担がれるものの義務だと思うんです。」(棚橋弘至|ベースボールマガジン社刊「プロレスって何だ!? 血涙山河編」より)

というインタビュー記事で、プロレスラー棚橋氏も使うぐらいに浸透した日本古来からのリーダー像のひとつです。三国志演義的には「劉備玄徳」、幕末史的には「西郷隆盛」といったところでしょうか。

次章以降で、①から④までのリーダー像への理解を深めるために、フレームワークを活用していきたいと思います。

 

■ 「PM理論」とは?

PM理論」とは、日本の社会心理学者、三隅二不二(みすみ じゅうじ)が1966年に提唱したリーダーシップ行動論で、リーダーシップをP:Performance「目標達成能力」とM:Maintenance「集団維持能力」の2つの能力要素で構成されるものと定義しました。

P:Performance「目標達成能力」
・目標設定や計画立案、メンバーへの指示などにより目標を達成する能力
・集団が生産性を高めるような働きをすること
・課題・TASK志向
・典型的な行動として、業績の芳しくない部下に対し上司が叱咤激励する等

M:Maintenance「集団維持能力」
・メンバー間の人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持する能力
・集団のチームワークを強固なものにするような働きをすること
・人間関係・Relation志向
・典型的な行動として、飲み会を開いて部下の日頃の労をねぎらう等

経営管理(基礎編)_PM理論

(1)PM型(P・M共に大きい)
目標を明確に示し、成果をあげられると共に集団をまとめる力もある理想型

(2)Pm型(Pが大きく、Mが小さい)
目標を明確に示し、成果をあげるが、集団をまとめる力が弱い
成果はあげるが人望がないタイプ

(3)pM型(Pが小さく、Mが大きい)
集団をまとめる力はあるが、成果をあげる力が弱い
人望はあるが、仕事は今ひとつというタイプ

(4)pm型(Pが小さく、Mも小さい)
成果をあげる力も、集団をまとめる力も弱い
リーダー失格タイプ

 

■ 「マネジリアル・グリッド理論」とは?

マネジリアル・グリッド理論」とは、ブレイク(R.R.Blake)とムートン(J.S.Mouton)が1964年に提唱したリーダーシップ行動論で、リーダーシップの行動スタイルを「人間に対する関心」「業績に対する関心」という2つの目標に対する関心度の大きさで構成されるものと定義しました。
それぞれについてどの程度関心を持っているか、2軸を9段階に分け、9×9の81のグリッド(格子)に区分して、それぞれの極値をとって、リーダーシップを5種類に分類しました。

経営管理(基礎編)_マネジリアル・グリッド理論

1・1型(消極型) : 業績にも人間にも無関心な放任型リーダー
1・9型(人間中心型): 業績を犠牲にしても人間への関心が高い人情型リーダー
9・1型(仕事中心型): 人間を犠牲にしても業績最大化への関心が高い権力型リーダー
9・9型(理想型) : 業績にも人間にも最大の関心を示す理想型リーダー
5・5型(バランス型): 業績にも人間にもほどほどな関心を示す妥協型リーダー

 

■ 「SL理論」とは?

SL(Situational Leadership)理論」とは、ハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard) が1977年に提唱したリーダーシップ条件適応理論で、部下の成熟度によって、有効なリーダーシップスタイルを違えるべきであるという考え方です。ここで「状況(Situation)」とは、部下の成熟度のことを意味します。フィドラーのコンティンジェンシー・モデル(本稿では説明を割愛)の状況要因を掘り下げて、部下の成熟度に適合させたリーダーシップを発揮すべきとするものです。

縦軸を仕事志向、横軸を人間志向の強さとして4象限に分け、それぞれの状況でリーダーシップの有効性(指示決定の指導の強弱、説得・参加型スタイルなど)を高めていくにはどうすれば良いかを示しています(作図上、縦横軸入れ替え)。

経営管理(基礎編)_SL理論

S1:教示的リーダーシップ
・具体的に指示し、事細かに監督する
・タスク志向が高く、人間関係志向の低いリーダーシップ
・適応すべき状況:部下の成熟度が低い場合

S2:説得的リーダーシップ
・こちらの考えを説明し、疑問に応える
・タスク志向・人間関係ともに高いリーダーシップ
・適応すべき状況:部下が成熟度を高めてきた場合

S3:参加的リーダーシップ
・考えを合わせて決められるように仕向ける
・タスク志向が低く、人間関係志向の高いリーダーシップ
・適応すべき状況:更に部下の成熟度が高まった場合

S4:委任的リーダーシップ
・仕事遂行の責任をゆだねる
・タスク志向・人間関係志向ともに最小限のリーダーシップ
・適応すべき状況:部下が完全に自立性を高めてきた場合

 

■ ゴーン氏と大橋氏のリーダーシップを分析してみると?

上記3つのリーダーシップ論(厳密には、「リーダーシップ行動論」がふたつと「リーダーシップ条件適応理論」がひとつ)を共通軸で整理すると下表のようになります。

経営管理(基礎編)_3つのリーダーシップ理論を整理

翻って、冒頭のゴーン氏と大橋氏のリーダーシップ論を3つのモデルで色づけしてみると、

経営管理(基礎編)_二人のリーダーシップ論を整理

上表はあくまで私見で、こじつけに近いですが、、、(^^;)

ゴーン氏は、やはり、欧米型の積極的に前に出るリーダーシップをお好みの様ですが、仕事志向と人間志向の両方を程よくミックスした主張に見受けられました。一方、大橋氏は、ご自身のプロフェッショナルとしてのスキルレベルは脇に置いておいて、東アジアで好まれる調和性優先のリーダーシップ論のように見受けられました。戦時のゴーン氏、平時の大橋氏、といったところでしょうか。

徒に、他者の言説を手前勝手なフレームワークに当てはめることは忌避すべきですが、他者の言説への理解を深める手段として、フレームワークの整理力を援用することは有益かもしれません。

経営管理(基礎編)_私の履歴書より カルロス・ゴーン氏と大橋光男氏のリーダーシップ論 - PM理論、マネジリアル・グリッド理論、SL理論を添えて

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