経営管理会計トピック 2016年 筆者が独断で選ぶTOP5 AIからコーポレートガバナンスまで

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■ 2016年の経営管理会計に関連するトピックを筆者独断でランキング

経営管理会計トピック

筆者の勝手気ままなブログに日ごろお付き合い頂きありがとうございます。経営コンサルティングを生業にしながら、傍らで、つれづれなるままに、このブログを書き綴ってきました。本稿は、今年取り上げたトピックから、筆者が独自に己の関心度だけでテーマごとにTOP5のランキングを作成させて頂きました。本年の総括にご活用ください。m(_ _)m

第5位 パナマ文書/タックスヘイブン - 課税権の行使と株主利益の追求の相克

パナマ文書の公開前に、国際税務やタックスプランニングの重要性をひとしきり解説していました。

⇒「(真相深層)「結局は増税?」企業警戒 国際課税新ルール、強まる懸念 主要国、はや足並み乱れ -国際税務の超入門

その後、パナマ文書が公開され、課税当局とグローバル企業による利益の分捕り合戦が滑稽な話(当事者は大層真剣ですが、、、)として表沙汰になり、諸所で、タックスヘイブンが槍玉にあがりました。

⇒「パナマ文書にもめげず米当局企業課税逃れに新規制、結果としてファイザー、アラガン買収断念 ー 日本経済新聞まとめ
⇒「(経済教室)タックスヘイブン何が問題か 課税情報、本国当局から遮断 枠組み複雑化に狙い 渡辺智之 一橋大学教授
⇒「(衝撃 パナマ文書)納税ガラス張り 英で先行 租税回避行為へ強まる批判 - 管理会計屋が見る国際税務戦略
⇒「(衝撃パナマ文書)租税回避地 多様な思惑 企業、二重課税リスク回避/富裕層、高利回りの資産運用
⇒「税逃れ防止 OECDの京都会合のまとめ記事 - パナマ文書に端を発するタックスヘイブン規制の行方

グローバル企業は株主から短期的な利益をあげるプレッシャーを受け、ペーパーカンパニー誘致で手数料を稼ぎたい小国。本国の課税権が侵されていると主張する大国の課税当局。3者の知恵比べはまだまだ終わりそうにありません。

 

第4位 第3の黒船 日本企業に押し寄せるIFRS(国際会計基準)

IFRS(国際会計基準)採用企業の広がりにより、
① 「複式簿記」日本本格的上陸(明治維新)
② 単体から連結へ。会計ビックバンとJ-SOX狂騒(2000年初頭)
③ IFRSによる会計基準選択乱世(2015年前後から)

と勝手にこれまでの日本の企業会計の歴史を区切ってみました。

⇒「国際会計基準の導入、100社超える -ここで業種別の分布からIFRS導入の傾向を探ってみる!
⇒「国際会計基準IFRSが変える(上)グループ経営のインフラに 共通モノサシ、内需企業も
⇒「国際会計基準IFRSが変える(下)のれんや資産の「時価」重視 リスク管理の精度高める

猫も杓子もIFRS。無駄に、管理会計目的でもIFRSによる横並び比較可能性の重要性を声高らかに主張する。その愚鈍さにはもうコメントする気力もありません。

そして、IFRS採用をしたばっかりに、巨額の「のれん」減損損失計上が報道されるや、一気に株価暴落。キャッシュフローには変化がないのに。。。

⇒「国際会計基準への移行で500億円の営業利益を押し上げるリクルートと、研究開発費を投資とみなして31兆円のGDPを押し上げる内閣府について
⇒「会計基準の選択に翻弄される企業と投資家 -新日鐵住金、アサヒ、三菱商事、三井物産、それぞれのケースを追う! そして「のれん」を語らざるを得なくなる!
⇒「「のれん」残高24兆円に拡大 7年連続最高に 今年度5%増 潜在的な減損リスクも

 

第3位 テクノロジーの経営へのインパクト - AI、IoT、Industry4.0、フィンテック、ビットコイン(仮想通貨)

まずは、AIが人間の仕事を奪うのではないか? 産業革命勃興時のラッダイト運動を彷彿とさせる話題から今年のこのテーマが始まりました。

⇒「(経済教室)人工知能は職を奪うか(上)日本、生産性向上の好機に 労働者の再教育カギ オックスフォード大学准教授 M・オズボーン、オックスフォード大学フェロー C・フレイ
⇒「(経済教室)人工知能は職を奪うか(下)意思疎通能力、一層重要に 労働市場の整備カギ 柳川範之 東京大学教授
⇒「人間がAIに管理される日? - HRテックによる最適配置と社員の幸福感を高める「Hitachi AI Technology」の事例から
⇒「AI(人工知能)が人事部と経理部から人間を駆逐する日はいつか? - HRテックとフィンテックの影響は?

Googleのアルファ碁が、韓国の名人を破って、AI脅威論が勢力を一段と増したようでした。対抗するように、AIの弱点や人間の強みに関する議論が一層熱を帯びました。

⇒「人工知能、囲碁でプロ破る グーグルが開発、自ら学習し性能向上
⇒「AI、弱点は「常識知らず」状況把握が苦手、活用に課題
⇒「人工知能で戦略組織 3省連携、企業と研究加速 -日本ならではの人工知能(AI)の開発戦略を考えてみる
⇒「健全な人工知能(AI)開発の進め方と「囲碁」AIの意外な弱点
⇒「人工知能(AI)の研究者2人に聞く! AI研究の方向性とこれからの人間教育について(前編)日経新聞より
⇒「人工知能(AI)の研究者2人に聞く! AI研究の方向性とこれからの人間教育について(後編)日経新聞より
⇒「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る NHKスペシャル 2016年5月15日

AIにデータ解析をさせる前に、その膨大な、いわゆる「ビッグデータ」収集を前提としたビジネス新展開についても、議論が大いに盛り上がりました。

⇒「(GLOBAL EYE)スイスにみる「第4次産業革命」 高度な教育、変革支える -ABBに聞くスイス流のインダストリー4.0の形とは
⇒「IoT三国志 インダストリー4.0とインダストリアル・インターネットの同盟締結で、日本のインダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブは栄光ある孤立!?

ここは、製造業で「ジャパン アズ No1」と言わしめた日本の底力をもう一度、この目で見てみたいものです。

そして、元来、アングロサクソン系が強みを持つ、ファイナンスの世界でも、ICT活用を前提としたビジネスモデルが大いに語られました。AIで「ディープラーニング」がバズワードなら、こちらは「ブロックチェーン」でした。

⇒「次の革新「ブロックチェーン」 まず金融に 新ITインフラ、バークレイズなど採用 データ改ざん困難に
⇒「フィンテック活用で低コスト証券決済、マイナス金利でIT各社システム対応急ぐ。金融系システム開発で起きていることとは? 日経新聞2・16まとめ
⇒「日本経済新聞の人気コラムで続けて「フィンテック」が取り上げられる -その裏側と熱狂を斬る!
⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(前編)
⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(後編)

筆者は自他ともに認めるへそ曲がりなので、AI/IoTが全盛の時代に、そのまんまのテクノロジーを提供する企業が増え、一定の勢いを見せるとは思いますが、本当に大儲けできるかについては、懐疑的です。ゴールドラッシュに沸いた時代、一番儲けたのは、実際に金堀りに従事した人ではなく、バケツとスコップを売りつけた人と宿屋(売春宿含む)の主人という都市伝説を信じているので。

AI/IoT全盛時代に一番儲けるのは、ビッグデータを持っている企業、情報セキュリティ技術を提供する企業と信じています。

⇒「AI、IoT時代の知的財産権(前編) - 深層学習やIoTで得た情報の権利は誰のもの? 日本経済新聞より
⇒「AI、IoT時代の知的財産権(後編)- 深層学習やIoTで得た情報を営業秘密で守る道があった! 日本経済新聞より

 

第2位 ROE経営の誤解 - 財務レバレッジを上げても企業価値は増えず

2014年の「伊藤レポート」公開により、日本のROE経営時代が到来しました。

⇒「「企業も投資家を選ぶ時代 伊藤レポートの真意とは」を読んでみた(前編) Harvard Business Review 2016年3月号
⇒「「企業も投資家を選ぶ時代 伊藤レポートの真意とは」を読んでみた(後編) Harvard Business Review 2016年3月号

ROE = 当期純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

商品・サービスの魅力度を高めないと「当期純利益率」は改善しません。ビジネスモデル自体を変えないと「総資産回転率」は改善しません。いずれも改善には時間がかかります。てっとり早くROEを高めたいなら、「財務レバレッジ」をより効かせるのが早道です。

⇒「踊り場のROE経営(前編)- 伊藤レポートのくびきを脱し、純利益率が大事との源流回帰まで
⇒「踊り場のROE経営(後編)- リキャップCBと資本コスト、結局は財務レバレッジの話しかできないの巻
⇒「アマダHD、 成長投資重視に転換 今期、100%還元→「50%以上」に 年間投資5割増やす - ROE経営への過剰反応を軌道修正中

「財務レバレッジ」を操作するだけでは、中長期の企業成長と企業価値増大のためには、本質的に企業体質を変えることにはなりません。また、そもそも「ROE」経営(ROE向上のみを目的に業績管理をする意)の意味と劇薬度についての理解もまだまだ世の中では薄いものであると言わざるを得ません。

⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(1)株主重視のガバナンス改革が進展 小樽商科大学准教授 手島直樹 - コーポレートガバナンスとROE経営の関係とは
⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(2)資本効率性より収益性に課題 小樽商科大学准教授 手島直樹 - 日米企業のROE水準格差の真因とは
⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(3)当期純利益は目的でなく結果 小樽商科大学准教授 手島直樹 - KPI経営の基本とは KPI・CSF・KGIの関係から
⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(4)自己資本、過度な圧縮にリスク 小樽商科大学准教授 手島直樹 - 金のガチョウの童話とセルフファンディングのお話し
⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(5)株主資本コスト、正確な算出は困難 小樽商科大学准教授 手島直樹 - その前にROEが株主資本コストとかハードルレートと比較できない理由を説明します!
⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(6)絶対額も考慮、縮小に歯止め 小樽商科大学准教授 手島直樹 - エクイティ・スプレッド論ですら、簿価のくびきから自由になっていない件
⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(7)企業視点の指標活用も増える 小樽商科大学准教授 手島直樹 - 企業価値評価におけるROICや投下資本の本来的な定義はコレです!
⇒「(やさしい経済学)ROE重視と企業価値創造(8)キャッシュフロー創出力がカギ 小樽商科大学准教授 手島直樹 - 企業価値は会計的利益をひとひねりしないと出てこないけど、単純にキャッシュフローでもありません!

 

第1位 コーポレートガバナンス - 監査等委員会設置会社、経営者の選任と報酬

コーポレートガバナンスの流行は、結局のところ、アベノミクスによる株価浮揚策として、外国人投資家(機関投資家)を呼び込む方法として、英米流の企業統治ルールを、日本企業の競争戦略の長所を全く無視して、強引に導入したことに端を発します。

⇒「(大磯小磯)持ち合いの是非 -コーポレートガバナンスコードとスチュワードシップコード再び
⇒「企業統治、株主目線で磨く 指針導入1年 社外取締役6000人超す 全体の2割、監視強化 - 株式持ち合いや買収防衛策についても説明
⇒「曲がり角の執行役員制度(上)廃止企業、相次ぐ 統治改革で見直し機運 - 執行役員制度導入と会社機関設置の思想を振り返る!
⇒「曲がり角の執行役員制度(下)機能強化へ「1年契約」 結果責任で緊張感保つ  - 執行役員制度のメリットを引き出す方法とは?
⇒「「監査等委」設置広がる 上場600社、企業統治強化 - 監査等委員会設置会社への移行メリットとは?
⇒「「監査等委」割れる評価 導入1年、400社超が設置 「改革が中途半端」/「迅速に意思決定」

まったく、会社機関という器だけに執着して議論することの無意味さに早く気が付いてもらいたいものです。

その副産物として、ガバナンス変革中の企業において、後継者指名で大きな出来事が続きました。指名委員会が法定かどうか、議事が公開か非公開か、大いに議論も盛り上がりました。

⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(1)発端はサード・ポイントの株式取得から始まった - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(2)指名報酬委員会から臨時取締役会までの流れ - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(3)コーポレートガバナンスに関する論点整理① - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(4)コーポレートガバナンスに関する論点整理② - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(5)コーポレートガバナンスに関する論点整理③ - 日本経済新聞まとめ
⇒「セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文前会長兼CEO退任まで(6)迫真 迷走セブン&アイ まとめ記事を1本にまとめる! - 日本経済新聞まとめ

結局のところ、経営者の指名と報酬の制度化が、ガバナンスの要諦ということで、耳目を集める論点となりました。「所有と経営の分離」が建前の株主会社制度において、株主と経営者の利害を共通化するために、株式報酬制度が議論の中核を占めています。

⇒「「社長が薄給の国ニッポン アジアは高給で人材確保」-あなたの会社の社長は適正価格ですか?
⇒「厳密にはESOPでは無いけれど、株式所有や株価連動で従業員(役員含む)のモチベーション向上の具体策を見てみよう!
⇒「自社株報酬制度の基礎(1)役員報酬を自社株で。その意義と日本企業を取り巻く経営環境を考える
⇒「自社株報酬制度の基礎(2)株式報酬高め役員挑戦促す 中長期の視野で成長狙う 欧米では社会貢献も評価
⇒「自社株報酬制度の基礎(3)ストックオプションと株式報酬制度の違い - プリンパル・エージェント問題にまで思いを馳せて
⇒「株で役員報酬、広がる 中長期の業績で評価 伊藤忠やリクルート、230社

個別企業の様々な施策・動向についても本シリーズで取り上げましたが、日本企業全体を取り巻く論点としては、この5つが2016年を代表するものということで選定させて頂きました。2017年はどんな論点が議論されるのか。今から非常に楽しみなのであります。

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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