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■ だから創業者社長はすごいんです。即断即決と会社との一体感から生まれる責任感!

コンサルタントのつぶやき

2016/3/25付 |日本経済新聞|朝刊 (私の履歴書)大山健太郎(25)商品開発  数分のプレゼンで即決 会議重ねず 私が全責任負う

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

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当社では発売3年以内の商品を新商品に分類する。1998年、売上高に占める新商品比率は50%以上と決め今も守る。ライバル品が登場したら利益率を落としてもシェアを保つのではなく次の新商品を考える。こうして営業利益率10%を死守する。
経営効率を考えれば長寿命の定番品を育てるべきか。しかし企業には10年に一度、必ず大きな危機が来る。これを「想定外」と言うようでは経営者失格だ。選択と集中の結果、定番品だけに頼れば、競合相手の登場や環境変化で会社全体が沈む。常に変化に対応している会社の方が生き延びられる。

 年間1000点の新商品を生む場が毎週月曜、朝から夕方まで続く新商品開発会議、通称「プレゼン会議」だ。社員からの提案は新商品企画をはじめ販売チャネル、納入価格、販促キャンペーンなど約60件にのぼる。

 始めたのは35年ほど前だ。最初は私が考えた新商品の意図などを幹部に説明する場だった。事業の幅が広がったため社員が提案し私は聞く立場に。20年余り前に角田工場を作った時、プレゼン専用室を設けた。

 試作品などを前に置いた提案者を階段状の席が囲む。最前列中央に私。営業、応用研究、財務、海外事業、品質管理、知財などの責任者も同席し質問にはその場で答える。大連工場や大阪の研究所からも動画で参加する。合格なら私がその場で判子を押し、全部門が一斉に動き出す。

 パワーポイントを延々見せる普通のプレゼンとは全く違う。1件5分か10分。資料は1画面。「要点から話せ」とよく叱る。前日の日曜日までの販売データは必須だ。話の途中でも合格、不合格をどしどし判断する。社員は自然にプレゼンが上手になる。

 私の役割は2つある。1つはリスクの請負人。当社が得意とする提案型商品には前例や類似品が少ない。普通の会社のように社内会議を重ねれば「やめておこう」となる。判子を押すということは社長の私がリスクを取ることを意味する。失敗しても提案者にペナルティーは科さない。

 私は「働く社員にとって良い会社」を作ると決めており企業理念の第3条にもそう明記してある。上司が提案を握りつぶす会社は、意欲ある社員にとって良い会社ではない。

 2つ目の役割は生活者の代弁。却下や再考を命じる時は理由を明確に言う。生活のストーリーを感じられない企画、今の消費の流れを追っただけのアイデア、自分のこだわりを優先する開発者には、こう反問する。「おまえの奥さん、ホントにそれ買うか?」。アイリスの仕事は現実の生活者が困っている悩みを解決すること。ものづくりは目的ではなく手段。ここを飲み込んだ社員は提案が的確になる。

 提案を聞いた段階で改善策が見える場合も多い。しかし欠点だけを指摘し「再考」と突き返す。この会議は人材育成の道場でもあるからだ。

 商品開発には情報が多い都会が有利に見える。しかし庭いじり、ペット飼育などは地方の方がやりやすい。実体験こそが発想を生む。地方企業の強みだ。チャンスは地方にこそある。地域と歩く第4楽章が始まった。

(アイリスオーヤマ社長)
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■ 技術的参入障壁の低さは問題視しない。フォロワー企業は端から相手にしない!

アイリスオーヤマの製品市場は、模倣品が出やすく、技術的参入障壁が相対的に低いと考えられます。そうした市場を主戦場にして、営業利益率10%を死守し続けるにはそれなりの「勝利の方程式」が必要になります。それが、スピード感ある「新製品開発」。いたずらに、後発メーカーとの価格競争(消耗戦に陥りやすい)を徹底的に回避し、次の新機能、新用途製品の開発にまい進する。競争しない競争戦略、他社の追随を許さない「プロダクト・イノベーション」をバリュー・プロポジションとして標榜している!

『常に変化に対応している会社の方が生き延びられる。』

はい、基本コンセプトはダーウィンの進化論から。すみません、嘘をつきました。ダーウィンは「種の起源」でこんな言葉は言っていません。さらに、「適者生存」は、科学的観察・考察の結果得られるもので、だから『変化しなさい、さもないと生き残れませんよ』という『個体』の行動原理を表したものではないのです。あくまで、『種』のことを指していった言葉です。ビジネス界隈(もしかするとコンサル業界が火元かもしれませんが)では、このような間違った引用が大手を振っています。例えば、デミング博士の『PDCA』。博士は、periodicなPDCAサイクルをむしろ否定しています。それゆえ、「PDCAサイクル」を語って、単年度予算立案から、期末の予実差異分析による次フェーズのアクションプラン策定まで順序立ててやる意図は完全にありません。

おっと趣旨から外れて横道にそれてしまいました。
閑話休題。

 

■ 経営者の役割とは? 「リスクの請負人」!

「部下の手柄は上司のもの。上司の失態は部下の責任。」まるでどこかの銀行を舞台としたTVドラマのような一節ですが、アイリスオーヤマはそんな世界とはまるで正反対の健全な社風が垣間見られます。新製品企画を社員が発表する「プレゼン会議」にて、社長が果たすべき役割とは?

1.リスクの請負人
新製品開発・上市は、それを決定する経営陣が責任を持つ。もし失敗しても、それを提案した社員の責任は問わない。提案者には、どしどし新規提案を出してもらわないと、アイデアがいつか枯渇して、後発メーカーにいつか負ける日が来る。そうした、誰も踏破しない新しい道を常に先に歩み続けるためのスピードが必要。そのために、経営者が全ての失敗の責任を負う。でもこれ、創業者社長だから言えること。サラリーマン社長はどうしても自己保身的になるし、そうした会社の社長の椅子は代々、穏当に出世してきた(つまり大きな失敗をしてこなかった)社員が交代して務めるもの。これが、他社にない強み、差別化の元なんですね。

2.生活者の代弁
「おまえの奥さん、ホントにそれ買うか?」
「マーケット・イン」からさらに一歩進んだ「ユーザ・イン」。
生活者のお困りごとを解決するための製品を世に送り出す。この一見シンプルな原理原則に基づいて製品開発を行う。その方向付けを、一人の生活者として代弁する。その気概は、「商品開発には情報が多い都会が有利に見える。しかし庭いじり、ペット飼育などは地方の方がやりやすい。実体験こそが発想を生む。地方企業の強みだ。チャンスは地方にこそある。地域と歩く第4楽章が始まった。」という言葉にも表れています。これは、次のように解釈しています。生活者目線に都会も地方も関係ない。生活者目線で、人生をどれだけ俯瞰することができるか?

今朝も、読後感のよいコラムでした!(^^;)

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(私の履歴書)大山健太郎(25)商品開発  数分のプレゼンで即決 会議重ねず 私が全責任負うhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-e1428166267398.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-150x150.jpg小林 友昭新聞記事・コラムアイリスオーヤマ,バリュー・プロポジション,プロダクト・イノベーション,ユーザ・イン,大山健太郎,生活者,私の履歴書,製品ライフサイクル■ だから創業者社長はすごいんです。即断即決と会社との一体感から生まれる責任感! 2016/3/25付 |日本経済新聞|朝刊 (私の履歴書)大山健太郎(25)商品開発  数分のプレゼンで即決 会議重ねず 私が全責任負う (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます -------------------------------------------------------------------------- 当社では発売3年以内の商品を新商品に分類する。1998年、売上高に占める新商品比率は50%以上と決め今も守る。ライバル品が登場したら利益率を落としてもシェアを保つのではなく次の新商品を考える。こうして営業利益率10%を死守する。 経営効率を考えれば長寿命の定番品を育てるべきか。しかし企業には10年に一度、必ず大きな危機が来る。これを「想定外」と言うようでは経営者失格だ。選択と集中の結果、定番品だけに頼れば、競合相手の登場や環境変化で会社全体が沈む。常に変化に対応している会社の方が生き延びられる。  年間1000点の新商品を生む場が毎週月曜、朝から夕方まで続く新商品開発会議、通称「プレゼン会議」だ。社員からの提案は新商品企画をはじめ販売チャネル、納入価格、販促キャンペーンなど約60件にのぼる。  始めたのは35年ほど前だ。最初は私が考えた新商品の意図などを幹部に説明する場だった。事業の幅が広がったため社員が提案し私は聞く立場に。20年余り前に角田工場を作った時、プレゼン専用室を設けた。  試作品などを前に置いた提案者を階段状の席が囲む。最前列中央に私。営業、応用研究、財務、海外事業、品質管理、知財などの責任者も同席し質問にはその場で答える。大連工場や大阪の研究所からも動画で参加する。合格なら私がその場で判子を押し、全部門が一斉に動き出す。  パワーポイントを延々見せる普通のプレゼンとは全く違う。1件5分か10分。資料は1画面。「要点から話せ」とよく叱る。前日の日曜日までの販売データは必須だ。話の途中でも合格、不合格をどしどし判断する。社員は自然にプレゼンが上手になる。  私の役割は2つある。1つはリスクの請負人。当社が得意とする提案型商品には前例や類似品が少ない。普通の会社のように社内会議を重ねれば「やめておこう」となる。判子を押すということは社長の私がリスクを取ることを意味する。失敗しても提案者にペナルティーは科さない。  私は「働く社員にとって良い会社」を作ると決めており企業理念の第3条にもそう明記してある。上司が提案を握りつぶす会社は、意欲ある社員にとって良い会社ではない。  2つ目の役割は生活者の代弁。却下や再考を命じる時は理由を明確に言う。生活のストーリーを感じられない企画、今の消費の流れを追っただけのアイデア、自分のこだわりを優先する開発者には、こう反問する。「おまえの奥さん、ホントにそれ買うか?」。アイリスの仕事は現実の生活者が困っている悩みを解決すること。ものづくりは目的ではなく手段。ここを飲み込んだ社員は提案が的確になる。  提案を聞いた段階で改善策が見える場合も多い。しかし欠点だけを指摘し「再考」と突き返す。この会議は人材育成の道場でもあるからだ。  商品開発には情報が多い都会が有利に見える。しかし庭いじり、ペット飼育などは地方の方がやりやすい。実体験こそが発想を生む。地方企業の強みだ。チャンスは地方にこそある。地域と歩く第4楽章が始まった。 (アイリスオーヤマ社長) --------------------------------------------------------------------------   ■ 技術的参入障壁の低さは問題視しない。フォロワー企業は端から相手にしない! アイリスオーヤマの製品市場は、模倣品が出やすく、技術的参入障壁が相対的に低いと考えられます。そうした市場を主戦場にして、営業利益率10%を死守し続けるにはそれなりの「勝利の方程式」が必要になります。それが、スピード感ある「新製品開発」。いたずらに、後発メーカーとの価格競争(消耗戦に陥りやすい)を徹底的に回避し、次の新機能、新用途製品の開発にまい進する。競争しない競争戦略、他社の追随を許さない「プロダクト・イノベーション」をバリュー・プロポジションとして標榜している! 『常に変化に対応している会社の方が生き延びられる。』 はい、基本コンセプトはダーウィンの進化論から。すみません、嘘をつきました。ダーウィンは「種の起源」でこんな言葉は言っていません。さらに、「適者生存」は、科学的観察・考察の結果得られるもので、だから『変化しなさい、さもないと生き残れませんよ』という『個体』の行動原理を表したものではないのです。あくまで、『種』のことを指していった言葉です。ビジネス界隈(もしかするとコンサル業界が火元かもしれませんが)では、このような間違った引用が大手を振っています。例えば、デミング博士の『PDCA』。博士は、periodicなPDCAサイクルをむしろ否定しています。それゆえ、「PDCAサイクル」を語って、単年度予算立案から、期末の予実差異分析による次フェーズのアクションプラン策定まで順序立ててやる意図は完全にありません。 おっと趣旨から外れて横道にそれてしまいました。 閑話休題。   ■ 経営者の役割とは? 「リスクの請負人」! 「部下の手柄は上司のもの。上司の失態は部下の責任。」まるでどこかの銀行を舞台としたTVドラマのような一節ですが、アイリスオーヤマはそんな世界とはまるで正反対の健全な社風が垣間見られます。新製品企画を社員が発表する「プレゼン会議」にて、社長が果たすべき役割とは? 1.リスクの請負人 新製品開発・上市は、それを決定する経営陣が責任を持つ。もし失敗しても、それを提案した社員の責任は問わない。提案者には、どしどし新規提案を出してもらわないと、アイデアがいつか枯渇して、後発メーカーにいつか負ける日が来る。そうした、誰も踏破しない新しい道を常に先に歩み続けるためのスピードが必要。そのために、経営者が全ての失敗の責任を負う。でもこれ、創業者社長だから言えること。サラリーマン社長はどうしても自己保身的になるし、そうした会社の社長の椅子は代々、穏当に出世してきた(つまり大きな失敗をしてこなかった)社員が交代して務めるもの。これが、他社にない強み、差別化の元なんですね。 2.生活者の代弁 「おまえの奥さん、ホントにそれ買うか?」 「マーケット・イン」からさらに一歩進んだ「ユーザ・イン」。 生活者のお困りごとを解決するための製品を世に送り出す。この一見シンプルな原理原則に基づいて製品開発を行う。その方向付けを、一人の生活者として代弁する。その気概は、「商品開発には情報が多い都会が有利に見える。しかし庭いじり、ペット飼育などは地方の方がやりやすい。実体験こそが発想を生む。地方企業の強みだ。チャンスは地方にこそある。地域と歩く第4楽章が始まった。」という言葉にも表れています。これは、次のように解釈しています。生活者目線に都会も地方も関係ない。生活者目線で、人生をどれだけ俯瞰することができるか? 今朝も、読後感のよいコラムでした!(^^;)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します