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■ 耳ではなく経験で聴く!

コンサルタントのつぶやき

笑喜さんは、漏水防止技術者。「音聴棒(おんちょうぼう)」なるものを水道管に直接当て、伝わる音から漏水の有無を判断する仕事。漏水音は、ザーッというノイズのような音で、道路の素材(コンクリート、アスファルトなど)や、下水管や自動車や自動販売機の擬似音と混ざり、本物の漏水かどうかを聞きわけることは非常に難しい技術になります。

音響分析の専門家曰く、
「周波数とか音程の微妙な差異など、コンピュータでも識別することは大変難しい(というかできない)。それを聞きわける能力はとてつもなく卓越している」

笑喜さんによると、
「漏水(音)には同じようなものはあるけど、(全く)同じものはない。そういう同じようなものがなければ、同じような音の仕方をイメージしておかなければ(漏水かどうか)分からない。そういう積み重ねが技術者には必要だと思うんですけどね」

笑喜久文_プロフェッショナル_20150518

NHK プロフェッショナル 仕事の流儀より

 

■ ミャンマー・ヤンゴン市内の水道事情の改善に貢献する!

笑喜さんは昨年10月から劣悪な水道環境の刷新のためミャンマーに派遣されました。水が出ない家があると聞けば、休日返上で修繕に出向き、連日38度の過酷な環境の中で黙々と働き続けました。

ミャンマーでは何本もの配管が束ねられている「スパゲッティ配管」があちこちに点在しています。水道水を求めて住民が勝手に配管をつないで、同じところを何本もの配管が並行して敷設されている状態。そういう中で、一本一本の配管の漏水の有無を聞きわけることは技術的に大変難易度が高いものになります。

そういう困難な状況に面しても、動じない笑喜さんの心の中には一つの言葉が棲んでいます。その貫く信念とは?

「淡々と、ねちっこく!」

それは、東京水道局に勤め始めた若い時の経験と苦労から築かれたもの。
漏水防止の担当を拝命した当初は、「給料泥棒」と呼ばれる日々が待っていました。
最初に先輩から漏水音を聞かされた後は、実地で音を確認するしかなかった。先輩からのアドバイスは、「漏水があると思って聞け」しかし、何度聞いても本当に漏水しているか確認が持てない。でも漏水の可能性があると判断すれば、水道管を掘り起こして確認するしかない。掘っても掘ってもムダになる日々。口の悪い同僚からは、「ムダな穴を掘るなら自分の給料でやれよ!」当時、一回水道管を掘り起こすのにかかる経費は20万円。

笑喜さんは、恥ずかしい半分、悔しい半分の気持ちで、技術の鍛錬に努力した。
① 聞き取る音の範囲を絞れば的中率はどう上がるか
② 道路の材質の違いで音はどう違って聞こえるか
③ 漏水工事現場を観察し、どう漏水しているかの機構を頭に叩き込んでどう音のイメージを頭の中に作りこむか

そうして、下水道の音との違いを聞きわけられるようになるのに8年がかかった。

■ 明日は、今日より進化しよう!

今日の自分が昨日の自分とどう違うかは、ちょっとずつ1日でも変わればいい。ひとつの音を聞けば必ず自分は進化するという思いを込めて、ひとつひとつの音を聞く。

笑喜さんによると、ひとつとして同じ音はないのだそうです。それまでの経験の中で聞いたことのある音の膨大な参照データを用い、目の前に置かれた状況を分析・イメージを膨らませて、その音の正体を聞きわける。それは、「経験で音を聞く」。

私のようなコンサルタント業にもその仕事に対する姿勢は通じるものがあります。お客様やプロジェクトには、ひとつとして同じものはありません。都度違う条件で、都度異なる目的で、都度会社独自の課題が、身に降りかかってきます。それを、過去のプロジェクト経験(特に私の場合は、事業会社などでのコンサルタントとは違う3つの異なる職業体験)から応用のヒントを引き出しながら、「今」のプロジェクトに最適な解を見つけてくる、というところです。

場面は再びミャンマーに戻って、現地での問題解決のお話へ。

一通り、市内の漏水箇所を修繕したものの、貯水池(水源)のポンプから最も離れた下流域とよばれる場所には水道水が行き届いていない状態。こういう場合、ポンプの圧力を上げて、全域に水道水が行き渡るようにするのが常道。しかし、ポンプの圧力を上げることは、水道管への負荷を上げることになり、新たな漏水箇所の発生を引き起こしかねない。

しかし、全ての世帯に水道水をお届けするため、ポンプの圧力を上げることにしました。そうしたところ、案の定、新たな漏水箇所が一夜にして、数か所発見されてしまいました。

現地スタッフは、ひと通り漏水工事をしたので、一度終えた修繕工事をやり直すことになったことでかなり士気が下がって、工事を投げ出し、「できません」と言い出す始末。一度、修繕工事のやり方をレクチャーしたので、知らない・できないわけはないのに。。。

笑喜さんは、丁寧にいちから現地スタッフと共に漏水箇所に出かけていって、一つ一つの工事の技術指導を改めて丁寧な説明で施します。

「諦めてはいけない仕事」

「自分のやっている仕事がどうやって(世の中に)貢献しているか先に分かればですね、仕事に対してもちゃんとやれる、ということを理解してほしいのです」

 

プロフェッショナルとは?

「漏水についていうと、いかに多くの音を聴くか。
 そういう経験をいっぱい積んだ人。
 それをいざという時に出せる人が
 プロフェッショナルかなと思っています。」

——————–
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東京都水道局のホームページはこちら

→再放送:5月23日(土)午前1時10分~午前1時58分(金曜深夜)総合

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威信をかけて、水道を守る 水道技術者・笑喜(しょうぎ)久文 2015年5月18日OA NHK プロフェッショナル 仕事の流儀http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-e1428166267398.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-150x150.jpg小林 友昭TV番組レビュープロフェッショナル,笑喜久文■ 耳ではなく経験で聴く! 笑喜さんは、漏水防止技術者。「音聴棒(おんちょうぼう)」なるものを水道管に直接当て、伝わる音から漏水の有無を判断する仕事。漏水音は、ザーッというノイズのような音で、道路の素材(コンクリート、アスファルトなど)や、下水管や自動車や自動販売機の擬似音と混ざり、本物の漏水かどうかを聞きわけることは非常に難しい技術になります。 音響分析の専門家曰く、 「周波数とか音程の微妙な差異など、コンピュータでも識別することは大変難しい(というかできない)。それを聞きわける能力はとてつもなく卓越している」 笑喜さんによると、 「漏水(音)には同じようなものはあるけど、(全く)同じものはない。そういう同じようなものがなければ、同じような音の仕方をイメージしておかなければ(漏水かどうか)分からない。そういう積み重ねが技術者には必要だと思うんですけどね」 (NHK プロフェッショナル 仕事の流儀より)   ■ ミャンマー・ヤンゴン市内の水道事情の改善に貢献する! 笑喜さんは昨年10月から劣悪な水道環境の刷新のためミャンマーに派遣されました。水が出ない家があると聞けば、休日返上で修繕に出向き、連日38度の過酷な環境の中で黙々と働き続けました。 ミャンマーでは何本もの配管が束ねられている「スパゲッティ配管」があちこちに点在しています。水道水を求めて住民が勝手に配管をつないで、同じところを何本もの配管が並行して敷設されている状態。そういう中で、一本一本の配管の漏水の有無を聞きわけることは技術的に大変難易度が高いものになります。 そういう困難な状況に面しても、動じない笑喜さんの心の中には一つの言葉が棲んでいます。その貫く信念とは? 「淡々と、ねちっこく!」 それは、東京水道局に勤め始めた若い時の経験と苦労から築かれたもの。 漏水防止の担当を拝命した当初は、「給料泥棒」と呼ばれる日々が待っていました。 最初に先輩から漏水音を聞かされた後は、実地で音を確認するしかなかった。先輩からのアドバイスは、「漏水があると思って聞け」しかし、何度聞いても本当に漏水しているか確認が持てない。でも漏水の可能性があると判断すれば、水道管を掘り起こして確認するしかない。掘っても掘ってもムダになる日々。口の悪い同僚からは、「ムダな穴を掘るなら自分の給料でやれよ!」当時、一回水道管を掘り起こすのにかかる経費は20万円。 笑喜さんは、恥ずかしい半分、悔しい半分の気持ちで、技術の鍛錬に努力した。 ① 聞き取る音の範囲を絞れば的中率はどう上がるか ② 道路の材質の違いで音はどう違って聞こえるか ③ 漏水工事現場を観察し、どう漏水しているかの機構を頭に叩き込んでどう音のイメージを頭の中に作りこむか そうして、下水道の音との違いを聞きわけられるようになるのに8年がかかった。 ■ 明日は、今日より進化しよう! 今日の自分が昨日の自分とどう違うかは、ちょっとずつ1日でも変わればいい。ひとつの音を聞けば必ず自分は進化するという思いを込めて、ひとつひとつの音を聞く。 笑喜さんによると、ひとつとして同じ音はないのだそうです。それまでの経験の中で聞いたことのある音の膨大な参照データを用い、目の前に置かれた状況を分析・イメージを膨らませて、その音の正体を聞きわける。それは、「経験で音を聞く」。 私のようなコンサルタント業にもその仕事に対する姿勢は通じるものがあります。お客様やプロジェクトには、ひとつとして同じものはありません。都度違う条件で、都度異なる目的で、都度会社独自の課題が、身に降りかかってきます。それを、過去のプロジェクト経験(特に私の場合は、事業会社などでのコンサルタントとは違う3つの異なる職業体験)から応用のヒントを引き出しながら、「今」のプロジェクトに最適な解を見つけてくる、というところです。 場面は再びミャンマーに戻って、現地での問題解決のお話へ。 一通り、市内の漏水箇所を修繕したものの、貯水池(水源)のポンプから最も離れた下流域とよばれる場所には水道水が行き届いていない状態。こういう場合、ポンプの圧力を上げて、全域に水道水が行き渡るようにするのが常道。しかし、ポンプの圧力を上げることは、水道管への負荷を上げることになり、新たな漏水箇所の発生を引き起こしかねない。 しかし、全ての世帯に水道水をお届けするため、ポンプの圧力を上げることにしました。そうしたところ、案の定、新たな漏水箇所が一夜にして、数か所発見されてしまいました。 現地スタッフは、ひと通り漏水工事をしたので、一度終えた修繕工事をやり直すことになったことでかなり士気が下がって、工事を投げ出し、「できません」と言い出す始末。一度、修繕工事のやり方をレクチャーしたので、知らない・できないわけはないのに。。。 笑喜さんは、丁寧にいちから現地スタッフと共に漏水箇所に出かけていって、一つ一つの工事の技術指導を改めて丁寧な説明で施します。 「諦めてはいけない仕事」 「自分のやっている仕事がどうやって(世の中に)貢献しているか先に分かればですね、仕事に対してもちゃんとやれる、ということを理解してほしいのです」   プロフェッショナルとは? 「漏水についていうと、いかに多くの音を聴くか。  そういう経験をいっぱい積んだ人。  それをいざという時に出せる人が  プロフェッショナルかなと思っています。」 -------------------- 番組ホームページはこちら 東京都水道局のホームページはこちら →再放送:5月23日(土)午前1時10分~午前1時58分(金曜深夜)総合現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します