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■ 最上がある小さな名店

コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ

時代の荒波を生き抜く小さな名店スペシャル。
大手スーパーやチェーン店が台頭し、街の小さな専門店が姿を消していく今の時代、地元に根を張り、生き残る名店にはプロフェッショナルの存在があった。

小さな名店スペシャル_プロフェッショナル_20150824

番組公式ホームページより

 

■ 連日行列ができる精肉店 真心を届ける店主の心意気

精肉の名店はその品質に自信をみなぎらせていた。扱うのはデュロック種の母豚。日本ではほとんど流通していない逸品だ。父の代から51年続く名店の2代目だ。畑さんは接客しながらやたらメモを取る。

「自分がそのご家族に少しでも溶け込んでいけたらなというか、お客さんがどんな好みなのかなとか、次はこういうものを紹介してみようかなとか、そういう所にもつながるんで」

この店の強みは、専門店ならではの細やかな接客と扱う品の確かさにある。特にお客を虜にしているのが加工品の数々だ。中でも評価が高いのは、ハムやソーセージそしてビーフジャーキー。世界で最も審査が厳しいとされる本場ドイツのコンテストで幾度となく金賞を受賞している。

挽き肉を若い羊の腸に、絶妙の指先使いで詰めていく。

「(腸詰の最初から最後まで)全部同じ状態で充填できるところが手作業のメリットなんですよね。これがあることで、最後に熱をかけた時に、張りと弾力と食感が出てくる」

だが、この店が皆から愛される理由はこれだけではない。

『最上しか認めない』

とある日、3日前に予定していたデュロック種の肉の入荷が無く、在庫が尽きかけていた。午後に入ると売り切れが出始めた。午後4時、念願の肉が届いた。畑さんはいつも届いた肉を味見する。だが、捌くことなく肉を仕舞い始めた。ほんのわずか肉汁が少ないため、精肉には向かないと判断した。今回の肉は加工に回し、精肉では売らないと決めた。そんな畑さんの姿勢に客もまた惚れ込んでいる。

「あそこに行けば間違いないよっていう気持ちになってもらえる専門店としての役目があると思うんですよね。お客さんにはどの方が食べても本当に目がパッと開いて「あっ、これおいしいね」って、感動というかみんなで共有し合える何かがあってこその食卓という感じがしているんですよね。80点、70点という豚も大事なんですけど、あえて出さない、というところで意味合いがあるんじゃないかと自分で思っています」

 

■ 本場ドイツも絶賛! 畑さんの超絶スゴ技

扱う商品に真剣に向き合い、お客に絶対の信頼を与える畑さん。その姿勢は迷い、もがいてきた半生の中で生まれた。「肉屋としての背骨」。畑さんが数年の会社勤めを経て実家の精肉店に修行入りをしたのは26歳の時。決して器用な方ではなかった畑さん。慣れない包丁仕事に父親から怒鳴られる日が続いた。しかも時代も味方してくれなかった。大型スーパーが続々と登場し、街の小さな専門店は次々と消えていった。

「近くのお肉屋さんたちに「お前こんな時期に肉屋やるなんてのはよっぽどバカか、よっぽど考えているかどっちかだぞ」って、「お前少し考えた方がいいぞ」って言われて、本当に考えた方がいいのかなと。自虐というか、あきらめというか、終いにはね、本当、自分が情けなくなって「何か仕事向いていないんじゃないかな」とかって」

このままこの仕事を続けるのか、続けるにしても自分には一体何ができるのか、その軸となる背骨が見えない。転機は29歳の時。何気なく読んでいた雑誌に、ドイツに「ハウスメッツガー」という職業があると知った。巧みな包丁捌きで一頭の動物を血の一滴まで残すことなく料理に仕上げる最上の技術を持っているという。実際にこの目で見てみたい。居ても立っても居られないとばかり、2年後、単身ドイツに渡った畑さんは、ハウスメッツガーの仕事を目の当たりにした。朝、村にやって来たハウスメッツガーは、豚を一頭丸ごと様々な料理に使い、そしてそれを食べた村のみんなの笑顔を見た時、畑さんは言葉にできない感動を覚えた。

「みんなで美味しいねって言いながら食べているって姿がすごく温かく感じたんですよね。物以上の何かがみんなに配られて、みんなが豊かになるというか、幸せになるというか、心みたいなものが配られるのが、物に乗っかるというか、そういう感じのものが何かあるじゃないかなって」

生き方が見えた気がした。 

『最上を尽くして、心を届ける』

自分の持てるもの全てを尽くして心を届ける肉屋になりたい! 帰国後、全国の問屋に問い合わせて、入手が困難なデュロック種の豚肉を仕入れられるようになった。ソーセージ、ハム、コンビーフなどの加工品も研究に研究を重ね、最上の品を突き詰めた。

父、弘さんいわく、
「修行して返ってきて極端に変わってきたですね。コンビーフなんかは僕の教え方でやってきたんです、最初はね。それを今度は自分で手ほぐしに、棒でね、肉を崩していく。品物ができた時に、「ああ」という感じがしましたね」

ドイツで出会ったあの笑顔から16年、今、畑さんは地元に愛される小さな名店の顔となった。

 

■ コーヒー界のレジェンド 最上の一杯に込められた思い

田口さんの珈琲店は、開店から30分経つと常連客で席がほとんど埋まる。この店にあるのは20種類のコーヒー。田口さんの店ではコーヒー豆が持つ個性を最大限引き出し、雑味や濁りの無い一杯を提供する。最上の一杯が提供される極意がある。

『誠実という隠し味』

「お客さんがどのように、(コーヒーを)楽しんでもらえるかということを、もっと一生懸命に考えていけば、自ずとちゃんとした答えが出てくると思うんですよね。少しでも美味しくしようと、うそ偽りが無いものをやっていく。すなわち誠実に真摯に関わっていく」

一杯のコーヒーにどれだけ誠実に向き合えるか? 田口さんはその答えを焙煎の技術に求めた。

「味を作るってというところは焙煎で完全に完了しているんですよね。全てのコーヒーの過程の中で一番大事なポイントだと思っているんです」

一般にコーヒー豆は焙煎すると酸味のピークが先に訪れ、その後に苦味のピークがやってくる。しかも豆の種類や産地によって、香りや味わいがベストになるタイミングは異なるという。田口さんは、この焙煎の技術を40年以上にも亘って追求してきた。その結果、豆の種類によって焙煎を止める「煎り止め」というタイミングを独自に見定めた。その研究成果は本にまとめられ、広く世界にも知られている。

最近、人気が高いパナマ産のゲイシャという種類の豆。田口さんは、この焙煎に挑もうとしていた。ゲイシャは焙煎による香りのピークの幅が極端に狭い。他の豆なら焙煎を止める煎り止めの幅は10秒ほどある。しかしこの豆はわずか数秒。今年77歳になる田口さん。普段は部下に任せる焙煎も、この豆の場合は焙煎に自分自身で立ち会う。

「一番緊張するかな、焙煎するのに。ほんのちょっとの(煎り止めの)ずれで味がガラッと変わってしまう」

焙煎の前に必ず行うのが「ハンドピック」。虫食いや未成熟の豆を取り除く作業。田口さんの店では、どんなに高品質の豆でもハンドピックを徹底し、雑味の無い味を目指す。そしてこの時、豆のサイズ、硬さ、水分含有量などを把握していく。豆の個体差に応じて焙煎の細かな方針を定める。

「農作物というのは、どうしても味がブレてきます。でもお客さんの舌はぶれませんので、同じ味にきちっと整えて出さなきゃいけない」

秒単位で刻一刻と変化していく豆。見てOKと思った時には既に手遅れとなる。豆の変化を先読みし、煎り止めの瞬間を見極めなければならない。「おいしい」、その一言をこの店は追求し続ける。

田口さんは、今、珈琲店開業を志す人々の指導に力を注いでいる。技術や知識だけでなく、店を営む“心”も伝える。

「自分のいい所を発見していくのが店づくりですよ。そうやっていくと、お客さんにもうそ偽りなく、なおかつ自分の自信にもなっていきます。それがゆとりになり、おいしいコーヒーの元になってきますので」

 

プロフェッショナルとは?

珈琲店マスター・田口さん

「その物事に対して、誠実である、で真摯(しんし)である。
 その分野でもってやったことでもって成し遂げた方が
 プロフェッショナルと言っていいんじゃないかと。」

精肉店店主・畑さん

「お客様が何を求めて来ていらっしゃるか、どんな思いで
 来ていらっしゃるかっていうのを想像して、自分が何が
 そのためにできるのかなと、とことん考えた上で実行していける人、
 そんな人が、プロフェッショナルではないかと思います。」

——————–
番組ホームページはこちら
http://www.nhk.or.jp/professional/2015/0824/index.html

肉の伊勢屋のホームページはこちら
http://www.metzger298.com/

カフェ バッハのホームページはこちら
http://www.bach-kaffee.co.jp/index.html

→再放送 8月29日(土)午前1時10分~午前1時58分(金曜深夜)総合
     ※東京のみ午前2時00分~2時48分(金曜深夜)総合

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小さな名店スペシャル 精肉店店主・畑肇 珈琲店マスター・田口護 2015年8月24日 NHK プロフェッショナル 仕事の流儀http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e4.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e4-150x150.jpg小林 友昭TV番組レビュープロフェッショナル,肉の伊勢屋,畑肇,田口護,カフェバッハ■ 最上がある小さな名店 時代の荒波を生き抜く小さな名店スペシャル。 大手スーパーやチェーン店が台頭し、街の小さな専門店が姿を消していく今の時代、地元に根を張り、生き残る名店にはプロフェッショナルの存在があった。 (番組公式ホームページより)   ■ 連日行列ができる精肉店 真心を届ける店主の心意気 精肉の名店はその品質に自信をみなぎらせていた。扱うのはデュロック種の母豚。日本ではほとんど流通していない逸品だ。父の代から51年続く名店の2代目だ。畑さんは接客しながらやたらメモを取る。 「自分がそのご家族に少しでも溶け込んでいけたらなというか、お客さんがどんな好みなのかなとか、次はこういうものを紹介してみようかなとか、そういう所にもつながるんで」 この店の強みは、専門店ならではの細やかな接客と扱う品の確かさにある。特にお客を虜にしているのが加工品の数々だ。中でも評価が高いのは、ハムやソーセージそしてビーフジャーキー。世界で最も審査が厳しいとされる本場ドイツのコンテストで幾度となく金賞を受賞している。 挽き肉を若い羊の腸に、絶妙の指先使いで詰めていく。 「(腸詰の最初から最後まで)全部同じ状態で充填できるところが手作業のメリットなんですよね。これがあることで、最後に熱をかけた時に、張りと弾力と食感が出てくる」 だが、この店が皆から愛される理由はこれだけではない。 『最上しか認めない』 とある日、3日前に予定していたデュロック種の肉の入荷が無く、在庫が尽きかけていた。午後に入ると売り切れが出始めた。午後4時、念願の肉が届いた。畑さんはいつも届いた肉を味見する。だが、捌くことなく肉を仕舞い始めた。ほんのわずか肉汁が少ないため、精肉には向かないと判断した。今回の肉は加工に回し、精肉では売らないと決めた。そんな畑さんの姿勢に客もまた惚れ込んでいる。 「あそこに行けば間違いないよっていう気持ちになってもらえる専門店としての役目があると思うんですよね。お客さんにはどの方が食べても本当に目がパッと開いて「あっ、これおいしいね」って、感動というかみんなで共有し合える何かがあってこその食卓という感じがしているんですよね。80点、70点という豚も大事なんですけど、あえて出さない、というところで意味合いがあるんじゃないかと自分で思っています」   ■ 本場ドイツも絶賛! 畑さんの超絶スゴ技 扱う商品に真剣に向き合い、お客に絶対の信頼を与える畑さん。その姿勢は迷い、もがいてきた半生の中で生まれた。「肉屋としての背骨」。畑さんが数年の会社勤めを経て実家の精肉店に修行入りをしたのは26歳の時。決して器用な方ではなかった畑さん。慣れない包丁仕事に父親から怒鳴られる日が続いた。しかも時代も味方してくれなかった。大型スーパーが続々と登場し、街の小さな専門店は次々と消えていった。 「近くのお肉屋さんたちに「お前こんな時期に肉屋やるなんてのはよっぽどバカか、よっぽど考えているかどっちかだぞ」って、「お前少し考えた方がいいぞ」って言われて、本当に考えた方がいいのかなと。自虐というか、あきらめというか、終いにはね、本当、自分が情けなくなって「何か仕事向いていないんじゃないかな」とかって」 このままこの仕事を続けるのか、続けるにしても自分には一体何ができるのか、その軸となる背骨が見えない。転機は29歳の時。何気なく読んでいた雑誌に、ドイツに「ハウスメッツガー」という職業があると知った。巧みな包丁捌きで一頭の動物を血の一滴まで残すことなく料理に仕上げる最上の技術を持っているという。実際にこの目で見てみたい。居ても立っても居られないとばかり、2年後、単身ドイツに渡った畑さんは、ハウスメッツガーの仕事を目の当たりにした。朝、村にやって来たハウスメッツガーは、豚を一頭丸ごと様々な料理に使い、そしてそれを食べた村のみんなの笑顔を見た時、畑さんは言葉にできない感動を覚えた。 「みんなで美味しいねって言いながら食べているって姿がすごく温かく感じたんですよね。物以上の何かがみんなに配られて、みんなが豊かになるというか、幸せになるというか、心みたいなものが配られるのが、物に乗っかるというか、そういう感じのものが何かあるじゃないかなって」 生き方が見えた気がした。  『最上を尽くして、心を届ける』 自分の持てるもの全てを尽くして心を届ける肉屋になりたい! 帰国後、全国の問屋に問い合わせて、入手が困難なデュロック種の豚肉を仕入れられるようになった。ソーセージ、ハム、コンビーフなどの加工品も研究に研究を重ね、最上の品を突き詰めた。 父、弘さんいわく、 「修行して返ってきて極端に変わってきたですね。コンビーフなんかは僕の教え方でやってきたんです、最初はね。それを今度は自分で手ほぐしに、棒でね、肉を崩していく。品物ができた時に、「ああ」という感じがしましたね」 ドイツで出会ったあの笑顔から16年、今、畑さんは地元に愛される小さな名店の顔となった。   ■ コーヒー界のレジェンド 最上の一杯に込められた思い 田口さんの珈琲店は、開店から30分経つと常連客で席がほとんど埋まる。この店にあるのは20種類のコーヒー。田口さんの店ではコーヒー豆が持つ個性を最大限引き出し、雑味や濁りの無い一杯を提供する。最上の一杯が提供される極意がある。 『誠実という隠し味』 「お客さんがどのように、(コーヒーを)楽しんでもらえるかということを、もっと一生懸命に考えていけば、自ずとちゃんとした答えが出てくると思うんですよね。少しでも美味しくしようと、うそ偽りが無いものをやっていく。すなわち誠実に真摯に関わっていく」 一杯のコーヒーにどれだけ誠実に向き合えるか? 田口さんはその答えを焙煎の技術に求めた。 「味を作るってというところは焙煎で完全に完了しているんですよね。全てのコーヒーの過程の中で一番大事なポイントだと思っているんです」 一般にコーヒー豆は焙煎すると酸味のピークが先に訪れ、その後に苦味のピークがやってくる。しかも豆の種類や産地によって、香りや味わいがベストになるタイミングは異なるという。田口さんは、この焙煎の技術を40年以上にも亘って追求してきた。その結果、豆の種類によって焙煎を止める「煎り止め」というタイミングを独自に見定めた。その研究成果は本にまとめられ、広く世界にも知られている。 最近、人気が高いパナマ産のゲイシャという種類の豆。田口さんは、この焙煎に挑もうとしていた。ゲイシャは焙煎による香りのピークの幅が極端に狭い。他の豆なら焙煎を止める煎り止めの幅は10秒ほどある。しかしこの豆はわずか数秒。今年77歳になる田口さん。普段は部下に任せる焙煎も、この豆の場合は焙煎に自分自身で立ち会う。 「一番緊張するかな、焙煎するのに。ほんのちょっとの(煎り止めの)ずれで味がガラッと変わってしまう」 焙煎の前に必ず行うのが「ハンドピック」。虫食いや未成熟の豆を取り除く作業。田口さんの店では、どんなに高品質の豆でもハンドピックを徹底し、雑味の無い味を目指す。そしてこの時、豆のサイズ、硬さ、水分含有量などを把握していく。豆の個体差に応じて焙煎の細かな方針を定める。 「農作物というのは、どうしても味がブレてきます。でもお客さんの舌はぶれませんので、同じ味にきちっと整えて出さなきゃいけない」 秒単位で刻一刻と変化していく豆。見てOKと思った時には既に手遅れとなる。豆の変化を先読みし、煎り止めの瞬間を見極めなければならない。「おいしい」、その一言をこの店は追求し続ける。 田口さんは、今、珈琲店開業を志す人々の指導に力を注いでいる。技術や知識だけでなく、店を営む“心”も伝える。 「自分のいい所を発見していくのが店づくりですよ。そうやっていくと、お客さんにもうそ偽りなく、なおかつ自分の自信にもなっていきます。それがゆとりになり、おいしいコーヒーの元になってきますので」   プロフェッショナルとは? 珈琲店マスター・田口さん 「その物事に対して、誠実である、で真摯(しんし)である。  その分野でもってやったことでもって成し遂げた方が  プロフェッショナルと言っていいんじゃないかと。」 精肉店店主・畑さん 「お客様が何を求めて来ていらっしゃるか、どんな思いで  来ていらっしゃるかっていうのを想像して、自分が何が  そのためにできるのかなと、とことん考えた上で実行していける人、  そんな人が、プロフェッショナルではないかと思います。」 -------------------- 番組ホームページはこちら (http://www.nhk.or.jp/professional/2015/0824/index.html) 肉の伊勢屋のホームページはこちら (http://www.metzger298.com/) カフェ バッハのホームページはこちら (http://www.bach-kaffee.co.jp/index.html) →再放送 8月29日(土)午前1時10分~午前1時58分(金曜深夜)総合      ※東京のみ午前2時00分~2時48分(金曜深夜)総合現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します