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■ 大手レンタルチェーンから小売業の革命まで 型破りな社長

コンサルタントのつぶやき

『破壊者か 創造者か』

噂通りの型破りな男だった。裸一貫から叩き上げ。年商2000億円の企業を率いる社長だ。常識を覆すビジネスは常に世間からの注目を集める。32年前に立ち上げた日本最大のレンタルチェーン。2年前から運営する公立図書館。本の分類方法を一新し、カフェを併設するなど、大胆な改革で来館者を3倍に増やした。

佐賀県武雄市図書館
https://www.epochal.city.takeo.lg.jp/winj/opac/top.do

一方で本の選び方や運営の仕方に批判が上がり、議論を呼んでいる。

「みんなが理解できないけど、世の中こう変わっていくということを信じて、やるしかないのよ。で、成功確率はめちゃくちゃ低い。」

20151019_増田宗昭_プロフェッショナル

番組公式ホームページより

新ビジネスを次々と生み出す起業家。会員数5500万人のポイントカード。常識破りの書店。その企画力はレンタルチェーンの枠を大きく超える。

「世界一を目指しているんだから」64歳、攻める気持ちは全く衰えない。

「チャレンジだよ、未来が無い、だったらやろうというのが企画会社魂よ」

モノもサービスもあふれる時代。増田の経営手腕に名うての経営者も舌を巻く。

「今までの人が思ってもできなかったようなことを実行する力もあるし、特異な才能があるんだろうなと」
(楽天 三木谷浩史)

失敗のリスクが高い所にあえて飛び込むのはなぜか? 先の見えない未来を生き抜くヒントがここにある。

増田の会社があるのは東京・渋谷。朝9時、Tシャツにジーパン姿で現れた。ラフないでたちには理由があるという。

「みんながスーツ着ているから、スーツ着ておけば安心みたいな人多いじゃん。だけど本質的かといったら、そうじゃねえじゃん。お客の気分になるってことが大事なのよ。だからお客の格好よ、これは。」

自らの会社をレンタル会社ではなく、企画会社だという増田。この日も新たな企画のタネを社員にぶつけた。

「マイナンバ―が来年始まるやろ、マイナンバ―への対応なんかどうしているの? だって世の中変わるんだぜ。それを使ってこういうふうにやったろう、ああいうふうにやったろうって、みんな動いているわけよ」

増田が言う企画とは、これまで世の中になかったビジネスを生み出すこと。いま抱える20を超えるプロジェクトは全て時代を先読みして始めた新事業だ。例えば、増田がいち早く始めたポイントカード事業。単なるレンタル店のポイントカードを大きなビジネスへと変貌させた。カードをコンビニや店舗で提示すると、客はポイントがもらえる。同時に購買データを収集。それを年代や性別、売れるものの傾向などに分析し販売することで、相手先はマーケティングに生かす仕組みだ。現在、100以上にのぼる提携先企業を増やす戦略を練っている。

独自の企画を次々と生み出す増田。ひとつの信念がある。

『過去の延長線上に、未来はない』

「(かつての経営は)同じものをとにかく速く、たくさん作るのよ。それが競争戦略だったし成長だったのよ。だけど、その延長に未来はないのよ。過去の延長線上に未来はないの。新しい未来のためにプラットフォームを作るのが企画会社だし、それをしないと生き残れない」

今、増田が取り組んでいるのは、低迷する小売業を変える新たなビジネスモデルの開発だ。4年間に作った書店を中心とした複合施設。

「来るってことに価値のある空間を作りたい。」

既存の書店のように、品ぞろえだけで勝負しては、ネット書店に勝てないと考えた増田。コーヒーを飲みながら商品を自由に何時間でも読むことができるなど、ネットとは対極のゆったりとした居心地を追求した。これまでにない雰囲気が評判を呼び、売上は右肩上がりに伸びている。

しかし、課題になっている売場があった。2階にあるCDレンタルや販売を行う音楽フロア。オープンから4年、売上が2割弱落ちていた。

「ひと言で言うと、まだお客さんに支持されていない。一回来た人が何回も来るような、まだ売り場にはなっていない。ジャンルウェイトって教えてくれない?」

増田はまず、どういうジャンルが売れているのか分析を始めた。ロック、ジャズで半数を占めている。他の系列店で人気の日本のポップスが落ち込んでいる。

「今から売り場行こうや、それでどうなってんねんって、案内してみいや、そこなんだよ」

突然、売り場に向かった。客からどう見えるか、感じたことをどんどん伝える。

「売り場が全てなんだよ。考え方が後ろにあってもそんなの関係ないんだよ。お客はみんな売場だけやから、売り場に全部出ていなきゃダメなんだよ。その気(買う気)にならない、分からんし。お客さんの声なき声はそういうことやねんで。」

『客の声を、自分の中に聞く』

「外をキョロキョロして、世の中どうなってんだろう、どんなふうに向かうんだろうって、みんな外に答え探すけど、逆に目を閉じて、自分は何がしたいんだろう、どうなったら幸せなんだろう、今何したいんだろう。自分っていうことの中から答えが湧き出るような自分でありたい。だから、あんまり社長業にも埋もれたくないし、できるだけ一生活者として、自分の感覚がいつも世の中とシンクロしているように生きなきゃいけないと思っている」

時代の心を掴むには、自分自身の心が問われる。それが、企画を生み出す者の宿命だと考えている。

知的資本論 すべての企業がデザイナー集団になる未来

■ プロフェッショナルの発想

一人の生活者としての感性を保つために、増田さんは努力を怠らない。その一つがランニング。休みの度に走りながら町を眺める。この日は2キロほど走って銀座にやってきた。

「こうやって歩いている時に、おばちゃんの気持ちになって、子持ちの気持ちになって、じじいの、じじい言うたらあかんのか、プレミアエイジの気持ちになって、ワープするのよ」

あらゆる世代の目線になって、課題が無いか探る。

「たとえばカフェが無いじゃん、全然、パリみたいに。だから、ここで買い物をしたら疲れちゃうわけよ。座るとこ無いから。」

そして企画を形にするために使うのは、画用紙と鉛筆。スケッチ用の特殊なペンを使うことで、頭の中を自在に表現できるという。

「見たことも経験したこともないことに対して、「いいね」って言ってもらえるようにするにはどうしたらいいのか、常に考えているのね」

代官山 オトナTSUTAYA計画

この日、増田は大事な会議に出席するため、ある店舗を訪ねた。今年5月にオープンした家電店。他の量販店が次々と閉店する中でオープンさせ、業界を驚かせた。商品の脇に関連書籍を置いたり、料理勉強会を開いたりと、ただ売るのではなく、ライフスタイルを提案するという店舗だ。更に、店の中には家電製品と相性の良い、食や美に関するテナントを誘致した。

この日はテナントのオーナーとの初めての会議。オープンから1ヶ月、客の数は多いが、売上は目標に達していなかった。

(とあるテナントオーナー)
「来られる方の絶対数のボリュームが爆発してしまっているので、数の狂いが全てのその後の狂いにつながっていて、十分まだ狙いのところにはたどり着けていないなと」

テナントからは増田の会社が運営する家電売り場にも疑問の声が出た。

「コーヒーメーカーの脇にミキサーが並んでいて、僕はどっちがどっちか分からないんですね。とりあえず(買うのを)また後にしようという感じになっちゃったので、そんなような人がいっぱいいるのかなって気がします」

これまでにない売り場に、客が戸惑っているのではないかという。テナントが不安を抱えたままでは店舗は決して成功しない。

増田が口を開いた。
「戦術的にやらなきゃいけないことはまだまだ、やること山ほどあるんですけど、まだまだ全然できていない、という意味で、10点というのが家電部分の僕の評価です」

力不足であることを正直に認めた。

「もうちょっと本音ベースでお話ししておくと、レンタル店はお客さんが勝手に選ぶからセルフなんですよ。かつ、お店のインフラを全部ITで作ったんですね。発注も本部がしますし、(家電の)在庫管理したことがない。その人らに家電を売れ言うても、それは無理なんですよ。無理というのを前提にやっているので、まあ、10点というのはよくやっているなと。是非、在庫管理を教えてやってください」

増田は新たな事業を始める時、成功するとは見込まない。失敗を前提に事業計画を立てる。

『革新は、失敗からしか生まれない』

「普通の人はみんな成功すると思ってやるの。だけど俺は失敗すると思ってやる。だからいつも事業計画書は売り上げゼロって書くの。どこまで誠意をこめて一生懸命寝ずにやっても、失敗する事があるわけさ。もう失敗だらけだからよ、俺らがやることって。だから価値があるのよ、だから事業になるのよ。誰でもできる仕事は事業にはならない。みんなやるから」

1週間後、増田は早速、売り場の改革に着手した。失敗を恐れず、挑み続けた者だけが生き残れる。それが今の時代だと増田は考えている。

はじめて語られる企画の「虎の巻」

■ あかんたれの逆襲 大手レンタルチェーン社長 いじめ、負債、波瀾万丈の人生

子供の頃はつらい記憶しかない。交通事故で顔に跡が残り、いじめの標的になった。

「いじめられっ子の毎日ってすごい屈辱じゃない。怖いし、ものすごい怖かったよ。自分が壊されるみたいな。そういう、毎日恐怖におびえるみたいな」

更に、小学校の時、父親が事業に失敗する。そんな中で母親は自分の着る物や病院代まで我慢して、息子に不自由をさせまいとしてくれた。お金を稼いで恩返しがしたい。そう思うようになった。まず弱い自分を変えなければと、高校でレスリング部に入部。つらい練習に耐えているうちに、いじめられなくなった。

「いじめっ子をこう(上に)見ていたのが、ある日、出会った時に、上から見ている自分に気が付いた。で、向こうも言わなくなったの。自分の意志で自分が置かれる環境って変えられるだって気づいた」

自信をつけた増田さんは、サラリーマンとして婦人服の会社(鈴屋)に入社。そして32歳の時、会社を辞めて、レンタル店を立ち上げた。繰り出す策が次々と当り、10年後には600店舗を持つまでに急成長。裸一貫から一大チェーンを築き上げた増田さんは、時代の寵児ともてはやされるようになった。しかし、転落の時は突然訪れた。増田さんはアメリカで始まった多チャンネルの衛星放送を日本に導入。200億円を出資し、社長(ディレクTV)となった。この挑戦は必ず成功させなければならないと意気込んでいた。だが、加入者が伸び悩み、事業は低迷。2年後、業績不振を理由に社長を解任された。財産と信用を同時に失った。

「俺ひょっとして、負けるんじゃねえって思った瞬間、髪の毛がぶわーって抜け出したの。耳が聞こえなくなったり、飯食っていても匂いがしなかったりっていうくらいストレス。できないことをやるんだって、やれるようになるっていう、そういう価値観でやっていたから。だから、ある種、自分の価値観は崩壊した」

初めての大きな失敗。さらに追い打ちが来た。後発の企業に追い上げられ、レンタル事業が伸び悩む。そんなある日。友人から増田さんにある提案があった。これまでの仕事仲間を集めて復活のパーティーを開いてはどうか? 増田さんは乗り気じゃなかった。成功している所に人は集まるもの。失敗した自分に会いに来る人などいるわけがない。しかし、パーティー当日、増田さんは目を疑った。100名もの仕事仲間が次々と駆け付けて増田さんを励ました。大きな失敗をしても集まってくれる人がいる。もう一度挑戦してみよう。増田さんは次々と新事業を立ち上げ始めた。中には赤字で失敗したビジネスもある。それでも新たな企画を立てることにこだわり続けた。

『革新は、失敗からしか生まれない』

「俺は失敗した。だけどそこで学びがあって、かつそれ以降に努力して、いろんなトライアルもして、成長するためには失敗しなきゃいけないし、僕が今日あるのは失敗したからだし、成長していくっていうのは、“失敗の許容”。失敗を許容できるように経営することが成長戦略かな」

情報楽園会社

■ 大手レンタルチェーン社長 前代未聞の百貨店 舞台裏

勝負をかけたビッグプロジェクトが佳境を迎えていた。大阪の郊外に、地上8階建て、5000坪の百貨店を新たに作る計画だ。今、モノが売れない時代に、百貨店業界は苦境にあえいでいる。実際に、増田が百貨店をオープンする駅でもこの10年に2つの百貨店が閉店した。しかし、だからこそ常識を覆す百貨店を成功させられれば、そのインパクトは計り知れないものになる。

「モノを売るんじゃなくて、もっと世の中を楽しくする、新しい百貨店のありようってあるんじゃないのって考えているのよ。やらないと答え見えない。そんなん、やる前から分からへんやん。やった人だけが分かるのよ」

逆境だからこそ飛び込む。増田らしい挑戦が始まった。企画を任された久保田さんが提案したのは、「食」にこだわる百貨店。従来の百貨店はデパ地下以外は服飾が中心だが、思い切り振りきってはどうかという。だが増田は手厳しい。

「コンセプトの整理ができてないから。にぎわいって結果起きるもんだから、にぎわい感だそうとか売り上げあげようとかそんなの意味ねえぜ。なんの言葉の意味も」

一見新しそうに見えるが、言葉だけの企画になっていて、具体的ではないと指摘した。

「5000坪の建物をどう構成して、お客にどんな気分になってもらうのか。全体像を説明せえって言ったって、1階どう説明すんねん。どんな1階なん。俺たちはこういうことしたいんだって、スキってしなきゃだめなのよ。まず、そこを徹底して議論しないと、コンセプトを」

10日後、久保田は現場で百貨店の全体像を探り直していた。久保田には施設をゼロから企画した経験が無い。既存の店を改革した経験を武器に企画の仕事をしたいと希望してきた。増田はその熱意を買って抜擢。自由な発想で挑み、企画屋として育ってほしいと考えていた。

「だめだ、だめだ、だけど、でかい物件だしどうしようって思ってんじゃない、今は。そんなね、追い込まれて出会うような事柄なんか知れているよ。やっぱり、自分がよしって思わないと。責任感だけでそんなプロジェクトやっちゃだめ。やっぱり自分の夢とか、自分の人生とか、全部の集合体でなかったら」

3日後、久保田が新たなコンセプトを出してきた。

(久保田さん)
「3階にブック&カフェの(百貨店の)顔を作り、4階にちょっと人が多くなって、にぎやかなのが嫌やわというプレミアの方たちの居場所を作り、ゆっくりとした空間に上がっていく」

提案したのは、家族がそれぞれ楽しめる百貨店。単にモノを売るのではなく、家族の絆を育む場にしたいという。各階のイメージも具体的に練ってきた。増田にも具体的なイメージが湧いてきた。百貨店全体を家に見立て、1階から5階まで、それぞれの時間を過ごせる仕掛けを作る。しかし、問題があった。年配の女性をターゲットにした4階だ。旅行にでかけることを想定したしかけだが、増田は旅行は非日常だから、ちょっと具体的なイメージが湧かないという。4階のテーマである「旅行」は家の外にあるイベント。他の階が家の中で過ごすというコンセプトで統一されている中、そこだけが浮いている。

場所を埋めることだけを優先し、客の目線を忘れていると、増田は見た。久保田たちはもう一度4階のコンセプトを練り直すことになった。

「闘うのよ、企画マンとして。マーケティングしたらこうじゃねえかと。お前の見方はどうなっているんだ。そうすると、久保田はへなちょこだから負けるわけさ。だから、あいつは負けて悔しい思いをしているよ。だけど、また闘ってくるのよ」

『心に、“火”をつける』

久保田たちは必死にもがいていた。4階の売り場は600坪。その広大な売り場で年配の女性客に何を提案するのか? 

増田自身も何が正しいコンセプトなのか、答えを持っているわけではない。経営者となって30年。自分の思いを付き通し、これまで幾度となく失敗を繰り返してきた。伝えたい思いがある。

「自分の失敗」だけが、「自分の力」になる

「「あれやれ」、「これやれ」って言われて、やった失敗っていうのは、何の反省にもならない。だけど、好きなことで、あるいは、やりたいことの道に行ったときにする失敗というのは、その人に反省をもたらすのね。僕がわーわー言って、いい店を作るんじゃなくて、彼らが気づいて、彼らがイメージして作っていく店でなかったら、オープン後、もっとよくなれない」

決断の日。久保田がプランを話し始めた。企画内容を詰め切れていない、久保田はまだ迷いの中にいた。増田に答えを求めてきた。オープンまで1年を切り、もう時間が無い。手を差し伸べるか、まだ任せるか? 増田は4階には何も入れず、開けておけ、という。大胆な決断だった。

「だから、めっちゃ覚悟持つということやで。これ4階をやめるということは、他のフロアを完璧にせい、いうことやからな。裏返せば。全部ゆるくやったらあかんぞ。もっとお前、こんなレベルで持ってくんなよ。もっとがばっと密度の濃い1ミリ単位の話をしてくれよ」

「できないことをしようとしているんだから、できるわけないじゃん。できないことをやっていくのよ。いろいろ模索して。もっといいアイデア途中で出てくるよ、きっと」

「うちの連中は、みんな本番に強いから。こういう会議は下手くそだけど、動き始めて、物が見えてくると、みんな元気出るから」

オープンまでには4階の中身も間に合わせてくる。増田はそう確信していた。

TSUTAYAの謎

プロフェッショナルとは?

「人を一番幸せにできる人。
 人生を一番豊かにできる人。
 大変?違う、楽しいよ。大変だけど、楽しい。
 だって人が喜ぶから」

——————
番組ホームページはこちら
http://www.nhk.or.jp/professional/2015/1019/index.html

CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社のホームページはこちら
http://www.ccc.co.jp/

→再放送 10月24日(土)午前0時55分~午前1時43分(金曜深夜)総合




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常識の外に、未来はある 起業家・増田宗昭 2015年10月19日 NHK プロフェッショナル 仕事の流儀http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-e1428166267398.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-150x150.jpg小林 友昭TV番組レビュープロフェッショナル,CCC,増田宗昭,カルチュア・コンビニエンス・クラブ■ 大手レンタルチェーンから小売業の革命まで 型破りな社長 『破壊者か 創造者か』 噂通りの型破りな男だった。裸一貫から叩き上げ。年商2000億円の企業を率いる社長だ。常識を覆すビジネスは常に世間からの注目を集める。32年前に立ち上げた日本最大のレンタルチェーン。2年前から運営する公立図書館。本の分類方法を一新し、カフェを併設するなど、大胆な改革で来館者を3倍に増やした。 佐賀県武雄市図書館 (https://www.epochal.city.takeo.lg.jp/winj/opac/top.do) 一方で本の選び方や運営の仕方に批判が上がり、議論を呼んでいる。 「みんなが理解できないけど、世の中こう変わっていくということを信じて、やるしかないのよ。で、成功確率はめちゃくちゃ低い。」 (番組公式ホームページより) 新ビジネスを次々と生み出す起業家。会員数5500万人のポイントカード。常識破りの書店。その企画力はレンタルチェーンの枠を大きく超える。 「世界一を目指しているんだから」64歳、攻める気持ちは全く衰えない。 「チャレンジだよ、未来が無い、だったらやろうというのが企画会社魂よ」 モノもサービスもあふれる時代。増田の経営手腕に名うての経営者も舌を巻く。 「今までの人が思ってもできなかったようなことを実行する力もあるし、特異な才能があるんだろうなと」 (楽天 三木谷浩史) 失敗のリスクが高い所にあえて飛び込むのはなぜか? 先の見えない未来を生き抜くヒントがここにある。 増田の会社があるのは東京・渋谷。朝9時、Tシャツにジーパン姿で現れた。ラフないでたちには理由があるという。 「みんながスーツ着ているから、スーツ着ておけば安心みたいな人多いじゃん。だけど本質的かといったら、そうじゃねえじゃん。お客の気分になるってことが大事なのよ。だからお客の格好よ、これは。」 自らの会社をレンタル会社ではなく、企画会社だという増田。この日も新たな企画のタネを社員にぶつけた。 「マイナンバ―が来年始まるやろ、マイナンバ―への対応なんかどうしているの? だって世の中変わるんだぜ。それを使ってこういうふうにやったろう、ああいうふうにやったろうって、みんな動いているわけよ」 増田が言う企画とは、これまで世の中になかったビジネスを生み出すこと。いま抱える20を超えるプロジェクトは全て時代を先読みして始めた新事業だ。例えば、増田がいち早く始めたポイントカード事業。単なるレンタル店のポイントカードを大きなビジネスへと変貌させた。カードをコンビニや店舗で提示すると、客はポイントがもらえる。同時に購買データを収集。それを年代や性別、売れるものの傾向などに分析し販売することで、相手先はマーケティングに生かす仕組みだ。現在、100以上にのぼる提携先企業を増やす戦略を練っている。 独自の企画を次々と生み出す増田。ひとつの信念がある。 『過去の延長線上に、未来はない』 「(かつての経営は)同じものをとにかく速く、たくさん作るのよ。それが競争戦略だったし成長だったのよ。だけど、その延長に未来はないのよ。過去の延長線上に未来はないの。新しい未来のためにプラットフォームを作るのが企画会社だし、それをしないと生き残れない」 今、増田が取り組んでいるのは、低迷する小売業を変える新たなビジネスモデルの開発だ。4年間に作った書店を中心とした複合施設。 「来るってことに価値のある空間を作りたい。」 既存の書店のように、品ぞろえだけで勝負しては、ネット書店に勝てないと考えた増田。コーヒーを飲みながら商品を自由に何時間でも読むことができるなど、ネットとは対極のゆったりとした居心地を追求した。これまでにない雰囲気が評判を呼び、売上は右肩上がりに伸びている。 しかし、課題になっている売場があった。2階にあるCDレンタルや販売を行う音楽フロア。オープンから4年、売上が2割弱落ちていた。 「ひと言で言うと、まだお客さんに支持されていない。一回来た人が何回も来るような、まだ売り場にはなっていない。ジャンルウェイトって教えてくれない?」 増田はまず、どういうジャンルが売れているのか分析を始めた。ロック、ジャズで半数を占めている。他の系列店で人気の日本のポップスが落ち込んでいる。 「今から売り場行こうや、それでどうなってんねんって、案内してみいや、そこなんだよ」 突然、売り場に向かった。客からどう見えるか、感じたことをどんどん伝える。 「売り場が全てなんだよ。考え方が後ろにあってもそんなの関係ないんだよ。お客はみんな売場だけやから、売り場に全部出ていなきゃダメなんだよ。その気(買う気)にならない、分からんし。お客さんの声なき声はそういうことやねんで。」 『客の声を、自分の中に聞く』 「外をキョロキョロして、世の中どうなってんだろう、どんなふうに向かうんだろうって、みんな外に答え探すけど、逆に目を閉じて、自分は何がしたいんだろう、どうなったら幸せなんだろう、今何したいんだろう。自分っていうことの中から答えが湧き出るような自分でありたい。だから、あんまり社長業にも埋もれたくないし、できるだけ一生活者として、自分の感覚がいつも世の中とシンクロしているように生きなきゃいけないと思っている」 時代の心を掴むには、自分自身の心が問われる。それが、企画を生み出す者の宿命だと考えている。 知的資本論 すべての企業がデザイナー集団になる未来 ■ プロフェッショナルの発想 一人の生活者としての感性を保つために、増田さんは努力を怠らない。その一つがランニング。休みの度に走りながら町を眺める。この日は2キロほど走って銀座にやってきた。 「こうやって歩いている時に、おばちゃんの気持ちになって、子持ちの気持ちになって、じじいの、じじい言うたらあかんのか、プレミアエイジの気持ちになって、ワープするのよ」 あらゆる世代の目線になって、課題が無いか探る。 「たとえばカフェが無いじゃん、全然、パリみたいに。だから、ここで買い物をしたら疲れちゃうわけよ。座るとこ無いから。」 そして企画を形にするために使うのは、画用紙と鉛筆。スケッチ用の特殊なペンを使うことで、頭の中を自在に表現できるという。 「見たことも経験したこともないことに対して、「いいね」って言ってもらえるようにするにはどうしたらいいのか、常に考えているのね」 代官山 オトナTSUTAYA計画 この日、増田は大事な会議に出席するため、ある店舗を訪ねた。今年5月にオープンした家電店。他の量販店が次々と閉店する中でオープンさせ、業界を驚かせた。商品の脇に関連書籍を置いたり、料理勉強会を開いたりと、ただ売るのではなく、ライフスタイルを提案するという店舗だ。更に、店の中には家電製品と相性の良い、食や美に関するテナントを誘致した。 この日はテナントのオーナーとの初めての会議。オープンから1ヶ月、客の数は多いが、売上は目標に達していなかった。 (とあるテナントオーナー) 「来られる方の絶対数のボリュームが爆発してしまっているので、数の狂いが全てのその後の狂いにつながっていて、十分まだ狙いのところにはたどり着けていないなと」 テナントからは増田の会社が運営する家電売り場にも疑問の声が出た。 「コーヒーメーカーの脇にミキサーが並んでいて、僕はどっちがどっちか分からないんですね。とりあえず(買うのを)また後にしようという感じになっちゃったので、そんなような人がいっぱいいるのかなって気がします」 これまでにない売り場に、客が戸惑っているのではないかという。テナントが不安を抱えたままでは店舗は決して成功しない。 増田が口を開いた。 「戦術的にやらなきゃいけないことはまだまだ、やること山ほどあるんですけど、まだまだ全然できていない、という意味で、10点というのが家電部分の僕の評価です」 力不足であることを正直に認めた。 「もうちょっと本音ベースでお話ししておくと、レンタル店はお客さんが勝手に選ぶからセルフなんですよ。かつ、お店のインフラを全部ITで作ったんですね。発注も本部がしますし、(家電の)在庫管理したことがない。その人らに家電を売れ言うても、それは無理なんですよ。無理というのを前提にやっているので、まあ、10点というのはよくやっているなと。是非、在庫管理を教えてやってください」 増田は新たな事業を始める時、成功するとは見込まない。失敗を前提に事業計画を立てる。 『革新は、失敗からしか生まれない』 「普通の人はみんな成功すると思ってやるの。だけど俺は失敗すると思ってやる。だからいつも事業計画書は売り上げゼロって書くの。どこまで誠意をこめて一生懸命寝ずにやっても、失敗する事があるわけさ。もう失敗だらけだからよ、俺らがやることって。だから価値があるのよ、だから事業になるのよ。誰でもできる仕事は事業にはならない。みんなやるから」 1週間後、増田は早速、売り場の改革に着手した。失敗を恐れず、挑み続けた者だけが生き残れる。それが今の時代だと増田は考えている。 はじめて語られる企画の「虎の巻」 ■ あかんたれの逆襲 大手レンタルチェーン社長 いじめ、負債、波瀾万丈の人生 子供の頃はつらい記憶しかない。交通事故で顔に跡が残り、いじめの標的になった。 「いじめられっ子の毎日ってすごい屈辱じゃない。怖いし、ものすごい怖かったよ。自分が壊されるみたいな。そういう、毎日恐怖におびえるみたいな」 更に、小学校の時、父親が事業に失敗する。そんな中で母親は自分の着る物や病院代まで我慢して、息子に不自由をさせまいとしてくれた。お金を稼いで恩返しがしたい。そう思うようになった。まず弱い自分を変えなければと、高校でレスリング部に入部。つらい練習に耐えているうちに、いじめられなくなった。 「いじめっ子をこう(上に)見ていたのが、ある日、出会った時に、上から見ている自分に気が付いた。で、向こうも言わなくなったの。自分の意志で自分が置かれる環境って変えられるだって気づいた」 自信をつけた増田さんは、サラリーマンとして婦人服の会社(鈴屋)に入社。そして32歳の時、会社を辞めて、レンタル店を立ち上げた。繰り出す策が次々と当り、10年後には600店舗を持つまでに急成長。裸一貫から一大チェーンを築き上げた増田さんは、時代の寵児ともてはやされるようになった。しかし、転落の時は突然訪れた。増田さんはアメリカで始まった多チャンネルの衛星放送を日本に導入。200億円を出資し、社長(ディレクTV)となった。この挑戦は必ず成功させなければならないと意気込んでいた。だが、加入者が伸び悩み、事業は低迷。2年後、業績不振を理由に社長を解任された。財産と信用を同時に失った。 「俺ひょっとして、負けるんじゃねえって思った瞬間、髪の毛がぶわーって抜け出したの。耳が聞こえなくなったり、飯食っていても匂いがしなかったりっていうくらいストレス。できないことをやるんだって、やれるようになるっていう、そういう価値観でやっていたから。だから、ある種、自分の価値観は崩壊した」 初めての大きな失敗。さらに追い打ちが来た。後発の企業に追い上げられ、レンタル事業が伸び悩む。そんなある日。友人から増田さんにある提案があった。これまでの仕事仲間を集めて復活のパーティーを開いてはどうか? 増田さんは乗り気じゃなかった。成功している所に人は集まるもの。失敗した自分に会いに来る人などいるわけがない。しかし、パーティー当日、増田さんは目を疑った。100名もの仕事仲間が次々と駆け付けて増田さんを励ました。大きな失敗をしても集まってくれる人がいる。もう一度挑戦してみよう。増田さんは次々と新事業を立ち上げ始めた。中には赤字で失敗したビジネスもある。それでも新たな企画を立てることにこだわり続けた。 『革新は、失敗からしか生まれない』 「俺は失敗した。だけどそこで学びがあって、かつそれ以降に努力して、いろんなトライアルもして、成長するためには失敗しなきゃいけないし、僕が今日あるのは失敗したからだし、成長していくっていうのは、“失敗の許容”。失敗を許容できるように経営することが成長戦略かな」 情報楽園会社 ■ 大手レンタルチェーン社長 前代未聞の百貨店 舞台裏 勝負をかけたビッグプロジェクトが佳境を迎えていた。大阪の郊外に、地上8階建て、5000坪の百貨店を新たに作る計画だ。今、モノが売れない時代に、百貨店業界は苦境にあえいでいる。実際に、増田が百貨店をオープンする駅でもこの10年に2つの百貨店が閉店した。しかし、だからこそ常識を覆す百貨店を成功させられれば、そのインパクトは計り知れないものになる。 「モノを売るんじゃなくて、もっと世の中を楽しくする、新しい百貨店のありようってあるんじゃないのって考えているのよ。やらないと答え見えない。そんなん、やる前から分からへんやん。やった人だけが分かるのよ」 逆境だからこそ飛び込む。増田らしい挑戦が始まった。企画を任された久保田さんが提案したのは、「食」にこだわる百貨店。従来の百貨店はデパ地下以外は服飾が中心だが、思い切り振りきってはどうかという。だが増田は手厳しい。 「コンセプトの整理ができてないから。にぎわいって結果起きるもんだから、にぎわい感だそうとか売り上げあげようとかそんなの意味ねえぜ。なんの言葉の意味も」 一見新しそうに見えるが、言葉だけの企画になっていて、具体的ではないと指摘した。 「5000坪の建物をどう構成して、お客にどんな気分になってもらうのか。全体像を説明せえって言ったって、1階どう説明すんねん。どんな1階なん。俺たちはこういうことしたいんだって、スキってしなきゃだめなのよ。まず、そこを徹底して議論しないと、コンセプトを」 10日後、久保田は現場で百貨店の全体像を探り直していた。久保田には施設をゼロから企画した経験が無い。既存の店を改革した経験を武器に企画の仕事をしたいと希望してきた。増田はその熱意を買って抜擢。自由な発想で挑み、企画屋として育ってほしいと考えていた。 「だめだ、だめだ、だけど、でかい物件だしどうしようって思ってんじゃない、今は。そんなね、追い込まれて出会うような事柄なんか知れているよ。やっぱり、自分がよしって思わないと。責任感だけでそんなプロジェクトやっちゃだめ。やっぱり自分の夢とか、自分の人生とか、全部の集合体でなかったら」 3日後、久保田が新たなコンセプトを出してきた。 (久保田さん) 「3階にブック&カフェの(百貨店の)顔を作り、4階にちょっと人が多くなって、にぎやかなのが嫌やわというプレミアの方たちの居場所を作り、ゆっくりとした空間に上がっていく」 提案したのは、家族がそれぞれ楽しめる百貨店。単にモノを売るのではなく、家族の絆を育む場にしたいという。各階のイメージも具体的に練ってきた。増田にも具体的なイメージが湧いてきた。百貨店全体を家に見立て、1階から5階まで、それぞれの時間を過ごせる仕掛けを作る。しかし、問題があった。年配の女性をターゲットにした4階だ。旅行にでかけることを想定したしかけだが、増田は旅行は非日常だから、ちょっと具体的なイメージが湧かないという。4階のテーマである「旅行」は家の外にあるイベント。他の階が家の中で過ごすというコンセプトで統一されている中、そこだけが浮いている。 場所を埋めることだけを優先し、客の目線を忘れていると、増田は見た。久保田たちはもう一度4階のコンセプトを練り直すことになった。 「闘うのよ、企画マンとして。マーケティングしたらこうじゃねえかと。お前の見方はどうなっているんだ。そうすると、久保田はへなちょこだから負けるわけさ。だから、あいつは負けて悔しい思いをしているよ。だけど、また闘ってくるのよ」 『心に、“火”をつける』 久保田たちは必死にもがいていた。4階の売り場は600坪。その広大な売り場で年配の女性客に何を提案するのか?  増田自身も何が正しいコンセプトなのか、答えを持っているわけではない。経営者となって30年。自分の思いを付き通し、これまで幾度となく失敗を繰り返してきた。伝えたい思いがある。 「自分の失敗」だけが、「自分の力」になる 「「あれやれ」、「これやれ」って言われて、やった失敗っていうのは、何の反省にもならない。だけど、好きなことで、あるいは、やりたいことの道に行ったときにする失敗というのは、その人に反省をもたらすのね。僕がわーわー言って、いい店を作るんじゃなくて、彼らが気づいて、彼らがイメージして作っていく店でなかったら、オープン後、もっとよくなれない」 決断の日。久保田がプランを話し始めた。企画内容を詰め切れていない、久保田はまだ迷いの中にいた。増田に答えを求めてきた。オープンまで1年を切り、もう時間が無い。手を差し伸べるか、まだ任せるか? 増田は4階には何も入れず、開けておけ、という。大胆な決断だった。 「だから、めっちゃ覚悟持つということやで。これ4階をやめるということは、他のフロアを完璧にせい、いうことやからな。裏返せば。全部ゆるくやったらあかんぞ。もっとお前、こんなレベルで持ってくんなよ。もっとがばっと密度の濃い1ミリ単位の話をしてくれよ」 「できないことをしようとしているんだから、できるわけないじゃん。できないことをやっていくのよ。いろいろ模索して。もっといいアイデア途中で出てくるよ、きっと」 「うちの連中は、みんな本番に強いから。こういう会議は下手くそだけど、動き始めて、物が見えてくると、みんな元気出るから」 オープンまでには4階の中身も間に合わせてくる。増田はそう確信していた。 TSUTAYAの謎 プロフェッショナルとは? 「人を一番幸せにできる人。  人生を一番豊かにできる人。  大変?違う、楽しいよ。大変だけど、楽しい。  だって人が喜ぶから」 —————— 番組ホームページはこちら (http://www.nhk.or.jp/professional/2015/1019/index.html) CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社のホームページはこちら (http://www.ccc.co.jp/) →再放送 10月24日(土)午前0時55分~午前1時43分(金曜深夜)総合現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します