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■ 主題歌『Progress』から10年 スガシカオSP!

コンサルタントのつぶやき

『10年前、歌が生まれた』

格闘するプロたちのために作られた歌がある。番組主題歌『Progress』。
この曲を世に送り出したのはシンガーソングライター、スガシカオ。その独特な言葉の世界は、作家村上春樹をも唸らせる。

20151102_スガシカオ_プロフェッショナル

番組公式ホームページより

「かなり特徴的な文体である。微妙なごつごつさや、細かいツノの立ち具合、エラの張り具合が、なんといってもこの人の歌詞の持ち味なのだ。」

心動かす歌はこうして生まれる。その瞬間に密着!

この夏、スガは6年ぶりとなるアルバムの制作にとりかかっていた。普段は気さくなスガだが、創作の現場はほとんど見せたことが無いという。

「もう一度こういう感じの(歌)を作れと言われても、二度と作れないので、いつ全部作れなくなるか分からないですよ。一つ歯車が間違えば、全く何もできなくなっちゃう気がずっとしている。」

都内になる仕事場。ここに一人で籠り、歌を生み出す。スガは歌詞を作る前にまずパソコンで曲を設計する。

「例えば、一番最初になんとなくリズムを作るんですよ。そしたらもうこれを聞いた瞬間に、タータータータラッ、とか、パッと聞こえてくるんですよね。それをただ形にするだけで、こういう感じになるんですね(TVからはパソコンで作曲した一節が流れる)。(曲が)もう全部出来上がって、じゃあ歌詞書こうかなっていう感じですね。いつも。」

スガの最大の持ち味は歌詞にある。

「これは歌詞ノートですね、歌詞作るノート。これはすごい古いやつです。デビューの頃から使っている。」

そのほとんどは実体験に基づくものだ。「夜空ノムコウ」は、

「(浪人時代)予備校に通っていた時の御茶ノ水のちっちゃい公園が舞台で、つき合っていた彼女と、お金もないし成績悪いし、ずっといろんなお話をしていたときのことが書かれているんです。現在のことを“あのころの未来”っていう表現をしたのがこれが最初なんです。それが書けたからこの曲はできてきたんで、なんかリアリティーのないものって全然伝わらないから、リアリティーのあるものを作ろうと思うと、そういう原風景が歌詞の元になったりとかするんじゃないかなと思うけど。」

リアリティーのある言葉が生み出す世界観は、一流のプロたちの心をも揺さぶっている。日本を代表するロックバンド、Mr. Children の桜井和寿もそのひとりだ。

(桜井)
「誰しもの心の中に、自分が汚れている部分っていう醜い部分を多かれ少なかれ持っていて、できれば隠したいと思っている部分なのかもしれないけど、それをスガさんが吐き出しているのか、隠したいけど出ちゃうのかは分からないけど、取り入れたい要素というか、あんなふうにあんな音楽も、俺が出来たらいいなって思うし。」

名曲「川の流れのように」などの作詞を手掛ける秋元康は、こう評する。

(秋元)
「スガシカオというのは、やっぱりすばらしい詩人だなと。訳知り顔で全てを伝えているんではなくて、スガシカオがぽつんぽつんと語った言葉の隙間に彼の思いがあって、彼の温度があって、それを聞く人たちが、あとは自分で考えるっていう。聞いた人が自分の考えと照らし合わせて完成するんですよね。だからこそ響くんだと思うんですよね。」

(スガ)
「正直になれないと気がすまないっていうかね、自分がきれいで正しいっていう立場からものを言っても、なんかあんまり伝わんないような気がするんですよね。「お前らダメだろ」みたいな言い方では何も伝わらないから。」

Progress

■ 10周年SP!スガシカオ 歌を生み出す現場に密着

歌詞作りは新しいアルバムでも順調に進んでいた。今回もスガの歌詞は際立っていた。スガが悩んでいたのは「USB」という仮タイトルの曲。アルバムの柱になる大切な曲だというが歌詞が書けないのだという。一つの理由があった。

(スガ)
「一緒に曲を作ったりしたミュージシャン友達がいるんだけど、一番仲いいやつががんになっちゃったんですよね。これからそういうね、病気と闘っていく人にさあ、なんて言って言葉をかけたらいいのか、分かんないし、、、」

行き詰っている曲は、末期がんと闘っている友人に捧げる歌だった。

(スガ)
「悲しいさみしいみたいなだけの詞じゃさ、書いたってしょうがないじゃない、そんなの。本人のがよっぽどね、つらいしさ。そこから何か未来に通じるものが言葉が書けないとダメだよね」

10日後、問題の曲にとりかかった。友人との思い出を書き出したメモを元に歌詞を作っていく。その時、スガから要望が出た。

(スガ)
「人がいると、いい格好しいの歌詞になっちゃうって言うか」

固定カメラだけにして一人きりで作詞を行う。1行ずつマイクに吹き込んでいく。スガの手が止まった。言葉が出てこない。

(スガ)
「なんか思った通りにいかないっすよね。あのとき(友人と会った後)気持ちをワーッと書いたんだけど、そのまま書き写しても全然感動もしないし、何これ、みたいな。」

ただ、気持ちを言葉にするだけでは、人の心を動かす歌にはならない。

『“自分”と“世界”をつなぐ』

作詞という仕事はともすれば、自己満足に陥りやすい。スガは時間が空くと、必ずツイッターを覗き、ひとりひとりのつぶやきに耳を傾ける。そこから、時代の空気を自分の中に取り込んでいく。

(スガ)
「なんかその時代感が出なくなっちゃったらもう終わりだと思うんですよね。普通に書いていれば、勝手に時代感とか世の中の空気が反映されないとダメなんでね。ツイッターもそうですけど、そういう生活をしていると、必然的にどんどんどんどん体の中に空気が入れ代わる感じがするんですね。」

SMILE

3日後。どうすれば伝わる歌詞になるのか。スガはこの日、あることを書くと決めていた。

『「弱さ」をさらけ出す』

闘病中の友人と会った時、何も言えなかった自分。その「弱さ」をさらけ出さなければと感じていた。

(スガ)
「(友人に)何が言えるかなって思って、いろいろ考えて言うんだけど、全部やっぱり空振りにしかなんなくて、で、自分で落ち込むんですよね、そういうことに対してね。そういうことも含めて、なんか歌詞の中に書かないといけないのかなって思ってはいる。」

歌詞作りは2週間に及んだ。「弱い自分」をどんな歌詞で表すか。何度も書き直す。ようやく歌詞は完成した。

(スガ)
「今、自分のダメなところの心の心情を、なんか「情けない」とか「惨め」とか、いろんな言葉が出て来るんだけど、全然どれもダメで、「ナメクジ色の心」っていうのにしたんですよ。ちょっと書き足りなくて、4番のC(サビ)まで歌うことにしました。「君に手を振るサヨナラじゃなくて、いつものような See you again」 どうしても最後締めたかったので、このフレーズが出てくる。」

最後は、「また会おう」という言葉で締めくくった。

BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-

 

BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002-

■ 主題歌『Progress』から10年 スガシカオ どん底を支えた言葉

『Progress』誕生の秘密。

(スガ)
「まず一歩から、まず今日の一歩からちゃんと踏み出していけば、それが10日たてば10歩になるしっていうアドバイスをよくしてたんですよ。だから、それが勝手に歌詞に出てきたんだと思います。

言葉って不思議なものだ。形はないのに、ずっと心に残り、自分を支え続けてくれる。スガさんの原点はサラリーマンだった28歳の時。亡き父親からもらった言葉。音楽で食べていきたいと伝えた時、こう言ってくれた。

「やれるだけやってみろ」
「何度だってやり直せばいい」

サラリーマンをやめると貯金はすぐに底をついた。白米に胃薬をかけて空腹をしのぎ、毎日歌を作り続けた。ようやくデビューできたのは30歳。異例の遅咲きだった。独特の詞の世界が注目を集め、瞬く間にスターダムへ駆け上った。そして10年前(2005年)、「負け組」「下流」という言葉が流行り、不安感が漂っていた時代。「あと一歩だけ前に進もう」というメッセージを世の中に投げかけた。でも、その後の人生は歌の通りに進まなかった。ヒットを出すにつれ、スガさんは自分のいる安定している場所に違和感を感じていた。もっと生々しい形で音楽を届けたく、大手レコード会社を辞めると決めた。その後、ライブの後、耳鳴りが止まらなくなった。突発性難聴。強いストレスが原因だった。

(スガ)
「壊れたラジオみたいな音しか聞こえてこなくなってきちゃって。夜も耳鳴りで眠れなくて、ヘッドフォンして寝るんですよね。ヘッドフォンして、ラジオのザーッていう音を流してないと、耳鳴りがうるさくて寝られないんですよね。こっちの悪い方の耳を塞いで、いい方の耳だけでライブをやると、じゃあ、いい方の耳が今度悪くなったとき、どうすんだよみたいな。恐怖感がもうやっている最中にものすごく来るんですよね。」

自分には音楽しかない。耳が聞こえなくなったら、この世の終わりだと思った。そんなある日、ライブの最中、自分が歌った言葉がなぜかひっかかった。

「あと一歩だけ前に進もう」

(スガ)
「歌詞は一番誰に向いているかって言ったら、一番自分に向いているですよね。だから、何度でもトライして絶対諦めちゃダメだよっていうメッセージは、自分の中でやっぱりすごく強くなってきましたよね。」

スガさんの中でこの歌の持つ意味が少しだけ変わった。言葉って不思議なものだ。その力を信じて歌う。

ALL SINGLES BEST

■ スガシカオが挑む 10年目のメッセージソング

『これからの10年へ』

スガは今、新たなメッセージソング作りに挑もうとしていた。この10年の間に社会は大きく変化した。

(スガ)
「「共生」っていうことでテーマで歌を書こうと思うと、“僕らは一人じゃない みんなで手をつないでこの厳しい世の中を生き抜いていくんだ”みたいな、いやいや、その歌詞はちょっと違うんじゃないかなみたいな、それは合っているんですよ。言っていることは合っているんですけど、正しいことを言うと、説得力がその分なくなっていくんですよね。「いや、そんなこと分かっているよ」ってみんな思うので。」

「共生」というテーマはともすればきれいごとになりかねない。

この日、スガはツイッターにある投稿をした。
「フォロワーのみんなは、自分が諦めた日が、夢のゴールだと思う??」

(スガ)
「夜中にちょっとこの歌詞の原案じゃないですけど、イメージみたいなのがパッと浮かんで。『Progress』ってなんかがむしゃらに追っかけてる。自分の夢に対して、あと一歩っていうふうにがむしゃらに進んでいる感じがして、その一歩進んだ先にゴールがどういう形であるだろうとかってことをちょっと思って。」

反響は大きかった。回答は1日で800にも上った。スガもかつて高校教師になることが夢だった。人の心に言葉を残したかったからだ。その夢は終わったのではなく、シンガーソングライターとしての道につながっている。また一人籠って歌詞を書き始めた。わずか1時間で書き上げた。

タイトルは、「夢のゴール」。

(スガ)
「夢って例えばパテシェだとかパイロットだとか、それはでも職業の名前であって、自分が生きていく道の名前じゃない。そしたら職業になれなかったところで夢は終わりってふうにやっぱりなっちゃう。でも夢ってそういうことじゃなくて、もっとどういうふうに生きていくかとかっていうことが、多分、本当の夢の正体だと思って。アーティストも誰かに言葉を伝えるっていう意味では教師と同じ。結局、そこをずっと求めて生きてきたから、職業じゃなく、そこを達成させるために、なんかこう自分の人生があるみたいなね。」

「自分のための自分であり続けるっていうのも一つ生きる道ではあると思うんだけど、でも、誰かのための自分になれた時っていうのはなんかすごいこう、その一つ先、二つ先にいけるんじゃないかなと思うんですよね。」

10年間、一歩ずつ進んできた。これからも前に進むための歌。

THE LAST (完全生産限定盤 CD 特典CD DVD グッズ)

——————
番組ホームページはこちら
http://www.nhk.or.jp/professional/2015/1102/index.html

スガ シカオ special website
http://www.jvcmusic.co.jp/sugashikao/

スガ シカオ オフィシャルブログ コノユビトマレ Powered by Ameba
(http://ameblo.jp/shikao-blog/)

→再放送 11月7日(土)午前0時55分~午前1時43分(金曜深夜)総合

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放送10周年スペシャル あと一歩だけ、前に進もう シンガーソングライター・スガシカオ 2015年11月2日 NHK プロフェッショナル 仕事の流儀http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-e1428166267398.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e41-150x150.jpg小林 友昭TV番組レビュースガシカオ,プロフェッショナル■ 主題歌『Progress』から10年 スガシカオSP! 『10年前、歌が生まれた』 格闘するプロたちのために作られた歌がある。番組主題歌『Progress』。 この曲を世に送り出したのはシンガーソングライター、スガシカオ。その独特な言葉の世界は、作家村上春樹をも唸らせる。 (番組公式ホームページより) 「かなり特徴的な文体である。微妙なごつごつさや、細かいツノの立ち具合、エラの張り具合が、なんといってもこの人の歌詞の持ち味なのだ。」 心動かす歌はこうして生まれる。その瞬間に密着! この夏、スガは6年ぶりとなるアルバムの制作にとりかかっていた。普段は気さくなスガだが、創作の現場はほとんど見せたことが無いという。 「もう一度こういう感じの(歌)を作れと言われても、二度と作れないので、いつ全部作れなくなるか分からないですよ。一つ歯車が間違えば、全く何もできなくなっちゃう気がずっとしている。」 都内になる仕事場。ここに一人で籠り、歌を生み出す。スガは歌詞を作る前にまずパソコンで曲を設計する。 「例えば、一番最初になんとなくリズムを作るんですよ。そしたらもうこれを聞いた瞬間に、タータータータラッ、とか、パッと聞こえてくるんですよね。それをただ形にするだけで、こういう感じになるんですね(TVからはパソコンで作曲した一節が流れる)。(曲が)もう全部出来上がって、じゃあ歌詞書こうかなっていう感じですね。いつも。」 スガの最大の持ち味は歌詞にある。 「これは歌詞ノートですね、歌詞作るノート。これはすごい古いやつです。デビューの頃から使っている。」 そのほとんどは実体験に基づくものだ。「夜空ノムコウ」は、 「(浪人時代)予備校に通っていた時の御茶ノ水のちっちゃい公園が舞台で、つき合っていた彼女と、お金もないし成績悪いし、ずっといろんなお話をしていたときのことが書かれているんです。現在のことを“あのころの未来”っていう表現をしたのがこれが最初なんです。それが書けたからこの曲はできてきたんで、なんかリアリティーのないものって全然伝わらないから、リアリティーのあるものを作ろうと思うと、そういう原風景が歌詞の元になったりとかするんじゃないかなと思うけど。」 リアリティーのある言葉が生み出す世界観は、一流のプロたちの心をも揺さぶっている。日本を代表するロックバンド、Mr. Children の桜井和寿もそのひとりだ。 (桜井) 「誰しもの心の中に、自分が汚れている部分っていう醜い部分を多かれ少なかれ持っていて、できれば隠したいと思っている部分なのかもしれないけど、それをスガさんが吐き出しているのか、隠したいけど出ちゃうのかは分からないけど、取り入れたい要素というか、あんなふうにあんな音楽も、俺が出来たらいいなって思うし。」 名曲「川の流れのように」などの作詞を手掛ける秋元康は、こう評する。 (秋元) 「スガシカオというのは、やっぱりすばらしい詩人だなと。訳知り顔で全てを伝えているんではなくて、スガシカオがぽつんぽつんと語った言葉の隙間に彼の思いがあって、彼の温度があって、それを聞く人たちが、あとは自分で考えるっていう。聞いた人が自分の考えと照らし合わせて完成するんですよね。だからこそ響くんだと思うんですよね。」 (スガ) 「正直になれないと気がすまないっていうかね、自分がきれいで正しいっていう立場からものを言っても、なんかあんまり伝わんないような気がするんですよね。「お前らダメだろ」みたいな言い方では何も伝わらないから。」 Progress ■ 10周年SP!スガシカオ 歌を生み出す現場に密着 歌詞作りは新しいアルバムでも順調に進んでいた。今回もスガの歌詞は際立っていた。スガが悩んでいたのは「USB」という仮タイトルの曲。アルバムの柱になる大切な曲だというが歌詞が書けないのだという。一つの理由があった。 (スガ) 「一緒に曲を作ったりしたミュージシャン友達がいるんだけど、一番仲いいやつががんになっちゃったんですよね。これからそういうね、病気と闘っていく人にさあ、なんて言って言葉をかけたらいいのか、分かんないし、、、」 行き詰っている曲は、末期がんと闘っている友人に捧げる歌だった。 (スガ) 「悲しいさみしいみたいなだけの詞じゃさ、書いたってしょうがないじゃない、そんなの。本人のがよっぽどね、つらいしさ。そこから何か未来に通じるものが言葉が書けないとダメだよね」 10日後、問題の曲にとりかかった。友人との思い出を書き出したメモを元に歌詞を作っていく。その時、スガから要望が出た。 (スガ) 「人がいると、いい格好しいの歌詞になっちゃうって言うか」 固定カメラだけにして一人きりで作詞を行う。1行ずつマイクに吹き込んでいく。スガの手が止まった。言葉が出てこない。 (スガ) 「なんか思った通りにいかないっすよね。あのとき(友人と会った後)気持ちをワーッと書いたんだけど、そのまま書き写しても全然感動もしないし、何これ、みたいな。」 ただ、気持ちを言葉にするだけでは、人の心を動かす歌にはならない。 『“自分”と“世界”をつなぐ』 作詞という仕事はともすれば、自己満足に陥りやすい。スガは時間が空くと、必ずツイッターを覗き、ひとりひとりのつぶやきに耳を傾ける。そこから、時代の空気を自分の中に取り込んでいく。 (スガ) 「なんかその時代感が出なくなっちゃったらもう終わりだと思うんですよね。普通に書いていれば、勝手に時代感とか世の中の空気が反映されないとダメなんでね。ツイッターもそうですけど、そういう生活をしていると、必然的にどんどんどんどん体の中に空気が入れ代わる感じがするんですね。」 SMILE 3日後。どうすれば伝わる歌詞になるのか。スガはこの日、あることを書くと決めていた。 『「弱さ」をさらけ出す』 闘病中の友人と会った時、何も言えなかった自分。その「弱さ」をさらけ出さなければと感じていた。 (スガ) 「(友人に)何が言えるかなって思って、いろいろ考えて言うんだけど、全部やっぱり空振りにしかなんなくて、で、自分で落ち込むんですよね、そういうことに対してね。そういうことも含めて、なんか歌詞の中に書かないといけないのかなって思ってはいる。」 歌詞作りは2週間に及んだ。「弱い自分」をどんな歌詞で表すか。何度も書き直す。ようやく歌詞は完成した。 (スガ) 「今、自分のダメなところの心の心情を、なんか「情けない」とか「惨め」とか、いろんな言葉が出て来るんだけど、全然どれもダメで、「ナメクジ色の心」っていうのにしたんですよ。ちょっと書き足りなくて、4番のC(サビ)まで歌うことにしました。「君に手を振るサヨナラじゃなくて、いつものような See you again」 どうしても最後締めたかったので、このフレーズが出てくる。」 最後は、「また会おう」という言葉で締めくくった。 BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-   BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002- ■ 主題歌『Progress』から10年 スガシカオ どん底を支えた言葉 『Progress』誕生の秘密。 (スガ) 「まず一歩から、まず今日の一歩からちゃんと踏み出していけば、それが10日たてば10歩になるしっていうアドバイスをよくしてたんですよ。だから、それが勝手に歌詞に出てきたんだと思います。 言葉って不思議なものだ。形はないのに、ずっと心に残り、自分を支え続けてくれる。スガさんの原点はサラリーマンだった28歳の時。亡き父親からもらった言葉。音楽で食べていきたいと伝えた時、こう言ってくれた。 「やれるだけやってみろ」 「何度だってやり直せばいい」 サラリーマンをやめると貯金はすぐに底をついた。白米に胃薬をかけて空腹をしのぎ、毎日歌を作り続けた。ようやくデビューできたのは30歳。異例の遅咲きだった。独特の詞の世界が注目を集め、瞬く間にスターダムへ駆け上った。そして10年前(2005年)、「負け組」「下流」という言葉が流行り、不安感が漂っていた時代。「あと一歩だけ前に進もう」というメッセージを世の中に投げかけた。でも、その後の人生は歌の通りに進まなかった。ヒットを出すにつれ、スガさんは自分のいる安定している場所に違和感を感じていた。もっと生々しい形で音楽を届けたく、大手レコード会社を辞めると決めた。その後、ライブの後、耳鳴りが止まらなくなった。突発性難聴。強いストレスが原因だった。 (スガ) 「壊れたラジオみたいな音しか聞こえてこなくなってきちゃって。夜も耳鳴りで眠れなくて、ヘッドフォンして寝るんですよね。ヘッドフォンして、ラジオのザーッていう音を流してないと、耳鳴りがうるさくて寝られないんですよね。こっちの悪い方の耳を塞いで、いい方の耳だけでライブをやると、じゃあ、いい方の耳が今度悪くなったとき、どうすんだよみたいな。恐怖感がもうやっている最中にものすごく来るんですよね。」 自分には音楽しかない。耳が聞こえなくなったら、この世の終わりだと思った。そんなある日、ライブの最中、自分が歌った言葉がなぜかひっかかった。 「あと一歩だけ前に進もう」 (スガ) 「歌詞は一番誰に向いているかって言ったら、一番自分に向いているですよね。だから、何度でもトライして絶対諦めちゃダメだよっていうメッセージは、自分の中でやっぱりすごく強くなってきましたよね。」 スガさんの中でこの歌の持つ意味が少しだけ変わった。言葉って不思議なものだ。その力を信じて歌う。 ALL SINGLES BEST ■ スガシカオが挑む 10年目のメッセージソング 『これからの10年へ』 スガは今、新たなメッセージソング作りに挑もうとしていた。この10年の間に社会は大きく変化した。 (スガ) 「「共生」っていうことでテーマで歌を書こうと思うと、“僕らは一人じゃない みんなで手をつないでこの厳しい世の中を生き抜いていくんだ”みたいな、いやいや、その歌詞はちょっと違うんじゃないかなみたいな、それは合っているんですよ。言っていることは合っているんですけど、正しいことを言うと、説得力がその分なくなっていくんですよね。「いや、そんなこと分かっているよ」ってみんな思うので。」 「共生」というテーマはともすればきれいごとになりかねない。 この日、スガはツイッターにある投稿をした。 「フォロワーのみんなは、自分が諦めた日が、夢のゴールだと思う??」 (スガ) 「夜中にちょっとこの歌詞の原案じゃないですけど、イメージみたいなのがパッと浮かんで。『Progress』ってなんかがむしゃらに追っかけてる。自分の夢に対して、あと一歩っていうふうにがむしゃらに進んでいる感じがして、その一歩進んだ先にゴールがどういう形であるだろうとかってことをちょっと思って。」 反響は大きかった。回答は1日で800にも上った。スガもかつて高校教師になることが夢だった。人の心に言葉を残したかったからだ。その夢は終わったのではなく、シンガーソングライターとしての道につながっている。また一人籠って歌詞を書き始めた。わずか1時間で書き上げた。 タイトルは、「夢のゴール」。 (スガ) 「夢って例えばパテシェだとかパイロットだとか、それはでも職業の名前であって、自分が生きていく道の名前じゃない。そしたら職業になれなかったところで夢は終わりってふうにやっぱりなっちゃう。でも夢ってそういうことじゃなくて、もっとどういうふうに生きていくかとかっていうことが、多分、本当の夢の正体だと思って。アーティストも誰かに言葉を伝えるっていう意味では教師と同じ。結局、そこをずっと求めて生きてきたから、職業じゃなく、そこを達成させるために、なんかこう自分の人生があるみたいなね。」 「自分のための自分であり続けるっていうのも一つ生きる道ではあると思うんだけど、でも、誰かのための自分になれた時っていうのはなんかすごいこう、その一つ先、二つ先にいけるんじゃないかなと思うんですよね。」 10年間、一歩ずつ進んできた。これからも前に進むための歌。 THE LAST (完全生産限定盤 CD 特典CD DVD グッズ) —————— 番組ホームページはこちら (http://www.nhk.or.jp/professional/2015/1102/index.html) スガ シカオ special website (http://www.jvcmusic.co.jp/sugashikao/) スガ シカオ オフィシャルブログ コノユビトマレ...現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します