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(人間発見)オオクシ社長 大串哲史さん カット店の未来図創る -データ重視経営と「心」を売るビジネスとは?

新聞記事・コラム
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■ データ重視経営で繁盛店を作る ヘアカット店チェーン「オオクシ」

コンサルタントのつぶやき

千葉県を中心に展開されているヘアカットのチェーン「オオクシ」社長の大串哲史さん。京セラ創業者の稲森和夫氏の薫陶を受け、どうやって13期連続2ケタ成長のチェーン店を作ったのか? その経営者魂が魅力あふれるものだったので、ここにご紹介します。BotCの良きケーススタディになるのではないかと思います。

株式会社オオクシ公式ホームページ

2016/2/26付 |日本経済新聞|夕刊 (人間発見)オオクシ社長 大串哲史さん カット店の未来図創る

「長蛇の列ができるヘアカット店チェーンがある。充実したサービスを1550円で提供することが受け、休日にはいつも人であふれる。千葉県を中心に39店舗を展開するオオクシ(千葉市)社長の大串哲史さん(47)は、13期連続2ケタ成長をけん引し、経済産業省などから経営賞を受賞した。出発点は父から引き継いだ小さな理容室だった。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、記事添付の大串さんの現場周りの様子の写真を転載)

20160226_店舗を回り、現場の問題を話し合う(千葉市稲毛区の本店)_日本経済新聞朝刊

大串さんは、29歳で父親から理髪店を引き継ぎましたが、当時は地元駅周辺は理美容室の激戦区。どうすれば客に振り向いてもらえる店づくりができるか大いに悩んだそうです。まず手始めに、学生時代にアルバイトをしていたコンビニのPOS(販売時点情報管理)システムに注目しました。当時の理髪店業界には、データ分析という概念が無かったそうです。システムを手作りして、繁盛店のデータ、顧客属性や担当者の対応情報などを蓄積していき、データ解析を始めました。

すると、意外な事実が判明します。(実はこんなに種類があるのかとビックリしましたが)126通りある髪形について、社員が得意だと思って手がけた髪形でも客が再来店しない、もしくは、社員がどの髪形を得意・不得意にしているのか、を徹底的に洗い出します。店員が不得意だと分かったものは、研修センターで腕を磨かせます。その結果、業界での再来店率:60%あれば上出来とされていたものが、オオクシでは15年前の72%から今や84%に上昇。

そのやり口が面白い。データから「できる社員」「繁盛店」を探し、現場に行って秘訣を見つけ出し、それを全店舗に横展開するの繰り返し。全てのチェーン店の再来店率を伸ばしていきます。データと現場重視。オーソドックスで新味がないかもしれませんが、こうした「カイゼン」が日本人の気質に合っているのではないかと思います。

さらにデータ重視経営の弱点にも気づかれています。

現状の再来店率84%で良しと割り切るのです。

「この辺がちょうどいいかなと思っています。実は、95%をたたき出す店もありますが、他の店でも実現するための「秘訣」が明確に分かりません。そうした状態で目標を高くして、社員が疲弊しては意味がありません。」

「経営者は数字を見て、「前年比で数字を上げろ」と言います。でも、そんなことをしたら、組織が傷んでしまう。楽器の弦を張りすぎても緩めすぎてもダメなように、経営の数字にも一番いい均衡点がある。それを探すのが、経営者の仕事だと思っています。」

経営の数字の均衡点を探し当てるのが経営者の仕事。いいセリフ、頂きました!

 

■ 2010年、中小企業IT経営力大賞を受賞。東日本大震災によって経営の転機が

3.11によって、千葉県にある店舗は液状化や停電の被害を受けましたが、中途採用のベテラン社員たちが、手の空いた社員を店舗間で融通し合って連携を取り、かえって会社の結束を強くすることにつながります。

「経営の師である、京セラ名誉会長の稲盛和夫さんは、「一番強い組織は石垣だ」と言います。いろいろな石が混じり合うと逆境に強い。うちは中途採用ばかりの「混成部隊」ですが、「チームのため」という思いが入ると、強烈なパワーを発揮します。私は閉店後の店に出向き、この理念を話し続けています。」

その結果、業界平均の離職率4割のところを3%台を叩きだすまでに至ります。

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」(by 武田信玄)

稲盛氏の薫陶があったことが強く経営に影響します。

「経営者として駆けだしの頃、京セラ創業者の稲盛和夫氏が開く盛和塾で「会社が大きくなっても通用する仕組みを、最初から作っておくことが必要」との助言を受ける。その一言が、データ分析に基づく経営の原点になった。2012年には盛和塾の世界大会で「世界一」(中規模・非製造部門)に輝いた。「他の立派な賞よりも、稲盛さんに認められたこの賞は格別です」」

(下記は、同記事添付の写真を転載:1989年、千葉県船橋市内の理容店での見習い時代 (左が本人))

20160226_1989年、千葉県船橋市内の理容店での見習い時代_日本経済新聞朝刊

いい師匠との出会いは人の人生をまったくそれまでとは別物に変えてしまいますよね。

 

■ 店でのチームワークは、そのまま客にも伝わる。目指すは、理美容業を超えた「究極のサービス業」

良くある店舗のアンケート。大串さんは年3万通近いアンケートのすべて目を通しています。

「カット店に求められていることが大きく変わってきました。以前は、不満や苦情が多く寄せられていましたが、ここ数年は「子供が小学校に入学しました」といった個人的な内容が急増しています。
 高齢者が増え、「病気で入院します」という方もいます。そんなときは「また元気になってください」と書き添え、割引券の有効期限を空白にして送ります。すると「必ず回復して店にうかがいます」と返ってくる。」

人と人の絆というか、関わりをもつことがBtoCには大事になってきていることを重ねて実感。そうか、「お・も・て・な・し」とか「ホスピタリティ」とか。

「会話を楽しみに来店してくれる。だから、研修の内容も変えました。鏡の前で、大きくうなずく練習をさせています。相手が話したくなるような雰囲気をつくるためです。
 店は日々の疲れを癒やす場所になっています。今の世の中で、他人に1時間も体を触られながら、会話をする場面はほとんどありません。だから、社員にはこう言っています。「カットが売り物じゃない。うちの商品は心だ」と。」

そうか、髪を切るという物理的なサービスの上に、「心」を売る。確かな技術があってこそ、次には顧客との信頼関係、リレーションシップそのものが商売の基本となる。筆者も、究極のサービス業のひとつ、コンサルティング・サービス業を営んでいます。この身、この口、この頭だけが売りモノなのです。私は、常々、若手コンサルに「無形人的サービスであるコンサルティング・サービスは、顧客への奉仕の心が無いとやってられない。クライアントのお困り事を「我が事」と思えないと、真剣に考えられない。そして本物の解決策は脳内に閃かないのだよ」と、偉そうに訓たれています。

大串さんの一言一言に大変感じ入り、大いに共感を得て、読後感が大変爽やかなものになりました!

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