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■ 有力IT企業連合と官主導のAI研究のどちらが勝利するのか?

経営管理会計トピック

本稿は、最近の日本経済新聞に掲載された記事から、AI研究の進め方の彼我の違いについて、その功罪を分析するものです。紋切型の「官がやるべきことと民がやるべきことの差別化論」を振りかざすことはしませんが、日米で対比的な報道のされ方について思うところがありまして。

まず、米IT有力企業の動向として第一報が入りました。

2016/9/29付 |日本経済新聞|夕刊 米有力5社、AI普及へ新団体設立 グーグル、アマゾン、フェイスブック、IBM、マイクロソフト

「【シリコンバレー=小川義也】グーグルを傘下に持つ米アルファベット、米アマゾン・ドット・コム、米フェイスブック、米IBM、米マイクロソフトの5社は28日、人工知能(AI)の普及・啓蒙に向けた新団体を設立すると発表した。AI技術の進歩が加速し、様々な製品やサービスに広がるなか、AIに関する人々の理解を深め、安全を確保するための共通の指針づくりに取り組む。
NPOとして設立する新団体の名称は「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ(Partnership on Artificial Intelligence to Benefit People and Society)」。AIの研究開発に取り組む他の企業や大学、シンクタンク、消費者団体など、幅広い関係者にも参加や連携を呼びかける。
創設メンバーの5社は資金や人材を拠出し、AIの活用にかかわる倫理やプライバシーの問題、安全性の確保など、AIが社会に受け入れられる上で欠かせない課題を解決するための共同研究に取り組む。研究成果は公開し、「ベストプラクティス(最良の慣行)」を共有することで普及を後押しする。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

海外の動向は時差の問題もあり、一旦夕刊で報道され、翌日の朝刊で改めて、というものが多いのですが、本件も同じ形式を取っています。

 

2016/9/30付 |日本経済新聞|朝刊 AI「暴走」懸念払拭へ グーグルなどIT5社が新団体 安全確保へルール作り

「グーグルを傘下に持つアルファベット、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、IBM、マイクロソフトの5社は28日、活動の中核となるNPO「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ」の設立を発表した。」

同記事では、いずれアップルも参加するよう協議中とあり、このNPOで取り上げられるテーマについても言及されています。

(下記は、同記事添付の「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ」の概要を引用)

20160930_人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ_日本経済新聞朝刊

そのねらいは、
① AIが社会に受け入れられるよう社会的な課題解決(雇用、プライバシー)
② AI開発に対する社会からの認知(開発・運用の透明性確保、AI技術の信頼性)
③ AI関連企業の安全性基準の底上げ(業界全体で品質向上に取り組み、AI市場を守る)
業界の結束を高め、各国政府におけるAI政策への発言力の強化
などが、想定されます。

記事によりますと、アップルの参加以外にも、
「同様のNPOでは、AIを「人類の潜在的脅威」と公言する起業家のイーロン・マスク氏ら有志が昨年設立した「オープンAI」がある。これらのNPOや大学、シンクタンクなど外部との連携をどこまで広げられるかも、新団体の成否を左右しそうだ。」
とあり、NPOや研究機関との連携の在り方に耳目が今後も集中しそうです。

 

■ 日本関連の最近のAI報道は、官主導のものが目立ちます

一方、日本においては、個別企業のAI研究推進の報道を除き、官主導のものが目立ちます。

2016/9/27付 |日本経済新聞|電子版 経産系と文科系 「AI研究所」は2つも必要か

「実用化で先行する米国をはじめ世界各国がしのぎを削る人工知能(AI)の開発競争。政府内では経済産業省、文部科学省、総務省が共同で戦略会議を立ち上げ、人材育成策などを検討している。一方、政府が資金を出す研究拠点は2つに分かれ、早くも縦割りの弊害を懸念する声が出始めている。」

(下記は、同記事添付の「産総研は2015年5月、東京・江東にAIセンターを立ち上げた」を引用)

20160927_人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ_日本経済新聞朝刊

記事によりますと、
まず、2015年5月に、経産省所管する産業技術総合研究所(産総研)が「人工知能研究センター」を設立。169人の研究者を含む348人の規模で、主に産業用ロボットや医療用の画像診断などを研究対象としています。

そこに文科省所管の理化学研究所(理研)が、「革新知能統合研究センター」を立ち上げ、トヨタ自動車やNECなど産官学から精鋭100人を集め、来年1月にも本格的な研究を始めるといいます。

それぞれの研究規模を予算額で対比すると、
「経産省は産総研AIセンターの設立・研究費用に約100億円を投じており、文科省も17年度予算の概算要求で、理研AIセンターの設立費用50億円を要求している」
という規模感になります。

では、研究内容に棲み分けがあるのか気になりますが、記事によりますと、
「「今ある技術を明日にも使えるようにするのが産総研、今はないが10年先に使える技術を開発するのが理研のそもそもの役割だ」。理研でAI分野を統括する杉山将AIセンター長は2つの出身母体の特徴を引き合いに出しながら、AI分野でのすみ分けができると強調する。」

・理研:技術の原理や開発の仕方など「基礎研究」
・産総研:企業が製品開発に転用できる技術を開発する「応用研究」

例)自動運転車に関する研究開発
・理研AIセンター:歩行者を認識する際の原理を研究
・産総研AIセンター:AI技術を自動車に組み込む可能性を探る

こう言われれば、民間企業でも、基礎研究をやる「中央研究所」と、応用研究をやる事業部直轄の製品開発部門の棲み分けをしていますが、経営管理・管理会計の目線からも、中央研究所の成果とコストを、企業業績にひもづけるのに苦労することが多く、基礎研究の生産性・効率にはよくよく目配せが必要です。

しかも、同記事で、
「もともと15年に産総研AIセンターを立ち上げる際、「産総研が理研に一緒にやらないかと声をかけたが、断られた」(経産省幹部)経緯がある。」
という一文があり、ただでさえ欧米に比べて周回遅れの感もある日本のAI研究はこれでいいのか、本当に不安になります。

 

■ どっこい、フォロー記事が掲載されて、何らかの圧力があったのか気になります

という報道が数日後、正反対のフォロー記事がありました。

2016/9/30付 |日本経済新聞|夕刊 あすから裁量権拡大の3機関、AI共同研究 理研・産総研・物材機構 海外人材招く

「10月1日から政府の優遇を受け幅広い裁量権を持つ特定国立研究開発法人になる理化学研究所、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構の3機関は、人工知能(AI)の共同研究に着手する。研究者の給与を柔軟に設定し国内外の優秀な研究者を集め、産業界などの協力を得てAIに学習させるデータを集積。新薬や新素材の開発に役立つAIの実現を目指す。」

今度は、物質・材料研究機構を含めて、3機関による共同研究が進められるという報道が。

共同研究以外にも配慮していますよ!というその内容は、記事によりますと、
① 3機関は他の国の研究開発法人と区別され、雇用や物品購入における自由度が拡大
② 海外や産業界から優秀な人材を獲得するため、理事長より高い報酬を払うことが可能

とりあえず言えることは、ディープラーニング技術をベースとした現在のAI研究では、とにかくデータを集めることが重要で、
・理研:医学系の実験と臨床のデータを集積
・物材機構:素材開発のデータを集積
・理研と産総研が連携:集積した膨大なデータを解析する手法を開発
という分担になります。

とはいえ、やっぱり、研究効率を考えるならば、一か所に統合できなかったのか、本当に残念な気持ちが無いわけでもありません。

 

■ 経済学や経営学的には、こういう研究ものはどう考えるべきか?

「民ができることは民で、官しかできないことは官へ」というのが大原則なのですが、それでも、官がやった方がいいケースというものがあります。

知的財産(情報財)については、
① 非競合性(誰かが利用することで、別の人の同時利用を妨げない)
非排除性(対価を支払わない者も利用できる)
という「公共財」の2要件を満たすため、そのまま民に任せると、「公共財」の供給水準が理想水準より低くなってしまうため、ある一定の強制力を持って(市場における自由競争メカニズムを無視して)、官が供給を担うことも是とされます。それが、公的な研究所がAI研究をする(国民の税金を投入する)大義名分となります。

筆者の見解は、公共財と同様にフリーライダーが生じたり、知識生産(研究開発)への投資が過少になる可能性が生じたりすることについては理解しますが、一方で市場メカニズムを無視する研究開発投資の回収可能性について大いに憂えるところでもあります。

フリーライダー問題については、情報財(デジタル財含む)については、逆に、「コピーレフト」や「クリエイティブ・コモンズ」的な姿勢で、積極的に2次利用を推進して、技術革新をブーストさせる方法の方が社会善が最大になると考えています。

過少投資問題については、投資回収計算の困難さから、民に任せるべきだと考えています。米国のDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)のように、予算は持つけれど、研究実態は民または会計収支を透明化した公的研究機関に任せる形式が良いと考えています。

お金の問題を考えない研究は、理想が立派で、一見大義名分が立っているようですが、ふたを開けてみるととんでもない経済的損失を生み出すリスクも大きいものがあります。あの「もんじゅ」の問題のように。。。

「セレンディピティ」「3Mの15%ルール」「グーグルの30%ルール」も知っていますよ。それでも、単式簿記の予算消化のにおいがプンプンする公的機関に莫大な研究資金を投じるリスクの方が大きいというのが、これまで経営・経済を見てきた筆者の感想です。反論・異論、大歓迎です!

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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AI暴走懸念払拭にグーグルなど米IT5社が新団体。一方、日本は公主導でAI共同研究の推進へhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジーAI,アマゾン,クリエイティブ・コモンズ,グーグル,コピーレフト,セレンディピティ,フェイスブック,フリーライダー問題,マイクロソフト,人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ,公共財,物質・材料研究機構,理化学研究所,産業技術総合研究所,IBM■ 有力IT企業連合と官主導のAI研究のどちらが勝利するのか? 本稿は、最近の日本経済新聞に掲載された記事から、AI研究の進め方の彼我の違いについて、その功罪を分析するものです。紋切型の「官がやるべきことと民がやるべきことの差別化論」を振りかざすことはしませんが、日米で対比的な報道のされ方について思うところがありまして。 まず、米IT有力企業の動向として第一報が入りました。 2016/9/29付 |日本経済新聞|夕刊 米有力5社、AI普及へ新団体設立 グーグル、アマゾン、フェイスブック、IBM、マイクロソフト 「【シリコンバレー=小川義也】グーグルを傘下に持つ米アルファベット、米アマゾン・ドット・コム、米フェイスブック、米IBM、米マイクロソフトの5社は28日、人工知能(AI)の普及・啓蒙に向けた新団体を設立すると発表した。AI技術の進歩が加速し、様々な製品やサービスに広がるなか、AIに関する人々の理解を深め、安全を確保するための共通の指針づくりに取り組む。 NPOとして設立する新団体の名称は「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ(Partnership on Artificial Intelligence to Benefit People and Society)」。AIの研究開発に取り組む他の企業や大学、シンクタンク、消費者団体など、幅広い関係者にも参加や連携を呼びかける。 創設メンバーの5社は資金や人材を拠出し、AIの活用にかかわる倫理やプライバシーの問題、安全性の確保など、AIが社会に受け入れられる上で欠かせない課題を解決するための共同研究に取り組む。研究成果は公開し、「ベストプラクティス(最良の慣行)」を共有することで普及を後押しする。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 海外の動向は時差の問題もあり、一旦夕刊で報道され、翌日の朝刊で改めて、というものが多いのですが、本件も同じ形式を取っています。   2016/9/30付 |日本経済新聞|朝刊 AI「暴走」懸念払拭へ グーグルなどIT5社が新団体 安全確保へルール作り 「グーグルを傘下に持つアルファベット、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、IBM、マイクロソフトの5社は28日、活動の中核となるNPO「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ」の設立を発表した。」 同記事では、いずれアップルも参加するよう協議中とあり、このNPOで取り上げられるテーマについても言及されています。 (下記は、同記事添付の「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ」の概要を引用) そのねらいは、 ① AIが社会に受け入れられるよう社会的な課題解決(雇用、プライバシー) ② AI開発に対する社会からの認知(開発・運用の透明性確保、AI技術の信頼性) ③ AI関連企業の安全性基準の底上げ(業界全体で品質向上に取り組み、AI市場を守る) ④ 業界の結束を高め、各国政府におけるAI政策への発言力の強化 などが、想定されます。 記事によりますと、アップルの参加以外にも、 「同様のNPOでは、AIを「人類の潜在的脅威」と公言する起業家のイーロン・マスク氏ら有志が昨年設立した「オープンAI」がある。これらのNPOや大学、シンクタンクなど外部との連携をどこまで広げられるかも、新団体の成否を左右しそうだ。」 とあり、NPOや研究機関との連携の在り方に耳目が今後も集中しそうです。   ■ 日本関連の最近のAI報道は、官主導のものが目立ちます 一方、日本においては、個別企業のAI研究推進の報道を除き、官主導のものが目立ちます。 2016/9/27付 |日本経済新聞|電子版 経産系と文科系 「AI研究所」は2つも必要か 「実用化で先行する米国をはじめ世界各国がしのぎを削る人工知能(AI)の開発競争。政府内では経済産業省、文部科学省、総務省が共同で戦略会議を立ち上げ、人材育成策などを検討している。一方、政府が資金を出す研究拠点は2つに分かれ、早くも縦割りの弊害を懸念する声が出始めている。」 (下記は、同記事添付の「産総研は2015年5月、東京・江東にAIセンターを立ち上げた」を引用) 記事によりますと、 まず、2015年5月に、経産省所管する産業技術総合研究所(産総研)が「人工知能研究センター」を設立。169人の研究者を含む348人の規模で、主に産業用ロボットや医療用の画像診断などを研究対象としています。 そこに文科省所管の理化学研究所(理研)が、「革新知能統合研究センター」を立ち上げ、トヨタ自動車やNECなど産官学から精鋭100人を集め、来年1月にも本格的な研究を始めるといいます。 それぞれの研究規模を予算額で対比すると、 「経産省は産総研AIセンターの設立・研究費用に約100億円を投じており、文科省も17年度予算の概算要求で、理研AIセンターの設立費用50億円を要求している」 という規模感になります。 では、研究内容に棲み分けがあるのか気になりますが、記事によりますと、 「「今ある技術を明日にも使えるようにするのが産総研、今はないが10年先に使える技術を開発するのが理研のそもそもの役割だ」。理研でAI分野を統括する杉山将AIセンター長は2つの出身母体の特徴を引き合いに出しながら、AI分野でのすみ分けができると強調する。」 ・理研:技術の原理や開発の仕方など「基礎研究」 ・産総研:企業が製品開発に転用できる技術を開発する「応用研究」 例)自動運転車に関する研究開発 ・理研AIセンター:歩行者を認識する際の原理を研究 ・産総研AIセンター:AI技術を自動車に組み込む可能性を探る こう言われれば、民間企業でも、基礎研究をやる「中央研究所」と、応用研究をやる事業部直轄の製品開発部門の棲み分けをしていますが、経営管理・管理会計の目線からも、中央研究所の成果とコストを、企業業績にひもづけるのに苦労することが多く、基礎研究の生産性・効率にはよくよく目配せが必要です。 しかも、同記事で、 「もともと15年に産総研AIセンターを立ち上げる際、「産総研が理研に一緒にやらないかと声をかけたが、断られた」(経産省幹部)経緯がある。」 という一文があり、ただでさえ欧米に比べて周回遅れの感もある日本のAI研究はこれでいいのか、本当に不安になります。   ■ どっこい、フォロー記事が掲載されて、何らかの圧力があったのか気になります という報道が数日後、正反対のフォロー記事がありました。 2016/9/30付 |日本経済新聞|夕刊 あすから裁量権拡大の3機関、AI共同研究 理研・産総研・物材機構 海外人材招く 「10月1日から政府の優遇を受け幅広い裁量権を持つ特定国立研究開発法人になる理化学研究所、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構の3機関は、人工知能(AI)の共同研究に着手する。研究者の給与を柔軟に設定し国内外の優秀な研究者を集め、産業界などの協力を得てAIに学習させるデータを集積。新薬や新素材の開発に役立つAIの実現を目指す。」 今度は、物質・材料研究機構を含めて、3機関による共同研究が進められるという報道が。 共同研究以外にも配慮していますよ!というその内容は、記事によりますと、 ① 3機関は他の国の研究開発法人と区別され、雇用や物品購入における自由度が拡大 ② 海外や産業界から優秀な人材を獲得するため、理事長より高い報酬を払うことが可能 とりあえず言えることは、ディープラーニング技術をベースとした現在のAI研究では、とにかくデータを集めることが重要で、 ・理研:医学系の実験と臨床のデータを集積 ・物材機構:素材開発のデータを集積 ・理研と産総研が連携:集積した膨大なデータを解析する手法を開発 という分担になります。 とはいえ、やっぱり、研究効率を考えるならば、一か所に統合できなかったのか、本当に残念な気持ちが無いわけでもありません。   ■ 経済学や経営学的には、こういう研究ものはどう考えるべきか? 「民ができることは民で、官しかできないことは官へ」というのが大原則なのですが、それでも、官がやった方がいいケースというものがあります。 知的財産(情報財)については、 ① 非競合性(誰かが利用することで、別の人の同時利用を妨げない) ② 非排除性(対価を支払わない者も利用できる) という「公共財」の2要件を満たすため、そのまま民に任せると、「公共財」の供給水準が理想水準より低くなってしまうため、ある一定の強制力を持って(市場における自由競争メカニズムを無視して)、官が供給を担うことも是とされます。それが、公的な研究所がAI研究をする(国民の税金を投入する)大義名分となります。 筆者の見解は、公共財と同様にフリーライダーが生じたり、知識生産(研究開発)への投資が過少になる可能性が生じたりすることについては理解しますが、一方で市場メカニズムを無視する研究開発投資の回収可能性について大いに憂えるところでもあります。 フリーライダー問題については、情報財(デジタル財含む)については、逆に、「コピーレフト」や「クリエイティブ・コモンズ」的な姿勢で、積極的に2次利用を推進して、技術革新をブーストさせる方法の方が社会善が最大になると考えています。 過少投資問題については、投資回収計算の困難さから、民に任せるべきだと考えています。米国のDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)のように、予算は持つけれど、研究実態は民または会計収支を透明化した公的研究機関に任せる形式が良いと考えています。 お金の問題を考えない研究は、理想が立派で、一見大義名分が立っているようですが、ふたを開けてみるととんでもない経済的損失を生み出すリスクも大きいものがあります。あの「もんじゅ」の問題のように。。。 「セレンディピティ」「3Mの15%ルール」「グーグルの30%ルール」も知っていますよ。それでも、単式簿記の予算消化のにおいがプンプンする公的機関に莫大な研究資金を投じるリスクの方が大きいというのが、これまで経営・経済を見てきた筆者の感想です。反論・異論、大歓迎です! (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します