勝ち残り企業 秘訣有り(2)一蔵の着物 消費者好みの品 安く - 老舗のプロセスイノベーション

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■ 「人の行く裏に道あり花の山」

経営管理会計トピック

小稿ですが、既存市場でのサバイバルを生き抜いた企業が手にする「残存者利益」。そのビジネスモデルを成功に導く必要十分条件を考える第2回となります。

2017/9/13付 |日本経済新聞|朝刊 勝ち残り企業 秘訣あり(2)一蔵の着物 消費者好みの品 安く

「一蔵は縮小する着物市場にありながら、最高益の更新を続けている。伝統的な商品の販売に現代的なSPA(製造小売り)の仕組みを導入。消費者の好みに応じた商品を価格を抑えて販売し、シェアを拡大している。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

記事から、日本経済新聞の記者の目による一蔵の着物市場における「残存者利益」狙いの戦略をまとめてみます。

(1)市場セグメンテーション
どちらかというと、年配の女性客向けのイメージが強い着物。従来の柄や小柄な日本人向け採寸など、従来固定客狙いの商品バリエーションが一般的でした。そこに、写真家の蜷川実花さんがデザインした赤や青、白の花があしらわれたドレスのような大胆な花柄の振り袖が登場。新成人向けに現代女性が好むデザインの振袖を一から商品企画して一蔵が世に送り出しました。
成熟市場において、新たな顧客セグメンテーション(新成人向け振袖)を試み、ターゲットを絞った商品企画で見事、若い女性の需要を喚起しました。

(下記は同記事添付の「蜷川実花さんがデザインした振り袖など独自商品も開発」を引用)

20170913_蜷川実花さんがデザインした振り袖など独自商品も開発_日本経済新聞朝刊

(2)顧客ニーズの取り込み
伝統品である着物。素材や生産工程における品質の高さは折り紙付き。次は、いかに新規顧客の需要を取り込めるような魅力ある商品づくりを行うか。一般的に、着物の生産プロセスでは、織物や染色、仕立てといった各工程が分業制で、複数の生産者の手を渡り歩いた末に、消費者の手に渡るまでにいくつもの卸業者が流通工程の間に入ります。それゆえ、一般顧客(消費者)の声が生産者に届きにくい生産プロセスと流通体制だったところ、一蔵が顧客要望を吸い上げ、商品企画の名で売れ筋のデザインの着物の制作を各生産者に依頼することに成功したのです。

(3)価格破壊
当然、フェアトレードの範疇で。(^^;) 従来は、流通過程に複数の生産者、卸業者が介在し、さらに小売店は生産者から商品を借りて販売する形態をとっていました。それゆえ、販売価格が下がりにくく、消費者の声が生産者に届きにくい構造でした。それを変えるきっかけとなったのが、一蔵の河端義彦社長が始めた生産者からの現金仕入れ。当初は安く販売する目的から始めた取り組みでしたが、委託販売から買い取りになったことから、在庫リスクから解放された生産者は、一蔵が商品企画で提案する「売れ筋」に積極的に取り組むようになり、価格だけでなく、品揃えまで、消費者ニーズの声に対応できるようになりました。

「現代の消費者の好みに合わせた手ごろな価格の着物は、ありそうでなかった分野。国内の着物市場は1980年代前半から5分の1以下に縮小し、生産者・販売者ともに撤退が相次ぐ。一方で一蔵の和装事業の売上高は伸び続けており、2017年3月期には105億円と、91年の約11倍だ。」

株式市場での格言のひとつに、

“人の行く裏に道あり花の山”

というのがあります。いわゆる逆張り。SPAという知恵を同じアパレルということで着物市場に活用してみようと。逆張りというほどのリスクもなく、いい知恵の援用ではありませんか。新機能もりもりのプロダクトイノベーションもありですが、こういうプロセスイノベーションも、イノベーションの1種なのですよ。

このケースでは、

必要条件:プロセスを変革してもビジネスが成立する確固たる市場にポジショニングしていること

十分条件:隣接市場、関連多角化領域への無難な進出方法を知っていること

といったところでしょうか。

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です

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