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日本の個人投資家、議決権行使は米英超す3割 金融庁調べ

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ 日本の個人投資家の経営参加への意欲の高さ

経営管理会計トピック

個人投資家の議決権行使は、株主権を構成する大事な要素である「会社経営への参加権」の行使となります。欧米に比べて、実質的に個人投資家比率(投資金額比)が相対的に高い日本で、なおかつ個人投資家の議決権行使率が高いことは、日本の個人投資家の経営参加の意欲の高さを表しています。

2016/1/8付 |日本経済新聞|朝刊 日本の個人投資家、議決権行使は米英超す3割 金融庁調べ

「金融庁などがまとめた個人投資家の議決権行使の利用状況によると、日本では約3割が権利を行使していることが分かった。金融機関などと比べると低いものの、米英の個人投資家よりも割合が高かった。日本では投資家に決算書類や財務状況を郵送で知らせることが多く、インターネットでの開示を基本とする米英よりも確実に本人の手元に届くことが背景にある。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

同新聞記事での金融庁の調査結果のサマリは次の通り。

・日本では投資家の31~36%が議決権を行使しており、米国の28%、英国の20%を上回った
・日本の所有者別では金融機関の行使が88%で最大となり、外国人・外国法人が72%、国内法人が52%と続いた

こうした高い個人投資家の議決権行使率について、新聞記事では、

「金融庁は現在、財務書類の項目の合理化や、インターネットを活用した電子開示について議論しており、今年度末までに取りまとめる方針だ。海外の事例も参考にして、議決権行使の割合が低下しないように検討を進める。」

としており、日本の個人投資家の元来の特質である経営参加意欲の高さというより、決算書類等の通知が郵送であることによる周知方法の違いが差異要因であるという分析結果になっており、今後のネットを使った開示手法の簡便化と低コスト化(あくまで企業と取引所側から見たメリットですが)と、議決権行使率のバランスを見ていく必要があるというコメントで締められています。

■ 株主構成に占める個人投資家の割合を国際比較してみる

仮説として、単に、株主総会の招集通知や事業報告書が郵送かネットだけで、そんなに差がつくものか不思議だったので、そもそもの株主構成をちょっと調べてみました。

20160113_投資主体別構成比グラフ

残念ながら、アメリカだけ統計の取り方の流儀が違うので、事業法人部門のデータを無視する形になっているおり、単純比較はできないのですが、そもそも英独に比べて個人投資家構成比率が高く、そのうえ、議決権行使率も高いことから、日本の個人投資家の経営参加の意欲は国際的にみても高い、と言えると思います。ちなみに、英独の海外部門の出自は主にアメリカなのは日本と同様です。

そして、アメリカでは、統計のいたずらもあり、事業法人の所有が目立たないこと、昨今の流行になっている「スチュワードシップコード」の発祥は英国であることからして、英米のアングロサクソン的な資本主義のお作法として、「政策保有株(持ち合い株)」の存在は、極めて理解に苦しむところなのでしょう。ここは、製造業が強い日独と、金融・IT分野に強い米英で、株主構成に違いがあるところは大変興味深いものがあります。

(参考)
⇒「(日本株番付)政策保有株比率が高い企業 建設や倉庫が上位に

それゆえ、日本の株主構成の3割強を占める外国人株主の理解を得るために、日本市場も、「政策保有株」を削減する方向に当局が舵を切っていることも理解できます。

■ 最後に、株主権の基礎のお勉強をしておきましょう

個人投資家の議決権行使率が低いことは、それ自体が悪なわけではありません。あくまで、株主権の一部の行使を放棄しているだけのことです。逆に言えば、欧米の個人投資家は、議決権行使よりかは、それ以外の株主権(経済的見返りの方)へのこだわりが相対的に強いと言えます。株価向上や配当を含めた、「TSR:Total Shareholders’ Return(株主総利回り)」への強い期待値の方が目立つことは、アクティビストの活躍(今月も、ブリヂストンが米タイヤ販売大手ペップ・ボーイズの買収をアイカンーン氏からの横やりで断念しましたね)や、四半期決算主義の横行、高い配当性向の要求などからも、垣間見られます。しかし、株主権とは、そういった経済的リターンだけではないのです。

以下は、日本証券業協会のお勉強ページ、「株主の権利ってなんですか?」からの抜粋です。
http://www.jsda.or.jp/manabu/qa/qa_stock06.html

● 株主の権利
株主は、その発行会社に対して出資額に応じた権利、すなわち「株主権」を持ちます。主な株主権としては、次の3つの権利が挙げられます。

1.株主総会での議決権等、会社の経営に参加する権利
株主は、会社の経営方針等を決める株主総会に出席して、決議に参加することができます。株主総会における決議は多数決によって行われますが、その投票数は、基本的に持ち株数に比例します。したがって、より多くの株式を持つ株主ほど会社の経営に大きな影響力を持つことになります。

2.配当金等の利益分配を受け取る権利
配当とは会社が挙げた利益の配分のことです。株主は持ち株数に応じて配当を受けることができます。通常、配当金等の利益の分配は年1回または2回行われます。配当金の額は会社の利益によって決定され、会社が多くの利益を挙げた場合には配当が増えることもあります。ただし、逆に利益が挙がらなかった場合は配当が減らされたり、見送られる場合もあります。

3.会社の解散等に際して、残った会社の資産を分配して受け取る権利
会社が解散した場合に、その会社の資産は売却される等して債権者の返済資金に充てられます。債権者へ優先的に返済が済んだ後、さらに財産が残っていれば、株主はその残余財産について持ち株数に応じて分配を受けることができます。

上記の、2.3.が経済権で、1.が経営参加権ですね。1.が無いと、そもそも2.3.の最大化の企業運営に口出しできないのですが、そこは「所有」と「経営」の分離の鉄則が強く息づいており、より高いリターンを求めて投資資金(株式のことね)の流動的な移動が普通にある英米市場では、個人投資家が1.を云々することはなく、「嫌なら売ればいい」という精神が存在しているということですね。それゆえ、会社のファンになってもらうために、「株主優待権(券)」などの制度の廃止を英米系の投資ファンドなどは、言い出すのも無理はありません。その国々の国民性のふさわしい株式市場を形成していけばいい、多様性があっていいじゃん、と筆者は思うのですが、3割強の出資をしてくれている英米系の投資ファンドのご意向も尊重せざるを得ず、、、という当局の立場も分からないではないのですが、、、

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