セイバーメトリクスで野球がつまらなくなった? その内、あなたにもウェアラブルセンサが装着されますよ!

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■ セイバーメトリクスでどうして2番に強打者が配置されるか理屈は分かった!

経営管理会計トピック

ふと目にした経済紙のスポーツ欄で目にした「セイバーメトリクス(SABR metrics)」。よくよく考えると他人事ではなくて、筆者を含むすべてのビジネスパーソンにも関係する一大事であることに気が付きました。

2017/5/2付 |日本経済新聞|朝刊 (スポーツ探Q)ペゲーロ・梶谷…2番主砲説に脚光 好機で打席回りやすい? データ裏付け、メジャーは主流

「開幕から1カ月が経過したプロ野球で楽天が首位を快走している。好調を支える一因が2番を打つペゲーロだ。送りバントなど小技のイメージが強い2番打者だが、ペゲーロはいまだに犠打がなく、パ・リーグトップの7本塁打。2015年のヤクルトも首位打者に輝いた川端が強打の2番として優勝に貢献した。打力か小技か。2番に求められる資質とは――。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

記事では、セパ共に、今期の2番打者に強打者を配置し、従来の小技を繰り出すイメージ(元巨人の川相昌弘選手、通算533本の犠牲バントはギネス記録)を一新している現役選手にフィーチャーしています。

「セ・リーグトップに並ぶ5本塁打のDeNA梶谷も開幕から12試合、2番に入った。故障者との兼ね合いで直近は3番を務めるが、ラミレス監督は就任以来、一貫して「2番梶谷」を理想に掲げる。日本ハムの大谷も4月6日のロッテ戦で2番に起用されている。」

(下記は同記事添付の「DeNA・梶谷」の写真を引用)

20170502_DeNA・梶谷_日本経済新聞朝刊

(下記は同記事添付の「楽天・ペゲーロ」の写真を引用)

20170502_楽天・ペゲーロ_日本経済新聞朝刊

米大リーグでは、「セイバーメトリクス」(アメリカ野球学会の略称 SABR(Society for American Baseball Research)と測定基準(metrics)を組み合わせた造語)と呼ばれる野球統計学の考え方があります。野球におけるデータ(選手成績、試合結果、球場スペックなど)を統計学的に分析し、選手の能力やチーム総合力を検証、チームの経営(ドラフト、トレード、年俸決定など)や戦略(選手起用、試合での采配んど)に役立てる手法や考え方のことです。その走りで有名になったのが、アスレチックスのチーム作りを描いて映画化もされた「マネーボール」で脚光を浴びた、ビリー・ビーン元GMです。

米大リーグでは、「強打の2番」が今や主流になっており、過去3年の最高殊勲選手(MVP)はいずれも2番を打ち、40本前後の本塁打と100打点以上の成績を残しています。
・2014年のトラウト(エンゼルス)
・2015年のドナルドソン(ブルージェイズ)
・2016年のブライアント(カブス)

日本プロ野球界もその流れを汲んで、強打者を2番に置くオーダーで得点力を上げようとしています。その理屈は、

「走者を置いた場面で、少しでも多く強打者を打席に立たせようというのが基本的な発想です」(日本プロ野球機構(NPB)の球団向けにデータ分析などを手がけるデルタ(東京・豊島)の岡田友輔社長)

というのも、
① 打順がひとつ下がるごとに打席数は年間15~20減る
② ならば、1番に強打者を配置すればと考えた場合、最も打席が回る1番は走者なしの状況が多い
③ それならば、出塁率の高い1番を塁上にため、長打力のある打者を2番に配した方が得点効率は上がりやすい
というロジックになるからです。

(下記は同記事添付の「2000年以降の主な強打の2番打者」を引用)

20170502_2000年以降の主な強打の2番打者_日本経済新聞朝刊

 

■ それじゃあ、セイバーメトリクスで野球を確率統計で分析してゲームが楽しめるのか?

それじゃあ、2番は殿馬に代えて、5番を打っていた微笑辺りに任せますか? 岩鬼の出塁率はそれほど高かった記憶は無いのですが、、、(笑)

「従来、2番の仕事とされる送りバントは“費用対効果”がいいとは言いがたい。統計学が専門の鳥越規央江戸川大客員教授は04~13年のNPBのデータを集計した。無死一塁と1死二塁を比べた場合、イニング終了までに得点できる確率は40.6%から39.6%に、期待できる得点も0.821から0.687に下がってしまう。」

しかし、こうした確率統計的分析結果は、試合運びで微妙に異なってくるようで、

「ただ無死二塁と1死三塁を比べると、得点確率は58.9%から62.9%に上がり、得点期待値は1.04から0.919に下がる。複数得点より1点が確実に欲しいゲーム終盤なら、バントは有効な選択肢になる。」

という風に、出塁状況、打席に立つバッターの特性、回数など全ての変数を考慮した監督の采配次第で、常に成り立つ必勝法や打順というものは無いようにも見受けられます。しかし、膨大なデータを解析して、試合状況と選手のコンディション、投手との相性までAIでビッグデータ解析すれば、いわゆる「かんたんなセイバーメトリクス」(=STATS(選手成績)からその選手の活躍を予想する第1世代)で、確率的は選択肢の提示、監督の采配への大変有用なサジェスト機能は現在のテクノロジーでも十分に対応可能です。

こういう手法が一般的になったら、弁慶高校の「第一球どまん中ストレート」予告を受け、明訓高校が1番打者にど真ん中が打てない岩鬼ではなく本来4番打者の山田を置く変則打線を組んで、山田のプレイボール・ホームランで1点を先取するも、鈍足・山田を1番におかせて明訓の攻撃スタイルを崩すことに成功し、明訓高校が初黒星を喫する遠因になる、といったゲーム展開から野球を楽しむ方法が廃れ、データ重視の選手起用の楽しみ方、それはそれでビデオゲーム・ネーティブ世代のファンを惹きつけることにつながるかもしれませんが、オールドファンにとっては味気ないものになるかもしれません。
(筆者の事例がよく分からない人は、「ドカベン」でググってみてください。)

また、「愛しのバットマン」では、スコアラーが体調不良の監督の代理で指揮を採り、任された試合で勝つのですが、ファンから罵倒されて、あっさり体調が戻った監督に指揮権を返してホッとする一幕が描かれています。スコアラー松井いわく、「スコアラーは数字だけで選手起用を決めるので勝負には勝つけど、ファンを楽しませる試合運びをすることはできない」。「セイバーメトリクス」で勝率を上げても、ファンがついてこなかったら、中長期的には球団経営は成り立たないのです。

 

■ 「セイバーメトリクス」はビジネスパーソンにとって決して他人事ではない!

「セイバーメトリクス」は、今や第2世代に移行しており、サッカーやアメフトで先進的に取り入れられている選手のコンディションや試合や練習でのパフォーマンスを測定して、選手采配やスタメン起用に活かす時代になってきています。疲労度など体調もバイタル情報としてセンサから直接測定できます。以前はピッチャーの球数制限など、外形標準的に一律的なルールを決めておく必要がありましたが、ピッチャー自身の肩の状態(筋肉の弛緩具合や疲労物質の体内での蓄積度)を直接測定して、交代時期を決めるなんてことが現実的になってきました。

こうしたことは、ビジネスパーソンにも同様に当てはまり、仕事上での生産性や効率とバイタル状況の相関関係を分析することで、人員配置や適度な休憩時間の取得方法、現在の作業への適不適まで判断することが可能になっています。

(参考)
⇒「(新産業創世記)「土俵」が変わる(1)AI社長の下で働けますか 決断が人の役割 - 経営判断を下す日立のAI
⇒「人間がAIに管理される日? - HRテックによる最適配置と社員の幸福感を高める「Hitachi AI Technology」の事例から
⇒「AI(人工知能)が人事部と経理部から人間を駆逐する日はいつか? - HRテックとフィンテックの影響は?

 

■ ウェアラブル端末による健康増進実現の先に何が待っているか?

2017/4/12のワールドビジネスサテライトの白熱ランキングで、ウェアラブル活動量計が特集され、ビックカメラ全店舗のウェアラブル活動量計の2月13日から3月12日までの売れ筋ランキングが紹介されました。

10位 RAY(MISFIT)
9位 PS100(エプソン)
8位 vivofit(GARMIN)
7位 SmartBand2(ソニー)
6位 Flex2(Fitbit)
5位 Alta(Fitbit)
4位 vivosmart HR(GARMIN)
3位 vivoactive J HR(GARMIN)
2位 Blaze(Fitbit)
1位 Charge2(Fitbit)

こちらは、もう少しシステマチックに、センサと分析とアクチュエータがセットになっている丸紅情報システムズの「ヒューマンレコーダーシステム」も大変興味深いものになっています。

ウェアラブルセンサーで人間情報モニタリング 健康情報を提供 WIN-HRとMSYS|丸紅情報システムズ

「「ヒューマンレコーダーシステム」は、各種生体センサで計測(センシング)した生体情報を、専用ソフトウェアで解析(プロセッシング)し、その結果に基づく対策への実行処理(アクチュエーション)を行う、生体情報管理システムの総称です。センサの種類は、心電、心拍、脳波、加速度、体温、呼吸、脈波などさまざまな種類を想定しています。それぞれの計測データを分析し、健康状態を導き出すプログラム開発など、ソフトウェア技術にWIN-HRの先端技術が集約されています。」

(下記は同ホームページの「ヒューマンレコーダーシステム」の概要図を引用)

20170502_ヒューマンレコーダーシステム_丸紅情報システムズ

(下記は同ホームページの「HRS-Ⅰ(エイチアールエスワン)」」の写真を引用)

20170503_HRS-Ⅰ_丸紅情報システムズ

当面の使用想定ケースは、装着者の健康増進に係る情報収集ということです。

・センサの種類は、心電、心拍、脳波、加速度、体温、呼吸、脈波など
・専用の解析ソフトウェアは、センサ機器で測定したデータを解析し、健康状態を評価するソフトウェアを用いインターネット経由で遠隔地の人の状態を管理・監視することも実現可能
・加速度センサや体表温センサにより、その際の体勢の変化、体表温の推移などをグラフ表示し、自律神経の状態と照合することが可能
・心拍周期の“揺らぎ”を周波数解析することで、交感神経と副交感神経の活動を可視化する事が可能。これにより、交感神経か副交感神経のどちらの活動が優位か、またその揺らぎの状態をリアルタイムで表示することができる
・この活動のバランスにより、ストレス状態にあるかどうかや、ストレスの傾向を判断し、精神障害をはじめ、健康管理に活用することができる
・さらに自律神経測定技術によって、人間の快適・不快状態を即座に判定することが可能

あくまで、現状で想定している使用目的は、一人暮らしの高齢者や働き過ぎになりがちな従業員の健康管理ということですが、その先には、ストレス判定やストレッサ―軽減の措置(配置転換や職種転換含む)、さらには精神疾患の予防や病歴との相関分析など、プライバシー情報との連携など、いわゆる監視社会が待っているようなちょっと気味悪い想像も掻き立てられてしまいます。

筆者の意図は、決してこの「ヒューマンレコーダーシステム」が必ずプライバシー侵害につながるもの、と断罪しているのではなく、須く、どの企業が提供するウェアラブル端末も、使い方次第でプライバシー侵害や監視社会の実現、人権侵害問題につながりかねないというリスクを喚起するものであり、それはデバイスの問題ではなく、運用の問題であることを主張したいがため、上記のスペックを一部紹介させて頂きました。

バイタル情報で管理された選手がプレーする試合を見て心底楽しめるのか、常時、己の精神状態をモニタリングされて働きたいか、へっー、2番は殿馬に代えて、5番の微笑を持ってきた方がいいのか、と軽く思った後に来た強い危機感・警戒心を皆さんと共有いたしたく、筆を執った(パソコンのキーを打った)次第です。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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