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■ 「在庫」の持ち方でビジネスモデルが大きく異なります

経営管理(基礎編)

前回」は、サプライチェーン管理の大目的と、その管理対象となる「在庫」のお話をしました。今回は、「在庫の持ち方によるビジネスモデルの違い」について説明したいと思います。

⇒「サプライチェーン管理(1) - SCMと在庫は切っても切れない仲

前回、同じコンビニで購入する2つの商品、「サンドウィッチ」と「クリスマスケーキ」を例にして、代表的なビジネスモデルの区分法のひとつである、「見込み生産販売」「受注生産販売」の違いを感覚的にとらえて頂きました。下記に、バリューチェーンに従って、この2つのビジネスモデルの違いを表現してみました。

経営管理(基礎編)_『在庫』の持ち方によるビジネスモデルの違い

1.見込み生産・販売
ものづくりをする時の作業は全て「販売見込み」に基づいて「計画ベース」で行います。調達計画であったり、生産計画であったり、物流(配送)計画であったり。企業の活動は全て事前の計画に従って行われており、お客様に最終的に販売する商品や製品を在庫として持ちます。

2.受注生産・販売
ものづくりをする時の作業はおおよそお客様からの実際の「注文(実需)」に基づいて「受注ベース」で行います。企業の活動は、お客様からの注文に従って、何を作るか(レシピ)、いつまでにお客様にお届するか(納期)、場合によっては、いくらで売るか(販売価格)も注文が入るたびにその都度決めていきます。

それでは、どっちの生産・販売形態が優れているといえるのでしょうか? それは、その会社のお客様、提供する製商品のタイプによるので、一概にどっちが良いなどとは簡単には言えません。下記は、両方の比較表になります。

経営管理(基礎編)_『見込み生産』と『受注生産』の違い

自動車、日用雑貨や家電などは、見込み生産の方が向いているかもしれません。一方で、ビル建設や特注の専用機械などは、受注生産の方が適しているかもしれません。しかしながら、実態は、このように簡単には割り切ることが難しいようです。カスタムメイドで自動車を製造販売しているメーカーは受注生産です。また、パソコンはどっちでしょうか? 店頭に並んでいるもの、パンフレットに掲載されているものを即時購入する場合は、見込み生産型といえますでしょうし、カスタムメイド(メモリは●●、HD容量は●●、スクリーンの寸法は●●、付属品として▲▲と■■を追加)でパソコンをオーダーする場合は、受注生産型といえます。

「見込み生産」のメリットは「受注生産」のデメリット。そのようにあえて対比することで、両者の違いを際立たせて皆さんの理解を促せるように作表してみました。大量生産の大量販売で、製商品の平均コスト(負担すべき共通固定費)を大幅に下げて、儲けを得る。そのような狙いの商売の時は、「見込み生産」が適しているでしょう。一方で、とことんお客様のニーズに対応して、設計・製造が少々難しくても、そこは高い値段をつけたとしても顧客が満足して買ってくれるだろう、という方法で儲けたい場合は、「受注生産」が適しているでしょう。

 

■ 「デカップリングポイント」が社内の仕事の進め方を決める

サプライチェーンにおける一連の企業活動の中で、「在庫」が登場する前と後とで、仕事の進め方(正確には作業準備のされ方)が大きく変わります。その在庫をもつところを「デカップリングポイント」といいます。そのポイントの前は、計画ベースで仕事を進められる範囲、その後は、受注(実需)ベースで仕事を進めなくてはいけない範囲となります。

経営管理(基礎編)_『デカップリングポイント』が社内の仕事を分ける

上記の説明図では、在庫の箇所にサンドウィッチが登場してきましたが、サンドウィッチを作るまでの工程は、事前に「何月何日何時までに何個つくる」と作業計画を立てて、皆が、原材料の小麦やハムを調達し、パンを焼いてスライスして、トマトを挟んで、ラップで包装して完成、お店に配達となります。

お店の陳列棚に並んだあとは、「何月何日何時に何個売る」と作業計画を立ててもその通りになるとは限らないし、「需要予測」業務以外でそのような計画を立てる必要もありません。実際に、お客様が手に取り、レジカウンターまで持ってきて頂いたら、その場でPOSに通して、代金を受け取り、袋に入れてお客様に渡します。その行為は、あくまで実需ベースです。「何時何分にお客様がレジまでサンドウィッチを2つ持ってくる」、そのためにレジにAさんという販売員を配置しておく、という販売要員計画はちょっと非現実的ですよね。

ちなみに、「デ・カップリング(decoupling)」とは、「非干渉化」のこと。SCMでは、「プル業務」と「プッシュ業務」というのがあります。「プル業務」とは需要(お客様や後工程からのオーダー)に基づいて生産したり、出荷したりする業務のことをいいます。「プッシュ業務」というのは、実際の需要を先読みし、供給側の都合で事前に何か(部品・モジュール・最終製品など)を製作・準備しておくことをいいます。この「プル」と「プッシュ」が出会う所、逆に言うと、「プル」と「プッシュ」に社内の業務を仕分けるポイントを「デカップリングポイント」というのです。

仕事というのは、「前工程」から何かを頼まれて、「自工程」で付加価値をつけて、「後工程」に何かを渡すこと、と考えると、「後工程」からの要求と、「前工程」からの期待とが交わるところ、それが「デカップリングポイント」ともいえましょう。「要求」に即応して、「期待」をタイミングよく出せない場合はどうするか? そこで「在庫」が登場するのです。後工程からの要求のタイミングと次工程からの期待のタイミングにズレが生じるとき、そのズレを在庫で埋めるのです。

ここまで、「在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類」として、「見込み生産販売モデル」と「受注生産販売モデル」の2つをご紹介しました。次回は、これをさらに詳細に分解していきたいと思います。

経営管理(基礎編)_サプライチェーン管理(2)- 在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類

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サプライチェーン管理(2)- 在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-e1428166901472.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/b45c6b78158e31dff4b23863feb4ceac-150x150.jpg小林 友昭経営管理(基礎編)サプライチェーン管理,SCM,デカップリングポイント,受注生産,見込み生産,ビジネスモデル■ 「在庫」の持ち方でビジネスモデルが大きく異なります 「前回」は、サプライチェーン管理の大目的と、その管理対象となる「在庫」のお話をしました。今回は、「在庫の持ち方によるビジネスモデルの違い」について説明したいと思います。 ⇒「サプライチェーン管理(1) - SCMと在庫は切っても切れない仲」 前回、同じコンビニで購入する2つの商品、「サンドウィッチ」と「クリスマスケーキ」を例にして、代表的なビジネスモデルの区分法のひとつである、「見込み生産販売」「受注生産販売」の違いを感覚的にとらえて頂きました。下記に、バリューチェーンに従って、この2つのビジネスモデルの違いを表現してみました。 1.見込み生産・販売 ものづくりをする時の作業は全て「販売見込み」に基づいて「計画ベース」で行います。調達計画であったり、生産計画であったり、物流(配送)計画であったり。企業の活動は全て事前の計画に従って行われており、お客様に最終的に販売する商品や製品を在庫として持ちます。 2.受注生産・販売 ものづくりをする時の作業はおおよそお客様からの実際の「注文(実需)」に基づいて「受注ベース」で行います。企業の活動は、お客様からの注文に従って、何を作るか(レシピ)、いつまでにお客様にお届するか(納期)、場合によっては、いくらで売るか(販売価格)も注文が入るたびにその都度決めていきます。 それでは、どっちの生産・販売形態が優れているといえるのでしょうか? それは、その会社のお客様、提供する製商品のタイプによるので、一概にどっちが良いなどとは簡単には言えません。下記は、両方の比較表になります。 自動車、日用雑貨や家電などは、見込み生産の方が向いているかもしれません。一方で、ビル建設や特注の専用機械などは、受注生産の方が適しているかもしれません。しかしながら、実態は、このように簡単には割り切ることが難しいようです。カスタムメイドで自動車を製造販売しているメーカーは受注生産です。また、パソコンはどっちでしょうか? 店頭に並んでいるもの、パンフレットに掲載されているものを即時購入する場合は、見込み生産型といえますでしょうし、カスタムメイド(メモリは●●、HD容量は●●、スクリーンの寸法は●●、付属品として▲▲と■■を追加)でパソコンをオーダーする場合は、受注生産型といえます。 「見込み生産」のメリットは「受注生産」のデメリット。そのようにあえて対比することで、両者の違いを際立たせて皆さんの理解を促せるように作表してみました。大量生産の大量販売で、製商品の平均コスト(負担すべき共通固定費)を大幅に下げて、儲けを得る。そのような狙いの商売の時は、「見込み生産」が適しているでしょう。一方で、とことんお客様のニーズに対応して、設計・製造が少々難しくても、そこは高い値段をつけたとしても顧客が満足して買ってくれるだろう、という方法で儲けたい場合は、「受注生産」が適しているでしょう。   ■ 「デカップリングポイント」が社内の仕事の進め方を決める サプライチェーンにおける一連の企業活動の中で、「在庫」が登場する前と後とで、仕事の進め方(正確には作業準備のされ方)が大きく変わります。その在庫をもつところを「デカップリングポイント」といいます。そのポイントの前は、計画ベースで仕事を進められる範囲、その後は、受注(実需)ベースで仕事を進めなくてはいけない範囲となります。 上記の説明図では、在庫の箇所にサンドウィッチが登場してきましたが、サンドウィッチを作るまでの工程は、事前に「何月何日何時までに何個つくる」と作業計画を立てて、皆が、原材料の小麦やハムを調達し、パンを焼いてスライスして、トマトを挟んで、ラップで包装して完成、お店に配達となります。 お店の陳列棚に並んだあとは、「何月何日何時に何個売る」と作業計画を立ててもその通りになるとは限らないし、「需要予測」業務以外でそのような計画を立てる必要もありません。実際に、お客様が手に取り、レジカウンターまで持ってきて頂いたら、その場でPOSに通して、代金を受け取り、袋に入れてお客様に渡します。その行為は、あくまで実需ベースです。「何時何分にお客様がレジまでサンドウィッチを2つ持ってくる」、そのためにレジにAさんという販売員を配置しておく、という販売要員計画はちょっと非現実的ですよね。 ちなみに、「デ・カップリング(decoupling)」とは、「非干渉化」のこと。SCMでは、「プル業務」と「プッシュ業務」というのがあります。「プル業務」とは需要(お客様や後工程からのオーダー)に基づいて生産したり、出荷したりする業務のことをいいます。「プッシュ業務」というのは、実際の需要を先読みし、供給側の都合で事前に何か(部品・モジュール・最終製品など)を製作・準備しておくことをいいます。この「プル」と「プッシュ」が出会う所、逆に言うと、「プル」と「プッシュ」に社内の業務を仕分けるポイントを「デカップリングポイント」というのです。 仕事というのは、「前工程」から何かを頼まれて、「自工程」で付加価値をつけて、「後工程」に何かを渡すこと、と考えると、「後工程」からの要求と、「前工程」からの期待とが交わるところ、それが「デカップリングポイント」ともいえましょう。「要求」に即応して、「期待」をタイミングよく出せない場合はどうするか? そこで「在庫」が登場するのです。後工程からの要求のタイミングと次工程からの期待のタイミングにズレが生じるとき、そのズレを在庫で埋めるのです。 ここまで、「在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類」として、「見込み生産販売モデル」と「受注生産販売モデル」の2つをご紹介しました。次回は、これをさらに詳細に分解していきたいと思います。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します