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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(13)三度目の幸福 - コンサルタントは、三番目に与えられた問題において最も有能であることが多い

本レビュー
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■ コンサルタントのリスクと依頼主のリスクは最初から異なることを知っておく必要がある

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

コンサルタント契約を得て、意気揚々とクライアント先に赴き、いろいろと建策(献策)するけれど、依頼主が保守的で、コンサルタントの意欲的な提案を全く取り上げようとしないことがよくあります。特に、コンサルタントの提案が、現在のリスクはほんのわずかで将来の見込みが大きいアイデアである場合はその可能性が強くなります。

コンサルタントはいたずらに自身のプライドを傷づけないように、次のことに気づいておかなければならないのです。コンサルタントが意欲的なアイデアを提案し続けても、無視されて取り上げられない、いわゆる使えないコンサルタントの烙印を押されたとしても、失うのはコンサルタント契約のみなのです。

それに引き換え、依頼主の方は、何もしなくても現状維持が保証されています。コンサルタントが意欲的な提案をしてきて、軽い気持ちでほいほいと受け入れて、そのアイデアがさっぱりで事態を悪化させたならば、その依頼主は自分の会社の中で立場を失います。

つまり、新しいこと、変化することに対して、より歓迎的か、適応力があるかは、同じビジネスパーソンとしても、雇用形態に強く影響されるという条件を我々は明確に知っておく必要があるわけです。

安定的な職に就いている人にとって、リスクは回避すべきものです。コンサルタントのように、契約ベースで仕事をしている人にとって、リスクは敢えて犯すだけの価値があるものです。安定的な職に就いている人は、ローリスク・ローリターンを好みますし、コンサルタントは、ハイリスク・ハイリターンを好むものなのです。

依頼主がコンサルタントの建策を取り上げないことは、依頼主の社内での立場を守る自己防衛本能からすれば、至極当たり前のことなのです。依頼主が保守的で、我々(コンサルタント)の意見を取り上げてくれない、と不満をぶちまけるコンサルタントは、相手の立場を考慮していないのです。

 

■ コンサルティングサービスはいま対いずれのトレードオフ問題の連続である

前回、「フィッシャーの基本定理」を説明しました。「いま対いずれ」のトレードオフについて、安定した職に就いている人は、「いま」を尊重するところに適応性があり、コンサルタントは「いずれ」の大きな可能性にかけるところにより適応性があるのです。

逆説的に、現在に適合的でないコンサルタントゆえに、新奇なアイデアの源泉となり得るのです。その新奇なアイデア、社内の人間だけでは全く新しい発想は得られない、と結論が出されて、コンサルタントが社外から招聘されるわけです。にも、かかわらず、いざコンサルタントが新奇なアイデアを持ち出しても、おいそれと受け入れるとは限らない理由は先に述べたとおりですが。(^^;)

賢いコンサルタントの立ち居振る舞いとして、一つの依頼先との長期的なコンサルティング契約を締結している場合、よりリスクの小さい方策ばかり提案することで、依頼主の信頼を勝ち取るという戦略があるのも事実です。この戦略も、「いま対いずれ」のトレードオフ関係を利用しているにすぎませんが。今、小さな成功を収めることを、将来の大きな成功(と同時にリスクも大きいのですが)を収める可能性と引き換えに、コツコツと依頼主の信頼を得る方向で契約維持を担保しているのです。

しかし、目先の小さな成功を断続的に得ることを一度選択してしまえば、将来に向かって大きな成功を収めるかもしれないビックピクチャーを依頼主に提示する機会は永遠に失われてしまうのも事実なのです。

こうした、コンサルティング契約にあるあるの状況を、ワインバーグ氏は皮相的に本書では次のように表現しています(P34)。

コンサルタントは、三番目に与えられた問題において、もっとも有能であることが多い。

これを、ワインバーグ氏は「三度目の幸福」と呼んでいます。ただし、残念なことに、依頼主の方で、このことはあまり知られていないようです。なぜなら、大抵の場合、コンサルタントが問題をひとつ片付け終わったところで、ご苦労さんということで契約満了となりお払い箱になるか、コンサルタントがあえて小さな成功だけを狙っている場合は、ずっとそのコンサルタントと長期契約を締結するか、どちらかのケースが圧倒的に多いからです。

 

■ それじゃあ、コンサルタントの端くれである私はどう行動しているか気になる?

ワインバーグ氏は、あえて、この秘密を依頼主にもオープンにしていくべきと主張しています。もっと、依頼主とコンサルタントが理解し合えるように。

それでは、私はどうこの問題に対処しているか知りたいですか?

コンサルタントとしての心構えの問題かもしれませんが、どれだけ依頼主が建策・提案を取り上げてくれたか、そのヒット率で最初から勝負しないように心がけています。自分の建策・提案が実を上げて、本当にその依頼主の会社の業績向上と成長に貢献したかどうかは、プロジェクトが終わってから結論が出ると達観しているからです。

つまり、たかが数年の契約期間内で、建策した内容がすべて実行に移されたり実現したりしたことなんてないからです。自分のアイデアが結果を出したかどうかは、契約満了後、数年経たないと本当のところは分からないからです。

私はいつも、契約終了後、時間がたってから、かつてのクライアントと話をする機会を持つようにしています。そこで、結果が出て、感謝の気持ちを耳にできたら、心の中でガッツポーズをとるわけです。契約期間中に、表面上は一喜一憂しているようで、実は冷静にかつ野心的に、如何に依頼主の会社の貢献できるか、自分との勝負を続けているわけです。

コンサルタントの仕事の出来栄えは、他人が評価できるものではない。自分が、後から振り返って満足いく仕事ができたかどうかなのです。

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