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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(5)コンサルタントの第四法則 - 自分を雇ったのではない相手の問題を解いてやるな

本レビュー
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■ コンサルタントの第四法則

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、筆者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、筆者のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

誰かの依頼の元に、タスクを遂行し、問題を解決しようと奮闘するコンサルタントが、新しい仕事を引き受ける際に、必ず心に留め置かなければならない3大法則はこちら。

コンサルタントの第1の法則
依頼主がどういおうとも、問題は必ずある

コンサルタントの第2の法則
一見どう見えようとも、それは常に人の問題である

コンサルタントの第3の法則
料金は時間に対して支払われるのであって、解答に対して支払われるのではない、ということを忘れてはならない

ここまで、この3大法則、シャービーの法則についての考察を進めてきました。ここにきて、ワインバーグ氏の着想となる第4の法則をご紹介します。

自分を雇ったのではない相手の問題を解いてやるな。

ワインバーグ氏によれば、この法則は言い換えるなら、

「コンサルタント業務とは、当人の依頼によってその人に影響を及ぼす仕事である、ということを決して忘れるな」

得てして、コンサルタントの間に蔓延っている悪習、あるいは、もはや職業病というしかない思い込みは、頼まれもしない「お手伝い」を買って出てしまうという悪弊です。その善意からくる行為は、コンサルタントとして飯を食っていくことを難しくするばかりか、たいていの場合は思わしくない結果に終わります。それどころか、たいていの場合は裏目に出てしまって、だれからも有難がられない迷惑行為として黙殺されることも多々あるのです。

 

■ 誰がコンサルタントを雇っているのか、どうしてコンサルタントを雇っているのか?

会社組織を舞台にして、会社で働くマネージャーと、その会社に雇われるコンサルタントの間には、本質的な競争関係が成立していることを見逃してはいけません。マネージャーとコンサルタントは雇用形態こそ違えども、共に経営課題を解決するスキルを有するが故に経営者から雇われているのです。

それゆえ、一方がもう一方の存在の必要性を認めたということは、自らの無能力さを公衆の面前で認めたことと同義なのです。全部を自分でやりきることはできないことを知っている人、他人に任せることでもっと大きなことができることを知っている人は、マネージャーにせよ、コンサルタントにせよ、最良のビジネスパーソンと言えるのです。そんな度量の大きい人に出会えることは稀ではありますが。。。

コンサルタントを外部から招聘しようと意思決定した人にも同様の葛藤が生じます。コンサルタントのことを、自分が自分で解けてしかるべきだと思う問題を解くことを手伝ってくれる人と定義することは難しいことです。多くのケースでは、自分がやるべきだけど自分では解けない問題を代わりに解いてくれる人、という定義づけをされることが一般的です。だから、外部からコンサルタントを雇ってくる行為は、自分自身がその問題を解くことができない無能な人認定を自認することと同義と解釈されることも少なくないのです。

 

■ コンサルタントが問題解決に失敗して喜ぶ人が存在することを決して忘れない

仮に、コンサルタントが問題解決に失敗したとしたら、自分が解決すべき課題を解決するのを手伝ってもらうためにコンサルタントを雇ったのだと真に理解している人たちは、自らの失敗と同程度に悲しくなるのが道理です。しかし、自らも経営課題を解決すべきミッションを背負っているマネージャーの中には、コンサルタントが問題解決に失敗したとしたら、それは間接的に自分自身の優秀さの証明と受け取り、その失敗を喜ぶ傾向にある人もいることは忘れてはいけません。

落ち着いて考えると、政治の世界でよく使われる、不祥事を起こした大臣の辞任の際に、首相の任命責任が問われるのと同じく、コンサルタントの失敗は、コンサルタントを雇うことを決めた依頼主の失敗となるのだから、コンサルタントの任命責任から逃れることはできないはずです。

中途半端に賢しらなマネージャーは、コンサルタントが成功すれば自分の株が下がり、コンサルタントが失敗すれば、相対的に自分の株が上がると、他人からの評価の目ばかり気にするようになります。

本当に賢い人は、経営にとって、経営課題が解決されることが最善であることを知っているので、それがコンサルタントだろうが、マネージャーだろうが、だれが解決しようと構わないはずです。

白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である
(鄧小平)

その一方で、コンサルタントを雇うという意思決定に参加しなかったマネージャーや経営者は、そうした自分の有能さを示すためのジレンマから無関係なので、コンサルタントが失敗すれば、常に大喜びします。手を叩いて、こういうでしょう。

「ほら見たことか、ちょっと外からやってきて、短期間で、我が社の大層難しい問題をそんな簡単に解決することなんて、最初から出来っこなかったのだから」

直接コンサルタントを雇ったはずの関係者も100%手放しでコンサルタントの成功を心の底から喜ぶことは難しい。コンサルタントを雇うことに無関係の社内の人間ならば、コンサルタントの失敗は、すべて自分の有能さを間接的に証明する(少なくとも無能ぶりの烙印を押されることを回避できる)ものとして常に大歓迎!

大事なことだからもう一度言います。

コンサルタントは雇い主から頼まれもしていない仕事に決して手を付けてはならない。

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