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新生銀が「仮想本社」 グループの間接部門集約 - バーチャル持株会社のメリットとあるべきホールディングス本社機能とは?

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ 組織デザインと管理会計は相性がいいので、すぐに食いついてしまいます!

経営管理会計トピック

「グループ経営管理」を自身のコンサルティングサービスの主要テーマの一つとしている小職と致しましては、この記事に何とか喰らいついて、爪痕を残したい、そう強く思わせるテーマなのであります。

2017/3/22付 |日本経済新聞|夕刊 新生銀が「仮想本社」 グループの間接部門集約

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「新生銀行グループは4月、グループを統括する「仮想グループ本社」を設立する。持ち株会社を置かずにグループ会社の総務、企画、財務などの間接部門を仮想本社の下に集約する試みで、邦銀では初という。グループ会社の機能を一体的に運用しやすくし、業務の大幅な効率化につなげる。」

それでは、新生銀行グループはどういう構造になっているのか、そしてグループ本社機能はどうなっているのか、早速確認してみましょう。

<新生銀行グループ構成|新生銀行について グループ紹介

20170403_新生銀行_グループ紹介

上図からは、あたかも新生銀行を中心に、ホールディングスにぶら下がっているかのようなイメージを抱きますが、

「新生銀グループは現在、持ち株会社を置いておらず、銀行とリース、カード会社などは横並びの位置づけだ。傘下企業を統括する持ち株会社を置けば、グループ会社の機能を一体的に運用しやすくなるが、設立の手続きなどで1年以上かかり、コストも膨らむ懸念があった。」

ということで、持ち株会社スキームではないことが分かりました。

 

<グループ本社機能|新生銀行について 組織図(一部抜粋)>

2017年4月1日現在、グループ本社には次のような8組織から構成されています。

20170403_新生銀行_グループ本社_組織図
① 事業戦略
② 組織戦略
③ 企画財務
④ 人事
⑤ 法務・コンプライアンス
⑥ 総務
⑦ リスク
⑧ IT

現在は、新生銀行の中に存在しますが、ここにグループの本社機能をバーチャルに集結させます。

「仮想本社は新生銀行内に設置し、グループの数百人が所属する。トップは工藤英之・新生銀社長が務める。まずは4月までに新生銀、アプラスフィナンシャル、昭和リース、新生フィナンシャルのグループ4社の総務や企画、財務部門を集約し、10月までに4社以外のグループ会社も加わる。各部門には新たに担当役員を置くという。」

 

■ 新生銀行グループの仮想本社のメリットは?

では、どうして純粋持ち株会社形態に移行して、形式面・実質面の両面で本社機能を統合しないのでしょうか?

記事をまとめますと、その理由は、

1)仮想本社は実際に会社を立ち上げるわけではないため、純粋持ち株会社への移行手続きに時間とコストがかからない

2)移行コストを節約できる反面、業務集約による経費削減のみがプラスに働くことにより、仮想本社を含む一連の業務改革で2018年度までに50億円の経費削減効果が見込める

3)当面は仮想本社導入後の効果を見極め、実際に持ち株会社を設立するかを判断するオプションが残されている(効果が無いならすぐに集約を止められる撤退コストがゼロ)

ということになります。筆者が気になるのは、2)の経費削減効果の部分だけです。結局のところ、本社費というのは、人件費とオフィス維持費の固まりです。人件費の削減というのは、人員整理かプロフィットセンターへの異動、オフィス維持費はその人員削減により結果として得られる効果になります。その他の、業務手続コストの削減(作業効率化)には、これまでの経験値からはそれほど期待はしておりませんので。(^^;)

 

■ グループ本社の備えておくべき機能は、持ち株会社のスキームに従う

じゃあ、どういう組織構造の時に、ホールディングスの本社機能として持つべき仕事の種類は何か? という単純な疑問に独自の解をここで紹介しておきます。

まずは一般的な統計解から。

経営管理会計トピック_持株会社が行う事業子会社への本社サービスの状況

本社サービスとして提供している、
① 経理
② 人事(給与計算)
③ IT支援サービス
が御三家といえます。

それでは、概念解は次の通り。

経営管理会計トピック_ホールディングスの計数管理業務パターン

ホールディングス内に位置するグループ本社機能は、大別すると、
① 企画業務(上記では計数管理中心に表現)
② マネジメント(グループ内組織管理)
シェアードサービス
の3つだと考えています。

そして、それらがどのように分散・集結させるべきかについて、筆者は経営管理・管理会計に関するホールディングス業務の整理などの相談を承ったりするのですが、その際は、持ち株会社のスキーム(事業持株会社か純粋持ち株会社か)と、ホールディングスの下に子会社がどのようにぶら下がっているのか(機能別か、事業別か)に着目して、三類型で考えるようにしています。

(1)事業持株会社/非事業会社統合
ぶら下がっている子会社に、機能別会社が数多く残っている場合は、機能別組織のヘッドクオーター機能までフル装備しておく必要があります。

(2)事業持株会社/事業会社統合
事業別の統括機能までは残しておく必要があります。

(3)純粋持株会社
事業管理は中間持株会社へ、シェアードサービスもそれ専門の子会社へ機能を移管し、純粋に企画業務とグループファイナンス中心の管理機能だけを残します。

そして最後に重要なのが、ホールディングスに残した機能にかかるコストをどうやって各子会社に納得の上で負担させるか? それらの名目的なグループ間取引(いわゆる本社取引)の形態も記載しておきました。ご参考くださいませ。(^^;)

これ以上の具体的な言及は有償サービスとなります。(笑)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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