世界企業・日本の立ち位置(2)膨らむ手元資金、米企業も IT巨人、日本の税収超す カネ余りが世界に拡大

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■ どうしても日本企業だけがお金を貯めこんでいるのではないという通説を吹き飛ばしたい!?

経営管理会計トピック

日本経済新聞の投資情報欄の連載コラム第2回につき、どうしても前回に引き続きコメントを付したく、ブログ投稿も連載とすることにします。

2017/9/5付 |日本経済新聞|朝刊 世界企業・日本の立ち位置(2)膨らむ手元資金、米企業も IT巨人、日本の税収超す カネ余りが世界に拡大

「「日本企業は資金をため込むばかりで有効活用していない」。投資家がよく口にする不満だが、米国企業の資金量はもっとすごい。特に技術革新の波に乗るIT(情報技術)の「5大巨人」の手元資金の増え方はすさまじく、日本の国の税収を上回る規模に膨らんでいる。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は同記事添付の「米IT5社の手元資金は急増」を引用)

20170905_米IT5社の手元資金は急増_日本経済新聞朝刊

上記のグラフからお分かりのとおり、米IT5社(アップル、フェイスブック、アルファベット(グーグル持株会社)、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)の手元資金が6月末時点で約62兆円にまで急増し、その規模が日本の国家税収約55兆円を軽く超えていることを強調しています。

(下記は同記事添付の「投資に備え巨額の資金を抱える」を引用)

20170905_投資に備え巨額の資金を抱える_日本経済新聞朝刊

ちょっとここでチャチャを。手元資金はストック概念で企業内に貯まっているお金。一方で税収は、課税所得に税率をかけて課税当局が手にするフロー概念の金額。こうしてみると、B/Sの財産額とP/Lの利益額のどっちが大きいか、という比較論だということが分かります。こういう金額の大きさを分かりやすく例えたつもりで、意味のない比較は控えていただきたいと思います。

閑話休題。

再び、日米企業の手元資金の留保程度の比較のお話。次は、日米代表企業各社の手元資金額の大きさ比較。

(下記は同記事添付の「資金余剰は日本企業ばかりではない」を引用)

20170905_資金余剰は日本企業ばかりではない_日本経済新聞朝刊

はたまた、どうしてもアラが目立ってしまいます。記事末尾にこれらグラフや表で示した手元資金額は、現預金、換金性の高い有価証券、貸付金の合計で、金融子会社資産を含むとあります。

トヨタ自動車を例にとると、内訳は次の通り。

現金同等物:3.0兆円
定期預金:1.1兆円
有価証券:1.9兆円
投資有価証券:7.9兆円
関連会社向け投資その他:2.8兆円

最後の2項目はその全てが換金性の高い、純粋に投資留保されている金額とは思えないのですが。。。さらに、金融債権がこの他に6.4兆円あるのですが。そして、この各社が並ぶ表には金融会社自体は含まれていませんね。まあ、これも大目に見ましょうか。(^^;)

つまり、恣意的に選ばれた数字と選ばれた企業が並ぶ比較表を見せられて、意見を誘導されているとしか思えないのは筆者だけでしょうか???

 

■ 日米巨大企業の手元資金留保の原因分析を分析する

米IT企業が手元に資金を留保する理由をいくつか記事内で説明されています。

(1)ネット関連が資本集約型の産業で、資金が常に必要だから。IoTや人工知能(AI)といった技術革新による「第4次産業革命」のなかで、次の投資に備える必要がある

(2)IT大手は寡占による独禁法のリスクを抱えているから。例示として、6月に欧州連合(EU)の欧州委員会がグーグルに対し、買い物検索における不公正競争を理由に24億2000万ユーロ(約3100億円)の制裁金を科した

これら2つの理由が日本企業に全く無縁なのなら、米国企業特有の理由として理解できるのですが、どうでしょう? 前章にて引用した各社は、新聞紙上で、次々とAIやIoT領域のベンチャーを買収しているではありませんか? 総合商社は今やコングロマリット企業として、口銭ビジネスから事業投資ビジネスを営んでいると言っても過言ではありません。理由付けがあまりに偏向している。

一方で日本企業の手元資金の伸び率が2010年比で約1割で相対的に小さいと主張したのち、その理由付けとして、

「一方、日本企業の伸び率は1割で、1兆9000億ドルだ。海外に活路を求めたM&A(合併・買収)などに資金を使った結果、伸びは緩やかだ。欧州企業は2兆1000億ドルとほぼ横ばい。世界の上場企業全体(金融など除く)で見ると、2017年に総額12兆ドル(1350兆円)に達した。世界の外貨準備高は3月末で約11兆ドルで、企業がため込む資金はこの規模を上回っている。」

ここでの結論は、日本企業より米国企業がお金を有効に使っていないということらしいです。

 

■ じゃあ、どうして手元資金が多いとダメなんだ!?

貸借対照表は、借方と貸方のバランス、資金の使途と資金の調達の部からなります。つまり、片方だけの金額の増減だけに着目した分析はだめで、貸借バランスの上で分析することが必要です。

比較表の日米トップに来ている2社を比べてみます。

●アップル(2017/1Q)
現金同等物:185.7億ドル
有価証券:581.9億ドル
投資有価証券:1847.6億ドル
合計:2615.2億ドル
総資産:3451.7億ドル

補足資料として、純資産額:1324.2億ドル

手元資金の対総資産比率は、75.8%に上りますが、トヨタのそれは、33.5%。
純資産の対総資産比率は、奇しくも両社とも38.3%。

つまり、B/Sの貸方における内部留保比率は同じなのですが、手元資金の総資産に占める構成比率は確かに、アップルの方がはるかに大きい。しかし、それがなんの非難の理由になるのでしょうか? 株式会社は、確かに、株主から集めた資金を有効活用して、有益・有望な事業に投資して、総資産、内部留保、その結果たる時価総額を大きく成長させる使命を帯びています。

手元資金 ⇔ 総資産(簿価) ⇔ 時価総額(時価)

この関係が、良好になっていれば株式会社における企業経営の成功といえます。
手元資金と総資産の関係は調査済み。総資産と時価総額の関係は、PBRになります。

2社の直近BPRを比較すると、

アップル:6.65倍 に対し、トヨタ:1.08倍。

アップルは総資産の4分の3を待機資金として備えていても、総資産の6倍以上の時価総額で市場から評価されています。一方で、トヨタは、手元資金が3分の1に控えていても、総資産と時価総額はほぼ同じ評価。従来の手元資金を貯め込むことに対する抗議の意味は、株主から負託を受けた資金を有効活用していないから。それが株価(時価総額)の低迷につながり、株主に報いない経営になっていると、さんざん、コーポレートガバナンス理論で聞かされた理屈だったのでは??? 株主からの評価は単に現金を貯め込んでいるかいないかではないのですよ!

こっちのほうの「なぜ?」を世に問うたほうが、意味のある財務分析・経営分析となるのではないでしょうか?(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です

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