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■ 新卒者が就活で言う「私、社会貢献がしたいんです!」-それってホントに弊社の志望動機!?

経営管理会計トピック

最近の若い者は、就活で「社会貢献したいので御社を志望しました」というセリフをいけしゃあしゃあと宣(のたま)うのだそうです。じゃあ、そうした活動を定款に書いてあるNPO(NGO)に行けば? と思ってしまうのですが。。。
(最近の若い者、と言っている段階で、もうすでに筆者の感覚もダメなようです(^^;))

ここでは、そうした若者をこき下ろすのが目的なのではなく、真剣にそうしたことを考えている企業が増えているようだ、ということを取り上げたいと思います。

2016/6/27付 |日本経済新聞|朝刊 (核心)社会派「B企業」の逆襲 渋沢栄一に学ぶ新興国 編集委員 梶原誠

「起業とイノベーションの街、米シリコンバレーで青年は熱く語っていた。「考える時間を人々に作ってあげたい」。デビッド・ブルナー氏(37)は2011年、こんな理想を掲げてモジュールQを創業した。
 メールや交流サイト(SNS)の発達は、人をパソコンやスマートフォン(スマホ)に縛り付けた。メールの確認、取捨選択、返信……。知識労働者が取られる時間は週30時間に上るといわれ、ストレスは社会問題にもなっている。
 ブルナー氏は人工知能(AI)を使い、顧客が必要な情報のみに接することができるようなソフトウエアを開発している。
 同氏はかつて、株式市場の求めに応じて短期的な利益を極大化する米企業に絶望していた。「人員削減で社会を傷つけてまで利益をかさ上げする米国のまねをしてはならない」。米ハーバード・ビジネス・スクールの学生だった07年には訪日し、啓蒙活動もした。
 だが今は違う。同氏自身が米国で起業したように、「米国でも社会を良くする企業が評価され始めた」という。根拠は「B企業」と呼ばれる企業の急増だ。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

その昔、「社会起業家」というコンセプトが世の中を席巻した時がありました。「社会問題を解決するために、事業(ビジネス)の形式を活用すること」を目的として会社(ベンチャー)を起業して、営利活動を通じて、広く一般社会に存在する問題、貧困や格差・人権侵害等を解決しようとするものです。その最たるものが、バングラデシュで貧困に喘ぐ人たちに自助努力の救いの手を差し伸べたマイクロファイナンスを広めたグラミン銀行でしょうか。

グラミン銀行では、貧困層向けに事業資金を融資し、生活の質の向上を促す活動を行っています。バングラデシュにおいて「16の決意」と呼ばれる価値観を広めることを目的とし、グラミン銀行の全ての支店で借り手は16の決意を暗唱し、守ることを誓います。その結果、借り手は良い社会習慣を受け入れるようになるというシステムです。

1.私たちはグラミン銀行の4つの原則に従い、私たちの人生のあらゆる歩みの中でこれを推進する:規律、団結、勇気、そして勤勉。
2.繁栄は家族のために。
3.私たちはあばら家には住まない。まず第一に家を修繕し、新しい家を作るために働く。
4.私たちは一年を通して野菜をつくる。私たちはそれらを豊富に食べ、余った分を売る。
5.私たちは耕作期にはなるべく多くの種をまく。
6.私たちは家族を増やしすぎないように計画する。支出をおさえ、健康に気を遣う。
7.私たちは子供たちを教育し、子供たちの教育費を払えるよう保証する。
8.私たちはつねに子供と周囲の環境を清潔に保つ。
9.私たちは穴を掘ったトイレ (pit-latrine) をつくり、使う。
10.私たちは筒井戸から水を飲む。もし井戸がない場合は、水を沸かすかミョウバンを使う。
11.私たちは息子の結婚式で持参金をもらわず、娘の結婚式にも持参金を持っていかない。私たちのグループは持参金の呪いから距離をおく。私たちは幼年での婚姻をさせない。
12.私たちは不正なことをせず、また他人に不正なこともさせない。
13.私たちはより多くの収入を得るため、共同で大きな投資をする。
14.私たちはつねにお互いに助け合えるよう用意する。もし誰かに困難があれば、私たちは全員で彼または彼女を助ける。
15.もしどこかのグループが破綻しそうだとわかったときは、私たちはそこへいって回復を手助けする。
16.私たちはすべての社会活動に共同で加わる。

「Bはベネフィット(恩恵)などの意。B企業を名乗れば「社会に恩恵をもたらすことで成長する」と宣言するに等しい。有機野菜の生産で人々を健康にしたい企業が、株主から「無農薬化の研究費を配当に回せ」と迫られても、「うちはB企業だ」と一蹴できる。
 10年以降、米国の30以上の州がB企業の法的な枠組みを整え、2000社以上が地位を得た。民間でも米NPOがB企業の認証を進めており、米国はもとより世界の2000社近くを認証した。再生素材を製品に活用している米高級アウトドア衣料メーカー、パタゴニアは一例だ。」

社会問題を解決することを目的としたプライベートカンパニーを「B企業」というなら、その対比としてここでは便宜的に、従来の営利を純粋に目的とした企業群を「A企業」とでも呼んでおきましょうか。

 

■ 「B企業」の増加はリーマンショックが契機だった!

そもそも、米国で「B企業」が次々と誕生したのは、あのリーマンショックからだそうです。

「米企業の磁場が、短期的な株主から社会へと移動している。きっかけは、08年のリーマン危機だった。
 リーマン・ブラザーズなどの金融機関は目先の収益を意識するあまり、バブルの危うさを知りつつ住宅ローンの証券化商品への投資をやめられなかった。その結果引き起こした危機は社会を傷つけ、人々の怒りは11年のデモ「ウォール街を占拠せよ」で爆発した。
 危機は「良い企業」の定義も変えた。危機の前は高収益企業として輝いていたウォール街だが、今は世論を背景とする規制強化が収益を圧迫し、社会を敵に回した代償を払っている。存在感があるのはかつて「理想先行」と軽んじられ、文字通り「B級」扱いされていた社会派企業の方だ。
 社会に役立つ経営が主流になれば、世界的な企業は新興国からも出てくるだろう。社会的な問題が多く、企業が活躍する余地が大きいからだ。経営者の視線も新興国に向いている。」

日本の企業文化にはもともと、「三方良し」(「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」)を是とした近江商人の基本思想があり、その他に、「道徳は実利に結びつく」(松下幸之助)、
「道徳なき経済は犯罪であり,経済なき道徳は寝言である」(二宮尊徳)、「浮利を追わず」「公利公益」(住友家憲)という言葉も普通に残っています。

社会に貢献(何も慈善活動という意味ではなく、社会に価値を与えるという意味)し、その見返りとして代金を頂戴する。それが企業が得る正道の「儲け」であって、生産者と消費者とが分かつ付加価値が最大になれば、自ずと社会全体の付加価値が増し、企業もゴーイングコンサーンとして永続するサイクルに入ることができる。短期的に誰かの利益を収奪して我がものにしたところで、そんな活動をしている企業は、いっときは栄華を誇っても自然と市場から淘汰されていきます。

株主利益の最大化もわかりますが、株主が本当に中長期の企業価値の最大化を望み、自分の金融資産を複利効果で大きくしたいなら、持続可能性のあるビジネスをやっている企業に変身させるべきで、持続可能性がある、ということは、社会で真っ当に生き延びることができる、それは、社会に真っ当な価値を提供している(財・サービスの提供、雇用機会の提供等)、すなわち適正利益を得る、ということです。

 

■ 渋沢栄一に学ぶ新興国! そしてフィリップ・コトラーのマーケティング理論的には?

新聞記事に戻ると、

「新興国が、日本の企業風土に学ぼうとしていることは注目に値する。社会と共存する経営は、確かに日本企業の伝統技だ。
 5月、東京で興味深い学会が開かれた。日本とトルコの経営学者が、渋沢栄一(1840~1931)の理念をトルコ企業にどう応用できるか討論した。
 渋沢の発想はB企業と重なる。明治以降、500以上の会社を創設した渋沢には「社会あっての会社」という信念があった。その渋沢が今「新興国の関心を集めている」。学会を運営した文京学院大学の島田昌和教授(55)は証言する。
 政府との蜜月で成長した新興国の家族事業も、株式市場を舞台とする経営に変わる。そこにはリーマン危機を迎えたウォール街のように暴走の芽がある。
 だからこそ、社会の歯止めを持つ渋沢に経営のヒントがあると新興国は期待する。8月、世界の経営史学者を集めてノルウェーで開く会合でも渋沢経営の新興国への応用を取り上げる。」

(下記は、記事添付の島田教授のイメージ図を転載)

20160627_B企業と渋沢経営_日本経済新聞朝刊

「社会に役立つ経営が主流になれば、世界的な企業は新興国からも出てくるだろう。社会的な問題が多く、企業が活躍する余地が大きいからだ。経営者の視線も新興国に向いている。
 インドのバンガロールで糖尿病の治療機器を開発するジャナケアはそんな会社だ。11年、最高経営責任者(CEO)のシドハン・ジェナ氏(32)がハーバードを卒業後に米ボストンで創業し、まもなく移転した。
 「インドでこそ糖尿病に取り組むべきだと思った」と同氏は振り返る。インドの成人糖尿病患者は世界2位の6900万人に達し、半数は受診すらしていない。日本の4%以下という所得の低さが原因だ。」

コトラーのマーケティング理論にこういうのがあります。

・マーケティング1.0:単に「よい製品だ」と思って買ってもらえる段階
・マーケティング2.0:私はこの企業を愛しているので、この企業の製品なら買う
・マーケティング3.0:この企業は社会に貢献しているので、そこの製品を買う
・マーケティング4.0:消費者の自己実現につながる製品を提供する

 

新興国向けのビジネスは、BOP市場向けマーケティング、BOP市場で得られた知見を先進国のビジネスにも生かすのが、ゴビンダラジャンが提唱する「リバース・イノベーション」。

比較的社会問題が多い新興国(市場)での社会貢献、新興国での新中間層相手のビジネスで普遍的なイノベーションを生み出す。それが国によらず、消費者の自己実現につながっていく。そういうビジネスをやっていく企業がサバイバルするのだと思います。

 

■ 慈善組み込むセールスフォースの新経営モデルと日本を席巻しているコーポレートガバナンス改革の正体

翌日、こうした記事にも目が止まりました。

2016/6/28付 |日本経済新聞|朝刊 (GLOBAL EYE)「慈善」組み込む新経営モデル 米セールスフォースが先導

「企業経営でも株主利益の最大化を目的とする資本主義と対極をなす思想がシリコンバレーを中心に影響力を増している。営利事業と慈善活動を一体化させ、企業の社会的責任(CSR)活動を人事戦略として使う。「公益資本主義」とも言うべき新しい経営モデルだ。
 この旗振り役である米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に対し「慈善を経営戦略に組み込んだ企業文化が最高の人材を獲得し、離職を防ぐことにつながっている」と強調した。」

(下記は、同記事添付のベニオフCEOの写真を転載)

20160628_ベニオフCEO_セールスフォースドットコム_日本経済新聞朝刊

「「ビジネスは世界を変える最高の手段であり、経営者の影響力は非常に大きい。ビジネスへの投資と同じやり方と熱意で慈善にも取り組んでいる」。ベニオフ氏は営利事業にも慈善にも「世界にどれだけ良い影響を与えたか」という共通の評価軸を設け、社員らにビジネスや社会の問題解決に努力することを促す。」

こうした取り組みが本格化した背景が、本稿冒頭の新卒者たちの言葉、「社会貢献したいので御社を志望しました」につながっているのです。ここまでの説明が長くてすみません。

「セールスフォースはマーケティング担当者向けの顧客情報管理(CRM)ソフトの世界最大手。収益源のサービスはNPOにとってもマーケティングに役立つ。これを無料か割引価格で2万8千以上のNPOに提供している。また、年7日間は有給で慈善活動にあてられる。同社の社員は入社初日に研修を受けそのまますぐに慈善活動に出る。
 他社にも同様の取り組みを促した結果、現在シリコンバレーを中心に700社以上が同様の仕組みを採用している。
 このモデルでは、社会問題を解決するサービスの提供を企業の存在目的として設定。営利は結果としてついてくるが、目的ではない。
 会社は株主だけでなく「顧客、従業員、取引先、地域の共同体、そして地球まで含めた『ステークホルダー』」(ベニオフ氏)のためにもあるとみなす。「かつては機会不均等や差別の是正は経営者の仕事ではなかった。だが、株主のためだけの経営ではもはや不十分」と指摘する。」

2000年代以降、筆者が事業会社で経理や経営企画をやっている時から、英米流の株主中心主義(ストックホルダー重視)か、日独流の利害関係者間の調和とバランス重視(ステークホルダー重視)か、この論争については、前者優勢で日本企業はここ最近まで来た、というのが筆者の感想です。企業経営理念でも、また日本は周回遅れになってしまうのでしょうか。

最近の、コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、社外取締役、議決権行使助言会社、ROE、、、英米で株主中心主義が席巻はしていましたが、その足元でこうした改革が行われていたとしたら、日本市場には、どうやらそうしたことを提唱する輩が居場所を失って日本市場に流れ込んできているとしたら、、、そしてアベノミクスはそうした海外投資家のマネーを歓迎して、言われるまま、日本企業の根幹を古い時代の英米流に変えようとしているとしたら、、、

最近、筆者のアンチ・コーポレートガバナンス的な発言が多い理由を分かっていただけたでしょうか?

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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社会派「B企業」の逆襲、社会的責任(CSR)重視企業、そして社会貢献したい新人http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むBOP市場,CSR,グラミン銀行,コーポレートガバナンス,ゴビンダラジャン,セールスフォース,フィリップ・コトラー,マイクロファイナンス,マーケティング4.0,リバース・イノベーション,三方良し,渋沢栄一,社会的責任,社会起業家,B企業■ 新卒者が就活で言う「私、社会貢献がしたいんです!」-それってホントに弊社の志望動機!? 最近の若い者は、就活で「社会貢献したいので御社を志望しました」というセリフをいけしゃあしゃあと宣(のたま)うのだそうです。じゃあ、そうした活動を定款に書いてあるNPO(NGO)に行けば? と思ってしまうのですが。。。 (最近の若い者、と言っている段階で、もうすでに筆者の感覚もダメなようです(^^;)) ここでは、そうした若者をこき下ろすのが目的なのではなく、真剣にそうしたことを考えている企業が増えているようだ、ということを取り上げたいと思います。 2016/6/27付 |日本経済新聞|朝刊 (核心)社会派「B企業」の逆襲 渋沢栄一に学ぶ新興国 編集委員 梶原誠 「起業とイノベーションの街、米シリコンバレーで青年は熱く語っていた。「考える時間を人々に作ってあげたい」。デビッド・ブルナー氏(37)は2011年、こんな理想を掲げてモジュールQを創業した。  メールや交流サイト(SNS)の発達は、人をパソコンやスマートフォン(スマホ)に縛り付けた。メールの確認、取捨選択、返信……。知識労働者が取られる時間は週30時間に上るといわれ、ストレスは社会問題にもなっている。  ブルナー氏は人工知能(AI)を使い、顧客が必要な情報のみに接することができるようなソフトウエアを開発している。  同氏はかつて、株式市場の求めに応じて短期的な利益を極大化する米企業に絶望していた。「人員削減で社会を傷つけてまで利益をかさ上げする米国のまねをしてはならない」。米ハーバード・ビジネス・スクールの学生だった07年には訪日し、啓蒙活動もした。  だが今は違う。同氏自身が米国で起業したように、「米国でも社会を良くする企業が評価され始めた」という。根拠は「B企業」と呼ばれる企業の急増だ。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます その昔、「社会起業家」というコンセプトが世の中を席巻した時がありました。「社会問題を解決するために、事業(ビジネス)の形式を活用すること」を目的として会社(ベンチャー)を起業して、営利活動を通じて、広く一般社会に存在する問題、貧困や格差・人権侵害等を解決しようとするものです。その最たるものが、バングラデシュで貧困に喘ぐ人たちに自助努力の救いの手を差し伸べたマイクロファイナンスを広めたグラミン銀行でしょうか。 グラミン銀行では、貧困層向けに事業資金を融資し、生活の質の向上を促す活動を行っています。バングラデシュにおいて「16の決意」と呼ばれる価値観を広めることを目的とし、グラミン銀行の全ての支店で借り手は16の決意を暗唱し、守ることを誓います。その結果、借り手は良い社会習慣を受け入れるようになるというシステムです。 1.私たちはグラミン銀行の4つの原則に従い、私たちの人生のあらゆる歩みの中でこれを推進する:規律、団結、勇気、そして勤勉。 2.繁栄は家族のために。 3.私たちはあばら家には住まない。まず第一に家を修繕し、新しい家を作るために働く。 4.私たちは一年を通して野菜をつくる。私たちはそれらを豊富に食べ、余った分を売る。 5.私たちは耕作期にはなるべく多くの種をまく。 6.私たちは家族を増やしすぎないように計画する。支出をおさえ、健康に気を遣う。 7.私たちは子供たちを教育し、子供たちの教育費を払えるよう保証する。 8.私たちはつねに子供と周囲の環境を清潔に保つ。 9.私たちは穴を掘ったトイレ (pit-latrine) をつくり、使う。 10.私たちは筒井戸から水を飲む。もし井戸がない場合は、水を沸かすかミョウバンを使う。 11.私たちは息子の結婚式で持参金をもらわず、娘の結婚式にも持参金を持っていかない。私たちのグループは持参金の呪いから距離をおく。私たちは幼年での婚姻をさせない。 12.私たちは不正なことをせず、また他人に不正なこともさせない。 13.私たちはより多くの収入を得るため、共同で大きな投資をする。 14.私たちはつねにお互いに助け合えるよう用意する。もし誰かに困難があれば、私たちは全員で彼または彼女を助ける。 15.もしどこかのグループが破綻しそうだとわかったときは、私たちはそこへいって回復を手助けする。 16.私たちはすべての社会活動に共同で加わる。 「Bはベネフィット(恩恵)などの意。B企業を名乗れば「社会に恩恵をもたらすことで成長する」と宣言するに等しい。有機野菜の生産で人々を健康にしたい企業が、株主から「無農薬化の研究費を配当に回せ」と迫られても、「うちはB企業だ」と一蹴できる。  10年以降、米国の30以上の州がB企業の法的な枠組みを整え、2000社以上が地位を得た。民間でも米NPOがB企業の認証を進めており、米国はもとより世界の2000社近くを認証した。再生素材を製品に活用している米高級アウトドア衣料メーカー、パタゴニアは一例だ。」 社会問題を解決することを目的としたプライベートカンパニーを「B企業」というなら、その対比としてここでは便宜的に、従来の営利を純粋に目的とした企業群を「A企業」とでも呼んでおきましょうか。   ■ 「B企業」の増加はリーマンショックが契機だった! そもそも、米国で「B企業」が次々と誕生したのは、あのリーマンショックからだそうです。 「米企業の磁場が、短期的な株主から社会へと移動している。きっかけは、08年のリーマン危機だった。  リーマン・ブラザーズなどの金融機関は目先の収益を意識するあまり、バブルの危うさを知りつつ住宅ローンの証券化商品への投資をやめられなかった。その結果引き起こした危機は社会を傷つけ、人々の怒りは11年のデモ「ウォール街を占拠せよ」で爆発した。  危機は「良い企業」の定義も変えた。危機の前は高収益企業として輝いていたウォール街だが、今は世論を背景とする規制強化が収益を圧迫し、社会を敵に回した代償を払っている。存在感があるのはかつて「理想先行」と軽んじられ、文字通り「B級」扱いされていた社会派企業の方だ。  社会に役立つ経営が主流になれば、世界的な企業は新興国からも出てくるだろう。社会的な問題が多く、企業が活躍する余地が大きいからだ。経営者の視線も新興国に向いている。」 日本の企業文化にはもともと、「三方良し」(「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」)を是とした近江商人の基本思想があり、その他に、「道徳は実利に結びつく」(松下幸之助)、 「道徳なき経済は犯罪であり,経済なき道徳は寝言である」(二宮尊徳)、「浮利を追わず」「公利公益」(住友家憲)という言葉も普通に残っています。 社会に貢献(何も慈善活動という意味ではなく、社会に価値を与えるという意味)し、その見返りとして代金を頂戴する。それが企業が得る正道の「儲け」であって、生産者と消費者とが分かつ付加価値が最大になれば、自ずと社会全体の付加価値が増し、企業もゴーイングコンサーンとして永続するサイクルに入ることができる。短期的に誰かの利益を収奪して我がものにしたところで、そんな活動をしている企業は、いっときは栄華を誇っても自然と市場から淘汰されていきます。 株主利益の最大化もわかりますが、株主が本当に中長期の企業価値の最大化を望み、自分の金融資産を複利効果で大きくしたいなら、持続可能性のあるビジネスをやっている企業に変身させるべきで、持続可能性がある、ということは、社会で真っ当に生き延びることができる、それは、社会に真っ当な価値を提供している(財・サービスの提供、雇用機会の提供等)、すなわち適正利益を得る、ということです。   ■ 渋沢栄一に学ぶ新興国! そしてフィリップ・コトラーのマーケティング理論的には? 新聞記事に戻ると、 「新興国が、日本の企業風土に学ぼうとしていることは注目に値する。社会と共存する経営は、確かに日本企業の伝統技だ。  5月、東京で興味深い学会が開かれた。日本とトルコの経営学者が、渋沢栄一(1840~1931)の理念をトルコ企業にどう応用できるか討論した。  渋沢の発想はB企業と重なる。明治以降、500以上の会社を創設した渋沢には「社会あっての会社」という信念があった。その渋沢が今「新興国の関心を集めている」。学会を運営した文京学院大学の島田昌和教授(55)は証言する。  政府との蜜月で成長した新興国の家族事業も、株式市場を舞台とする経営に変わる。そこにはリーマン危機を迎えたウォール街のように暴走の芽がある。  だからこそ、社会の歯止めを持つ渋沢に経営のヒントがあると新興国は期待する。8月、世界の経営史学者を集めてノルウェーで開く会合でも渋沢経営の新興国への応用を取り上げる。」 (下記は、記事添付の島田教授のイメージ図を転載) 「社会に役立つ経営が主流になれば、世界的な企業は新興国からも出てくるだろう。社会的な問題が多く、企業が活躍する余地が大きいからだ。経営者の視線も新興国に向いている。  インドのバンガロールで糖尿病の治療機器を開発するジャナケアはそんな会社だ。11年、最高経営責任者(CEO)のシドハン・ジェナ氏(32)がハーバードを卒業後に米ボストンで創業し、まもなく移転した。  「インドでこそ糖尿病に取り組むべきだと思った」と同氏は振り返る。インドの成人糖尿病患者は世界2位の6900万人に達し、半数は受診すらしていない。日本の4%以下という所得の低さが原因だ。」 コトラーのマーケティング理論にこういうのがあります。 ・マーケティング1.0:単に「よい製品だ」と思って買ってもらえる段階 ・マーケティング2.0:私はこの企業を愛しているので、この企業の製品なら買う ・マーケティング3.0:この企業は社会に貢献しているので、そこの製品を買う ・マーケティング4.0:消費者の自己実現につながる製品を提供する   新興国向けのビジネスは、BOP市場向けマーケティング、BOP市場で得られた知見を先進国のビジネスにも生かすのが、ゴビンダラジャンが提唱する「リバース・イノベーション」。 比較的社会問題が多い新興国(市場)での社会貢献、新興国での新中間層相手のビジネスで普遍的なイノベーションを生み出す。それが国によらず、消費者の自己実現につながっていく。そういうビジネスをやっていく企業がサバイバルするのだと思います。   ■ 慈善組み込むセールスフォースの新経営モデルと日本を席巻しているコーポレートガバナンス改革の正体 翌日、こうした記事にも目が止まりました。 2016/6/28付 |日本経済新聞|朝刊 (GLOBAL EYE)「慈善」組み込む新経営モデル 米セールスフォースが先導 「企業経営でも株主利益の最大化を目的とする資本主義と対極をなす思想がシリコンバレーを中心に影響力を増している。営利事業と慈善活動を一体化させ、企業の社会的責任(CSR)活動を人事戦略として使う。「公益資本主義」とも言うべき新しい経営モデルだ。  この旗振り役である米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に対し「慈善を経営戦略に組み込んだ企業文化が最高の人材を獲得し、離職を防ぐことにつながっている」と強調した。」 (下記は、同記事添付のベニオフCEOの写真を転載) 「「ビジネスは世界を変える最高の手段であり、経営者の影響力は非常に大きい。ビジネスへの投資と同じやり方と熱意で慈善にも取り組んでいる」。ベニオフ氏は営利事業にも慈善にも「世界にどれだけ良い影響を与えたか」という共通の評価軸を設け、社員らにビジネスや社会の問題解決に努力することを促す。」 こうした取り組みが本格化した背景が、本稿冒頭の新卒者たちの言葉、「社会貢献したいので御社を志望しました」につながっているのです。ここまでの説明が長くてすみません。 「セールスフォースはマーケティング担当者向けの顧客情報管理(CRM)ソフトの世界最大手。収益源のサービスはNPOにとってもマーケティングに役立つ。これを無料か割引価格で2万8千以上のNPOに提供している。また、年7日間は有給で慈善活動にあてられる。同社の社員は入社初日に研修を受けそのまますぐに慈善活動に出る。  他社にも同様の取り組みを促した結果、現在シリコンバレーを中心に700社以上が同様の仕組みを採用している。  このモデルでは、社会問題を解決するサービスの提供を企業の存在目的として設定。営利は結果としてついてくるが、目的ではない。 ...現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します