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そうか、君は課長になったのか。(20)部下の仕事を認めてあげなさい - 対話がモチベーションを上げる

本レビュー
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■ よくやった仕事に報いる方法について

コンサルタントのつぶやき

このシリーズは、現在、東レ経営研究所特別顧問:佐々木常夫さんの16万部を超える「課長本」の決定版の1冊から、私が感銘を受けた言葉をご紹介(時には、私のつまらないコメント付きで)するものです。

佐々木さんのご紹介:オフィシャルサイト

佐々木さんの信条のひとつに、「仕事は結果」というものがあります。それゆえ、成果主義(的な報酬制度)はある程度、肯定的なのだそうです。しかし、あまり極端に差をつけることには反対されています。なぜなら、極端な報酬差は、会社全体の活性化につながらないからです。

日本の社長は一般社員の約10倍の報酬で、アメリカは200~500倍と言われていますが、そんな大きな差をつけるアメリカ方式を見習ってはいけません。
第一、多くの報酬を得た人たちが、そのためにますます働くようになることはありません。なぜなら、成果をあげる人はもともとたくさん働いているからです。むしろ、報酬を減らされた人たちにモラールダウンの弊害のほうがよほど大きいのです。

(参考)
⇒「欧米出身者の経営者の高額報酬に反発の動き - アローラ氏やゴーン氏の報酬は本当に適正か? そして日本的経営の強みとは?
⇒「役員も従業員も報酬制度次第でモチベーションが変わります! 日本経済新聞より

お金や役職、各種報奨制度による名誉とお褒めの言葉。よくやった仕事の成果には何らかの方法で報いる必要があります。ただし、何かで報いる効果が大きければ大きいほど、対価の影響力が大きければ大きいほど、やり遂げた人が持つ承認欲求を刺激する一方で、それを傍観する人に対する承認欲求へのマイナス効果(承認されないことによる反動によるやる気低減)が大きくなると、承認欲求を満たすための対価が高くつき、報酬がどんどんインフレを始めます。

また、承認されないと仕事を頑張らないという意識づけも助長されてしまいます。佐々木さんは、「仕事の成果には仕事で報いる」ことを重視されています。つまり、他人からの承認欲求をみたすのではなく、自己実現欲求を満たすようなスケールの大きい仕事、やりがいのある仕事、達成感を得られる仕事。ある仕事で成果を出した人には、次のチャレンジングな仕事を与えることで報いる。成果を出すことに喜びを見出す人は、次の喜びを得るために、どんどん大きな仕事に挑み、それをこなし、スキルと経験値がどんどん上がっていく。報酬や地位や名誉は、後からついている。そういう正のスパイラルが、個人と組織にとっての理想的な職場形成につながるのではないでしょうか。

■ 人事評価に求められる公正さについて

佐々木さんの実体験では、多くの社員にはそれほど目を見張るほどの実力差・能力差があるわけでは無いそうです。誰もが褒めちぎるトップランナーは、ほんのごく一握り。あとの人の能力差はダンゴ状態。むしろ、そういう人たちが手を携えて難解なミッションをクリアしてくのが、仕事というものです。

佐々木さんが本書にて、テレビドラマ「新撰組」の一幕について批評しています。あの有名な池田屋事件の後、討ち取った長州藩士の人数に比例して報奨金を出し、留守番をしていた隊士には無報酬としたシーンは頂けないとしているのです。必ず誰かが留守番をしなければならない。その留守番役に報酬を与えない制度は、極めて不公平な報酬制度と言わざるを得ません。組織が体をなして事を運ぶには、様々な役割を務める人たちの協力が必要です。そういう人たちに、まんべんなく報いる制度が必要なのです。

相対評価で、A評価は課員の2割、B評価は3割、C評価は3割、D評価は2割とする制度があったとします。課長にすれば、トップ評価のA評価にあたる2割の人はすぐに選び出せるでしょう。そして、誰の目にも明らかなD評価の人も、残念ながら選び出しやすいかもです。しかし、真ん中のBとC評価の人は、それ程、目立った差があるわけではない。そんな人達を無理矢理、やれBだ、やれCだと、差をつけることはばかばかしい、根拠のない作業かもしれないのです。それこそ、評価者の好き嫌いしか差をつけることの根拠になり得ないかもしれない。

佐々木さんは、思い切った処方箋を示されています。

「どうすれば課全体のモチベーションを下げないことができるか」
「どうすれば、部下を育てることができるか」

という観点から、B評価とC評価を年度ごとの持ち回りにする、というアイデアです。突拍子もないアイデアで、最初は私も面喰いましたが、比較的勤務期間が長い事業会社では、そういう評価年があっても多少は誤差として許されるかもしれないとは思いました。しかし、現職のコンサルティングファームは相対的に短期勝負の職場なので、この方法はもう少し工夫しないと取り入れることは難しいかもしれません。(^^;)

ここで言いたいのは、評価を持ち回りにせよ、ということではなく、四角四面に会社の人事・報酬制度をどうやって実行するかに捉われるのではなく、モチベーション向上、メンバのスキルアップに役立つことなら何でも取り入れましょう、という柔軟な発想力を持って人事評価もしましょうということ。

■ 組織人として持ち続けるべき熱意について

佐々木さんによりますと、

人事制度に限らず、会社のなかにはおかしな制度や風潮があるものです。君がそう思ったときには、しかるべき時にしかるべき修正をすべく行動してほしい。もし、君の考えに賛同する人が何人か出てくれば、それは大きな力となって会社の改革につながる可能性があります。あるいは、君がもっと上位の職位に就いたとき、その制度を変えられる権限を持つ可能性がありますから、そのとき抜本的改革を実行したらいい

佐々木さんも、日々、ノートに思いを書き綴り、課長になったらやるべきこと(決してやらないこと)、部長に昇格したらやるべきこと(決してやらないこと)、取締役になったら、、、と、自分の意識を文字にして明確に持ち続け、いざという時の組織変革のトリガーにしてきたそうです。

会社は、その組織を維持・発展させるべく、何らかの仕組みを内在・内包しているものです。組織は大きくなればなるほど、なかなか変革しづらくなるものですが、決してあきらめることなく、より上位のポジションに就いたら、こういう変革をしよう! という高い志を持った人が現われて、危急存亡のときに、会社の窮地を救うものです。そういう人材になるためには、常日頃からの意識を高く持ちたいものですね。

■ 部下との対話を大事することの重要さについて

佐々木さんによれば、人事評価において、A評価とするか、B評価と判定するかより、部下を一人の人間として認めてあげて、部下の仕事を認めてあげることの方がずっと大事なのだと力説されています。

人は仕事を通じて何に生きがいを見出すかというと、もちろん報酬ではありません。報酬よりも、納得のいく仕事であり、自分が成長していくことが実感できる仕事であり、仕事の結果を正しく認めてもらうことです。そして、一般社員に対して、これらを与えることができるのは課長にほかならないのです。

承認欲求を刺激するより、対話のなかでその人自身を認めてあげること。その所作のほうがずっと大事だし、効果も長続きするし、なにより真摯な人間関係が仕事の質と効率性をあげるものだ。私はそう信じています。

佐々木さんによれば、
「話すが2割、聞くが8割」
「対話とは聞くこと」

(参考)
⇒「ビジネスパーソンに必要なのは、「伝える力」か「聞く力」か?
⇒「「支配的リーダーシップ」から「サーバントリーダーシップ」へ
⇒「トーク力か共感力か?

コミュニケーションをしっかりと取っていれば、部下はきっとモチベーションを上げてくれることでしょう。部下の成長とスキルアップのためには、厳しく指導することも大事ですが、部下の仕事(とその成果)を認めてあげることから始めること。信頼と共感が溢れる職場づくり。これが私の理想像です。(^^)

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