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そうか、君は課長になったのか。(37)家族はかけがえのないもの - 「絆」の強さは過ごした時間に比例しない

本レビュー
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■ ワークライフバランス論に疑問が生じたら

コンサルタントのつぶやき

このシリーズは、現在、東レ経営研究所特別顧問:佐々木常夫さんの16万部を超える「課長本」の決定版の1冊から、私が感銘を受けた言葉をご紹介(時には、私のつまらないコメント付きで)するものです。

佐々木さんのご紹介:オフィシャルサイト

佐々木さんは、本著の最終章を「家族」をテーマにしたメッセージで締めくくっています。新任の課長のお子さんが骨折して短期入院。会社を休んで看病して、お子さんから「父さんとゆっくり過ごすことができて嬉しかった。普段もこうできればいいのに」という言葉をかけられ、普段のワークスタイルに疑問を持つ、というくだりから始まっています。

佐々木さんから見ても、現況の経済・経営環境は思わしくなく、定時退社も難しいし、よしんば定時退社したとしても、帰宅後も勉強しないとさまざまな競争に打ち勝つことができない。自然と家族と一緒に過ごす時間が限られてしまう可能性が高いことを指摘されています。

こんな時代のなか、家族と仕事のバランスをどうとるか、これはある意味で、ビジネスマンとして、父親として、人間性というか人生観を問われているのだという気がします。

時代背景というのも仕事と家庭の在り方に影響するものです。かつての高度経済成長期は、日本経済の量的拡大が続いていた時期でしたから、父親が1時間でも多く働けばそれだけ結果が後からついてきて、残業代を含む収入増や人事考課でのプラスの評価を比較的容易に望むことができました。その一方で、母親は、育児と家事に全力を上げ、性差による完全分業が、その過程の可処分所得を上げ、経済的幸福を増進するものを信じられていました。

その分、父親が子供たちと接する時間が限られましたが、それでもそういう働き方が、本人と家族を幸せにする唯一の方法と考えられていました。イクメンが全面的に支持され、ダブルインカムが当たり前の現在から見れば、少々奇異に映るかもしれません。

 

■ 働き方改革 - 仕事の成果とは何かが問われている

仕事と家事の完全分業という個別最適が、日本経済の量的拡大に寄与するという全体最適につながる経済情勢はもう終わりを告げました。

長時間労働は、必ずしも会社の成長には結びついていません。労働量で結果が出る時代は終わり、知恵や工夫がなければ結果が出ない時代になったのです。

その一方で、個人(ビジネスパーソン、ここではビジネスマンと敢えて言いましょうか)の価値観も多様化し、働くことだけを生きがいにしない、家族とのふれあいから幸せを感じる、妻も働くのが普通になってきたので、相応の家事分担も必要、年老いた親の介護で手も取られる、、、

画一的な職業人のスタイルというのは完全に崩壊しました。この働き方という問題については、完全に個人の選択にゆだねられる時代になったと私は考えます。それゆえ、日本政府が推し進めている「働き方改革」というのも、一律的に適用することには少々の違和感を持っています。

卑近な個人的な経験で物申させて頂くと、私は2児の父親でもあるのですが、子供たちが小さいうちは、会社近くの社宅住まいで、定時で帰宅して、夕食とお風呂を子供たちを一緒に済ませてから、もう一度、会社に出勤して夜半まで残業する日々を続けていました。個々人が置かれた仕事環境のなかで、個々人ができるだけ自分に合ったワークスタイルを選択できることが、法律で一律的な縛りを入れるより、個人の幸せと会社業績の双方にプラスになるのではないでしょうか。

ちなみに、現在は、コンサルタントとして時間的拘束が長く、不規則であるのと、子供たちも成長して大きくなったので、週末に顔を合わせる程度になっています。その時々の家族の状態と、仕事の内容で、できるだけフリーハンドで働く人の働き方に自由を与える方が、会社としても、都合がよいのではないかと考えます。

 

■ 家族の愛情と絆は、時間だけで作られるのではない

佐々木さんによれば、

家族の愛情、家族の絆の深さは、一緒にいる時間に比例するものではない

佐々木さんは、家族と働き方の問題はあくまで個人的な問題であって、客観的な答えはないという立場です。その佐々木さんの個人的な経験については、6歳で父親を亡くし、家計を支えるために365日、朝から晩まで働き続けた母親の後ろ姿を見て大きくなったことが大きいとあります。兄弟や母親とゆっくり同じ時を過ごした記憶はほとんどないけど、家族の結束力は強いものだったそうです。

家族の絆は一緒にいた時間の長短ではなく、親が子どもに注ぐ愛情の深浅によるものだと思うのです。
父親がどんなに忙しくて、子どもと触れ合う時間が少なくても、子どもを愛する感情が深ければ、子どもはそれを感じ取って育ってくれます。

佐々木さんは、自閉症の長男と、肝臓病とうつ病を患う妻を抱えながら、仕事も精いっぱいやってきたビジネスマンでした。家族への愛と責任感、仕事への充実感・達成感を十分に味わって今があるそうです。彼曰く、「家族を大事にしてほしい」。大事にするやり方は人それぞれでいいのだと思います。また、その人が置かれた仕事環境に左右されることも、ある程度仕方がないことです。自分の裁量の中で調整するか、思い切って転職してしまうのも、何が一番大事かという個々人の判断によるものです。

家族は真にかけがいのないものです。だけど、その絆を強めるのは一緒に過ごした時間ではない。君がもし、仕事に精力を注がなくてはならない状況にあったとしても、そのことを気に病む必要はありません。
家族のことを心底、愛していれば大丈夫なのです。

私は、時代こそちょっと前だったのですが、佐々木さんこそ、ワークライフバランスを極めた職業人の一人だと思います。課長とはの前に、ビジネスパーソンとしていろんなことを考えさせられました。これで、この課長本の連載は終了となります。もし、興味がありましたら、本書を手に取っていただければと思います。

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