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■ 五段階の思考回路で勝算を立てる!

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

優れた戦略家は、戦闘における勝敗の道理を実践し、戦闘における勝敗の原則を忠実に守るものです。だからこそ、思うがままに勝敗を操る支配者となれるのです。

ではその道理・原則とは何でしょうか。次にあげる5つです。

(まずは孫子流の比喩から。内容は後から解説します)
1.「度(たく)」:モノサシで計測する
2.「量(りょう)」:升目で計量する
3.「数(すう)」:数を計算する
4.「称(しょう)」:双方を比較する・・・「称」は天秤で重さを比較すること
5.「勝(しょう)」:勝利を策定する

1.「度」戦場となる土地は、距離を測るという判断を必要とし、次に、
2.「量」該当する戦場で必要となる物資を推測することが不可避とさせ、次に、
3.「数」戦場に動員すべき兵力数を計算することを必要とさせ、次に、
4.「称」彼我の戦力差を計算することを引き起こし、次に、
5.「勝」勝利の形態を推定するという判断を導く

この順番で勝算を推測すれば、天秤で重さを測るように、勝利は計算できるのです。

孫子 (講談社学術文庫)

—————–
まずは訓詁学から。
「脩道」の原則は、「守備態勢より攻撃態勢への移行」
「保法」とは、「上述の五段階の思考回路で勝算を立てること」

具体的には、現代ビジネス風に、次の通りに五段階の思考回路を説明します。

1.戦う市場を設定する(市場セグメンテーション)
どこからどこまでの地域が戦場となり得るかを予測し、彼我双方の出撃地点から会戦予定地までの距離、ある要地からある要地までの最短距離、迂回路をとった場合の距離など、敵軍と自軍が戦場一帯を行動するあらゆる場合を想定したうえで、それぞれの距離を事前に計測しておく作業です。

とある新機能を搭載した新製品を上市するのに、コンペチターの研究開発の所要期間は、既存製品の保有技術からどれくらいか、リバースエンジニアリングで明らかにする、新興国市場で新たな販売網を構築するのに、有力な現地パートナーの誰を自陣営に引き入れれば、真っ当な販売体制が築けるのか、立地条件は? という諸条件を明らかにします。

2.ロジスティクス(兵站)
上記1.で算出した距離データを、戦闘部隊の一日当たりの行軍距離で割れば、戦闘部隊が会戦予定地に到達するまでに要する日数や、補給物資が前線に到着するまでの日数が求められます。この日数に、兵士一人当たりが一日に消費する食糧をかければ、事前準備しておくべき補給物資や配給計画が明らかになります。

新市場に商品を投入してから、キャッシュインがあるまでの日数を算定し、それまでに運転資金がいくら必要なのか、不測の事態が起こり得るのも含めて、担当者の人件費や活動予算はどれくらい余裕を見ておけばよいのか、はたして新製品がターゲット顧客の手元に届くまでにかかるリードタイムはどれくらいで、在庫回転日数はどれくらいを見込んでおくべきか、そういうシミュレーションを実施します。

3.アクションプランの立案
必要な補給物資量が分かれば、国家が備蓄する穀物や飼料の総量を割ると、最大限動員可能な兵力数や、動員しうる牛車の数が算出されます。こうして得られた牛車の台数に、一台当たりの積載量や損耗率をかければ、前線に到達する物資量も概算でき、作戦行動が可能な日数が割り出せます。

新規市場への進出計画が、必要とする経営リソースが概算できれば、手元の余裕資金、投入できるエース級の人材、活用できる知財権等がどれくらいあって、新規ビジネスのプランを具体的に策定することができます。ここで一番重要なのが必要資金の手当て。資金不足が分かれば、外部調達に頼らざるを得ないのですが、新規ビジネスの採算があらかじめ、かなりの精度で分かっていれば、最適の財務戦略が立案できます。ノンリコースローンの活用か、新株発行か、短期借入金か、社債発行か。。。リスクと期間が克明にイメージできればできるほど、スラックの無い調達計画とすることができます。

4.競争戦略の具体化
敵軍と自軍の双方にこうした算出法を適用して、比較・考量すると、そこには彼我の総合的な戦力差が浮かび上がってきます。

該当市場における、リーダーなのか、フォロワーなのか、ニッチャーなのか、新発なのか後発なのか、先行しているのか。他市場でのブランドは通用するのか、新ブランドの訴求効果の方が高いのか、コンペチターに勝利するための、勝因作りをひとつずつ具体的に立案することができます。

5.事業中期計画/戦略として策定
彼我の総合戦力差が明確になると、その双方の戦力差に応じて、作戦可能な行動半径の大小、戦場に留まれる期間の長短、兵力の多寡などを勘案して、どのような勝利の仕方を設定すれば、最も自軍に有利なのかが判明してきます。こうして、勝利の基本形態をあらかじめ措定する作業が「勝」となります。

勝ちパターンを作っていく。商品回転率の高さで競っていた小売業が、高プレミアム商品を投入して、高いマージンを取りに行く。高プレミアム商品の投入には、多額の先行投資(固定費)が必要になり、後々、固定費の回収に苦労することになります。しかし、競合に比べて、高シェアで、幅広い顧客にリーチできる販売網があれば、その固定費の回収のリスクは競合に比べて圧倒的に低くなります。とうことは、競合は自社と同じペースでかつ同等の品質の高プレミアム商品の開発に投資することを躊躇ってしまいます。そこでさらに優位性を強化する(なにか、とあるコンビニ市場のお話をしてしまいました)、そういう企業の戦闘体制を中長期の組織戦略で構築できればしめたものです。

現代のビジネスをまるで見てきたような孫子の名言の数々。

まあ、逆引きで引用している筆者の「我田引水」的なロジックのせいかもしれませんが。(^^;)

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孫子 第4章 形篇 16 善なる者は、道を脩(おさ)めて法を保つhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭孫子の兵法(入門編)兵法,孫子,戦略■ 五段階の思考回路で勝算を立てる! 優れた戦略家は、戦闘における勝敗の道理を実践し、戦闘における勝敗の原則を忠実に守るものです。だからこそ、思うがままに勝敗を操る支配者となれるのです。 ではその道理・原則とは何でしょうか。次にあげる5つです。 (まずは孫子流の比喩から。内容は後から解説します) 1.「度(たく)」:モノサシで計測する 2.「量(りょう)」:升目で計量する 3.「数(すう)」:数を計算する 4.「称(しょう)」:双方を比較する・・・「称」は天秤で重さを比較すること 5.「勝(しょう)」:勝利を策定する 1.「度」戦場となる土地は、距離を測るという判断を必要とし、次に、 2.「量」該当する戦場で必要となる物資を推測することが不可避とさせ、次に、 3.「数」戦場に動員すべき兵力数を計算することを必要とさせ、次に、 4.「称」彼我の戦力差を計算することを引き起こし、次に、 5.「勝」勝利の形態を推定するという判断を導く この順番で勝算を推測すれば、天秤で重さを測るように、勝利は計算できるのです。 孫子 (講談社学術文庫) ----------------- まずは訓詁学から。 「脩道」の原則は、「守備態勢より攻撃態勢への移行」 「保法」とは、「上述の五段階の思考回路で勝算を立てること」 具体的には、現代ビジネス風に、次の通りに五段階の思考回路を説明します。 1.戦う市場を設定する(市場セグメンテーション) どこからどこまでの地域が戦場となり得るかを予測し、彼我双方の出撃地点から会戦予定地までの距離、ある要地からある要地までの最短距離、迂回路をとった場合の距離など、敵軍と自軍が戦場一帯を行動するあらゆる場合を想定したうえで、それぞれの距離を事前に計測しておく作業です。 とある新機能を搭載した新製品を上市するのに、コンペチターの研究開発の所要期間は、既存製品の保有技術からどれくらいか、リバースエンジニアリングで明らかにする、新興国市場で新たな販売網を構築するのに、有力な現地パートナーの誰を自陣営に引き入れれば、真っ当な販売体制が築けるのか、立地条件は? という諸条件を明らかにします。 2.ロジスティクス(兵站) 上記1.で算出した距離データを、戦闘部隊の一日当たりの行軍距離で割れば、戦闘部隊が会戦予定地に到達するまでに要する日数や、補給物資が前線に到着するまでの日数が求められます。この日数に、兵士一人当たりが一日に消費する食糧をかければ、事前準備しておくべき補給物資や配給計画が明らかになります。 新市場に商品を投入してから、キャッシュインがあるまでの日数を算定し、それまでに運転資金がいくら必要なのか、不測の事態が起こり得るのも含めて、担当者の人件費や活動予算はどれくらい余裕を見ておけばよいのか、はたして新製品がターゲット顧客の手元に届くまでにかかるリードタイムはどれくらいで、在庫回転日数はどれくらいを見込んでおくべきか、そういうシミュレーションを実施します。 3.アクションプランの立案 必要な補給物資量が分かれば、国家が備蓄する穀物や飼料の総量を割ると、最大限動員可能な兵力数や、動員しうる牛車の数が算出されます。こうして得られた牛車の台数に、一台当たりの積載量や損耗率をかければ、前線に到達する物資量も概算でき、作戦行動が可能な日数が割り出せます。 新規市場への進出計画が、必要とする経営リソースが概算できれば、手元の余裕資金、投入できるエース級の人材、活用できる知財権等がどれくらいあって、新規ビジネスのプランを具体的に策定することができます。ここで一番重要なのが必要資金の手当て。資金不足が分かれば、外部調達に頼らざるを得ないのですが、新規ビジネスの採算があらかじめ、かなりの精度で分かっていれば、最適の財務戦略が立案できます。ノンリコースローンの活用か、新株発行か、短期借入金か、社債発行か。。。リスクと期間が克明にイメージできればできるほど、スラックの無い調達計画とすることができます。 4.競争戦略の具体化 敵軍と自軍の双方にこうした算出法を適用して、比較・考量すると、そこには彼我の総合的な戦力差が浮かび上がってきます。 該当市場における、リーダーなのか、フォロワーなのか、ニッチャーなのか、新発なのか後発なのか、先行しているのか。他市場でのブランドは通用するのか、新ブランドの訴求効果の方が高いのか、コンペチターに勝利するための、勝因作りをひとつずつ具体的に立案することができます。 5.事業中期計画/戦略として策定 彼我の総合戦力差が明確になると、その双方の戦力差に応じて、作戦可能な行動半径の大小、戦場に留まれる期間の長短、兵力の多寡などを勘案して、どのような勝利の仕方を設定すれば、最も自軍に有利なのかが判明してきます。こうして、勝利の基本形態をあらかじめ措定する作業が「勝」となります。 勝ちパターンを作っていく。商品回転率の高さで競っていた小売業が、高プレミアム商品を投入して、高いマージンを取りに行く。高プレミアム商品の投入には、多額の先行投資(固定費)が必要になり、後々、固定費の回収に苦労することになります。しかし、競合に比べて、高シェアで、幅広い顧客にリーチできる販売網があれば、その固定費の回収のリスクは競合に比べて圧倒的に低くなります。とうことは、競合は自社と同じペースでかつ同等の品質の高プレミアム商品の開発に投資することを躊躇ってしまいます。そこでさらに優位性を強化する(なにか、とあるコンビニ市場のお話をしてしまいました)、そういう企業の戦闘体制を中長期の組織戦略で構築できればしめたものです。 現代のビジネスをまるで見てきたような孫子の名言の数々。 まあ、逆引きで引用している筆者の「我田引水」的なロジックのせいかもしれませんが。(^^;)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します