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■ 分析の兵法 - とにかく組織が安全になる行動を分析する!

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

(1)山岳地帯における注意点
さまざまな地形に軍隊を配置し敵情を偵察するのに、
① 山を越えるには谷沿いに進む
② 高地を見つけて休息場所を確保する
③ 戦闘に入る場合は、高地から攻め下るようにする
④ 決して自軍より高い地点を占拠する敵に向かって攻めのぼったりしない

(2)河川地帯における注意点
① 川を渡り終えたならばすぐにその川から遠ざかる
② 敵が川を渡って攻撃してきた時は、敵兵の半分を渡らせておいてから攻撃する
③ 渡河してくる敵との戦闘は、川岸まで出かけて敵を迎撃してはいけない
④ できるだけ高地を占拠して敵を迎え撃つ
⑤ 下流にいる場合は、上流から攻め下ってくる敵を迎撃してはいけない

(3)沼沢地を超える場合の注意点
① すばやく通過するようにして、そこで休息してはいけない
② もし敵と遭遇して沼沢地で戦う事態になった場合、飲料水と飼料の草がある近辺を占めて、森林を背に配して布陣する

(4)平地における注意点
① 足場のよい平坦な場所を占めて、丘陵を右後方に置き、低地を前方に、高みを後方に配して布陣する

山岳・河川・沼沢・平地の四種の地勢にいる軍隊の戦術的利益こそは、黄帝が四人の帝王に打ち勝った要因なのである。

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第9章の「行軍篇」と第10章の「地形篇」は実際の古代中国における軍隊の統率に関する具体的な事象を記述しているため、これを現代ビジネスに応用させる解説するのは骨が折れます。当時の孫子が置かれた状況から記述されたこれらの文章を、時空を超えて、現代ビジネスに置き換える必要があるので。。。

山越えの場合、稜線を乗り越える形で登り降りすると、敵に発見されやすくなるので、谷に沿って隠密行動をとる。谷の方が、水や飼料を得やすいのでロジスティックス(兵站)も確保しやすいわけです。土地の起伏も小さく、行軍が楽にもなります。途中で休憩したり露営する場合には、それだけの広さを持つ高地を見つけること。もしこの時、自軍が占める地点より高い高地が稜線で接続していて、的にそこを占拠された場合には、敵が攻め下り、自軍が攻め上る形を強いられるから、予め敵に優位を占められる恐れのない高地を選択する必要があります。

これを、現代ビジネスになぞらえるならば、
① できるだけ商品を先行投入する、また新製品開発の進行を知られないようにする
② できるだけこちらの販売シェアが大きい所で勝負する
③ 補給(ロジスティックス)、在庫と生産キャパの確保は怠らない

渡河した後、速やかに川から遠ざかれ、というのは、渡河地点でぐずぐずしていると、背水の陣を強いられ、不利な体勢での戦闘をせざるを得なくなることを回避するため。敵軍が渡河している場合、半数を渡らせておいてから迎撃するというのは、対岸への撤退をできなくさせて、こちら岸に引きつけ、接近戦で敵に大きな打撃を与えるためという効果を考えてのこと。渡河行軍中の敵は隊列も乱れ、迎撃力が落ちている所を狙うという分けです。

また、自軍の方からわざわざ水際まで降りて行って迎撃してはいけません。水際は足場が悪く、下手をすると混戦になったまま、左右に分かれて渡河してきた敵の後続部隊に両側を衝かれる恐れが出てくるからです。そして、上流から攻めてくる敵は、水をせき止めて、戦闘の際に決壊させて濁流に飲み込まれるリスクが生じます。また、舟艇を使って、勢いをつけて正面から攻めてきたり、側面に回られたりして、船上での位置取りが不利になる可能性が大きくなります。

これを現代ビジネスになぞらえるなら、
① コンペチターを叩くときは決定的な好機を逃さないようにする
  (敵の大型先行投資を無駄にするような手を打つのが一番)
② コンペチターが勢いに乗っている時には、正面から戦わず、勢いをかわす
③ 市場でのポジショニングを明確に意識する(リーダー、フォロワー、ニッチャー、そして撤退のタイミングを見失わないこと)

沼沢地帯は足場が悪く、伏兵に遭っても有効に対応しがたいので、素早く通り過ぎなければなりません。もし、沼沢地を行動中に敵を発見した場合には、飲料水と飼料の草のある場所を確保しなければなりません。それと同時に、沼沢地の中では比較的足場の固い森林を背後に布陣して、姿を隠しながら安全に撤退できる要路を抑えておく必要があります。

これを現代ビジネスになぞらえるなら、
① サンクコストを見極め、深追いはしない。撤退すべき時には潔く撤退する
② コンペチターとの消耗戦になったら、補給(資金と物流)を必ず押さえること

平原を行軍中に休息・露営する場合には、足場のよい平坦な場所を選びます。この時、丘陵を右後方にして、丘陵に続く上り斜面を背後、窪地や河床・溝などの低地を前方に配するように工夫します。丘陵を背にするのは、戦闘で押されて後退しても、高地の有利さを生かして、防戦できるからです。それにしても、なぜ右後方なのか? 当時から右利きの人が大半だったので、弓兵や弩兵は左前方には体を捻って狙いを定めやすかったから。こんなTIPSは現代ビジネスにはそのままでは生かせませんが、兵士ひとりひとり、現代ビジネスで言えば、従業員一人一人の行動様式などを熟知して、組織化を図ることの重要性を示す一例ととらえて頂ければ幸いです。

要は、ポジショニング。ポーター氏の競争戦略に通じる、「今、組織は市場のどこにいて、敵(コンペチター)は誰なのか?」を明確に意識して、自組織が一番力を発揮できるポジショニングを採ることが肝要であるということ。ポーター氏が孫子を読んでいたかどうかわかりませんが(そういう話は聞きますが真偽のほどは定かではありません)、古代中国の時代から、時代の先端を行く思想家はとてつもなく偉大であることは間違いないようです。

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孫子 第9章 行軍篇 39 四軍の利は、黄帝の四帝に勝ちし所以なりhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭孫子の兵法(入門編)孫子,兵法,戦略,ポジショニング,ポーター,競争戦略■ 分析の兵法 - とにかく組織が安全になる行動を分析する! (1)山岳地帯における注意点 さまざまな地形に軍隊を配置し敵情を偵察するのに、 ① 山を越えるには谷沿いに進む ② 高地を見つけて休息場所を確保する ③ 戦闘に入る場合は、高地から攻め下るようにする ④ 決して自軍より高い地点を占拠する敵に向かって攻めのぼったりしない (2)河川地帯における注意点 ① 川を渡り終えたならばすぐにその川から遠ざかる ② 敵が川を渡って攻撃してきた時は、敵兵の半分を渡らせておいてから攻撃する ③ 渡河してくる敵との戦闘は、川岸まで出かけて敵を迎撃してはいけない ④ できるだけ高地を占拠して敵を迎え撃つ ⑤ 下流にいる場合は、上流から攻め下ってくる敵を迎撃してはいけない (3)沼沢地を超える場合の注意点 ① すばやく通過するようにして、そこで休息してはいけない ② もし敵と遭遇して沼沢地で戦う事態になった場合、飲料水と飼料の草がある近辺を占めて、森林を背に配して布陣する (4)平地における注意点 ① 足場のよい平坦な場所を占めて、丘陵を右後方に置き、低地を前方に、高みを後方に配して布陣する 山岳・河川・沼沢・平地の四種の地勢にいる軍隊の戦術的利益こそは、黄帝が四人の帝王に打ち勝った要因なのである。 ----------------- 第9章の「行軍篇」と第10章の「地形篇」は実際の古代中国における軍隊の統率に関する具体的な事象を記述しているため、これを現代ビジネスに応用させる解説するのは骨が折れます。当時の孫子が置かれた状況から記述されたこれらの文章を、時空を超えて、現代ビジネスに置き換える必要があるので。。。 山越えの場合、稜線を乗り越える形で登り降りすると、敵に発見されやすくなるので、谷に沿って隠密行動をとる。谷の方が、水や飼料を得やすいのでロジスティックス(兵站)も確保しやすいわけです。土地の起伏も小さく、行軍が楽にもなります。途中で休憩したり露営する場合には、それだけの広さを持つ高地を見つけること。もしこの時、自軍が占める地点より高い高地が稜線で接続していて、的にそこを占拠された場合には、敵が攻め下り、自軍が攻め上る形を強いられるから、予め敵に優位を占められる恐れのない高地を選択する必要があります。 これを、現代ビジネスになぞらえるならば、 ① できるだけ商品を先行投入する、また新製品開発の進行を知られないようにする ② できるだけこちらの販売シェアが大きい所で勝負する ③ 補給(ロジスティックス)、在庫と生産キャパの確保は怠らない 渡河した後、速やかに川から遠ざかれ、というのは、渡河地点でぐずぐずしていると、背水の陣を強いられ、不利な体勢での戦闘をせざるを得なくなることを回避するため。敵軍が渡河している場合、半数を渡らせておいてから迎撃するというのは、対岸への撤退をできなくさせて、こちら岸に引きつけ、接近戦で敵に大きな打撃を与えるためという効果を考えてのこと。渡河行軍中の敵は隊列も乱れ、迎撃力が落ちている所を狙うという分けです。 また、自軍の方からわざわざ水際まで降りて行って迎撃してはいけません。水際は足場が悪く、下手をすると混戦になったまま、左右に分かれて渡河してきた敵の後続部隊に両側を衝かれる恐れが出てくるからです。そして、上流から攻めてくる敵は、水をせき止めて、戦闘の際に決壊させて濁流に飲み込まれるリスクが生じます。また、舟艇を使って、勢いをつけて正面から攻めてきたり、側面に回られたりして、船上での位置取りが不利になる可能性が大きくなります。 これを現代ビジネスになぞらえるなら、 ① コンペチターを叩くときは決定的な好機を逃さないようにする   (敵の大型先行投資を無駄にするような手を打つのが一番) ② コンペチターが勢いに乗っている時には、正面から戦わず、勢いをかわす ③ 市場でのポジショニングを明確に意識する(リーダー、フォロワー、ニッチャー、そして撤退のタイミングを見失わないこと) 沼沢地帯は足場が悪く、伏兵に遭っても有効に対応しがたいので、素早く通り過ぎなければなりません。もし、沼沢地を行動中に敵を発見した場合には、飲料水と飼料の草のある場所を確保しなければなりません。それと同時に、沼沢地の中では比較的足場の固い森林を背後に布陣して、姿を隠しながら安全に撤退できる要路を抑えておく必要があります。 これを現代ビジネスになぞらえるなら、 ① サンクコストを見極め、深追いはしない。撤退すべき時には潔く撤退する ② コンペチターとの消耗戦になったら、補給(資金と物流)を必ず押さえること 平原を行軍中に休息・露営する場合には、足場のよい平坦な場所を選びます。この時、丘陵を右後方にして、丘陵に続く上り斜面を背後、窪地や河床・溝などの低地を前方に配するように工夫します。丘陵を背にするのは、戦闘で押されて後退しても、高地の有利さを生かして、防戦できるからです。それにしても、なぜ右後方なのか? 当時から右利きの人が大半だったので、弓兵や弩兵は左前方には体を捻って狙いを定めやすかったから。こんなTIPSは現代ビジネスにはそのままでは生かせませんが、兵士ひとりひとり、現代ビジネスで言えば、従業員一人一人の行動様式などを熟知して、組織化を図ることの重要性を示す一例ととらえて頂ければ幸いです。 要は、ポジショニング。ポーター氏の競争戦略に通じる、「今、組織は市場のどこにいて、敵(コンペチター)は誰なのか?」を明確に意識して、自組織が一番力を発揮できるポジショニングを採ることが肝要であるということ。ポーター氏が孫子を読んでいたかどうかわかりませんが(そういう話は聞きますが真偽のほどは定かではありません)、古代中国の時代から、時代の先端を行く思想家はとてつもなく偉大であることは間違いないようです。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します