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■ 部下がついていきたくなる上司とは?

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

兵力数が圧倒的に多くなくても、軽率に猛進さえしなければ、少ないながらも戦力を集中して敵情を読むのには十分であって、最後には敵を思い通りに屈服させることができる。そもそも何らの周到な考えなしに敵を頭から侮るような将軍(リーダー)は、敵の捕虜にされるのが落ちである。

兵士たちがまだ将軍(リーダー)に対して心をひとつにして親しんでもいないのに、兵士たちを処罰しても彼らは将軍(リーダー)の命令には心服しない。心服しなければ、いくら命令しても思い通りに動かすことはできない。

その逆に、兵士たちが心をひとつにして将軍(リーダー)に親しんでいるのに、断固とした処罰が実行されないままになっていれば、その軍隊はものの役には立たない。

だから、
① 兵士たちの気持ちをひとつにまとめるために、兵士たちとの親密な親交を深める
② 兵士たちの行動を統制するのに、刑罰の武威を用いることを躊躇わない

それゆえ、
軍令が平素からきちんと実行されている状態下で、旗下の兵士たちを教導する将軍(リーダー)に対しては、兵士たちは心服する。
軍令が平素から誠実に実行されているような将軍(リーダー)は、兵士たちと心がひとつに結ばれているのである。

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

—————–
軍隊をはじめとして、組織は何でも数が多ければそれでよし、ということはありません。最後の勝利を得るためには、長く苦しい行軍の間に、自軍の内部を団結させながら、慎重に敵情をはかり考えて行動するといった、軍隊内部の質的・機能的優位性が必要となります。

それゆえ、軍隊内を強固に結束させ、リーダーの威令を隅々にまで徹底させることは、リーダーの組織運営上での大切な責務となります。しかし、これは微妙な組織内コミュニケーションの機微に通じていないと達成できない難行のひとつです。まだ部下が懐いていないのにリーダーの権威を振りかざして刑罰を課して自己の統率に従わせようとしても、部下たちは面従腹背を繰り返すだけで、決して本心から臣従することはないでしょう。身分の上下という形式的な、外面的な要素だけでは、本当に人の心を動かすのには不十分なのです。

そこで、日頃から部下たちと親密に交わり、彼らの心を掴んでおくことが肝要になります。最初に部下たちの心が一つにまとまり、リーダーに慣れ親しんだのを見届けた上で、軍律に違反したものに対して、毅然とした態度で処罰を断行することにより、組織を意のままに操ることができるのです。

これはリーダーの資質として、
① 部下との親密な親交をふかめることができる精神的連帯感を醸し出す人間性
② 公正で断固とした処罰を巧みに下す決断力と胆力
を兼ね備えておく必要があります。

部下を動かすポジションにある者は、自分の発した言葉の信用性に、過敏なまでに責任を感じる性格である必要があります。信賞必罰によって、自己の発言に千金の重みをもたせることができる指揮官にだけ、部下は親愛と畏敬の念を持ち、この人になら命を預けても惜しくはないと心に誓わせることができるのです。

本書にある解説文の最後の締めの言葉がとてもかっこよかったのでここに引用します。

「人間は必ずしも他人の部下になることを嫌いはしない。ただ、信頼できない主人に仕えるのを嫌うだけである」

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孫子 第9章 行軍篇 46 兵は多益に非ざるもhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭孫子の兵法(入門編)信賞必罰,兵法,孫子,戦略■ 部下がついていきたくなる上司とは? 兵力数が圧倒的に多くなくても、軽率に猛進さえしなければ、少ないながらも戦力を集中して敵情を読むのには十分であって、最後には敵を思い通りに屈服させることができる。そもそも何らの周到な考えなしに敵を頭から侮るような将軍(リーダー)は、敵の捕虜にされるのが落ちである。 兵士たちがまだ将軍(リーダー)に対して心をひとつにして親しんでもいないのに、兵士たちを処罰しても彼らは将軍(リーダー)の命令には心服しない。心服しなければ、いくら命令しても思い通りに動かすことはできない。 その逆に、兵士たちが心をひとつにして将軍(リーダー)に親しんでいるのに、断固とした処罰が実行されないままになっていれば、その軍隊はものの役には立たない。 だから、 ① 兵士たちの気持ちをひとつにまとめるために、兵士たちとの親密な親交を深める ② 兵士たちの行動を統制するのに、刑罰の武威を用いることを躊躇わない それゆえ、 軍令が平素からきちんと実行されている状態下で、旗下の兵士たちを教導する将軍(リーダー)に対しては、兵士たちは心服する。 軍令が平素から誠実に実行されているような将軍(リーダー)は、兵士たちと心がひとつに結ばれているのである。 (出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫) ----------------- 軍隊をはじめとして、組織は何でも数が多ければそれでよし、ということはありません。最後の勝利を得るためには、長く苦しい行軍の間に、自軍の内部を団結させながら、慎重に敵情をはかり考えて行動するといった、軍隊内部の質的・機能的優位性が必要となります。 それゆえ、軍隊内を強固に結束させ、リーダーの威令を隅々にまで徹底させることは、リーダーの組織運営上での大切な責務となります。しかし、これは微妙な組織内コミュニケーションの機微に通じていないと達成できない難行のひとつです。まだ部下が懐いていないのにリーダーの権威を振りかざして刑罰を課して自己の統率に従わせようとしても、部下たちは面従腹背を繰り返すだけで、決して本心から臣従することはないでしょう。身分の上下という形式的な、外面的な要素だけでは、本当に人の心を動かすのには不十分なのです。 そこで、日頃から部下たちと親密に交わり、彼らの心を掴んでおくことが肝要になります。最初に部下たちの心が一つにまとまり、リーダーに慣れ親しんだのを見届けた上で、軍律に違反したものに対して、毅然とした態度で処罰を断行することにより、組織を意のままに操ることができるのです。 これはリーダーの資質として、 ① 部下との親密な親交をふかめることができる精神的連帯感を醸し出す人間性 ② 公正で断固とした処罰を巧みに下す決断力と胆力 を兼ね備えておく必要があります。 部下を動かすポジションにある者は、自分の発した言葉の信用性に、過敏なまでに責任を感じる性格である必要があります。信賞必罰によって、自己の発言に千金の重みをもたせることができる指揮官にだけ、部下は親愛と畏敬の念を持ち、この人になら命を預けても惜しくはないと心に誓わせることができるのです。 本書にある解説文の最後の締めの言葉がとてもかっこよかったのでここに引用します。 「人間は必ずしも他人の部下になることを嫌いはしない。ただ、信頼できない主人に仕えるのを嫌うだけである」現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します